追い掛けられます、25人も…。
(竜騎視点)
「待て~~」
「待~て~」
「もう来てるし…」
えっと、只今逃げている竜騎です。え?何で逃げてるかって?ガルパ25人の内、2人に追い掛けられてます。その2人とはアフグロのモカっちとつぐみん…。
追い掛けるまでのお願いって何だろうなぁ…まぁ、大方予想出来るのはコーチになって欲しいと言うオチだろうけど…。
「リューさ~ん、モカちゃんと美味しいパン巡りしよ~よ~」
「竜騎先輩~!毎日一緒においしい珈琲飲みましょうよ!羽沢珈琲店の跡取りとしてー!」
「今日は一緒においしいメロンパンを食べたいの~!世界で二番目においしいメロンパンなんだよ!」
「メロンパンにはやっぱりブラックですよねー!」
完全にバンドと関係無い私情だわコレ。むしろ世界で二番目においしいメロンパンって…そっちの方が気になってくるじゃないか。
後、つぐみんはブラックを飲むのは苦手なんじゃ…。
「悪いけど、さっきも言った通り用事があるからパスだって!」
「ええ~…パンよりおいしいものってなんですかぁ~?」
「先ず、食べ物じゃない!」
「珈琲の事ですよね~!」
「珈琲の話でもないし!」
俺はカードショップに行くとは言ったけど、パンや珈琲の話は1つもしてない!
「パン巡り世界一周はどうするんですか~?」
「何かグレード上がってる!?」
「跡取りはどうするんですか~~?」
「俺は何時から跡取りになった訳!?」
『待て待て~』と言って追いかけてくる割に、二人の足は遅い。言ってることは凄まじいが、何とか逃げ切ることが出来そうだ。メロンパンの下りは凄く気になったが、それも“作戦”かもしれないし、そんなキャッチフレーズなら検索したら出てくるかもしれない。
と、思考したのもつかの間、勢いよく手を広げた影が現れる。
「っと、アブな……っ」
「見つけましたよ、竜騎さん」
「こっちに来るの待ってましたよ!竜騎さんはあたしたちアフグロが美味しく……あっ?!」
「悪いけど、捕まる気は根も葉も無い!」
目の前に飛び出す蘭とトモ。しかし、俺は道路脇のガードレールに軽く足を乗っけると、二人の頭上をジャンプして乗り越えてやった。
これでもパルクールには自信があるんだよね。
「ほえ~、運動神経も良いんだなぁ」
「凄い…」
軽やかに街の構造物を使って逃げていく俺に惚れた様な視線が追いかける。まあ、視線なら捕まっても良いとしよう。物理的に捕まらなければだけど。
「じゃあ、竜騎先輩が私を美味しく頂くのはどうですか?」
「…………」
「ふええええっ!?無視!?」
「…………」
「うわあああん、竜騎先輩に無視されたぁああ!(泣)」
うーん、見えた…確かに見えた。大きな二つのアレを両手に抱えたマリの姿が。肌色の……ナンだったカナ?眼の端にプルンとしたモノが見えたが、俺は構わずスルーして走り抜ける。危ない危ない。またリサが暴走する可能性が大きいから、敢えてスルーするしか無い。
それにしてもマリのアレはいつ見ても発育の権力である。普通の男子であれば間違いなく様々な願望を抱くところだろう。大きければいいってものでもないが、大きなアレに包まれるのはなんとも――――げふんげふん…ここまでにしておこう…。
「蘭~、“私のおっぱいで竜騎先輩ホイホイされる”って言ったじゃん~!」
「うーん、流石は竜騎さん……ひまりのおっぱいも通用しないとは…(大方、リサさんが後から怖いからだな…)」
「やっぱり~、ホットドッグを挟めば良かったかな~?」
「ここは…やはりもっと過激にぎょ、魚肉ソーセージ……とか////」
「うう……フォローになってないよぉ……何で魚肉ソーセージなの?」
「でもカリスマデュエリストの竜騎先輩が、そんなホイホイに引っかかるかなぁ?」
「デュエリスト関係ない気がするし……全然フォローになってないよぉ~……」
後ろの方で僅かと言えど、とんでもない内容が聞こえた気がする…。兎に角、今は逃げるに限る。
―――――それにしても…大きい、よなぁ。
