その後、千雨の働きかけなどもあり、壊理と治崎は雄英高校に所属することになった。前者は一時的な保護という名目、後者は用務員という名目になっている。
「なんだか……凄く長かったように思えました」
「…そうだね。少し色々と起きすぎたよね」
ナイトアイ事務所で会話を交わすインターン生2人。あれからもインターンは続き、本日が出久のインターン終了期日であった。
「でも、インターンでのことはちゃんと緑谷くんの成長の糧になったと思うよ。来たばっかりの時よりずっと頼もしくなった」
「……ナイトアイにも、そう思ってもらえてるんでしょうか」
「それは今から分かるってもんだよね。さあ、行っておいで」
「…はい。通形先輩、ありがとうございました」
ミリオに礼を述べ、出久が向かうのはナイトアイ事務所の一室。インターンの最初にナイトアイと出会った、あの場所だ。
「デクです」
「入れ」
許可を得て部屋に入る。当たり前というべきか、中にいたのはナイトアイ1人だった。
「まずは、インターンご苦労だったと言っておこうか。期間中、お前はしっかりと自分に出来ることをやった。自分がすべきこともした。ヒーローとしては、十分及第点と言える働きだったぞ」
「…はい。ありがとうございます」
出久の活動を評価するナイトアイ。そのことはもちろん嬉しい出久だが、真に知りたいのはもう1つの評価の方だった。
「………そして。OFAの継承者としての、評価だが……。…正直な所、まだお前以上の適任が居るのではないかと思うこともある。それでも……相応しいかどうかというのであれば、相応しいと言うべきなのだろう」
「!!」
「あの日壊理ちゃんを守り、キュレートスを打ち破ったお前の姿…今も鮮明に思い出せる。あれ程に眩い光こそが、私がオールマイトの後継者に…これからの象徴に求めたものだった」
ナイトアイは、既に出久のことを認めていた。未来を覆す姿こそ見られなかったものの、あるいはキュレートスとの戦いにて知らぬ間にそうなっていたのかもしれない。最早確認する術はないが、彼の中にあった出久が後継者であることへの異存は綺麗さっぱり無くなっていた。
「お前は…確かに私を認めさせた。そのことを頭に入れて、これからも励め。期待している」
「……はい!!ありがとうございました!!」
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「そうですか……コンプレスたちは喋りませんか」
『ああ。彼ら、思っていたより強情らしい。死柄木のことも随分と買っているようだ』
「まあ、仕方ないでしょう。どのみち死柄木はもう元の場所には居ないと思いますし」
一方で千雨はオールマイトと共に死柄木の動向を探っている所だった。連合は連合で仲間意識があるらしく、捕らえた2人はアジトの場所を話す素振りを見せないでいる。
「こっちが割り出した脳無工場も全部引き払われてしまいました。完全に手詰まりです」
『……ダスト。ところで、なんだが…2人は死柄木の居場所は話さなかった。けどね、コンプレスの方がちょっと気になることを話していたみたいだ』
「気になること…?」
相手の発見に役立つ情報ではないようだが、得るだけ得ておきたいとオールマイトの声に耳を傾ける千雨。
『ああ。────「死柄木は弱くなってる」。そう言ったと聞いているよ』
「……どういう意味でしょうか?」
『いや…私にはよく分からない。けど確かに、USJで奴と戦った時には脅威を感じた程だったというのに、林間合宿の時や今回は大して目立っていないというのは不自然だ。弱くなっているというのは、そういうことじゃないかな……何か君の記憶に思い当たる節は無いのかい?』
「………いえ、特には…」
『そうか…まあとにかく、何か分かったらまた連絡するよ。それじゃ!』
「はい。お願いします」
千雨にもよく分からない死柄木の弱体化。不気味な感覚を味わいつつも、彼女は自分なりの推測を組み立てていく。
「(強くなるというのならまだ分かるけど…弱くなるとはね。成程、USJでオールマイトを捌く程の実力がありながら転弧くんと当時の美智榴ちゃんに追い詰められたのはそういうことか。可能性としては────既にAFOそのものを移植されてて、定着しきっていないという説。マスターピース手術の失敗という説。そして、個性による何らかの反動という説。このぐらいしか思い浮かばないな……。2つ目はまず無い。キュレートスとあの女脳無は別として、碌な脳無を生み出せない今のAFOがマスターピースを作ることなんて出来る訳がない。それなのに手を出す程向こうも馬鹿じゃないだろう。1つ目も考えにくい…AFOの複製は私が多分塵にしてしまった筈だ。1つしかない自分の個性を継承するには死柄木ではまだまだ未熟すぎる)」
どうにか知恵を絞って納得のいく理由を考える千雨。しかしながら、事態は既に動き出していた。
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「先生…!!どうしてこんなことになるんだ…!!?全部あんたの言う通りにした!!あんたの助けに従った!!なのに全く上手く行かねぇじゃねえか…!!!」
「葬。心配は要らないよ?僕の目的はちゃぁんと達成された。君を次の支配者に育てるという目的は、ようやく一区切りついたのさ」
「…何だって……?本当かよ?俺自身は全然そんな気しねえけどな」
日本の何処か。死柄木はAFOに随分な態度で接している。対してAFOはあくまでも余裕があるといった様子だ。
「大丈夫さ…今の君になら、力を授けてやれる。この世界を全部ひっくり返すことだって出来る程の、とっておきだよ」
「……!」
死柄木に力の譲渡を仄めかし、笑みを深めるAFO。当然死柄木も千載一遇のチャンスに飛びつかずにはいられない。
「嘘じゃねえよな?これでショボい個性でも渡してきた日にゃあんたを軽蔑するぜ?」
「ふふふ、安心するといい。きっと…気に入るからね」
死柄木の頭に掌を置き、個性の譲渡を始めるAFO。終始態度とは裏腹に自分を信用しきっている彼に、AFOは愛しさすら覚えていた。
「(葬……本当に、君を選んで良かった。