すべては君のために   作:eNueMu

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巨鯨母艦・キュレートス

 

 『ヴオオオオォォォォォォォォッ!!!!!』

 「な…!?」

 「これは……」

 

 地上の咆哮か、遠方で轟いた爆音が地下にまで響いている。すぐにナイトアイの携帯にセンチピーダーからの着信があり、彼が報告を行う。

 

 『サー!!!上空に突如超巨大ヴィランが出現!!!外見的特徴から…「キュレートス」であると思われます!!そちらで何か!!?』

 

 心当たりのあったナイトアイは、死柄木の方を振り返り……その手に握られたトランシーバーを目の当たりにした。

 

 「死柄木の声に反応して…!?」

 「…は、は……キュレートスの耳には…お高い受信用の無線機が取り付けてある。俺ならいつでも、どこでも……アイツをある程度、好きに動かせる…!!!」

 

 勝ち誇ったように笑いながら話す死柄木。その頬が抉れ、歯が見えてしまっていることにミリオが気付く。

 

 「(!?そ、そこまで力を込めたつもりは…!!)」

 「…?……あ」

 

 死柄木も彼の視線から頬に違和感を感じ、手で触れて状態を把握した。一瞬呆けた顔になりながらも、すぐに苛つきを含んだ表情を見せる。

 

 「………踏んだり、蹴ったりだ……気に入ってたのによ…」

 「(…素顔じゃないのか……!?だとしたら剥き出しの歯は一体…!)」

 

 そんなミリオの思考は、繋がったままの電話から聞こえてきたセンチピーダーの声に中断させられる。

 

 『サー、退避を!!!其方に突っ込みます!!!』

 「!!ルミリオン!!」

 「はい!!」

 

 ナイトアイの意図を読み取り、治崎と壊理を抱えてその場から大きく跳び退くミリオ。一瞬の間を置いて、キュレートスが頭部を地下に捩じ込んできた。

 

 「ヴォォォ…」

 「サー!!死柄木が!!」

 

 丁度そこにいた死柄木は、キュレートスの急襲に巻き込まれてしまった。しかし、ナイトアイがミリオの懸念に首を振る。

 

 「いや……こんな終わり方はするまい。じきに姿を見せるぞ」

 「ご名答だヒーロー。褒美にキュレートスの本領を見せてやるぜ」

 

 彼の推測を肯定するようにキュレートスの口元から顔を覗かせる死柄木。ミリオが仕掛けるよりも先にキュレートスは再び地上へ引き返し、空高くへと昇っていく。

 

 「…逃げる……って感じじゃあ無さそうだ!!」

 「センチピーダー!!周辺住民の避難誘導を!!」

 「はっ!!」

 

 ミリオと共に地上へ上がりつつ、己が先に民衆の安全を確保しておくべきだったと失策を嘆くナイトアイだが…そんなことを考える余裕はすぐに失われることとなる。

 

 「変形…?アレは…」

 「……砲塔、か…!?」

 

 背と腹、脇腹から2門ずつの計6門の長大な砲塔を伸ばしたキュレートス。そして、そこから放たれたのは────

 

 

 「ヴオオォォォッ!!!」

 「ま────」

 

 

 熱線(レーザー)

 

 脇腹より上の4門は可動域の問題か、在らぬ方向へ熱線を飛ばしたものの、腹部の2門は八斎會周辺を直撃。着弾地点は大きく焼失し、その威力を物語っている。

 

 「…ルミリオン!!!ダストに救援要請を出す!!お前は2人を安全な場所へ!!!」

 「サー!!?」

 「早く行くんだ!!!」

 「………ッはい…!!」

 

 ミリオに治崎と壊理を任せたナイトアイは、携帯を取り出し、キュレートスを一手で仕留めうる唯一の存在…千雨に救援を求めることを選んだ。しかし、彼女の自宅から八斎會まではかなりの距離がある。

 

 この時ナイトアイの心に過ったのは…緑谷出久の存在だった。

 

 「(緑谷が来るまでの残り時間はそう多くない筈…!!賭けるしか、ない……!オールマイトが、グラントリノが、ダストが選んだ…奴に!!!)」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 キュレートスは熱線を乱射しながら、時折脳無まで吐き出している。器用にも死柄木は口の中に収めたままだ。

 

 辺りに広がる咆哮と破壊音は深夜なれども流石に人々の目を覚まさせ、数多のヒーローも駆けつけ始めていた。

 

 「サー・ナイトアイ!!奴を倒すことは出来んのか!?」

 「かつてオールマイトが雄英で遭遇した上で取り逃している!!!異常なまでに頑丈だ!!多少の攻撃ではダメージにもならない!!」

 「何という…!!このままではこの一帯が……壊滅するぞ!!!」

 

 八斎會の組員や一般市民たちが恐慌の叫び声を上げながら逃げ惑う。家屋が熱線に貫かれ、焼き切られ、どんどんと崩れていく。真夜中の住宅街は、今や地獄と化していた。

 

 「組長……!!アッシらも逃げやしょう!!」

 「……おう。………すまねェな」

 

 これには八斎會の組長も、苦渋の決断をせざるを得なかった。破壊の波に晒されて原型を失いつつある事務所を哀しみの目で一瞥し、別れを告げてヒーローたちの避難指示に従う。

 

 「せめて飛行できるヒーローがこの場に居れば…!!」

 「脳無も数が増えて来てる!!本当にまずいぞ!!!」

 

 上空に浮かぶキュレートスへの有効打を見つけられないまま、敵の量ばかりが増えていく。さらに、キュレートスが何処かを目指して移動を開始した。

 

 「な……動かすな、止めるんだ!!これ以上被害を広げる訳にはいかない!!!」

 「まさか…壊理ちゃんを狙って!?」

 

 薄く開いたキュレートスの口元には、死柄木の姿が確認出来る。どうやらまだ壊理の奪取を諦めていないらしい。

 

 だが、同時に────小さな希望も、そこには訪れていた。

 

 

 

 「デク、現着しました!!ナイトアイ、指示を!!!」

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