「オールマイト。出久くん、『覚醒』しましたか?」
『ああ。最初は寝ている時に暴発する形だったそうだが、本格的に使えるようになったのはこの間のB組との合同演習の時からだね。突然様子がおかしくなったから心底驚いた……すぐに制御出来る様になっていたから良かったけれど。君がアドバイスしておいてくれたんだろ?』
「まあ、そうですね。役に立てたようで何よりです」
年が明けて。出久の2度目のインターンが始まったこの機会に、千雨は最終確認をとっていた。
『OFAの覚醒するタイミングと発現する個性は、君の記憶通りだったのかい?』
「はい。A組とB組の合同演習の際に、5代目『万縄大悟郎』さんの『黒鞭』が完全に発現。それ以前の暴発…初代との邂逅も記憶通りです。出久くんの成長速度は本来よりも相当速いので、どうやら鍵となるのは継承されてきた歳月だったようですね」
オールマイトたちには、既に歴代継承者の名前やおおよその経歴などを伝えてある。特にそれで何かが大きく変わるということもないだろうが、共有すべきだと考えた上での行動だった。
『ふむ……ちなみに、敵連合の方は本来ならここからどう動く筈だったんだい?』
「………連合はデストロのシンパ『異能解放軍』と接触、紆余曲折あってこれを併合。さらにギガントマキアを従え、死柄木弔は殻木によってマスターピース適合手術を受けます。そして4ヶ月後、『超常解放戦線』と名を変えた彼らによって日本は壊滅状態に追いやられ、タルタロスに幽閉されていたAFOも他の凶悪ヴィランと共に脱獄。死柄木までもAFOの意識を宿し、それはもうとんでもないことになっていましたね」
『…オーマイガー……言葉が出ないな』
千雨の答えにショックを隠せないオールマイト。彼自身、それ程までに凄まじい悪夢が待ち受けているとは文字通り夢にも思わなかったようだ。
「対して現在、連合は残るは死柄木葬ただ1人。異能解放軍も……昔ちょっと釘を刺しておいた甲斐もあってか、特に怪しい動きは無いようです。殻木もギガントマキアも居ない今、AFOが使える強力な手駒はもう残っていないでしょう。唯一警戒すべきなのは、以前現れた女脳無ですが…オールマイトなら決して勝てない相手ではないと思います」
『……改めて、君が居てくれて、君がヒーローであってくれて本当に良かった。ここまでAFOを追い詰められたのは、奇跡という他ない。ただ、変化が大きすぎて奴の次の動きが予測出来ないね』
「AFOが記憶程の後遺症を残していなかったのも少し怖いですね。本来なら人工呼吸器をつけていた筈ですが、合宿で見た限りそれはなかった。もちろんその分貴方がまだまだ戦えるという点で釣り合いは取れていますが」
「原作」との乖離を今一度確かめながら、千雨はAFOの行動を推測する。
「……可能性として、AFOが海外に逃走してしまうということは十分あり得ると思います。
『…うん。そうだね……その可能性は確かに高い。…本来事が起こる筈だった4ヶ月後まで何の音沙汰も無ければ、全世界のヒーローたちに警戒と捜索を促すよう政府に掛け合ってみるよ』
「…………流石のスケールですね、ナンバー1。とても真似できませんよ」
AFOの包囲網を世界中にまで広げると事も無げに言ってのけるオールマイトに驚嘆の意を表する千雨。その後もいくつかお互いに確認を行いながら、その他の可能性も模索する2人。
決戦の時は近いと……漠然とした確信が、彼らにはあった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「学校で培った物を…この最高の環境で、体になじませろ」
「最高はオールマイトだろが」
「…実はオールマイトは教えるのが下手だ」
「知ってらァ!」
「か、かっちゃん…」
出久が今回インターンに来ていたのは、エンデヴァー事務所。轟、そしてついに仮免を取得した爆豪と共に、ナンバー2の元で更なる成長を目指している真っ最中だ。
「とにかく!安心して失敗しろ。お前たちの失敗など、このエンデヴァーがいくらでもカバーしてやろう!」
「はい!」
ナイトアイ事務所でのもの以上に鮮烈で目まぐるしい活動。3人は己の限界を急激に超えていく感覚を味わいながら、日々エンデヴァーを追い越すつもりでインターンに励む。
同時にエンデヴァーも、少年たちがめきめきと頭角を顕していく様子に次世代への心強さを感じていた。
そして、1週間後。
『あ、もしもしお父さん?今焦凍とお仕事してるんだって?お友達も一緒らしいじゃない!何で教えてくれないの!?お母さんも話聞いてからずっとソワソワしっぱなしでさー…ふふふ、もう面白いぐらいなの!ねえねえ、今日よかったら皆も連れて来てよ!2人でお夕飯、ふんぱつしちゃうから!』
エンディングは居ません。千雨が鷹見父をさっさと捕まえてしまったので。