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「ふぅ……折角の休日なのに、大分予定が変わっちまったなぁ」
俺は隠れてスポーツドリンクを飲んで一息ついている。
「目的地のカードショップまで行けば、後はコッチの物だ…。さて、此処からどう動くかな…」
アフグロ以外のメンバーはまだ出て来てない。何時出て来るかも分からない状況…。そう考え込んでたら…
「ふえぇ、ここどこぉ……?」
何か聞き覚えのある声…どころか前回も似た光景があった。そう、ハロハピのカノちゃんだ…。
また迷子になってるんだなぁ…って、俺も逃げてる最中だからそんな場合じゃ無いから、此処は申し訳無いが知らないフリしてやり過ごそう…。
「あ、竜騎君~!」
「う…」
よりによって見つかったわぁ…。
「こんな所でどうしたの…?(汗)」
「それがね…美咲ちゃん達と一緒に居たんだけど、何時の間にか逸れちゃって…」
やっぱり究極と言う程に方向音痴だなぁ。でも、まぁ…嘘を言う性格では無いと思いたい。
「まあ、カノちゃんなら邪悪なものを感じないし……」
「じゃ、邪悪って何……?」
「あー…いや、ごめん。ちょっとこっちの話……」
そう思ってた。だが、それは考えが甘かった…。
「てぇい!!って、あれ?」
パスパレのチサが巨大な虫取りアミで上から襲って来た。
「流石にこれは心が痛むぞ、チサ……」
「これは私達パスパレと、ハロハピの共同戦線です!大人しく捕まってください!」
「やだよ」
「即答しないで下さい!」
「千聖ちゃん、ちゃんと捕まえないと…」
「カノちゃんの迷子が今回に限って…」
「ご、ごめんなさい…。でも、どうしても竜騎君と一緒に過ごしたくて…」
「大丈夫よ花音、今から竜騎も一緒にBBQをするから!」
「……しまった…」
何時の間にかパスパレとハロハピに囲まれていた。そう言えば共同前線って…言ってたなぁ。
「流石に竜騎君でも、この状況は勝てないと思うよ?」
「やったね!リー君を捕まえたよ!」
「今ね、すっごく“るんっ♪”と来てるよ~!」
「俺は全然ルンルンじゃないけどね…」
ハロハピは純粋にBBQだと分かってるけど、パスパレは分からないまま。と言うかアイドルが一般の男と居て大丈夫か…?(汗)
「さぁ師匠!観念して下さい!」
「何をもう勝った気で居る訳?」
「え?」
「おや、どう言う意味だい…竜騎君?」
「そのままの意味だよ」
ふふふ、俺が何の対策もしてない訳が無いじゃないか…。
「お、オシショ―様……この状況で虚勢を張るのは往生際が悪いですよ?」
「ふふふ…実はさ、さっきこの辺りに“罠”を仕掛けたんだよね」
「「え!?」」
俺が罠を仕掛けたと言うと、当然驚く。
「ど、どんな罠を仕掛けたんですか!?」
「あ~、罠にも色々あるから種類を忘れたなぁ…。でも、彩の足元辺りだった気がする」
「えぇ!?よ、よりによって私なの!?」
彩が涙目で動揺してる。そりゃそうだ…何が起こるのか分からないし恐怖でしかない。
「まぁ、動かなければ発動しないと思うよ?」
「どどどどど、どうしよう千聖ちゃん!?」
「彩ちゃん落ち着いて…ハッタリと言う可能性もあるわ!」
チサが落ち着くように言うが、惑わす作戦は上手く行っている。
「じゃ、発動!」
「えぇ!?」
「うわあああ!?」
俺が発動と言ってボタンを押すと、彩達は悲鳴を上げる。
「…………あれ?」
「何も…起きない……?」
「あれ?何か出てきましたよ?」
イヴっちがそう言うと、カードがヒラヒラと振って来た。ヒナナはカードをキャッチして確認した。
「え…これって…」
カードには“偽物のわな”と書かれていたカードだ。そう、完全にハッタリだ。(ニヤリ)
「完全に竜騎さんの策に嵌った様ですね…」
「あー!リー君にも逃げられてる!」
「ふふ、見事に彼の策に踊らされてたと言う訳だね…儚い」
「そ、そんな~(涙)」
見事に俺の策に嵌められたパスパレとハロハピ。彩は見事に引っ掛かってしまった…。
