すべては君のために   作:eNueMu

99 / 113

※一部燈矢視点


GOトーヤ

 

 炎が収まらない。どんどん熱くなって…俺の身体が焼け焦げていく。

 

 なあ、見てくれよ父さん。俺はこんなにも────

 

 「あっつい…!!全然役に立たないじゃないかドライアイス!!!おい、頼む!!!返事してくれ燈矢くん!!!」

 「────え?」

 「!!良し、OK!!!ほらこれ、冷たいけど…いや痛いけど我慢してくれよ!!!」

 

 ────何だよ、コイツ。どっから来た?

 

 やめろ。俺の炎がンなもんで消えるかよ。父さんだって敵わない、最高の力だ。

 

 「ああもう!!!なあ、おい!!!止めてくれ、この火!!!死にたかないだろ!!?」

 「……別、に…」

 

 構わねえよ。丁度生きてる意味が分かんなくなってきてたとこだ。…そら、意識も、薄れて────

 

 「!?……き、消えた…!?………いや、これは…酸素が無くなって…!そうか、『原作』でもこうして生き延びて────」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 結論から言えば、俺は死ななかった。

 

 「…ん…?……俺、何で」

 「何でも何も無いよ。危うく私まで死ぬとこだ…。とりあえず、ありがとうとごめんなさいぐらいは言ってくれよな」

 「…誰も救けてくれなんて」

 「言ってたよ。君のお父さんがいい歳して泣き喚きながらさ」

 「……父さんが…?」

 

 さっさと俺を見限った筈の親父は、存外家族の情はあったらしい。ガキってのは素直なもんで、9割方イカレてた俺の頭はその言葉で何とかまともな方に引き返せた。

 

 「…つか、お前誰だよ」

 「別に知らなくていいよ。それに、名前聞くより私の火傷を心配して欲しいね」

 「……お前が飛び込んで来たのが悪い。第一火傷は俺もしてる」

 「酷いなぁ。そんなんじゃヒーローにはなれっこないね」

 「はぁ…?何でそんな…」

 「いやいや。ヒーローは強いだけでなれる訳ないだろう?他人を思いやる気持ちが何よりも大切なのさ」

 

 きつい冗談だと思った。俺にとってのヒーローってのは、親父みてえに家族すらも利用する人間のことだったから。

 

 「…父さんはそんな気持ち持ってない」

 「さて、どうかな………今回、君は逆の立場ならお父さんのために泣き喚けたかい?」

 「……」

 「ほーらね」

 「お前…!!さっきから俺のこと馬鹿にしてんのか…!?その気になれば俺の炎で…」

 「そんなことしたら落っこちて君も死ぬけどね」

 「は……うわ!!?と、飛んでる!!」

 「遅すぎない?」

 

 見れば、足元には今も燃え続ける山があった。背負われてることに意識が向いてたせいで、視点の高さには中々気付けなかった。

 

 「………今だってすぐに人に手を出そうとしたろ?君、根本的にヒーローに向いてないと思うよ」

 「…五月蝿い。もう誰に何と言われても俺は……がッ!?」

 

 飛んできたのは後頭部の頭突き。額に入ったそれは、今までのどんな火傷よりも痛みの余韻を残した。

 

 「ヒーローになってどうしたいんだい?どうせお父さんに見て欲しいとかそれだけだろう?………君には君の価値がある。ヒーロー以外にも、いくらでも道は転がってるよ」

 「…お前に俺の何が分かるんだ」

 「君の事なんて何も分からないよ。だって君自身にも分かってないんだから」

 「……はあ?」

 「『エンデヴァーの息子』『ヒーローの卵』。そうやって自分のことを限定しすぎだよ。もっと他にも色々あるだろう。まだまだ子供なんだから達観したような事言うのはやめな」

 

 似たような台詞は、腐る程聞いていた筈だった。けれど、頭突きの余韻で揺れた俺の頭には、やけに深く突き刺さった。

 

 「ほら、お父さんたちが見えて来たよ。まずは仲直りするんだ。全面的に悪いのはまあ向こうかもしれないけど、君も迷惑かけたのは間違いないからね」

 「…チッ。分かったよ…だからとっとと降ろせ」

 「ここから?」

 「ば、馬鹿か!?ンな訳無えだろうが!!?」

 「あはは、はいはい。……もう、死にたくはなくなったかな?」

 「……知るか」

 

 今もあの日の記憶は、全身の火傷と共に俺という人間に焼き付いている。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「何でだ!!!」

 「姉さんが飯食べにこいって」

 

 轟家前。エンデヴァー事務所にインターンに来ていた出久たちは、轟の家族に誘われて夕食に同席することとなった。

 

 「忙しい中お越し下さってありがとうございます!初めまして、焦凍がお世話になっております!姉の冬美です!」

 「母の冷です。今日は皆、ゆっくりしていって頂戴ね」

 

 玄関で彼らを出迎えたのは、轟母「冷」と轟姉「冬美」。またそれに加えて靴を見た轟が、姉たちに確認する。

 

 「夏兄と燈矢兄も来てるんだ」

 「ええ、冬美が呼んだの」

 「家族で焦凍たちの話ききたくて」

 

 「燈矢兄…ってことは、ひょっとして…!!」

 「…ああ、まあな」

 

 彼らの会話の中に出てきた人物の名前に反応する出久。轟自身も何かしらの心当たりがあるのか、気まずそうにしながらそれに応じる。

 

 

 

 そして、タイミング良くと言うべきか…話題に上がった人物が登場した。

 

 

 

 「よぉ良く来たなァ焦凍のお友達諸君!!!今夜は我が家で俺と踊ろうぜ!!!」

 「わあああー!!!超有名動画配信者『GOトーヤ』!!!本物だああ!!!本当にエンデヴァーの息子さんだったあああ!!!」

 「……誰だ」

 「俺の兄貴だ」

 

 轟燈矢…職業、動画配信者。チャンネル名は、「GOトーヤ【エンデヴァーの息子】」。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。