すべては君のために   作:eNueMu

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真夜中の激突

 

 それからしばらく、出久のインターンに大きな変化はなかった。経験を積んでいくうちにOFAの許容上限は20%に到達し、以前よりもさらに鋭い動きが出来るようになったものの……未だにナイトアイには認められていないようだった。死穢八斎會の問題も、別段解決には進んでいない。

 

 「デクくん、どしたの?」

 「あ…麗日さん。インターン先でちょっと色々あってね」

 

 クラスメイトの麗日お茶子の問いかけに、出久は暈して答える。あまり迂闊に情報を洩らすべきではないと思ったのだ。

 

 「そっか…。……あんまり、気負わないようにね」

 「…うん。ありがとう」

 

 インターンのことで出久と話をしたいと思っていた麗日も、彼の様子を見て避けた方がいいだろうと考え直す。…事態が動いたのは、そんな日の夜のことだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「壊理。今日も少し遅くなるから、先に寝ていなさい」

 「……うん」

 

 死穢八斎會の一室にて。治崎はどうにか壊理が自分の個性を最低限制御できるようにしてやろうと、連日解決策を探っていた。自身の力への恐怖心を取り除いてやれない限り、彼女が個性と向き合うのは難しいだろうと考えてのことだった。

 治崎は部屋を出て、地下に増設した区画にある研究室へ向かう。彼は組長からの依頼通り、壊理の毛髪から得たDNAや細胞を利用することで、独自に彼女の個性因子を割り出すことには成功していた。が、それで分かったのは壊理の個性が常識外れの超個性であるということのみ。治崎からこのことを伝えられた八斎會組長も顔色を変えていた。『巻き戻し』という個性は、それだけ凄まじいものなのだ。

 

 「(俺の個性の比じゃない…あの子の個性は少なくとも子供が持つには危険すぎるものだ。………幼い少女にそれと向き合えというのは…酷なのかもしれない。ダストの言った通り焦らず時間をおくべきか…)」

 

 様々な方面から集めた間に合わせの設備ながら、そこで治崎は研究を続けている。全ては自らと同じ境遇に追いやられてしまった壊理の心を救うため…そして、自分を拾ってくれた組長への恩を返すためだ。

 

 「(いつか必ず…お前が自分を愛せるように。泣くな、壊理。俺がお前の………ヒーローになる)」

 

 時間は多くの人々が寝静まる夜。死穢八斎會の事務所の門が、音もなく腐り落ちていく。

 侵入者たちはその魔の手を、幼い少女に伸ばさんとしていた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「何じゃ己ら!舐めた真似してくれよって────」

 「邪魔すんなよな。永遠に寝てろ」

 「急ごうぜ死柄木!まだ殆ど気付いてねえうちに!」

 「でもどこに目的のコが居るのか分かんないわよ?殺す前に聞いた方が良かったんじゃない?」

 「心配すんな。こういうのは大体地下だって相場は決まってる」

 

 八斎會の事務所屋内に侵入した敵連合。死柄木は起きていた組員を片手間に始末しながら、おおよその当たりをつけて床に手を触れる。グズグズに黒く溶けていく地面は…少しすると地下の空間を露わにした。

 

 「ホラな」

 「冴えてるじゃねえか!さっさと頂いてとんずらだ!」

 

 予想的中に気をよくするコンプレス。しかし死柄木は何となく、順当にはいかないだろうと考えていた。開いた穴から下に降りる3人。広大な地下は入り組んでおり、あちこちに部屋がある。

 

 「どこもかしこも何かの研究施設みてえな感じだな。確かに隠し場所としてはそれっぽいぜ」

 「……この部屋…さっきまで誰か居たな」

 「!あらあら…鉢合わせちゃったら面倒かしら」

 

 連合はいくつか部屋を物色していく中で、比較的新しい痕跡が確認出来る部屋に辿り着いた。乱雑に置かれたままの書類には、何者かの個性についてのメモ書きらしきものも含まれている。

 

 「────こい、つは」

 

 死柄木がそれに目を通し、思わず固まる。同時に…部屋に1人の人物が戻ってきてしまった。

 

 「!?……お前ら一体…!!」

 「チッ!マグ姐!!死柄木!!」

 

 突然現れた3人の侵入者に驚く治崎。一方連合側はすぐさま彼を始末しようと行動を開始した。

 

 「見つかっちまったか…なら、死んでもらうしかねえよな」

 「悪く思わないで頂戴ね!」

 「…とりあえず目的を聞かせてもらおうか」

 「ご大層な余裕じゃ……ぐッ!?」

 

 だが、治崎も平静を取り戻すと3人を自らの個性で拘束しようと試みる。彼が素早く床に手をつくとせり出した石柱が連合に襲いかかり、マグネがそれを躱せずに壁面と板挟みになってしまった。

 

 

 「よく見れば見たことのある顔触れだ……指名手配中の敵連合だな、お前ら。こんな所に何の用だ?」

 「死ぬ奴に教えてもしょうがねえだろ」

 「そう思うか?」

 

 手を振りかぶる死柄木だが、治崎はその場を離脱し背面の扉ごと部屋を出る。すぐに壁に手を触れ、今度は無数の石の棘を伸ばした。

 

 「な…ッ!!チィィ……殺しに来んのかよ…!!」

 「教えられないようなことをしてる犯罪者にかけてやれる慈悲はないな。俺は極道だ……ヒーローのように高潔な精神なんざ持ち合わせちゃいない」

 

 何とかそれを躱した死柄木だが、予想外の展開に焦りを隠せない。

 

 「(野郎……何でこんなに動けんだよ面倒くせえ。さっさとガキ攫って終わらせるつもりだったが…そうも言ってられなくなったな)」

 

 敵連合と治崎の戦いは、さらに激しさを増していく。

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