「彩ちゃん?覚悟は良いかしら?」
「彩、私も笑顔になれないわ?」
「え?私…被害者なんだけど…」
「彩さん!こう言う時は“切腹”です!」
「イ、イヴちゃんまで~!謝るから…ゆ、許して~!」
その後、彩がどうなったか……俺は知らない←
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「ここまで来れば大丈夫か……?」
どうにか人通りの少ない路地裏に逃げた俺。逃げ続けて時間も経った…。全く、休日がどんどん削られてしまうじゃないか。まぁ、元を正せば俺も最初にポピパの誘いを上手く断らなかったのが原因だがね…。
まぁ、一先ずは大丈夫と思う。
「いや……」
大丈夫なワケはないだろう。思い返してみれば、ここまで来て出逢ったのはアフグロとハロハピ、パスパレの面々だ。ということは………
「竜騎せんぱぁあああああいっ!!」
「うおっ!?」
やはり、ポピパとRoseliaが追いかけてこないのが気になっていた。なにより、今まで一度もリサと出会わないのが少し怖いくらいだ。
「まさかの2回目の頭上とは…」
この路地裏で一体どこから落ちてきたんだか。ダイブしてきた香澄を避けて(意外にも香澄の着地は華麗だった)、路地の壁越しにじりじりと進む。目の前には、こちらもどこから湧いて飛び出たのか、おたえと有咲だ。
「竜騎先輩、私たちは一味違いますよぉ」
「ハッタリも何も効きませんから!」
「覗き見でもしてたの?」
「「ふふふ~」」
一定の距離を保ちつつ、先に進む。すると、沙綾とりみも近くの道路から加わってきた。
「ようやく見つけましたよ!」
「竜騎先輩、一緒に幸せな生活を送りましょうね」
「幸せな生活…?」
いやいや、さっきは何か用事があるから一緒に来てくれって話では無かったか?当初の(そもそも当初の目的とは何だったのか未だに謎である)目的とはかけ離れ、もはや願望に突き動かされた香澄ちゃん達にツッコミが追い付かない。こういうときの頼りであるブレーキ役有咲も、今は“あちら側”だ。
「ちょっ、幸せな生活ってなんだよ!?」
「抜け駆けは許さないよ~?」
「そうそう!竜騎先輩はポピパで仲良く分け合うんだから!」
「いや、ヒトを買ってきたケーキみたいに言うなー?おーい?」
げんなりとヤジを飛ばすが、ポピパの面々はどんどんとヒートアップしていく。
「大体、私たちで捕まえたとして竜騎先輩をどうやって独り占めするの?」
「おたえ、そんなの順番に決まってるじゃない?」
「はあ?日替わりでなんて無理だろ?」
「有咲~、さては竜騎先輩を独り占めしようとしたな~?」
「っそれなら沙綾とりみだって……」
「だ、だって…竜騎先輩とイチャイチャしたくて…」
あれ……――――仲間割れ?
「うーん……」
今のうちに逃げるか。
「そろりそろりっと……」
ある意味では盛り上がっているポピパの横を、気配を殺して通り過ぎる。こういう時に黒い服を着ていて良かったと心底思った。
「だから~、まずは順番に……って、あああしまった!!」
議論がひと段落ついた時にはすでに時遅し。竜騎の影はもうなかったのだった。
「有咲の所為で逃げられた」
「私だけの所為かよ!」
「と、兎に角、竜騎先輩を追い掛けるよ!」
「「おー!!」」
ポピパ、“ふりだし”に戻る。
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さぁて、何か気配を感じる…そう、知ってる気配がね。
「待ってたわよ、竜騎」
「ゆき……」
「おにーちゃん、観念するのだ!」
「竜騎さん、諦めてくださいね。Roseliaから逃げられると思っているんですか?」
「思ってるよー」
「アッサリ言わないで下さい!」
「私たちこそ…竜騎さんに、ふさわしいってこれで…証明、できますよね?」
「っていうか、何持ってるんだ……ソレ?」
「ふっふっふ、これは黒竜を捕縛するための特別な道具なのだ!」
いや、捕縛に“筆”や“鞭”は必要なくないか?
