※一部壊理視点
「デク!!聞きたいことがある!オールマイトは本当に
ついに到着した出久に、ナイトアイは上空のキュレートスを指差して質問をする。出久も彼の側まで来ると、自身の記憶と推測を口にした。
「…見た限りでは、全力だったと思います。それでも、ダメージを受けているようには思えませんでした……」
「……そうか」
「でも、完全に攻撃が効かないならもっとオールマイトにぶつけて来ていてもおかしくない筈なんです!なのにそうして来なかったってことは、限界まで衝撃を吸収する個性とか、そういうのを持ってて…オールマイトと戦い続けることでボロが出るのを嫌がったんじゃないでしょうか!?」
「………考えられない話ではないな」
出久の分析はある程度筋が通っていると感じたナイトアイだが、それでもオールマイトに救援の要請をするつもりは無い。
「(恐らく住民の避難は既に完了している……ここでオールマイトを呼ぶ、というのは死柄木に逃走を選ばせる猶予を与える悪手になりかねない。やはり鍵は…)」
そこまで考え、ナイトアイは出久に目線を遣る。キュレートスを千雨の参戦まで抑え切る、あるいは倒すことができ得るのは現時点で死柄木の警戒が向いていない彼しか居なかった。
「デク。今は確か……18%だったか?」
「!………いえ、インターン中に20%まで」
出久にOFAの身体許容上限を確認し、勝算があるかどうかを判断する。
20%という数字は低いようにも思えるが、OFAは5%でも超人的な動きを可能とする程の力を秘めている個性だ。倒すまでは行かなくとも、キュレートスをこの場に縛り付けておくことは十分出来るかもしれなかった。
ナイトアイの残る懸念は…死柄木の動き。
「そうか。……死柄木の狙いは壊理ちゃんだ。奴らを止められるか?」
「────はい!守り抜いて、みせます!」
目に力を込め、1人で巨大脳無と連合の頭を止めると言い切った出久。
彼を信じてミリオたちに合流しようと考えたナイトアイは────しかしその相手がすぐそこに居ることに目を見開いた。
「ミリオ…!!?何故まだここに居るんだルミリオン!!!」
ナイトアイの声を受け、そちらに顔を向けずに答えを返すミリオ。よく見ると、彼は壊理を抱えたままだった。
「すみませんサー!!!この子を狙って……別の脳無が!!!」
「脳無だと…?一体…」
「そっちへ行ったぞルミリオン!!!」
疑問を隠せなかったナイトアイの台詞は、治崎の叫びに掻き消される。いつの間に目を覚ましていたのか…彼がそう思うより早く、曲がり角を跳び越えるように現れたのは────女性型の脳無だった。
現段階で、ほぼ全てのヒーローは「キュレートス」か「それ以外の脳無」という括りで彼らを認識している。それは、千雨であっても変わらない。「ハイエンド」と「マスターピース」は生産出来る筈がないと踏んでいたからだ。
「ドクターさえ居なければ、それらの強力な脳無が出てくることはない」「オールマイトがキュレートスを取り逃がしたのも、相性と偶然の積み重ねだ」
そんな思考の偏りは、至極単純な1つの可能性……
「ヮラヱ」
声を発した女性型脳無は、着地地点を割り砕く。外見の逞しさに違わず高い身体能力を誇っているらしく、後を追ってきた治崎の妨害をものともしていない。
「クソッ!!ここまで誘導するために…!!!」
「サー!!!この脳無、キュレートスとは逆方面から襲ってきた!!!きっと元から別行動だったんだ!!!」
ミリオと治崎は壊理を守る必要性から防戦一方となり、気付けば死柄木の元まで押し戻されてしまっていた。対してその死柄木も、女性型脳無を見て困惑を示す。
「何だ……あいつ?先生が出してきたのか…?」
とにかく好都合だとキュレートスの熱線を止め、高度を下げさせる死柄木。隙を見てヒーローたちが攻撃を仕掛けるが、殆どは弾かれ、辛うじて与えた傷も瞬く間に再生してしまった。
「よお!!俺にガキを献上しに戻って来てくれたか!?いい心がけだぜ!!」
そのままキュレートスから降り、ミリオたちに接近する死柄木。女性型脳無に手一杯の2人では、彼まで気が回らない。だが…
「死柄木イイイィィィッ!!!」
「あ?誰────────」
「『セントルイススマッシュ』!!!」
「がは…ッ!!?」
出久の吶喊に振り返った死柄木は、考えていたよりも遥かに鋭い不意打ちをまともに受けてしまう。勢いよく跳ね飛ばされたものの、ミリオの時とは違って上手く体勢を立て直した。
「痛ってえ…!!!お前確か……雄英1年のガキか……!?ノーマークだったよ地味ヤロォォ…!!」
「壊理ちゃんに……手出しはさせない!!」
悪態をつきつつ、出久の台詞を鼻で笑い飛ばす。
「ハッ!そりゃ不可能ってもんだ。手札が増えた。距離も近付いた……いくらでもやりようはあるのさ。────キュレートス!!!ぶっ放せ!!!」
「ヴオオオオォォォ!!!!」
気付けば地上スレスレまで降下してきていたキュレートスが、その6門の砲塔の照準をミリオ…否、壊理に合わせる。
「…え?」
「壊理イイイイイイィッ!!!」
「死、柄木ィイイイイイイイイイッ!!!!!!!」
治崎とミリオの絶叫。ミリオは女性型脳無の攻撃を避けながら壊理を抱えて全力で安全圏へ逃れようとし………治崎がそんな彼を石柱で押し出した。
「治崎さんッ!!!?」
「────────壊理を、頼む」
放たれた6筋の熱線は収束し、女性型脳無ごと治崎を呑み込んだ。
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治崎さんが、けがをした。私が悪い人たちにさらわれそうなのを、たすけようとしたから。
私の、せいだ。
すぐに自分の個性で治してるけど、そのたびにけがしてる所がパッとなくなってすごくいたそう。ううん、いたいに決まってる。
私の、せいだ。
いまはきんぱつの人が、私をだっこして「のうむ」っていうこわいひとから逃げてる。ずっと、たいへんそうな顔。
私の、せいだ。
「のうむ」は、逃げたさきにもいた。おっきなくじらさんみたいなのと、他にもたくさん。
ねらわれた私を守ろうとして、治崎さんがまぶしいのにまきこまれた。きんぱつのひとにだっこされてても、はなれた所でも、すっごくあついって思った。
────────私、の…
「!?ダメだ、壊理ちゃん!!!!!」
きんぱつのひとが、何か言ってる。
「行かせねぇよヒーロー気取りィ!!!女脳無、生きてるか!?俺の声聞こえるか!?そいつ拾え!!!」
悪い人も、何か言ってる。
でも、それどころじゃなかった。
治崎さんは「のうむ」の隣で、まっくろになってたおれてる。
たすけなきゃ。
私が、たすけなきゃ。
大きらいな、私の個性。
治崎さんを、たすけられるかもしれない個性。
お願いします、かみさま。どうか私に、あの人をたすけさせてください。