「捕縛して何をするつもりだよ……」
「それはもちろん、オタノシミ?」
「いや、怖……」
「大丈夫です、ヤサシクします」
「そうじゃなくて……」
「ふふふ…」
「りん…(汗)」
優しくしてくれるというなら、なら目の前の目的地へ早くたどり着くご褒美をくれ。俺が新カードパックを予約したカードショップはもう目と鼻の先だ。できれば早めに行って、せめて予約分だけでも引き取りたい。しかし、ゆきや紗夜は縄やら鞭を持ってるし、あことりんは筆やら手錠やらの拘束具を持っている。まったく、捕まえて何をするつもりなんだ、本当に…(汗)
……――――――というか、絶対リサの影響に違いない。
「「「「ふふふ」」」」
「いや、本当に怖いって……」
にじり寄る影、流石の俺もじりじりと袋小路へと追い詰められている。しかし、ふとした“違和感”が竜騎を襲った。
「アレ?そういえば……リサは?」
「えぇ、いつの間にかいなくなってて……」
「また一人で竜騎さんのこと張ってるのかも知れませんよ?」
「この先にさらにリサが居るのか……」
「ねえ、この状況で“突破”できると思ってるのかしら?」
「思ってるじゃなくて、するんだよ」
俺は強気にゆきの質問を返す。そんな時だった…
「きゃ……っ?」
「なにこれっ煙?」
「ひゃあっ火事?どこどこっ?」
「皆さん、落ち着いて下さい!」
どこからともなく湧いた消火器のような煙。ちょうど舞台のスモークのような濃厚な白い靄に視界を奪われる。
『マイロード!こちらです!』
「!……っドラゾー?」
微かなホバリング音とともに、確かにドラゾーの影が目の前を横切る。思いもよらない助っ人だが、逃げるなら今しかない。
「い、今のは…ドラゾー、さん…?」
「な、何故ドラゾーが…?湊さん、追い掛けましょう!」
「あぁ…」
「友希那さん、どうしたんですか?」
俺とドラゾーを追い掛けようとした紗夜達だったが…ゆきの足元には…
「にー」
「あぁ……ムーナちゃん」
「にー?」
竜騎の飼い猫、ムーナが友希那の足元から見上げていた。
「にーにー」
「あ、遊んで欲しいのねムーナちゃん。勿論、遊んであげるから」
「み、湊さん!?」
ムーナの愛くるしさに魅了されたゆきによって、動きを停止した事で足止めとなった。
「ありがとな、ドラゾー。助かったよ!」
『は、はい……』
「ん?そんなに震えてどうしたんだ?どこか故障か?」
『いえ、そうではなく……』
煙とゆき達の包囲から脱出し、ドラゾーとともに別の道へと駆け込む。しかし、せっかく近づいたカードショップが遠のいてしまった。
「でも、本当に助かった。少し遠回りだけど、これでカードショップに―――――……」
「りゅーき?」
一難去ってまた一難、というより凍るような背筋の寒気。
「り、リサ……」
ちらりとドラゾーに視線をやると、申し訳なさそうに空中をうろうろしている。まさか……
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(回想)
「さて、私達も追い掛けましょう!」
「はい…、竜騎さんは、私の…ですから」
「よーし、頑張るぞ~!」
「竜騎と一緒にムーナちゃんと……」
俺を追い掛ける際に、何故かリサはまだ動いて無かった。その理由は…
「ねぇ、ドラゾー?」
『は、はい?』
「竜騎を捕まえるのに、アタシに協力してくれるよね~?」
『え?…私はマイロードから“留守”を任されてますので…。それにムーナの事もありますし…』
「大丈夫!ムーナにもお願いしたい事があるしさ!ムーナ、友希那達が遊んでくれるってさ♪」
「にー♪」
「と言う訳でドラゾー?協力してくれるよね?竜騎の未来のお嫁さんからのお願いだよ☆」
『あの~…私は紗夜様一筋なので……(汗)』
「あ、もし協力を断るなら……“塩水が入ったバケツに1日中閉じ込めるから…?」
『ひ、ヒイイイ!?それだけはご勘弁下さい~!?』
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「ドラゾー、ありがとうね★」
『は、はいぃいい……(泣)』
「ドラゾーを巻き込むな……しかもムーナまで(汗)」
「でも皆から逃げれて良かったでしょ?」
ぐい、とリサに腕を掴まれ、この鬼ごっこが幕を閉じたのを悟る。
「ふふ、Roselia全員で竜騎を好きにするっていう計画だったんだ~、そしたらいつの間にかポピパとかアフグロまで来ちゃってどうしようかと思って……でも、竜騎がアタシにつかまってくれたから満足~♡」
「う、うん……」
雰囲気は至って楽しげだが、リサの眼は笑っていない。到底俺には彼女の腕から逃れられる術などなかった。
「元々は友希那の計画だったんだけど、アタシは竜騎を他の人と共有しようなんて思わないから。アタシの竜騎なんだし……」
アタシの、という所と腕に力が篭るのが分かる。
「わかってるって……」
少しばかりあやすように言うが、リサはふん、と鼻を鳴らした。
「でもあんなにいっぱい追いかけられて楽しそうだったのは許さない。帰ったらたっぷり“調教”してあげるんだから」
「っ……帰ったらって……俺これからカードショップに……」
「アタシとカード…ドッチガ大事ナノカナ……?」
「きょ、今日は…」
「カードッテ言ッタラ…分カッテルヨネ?」
「も、勿論リサだよ……(汗)」
「そうだよね~♡」
ダメだ、今のリサには伝わらないんだろうなぁ。心の中で深く息を吐いていると、パタパタと足音が響いてくる。
「あー、おにーちゃん見っけ!」
「こんなところに居た……それにリサも」
「にー」
「……っち」
おいおい。リサの口から洩れる舌打ちに苦笑する。
「ありがとね、リサ。流石、竜騎を捕まえるなんて」
「流石?アタシはアタシのために捕まえたんだから、今日はもう終わり」
「終わり…?」
燐子が眉を寄せるも、リサはさらりと付け加えた。
「そ、アタシこれから竜騎とオタノシミだから」
しかし、流石の友希那もその言い分には納得できないようだ。
「リサ、話が違うわよ」
「リサ姉、あこ達を裏切るの!?」
「今井さん、まさか、最初から…」
「別に裏切るとかじゃないし、最初から竜騎はアタシのものだし」
「それが話が違うって言ってるんです!」
「にー?」
尚も食い下がる友希那達だったが、リサは鬱陶し気に一瞥するだけだった。
「話なら違わないんじゃない?そもそも“最初に竜騎を捕まえた人が好きにできる”ってことだったじゃん」
「でもそれは計画の……」
「計画はその前の話でしょ?だからみんな“争奪戦”に参加したんだよね?」
「リサ……」
「とにかく、今日の優勝はアタシ。それで間違いないんじゃない?さ、“ヴァレルロード・ドラゴン”、アタシたちを送って?」
「おまっ……いつの間に……」
本当、いつの間に俺のカードとブラックヴルムを抜いたのか。鋼鉄の身体を持つ俺のエースモンスターが唸り声をあげながらリサの命令で俺と彼女を連れ去っていく。
「ふふ、こういう時にデュエリストって便利ー、アタシも竜騎に教えてもらおっかなぁ……こういう時便利だし★」
どんどんと遠ざかるRoseliaのメンバーを残し、俺は今度は自分が“ふりだし”に戻るはめになったのだった。うん、今日カードパックの中身を拝むのは無理そうだな。
「…………はぁ」
誰にも聞こえない小さなため息が、風の中に消えていった。
(竜騎視点END)
第19話:完
「竜騎と…」
「リサの…」
「「今日のカード紹介コーナー!!」
「今回は“クイック・リボルブ”!」
「デッキからヴァレットを1体特殊召喚だね!」
「ただし、攻撃は出来ずエンドフェイズに破壊されるんだ。リンク召喚やスクイブ・ドローで上手く繋げよう!」
「速攻魔法だから、伏せていれば相手のターンでも使えるね!」
「次回、西日本の歌姫!……4年ぶりに会うなんて…」
オマケ
『はぁ…やっと終わりました』
「ドラゾーさん、何故、邪魔をしたのですか…?」
『え?』
後ろには紗夜とあこ、燐子が黒いオーラを放っていた。
「まさか、ドラゾーに邪魔をされるとは思いませんでした」
「そうだよ!何でなのドラゾー君!?」
『わ、私は紗夜様に協力したかったのですが…今井様に……』
「ドラゾー?覚悟は良いですね…?」
『い、いやああああああああ!?』
その後、ドラゾーは無事(?)に帰って来たと思う…そう思いたい。
「ムーナちゃん…」
「にー」
友希那はムーナと遊んでいた。
ご観覧、ありがとうございます!
次回は少しの間、シリアスに入ります。