ボンバーガール性癖スレに投稿する用   作:名無しのマスターさん

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シロと冬

ひどい頭痛と吐き気、人生この上ない最低の気分と共に目を覚ます。

全身がバキバキという効果音と共に悲鳴を上げて、いたる所から痛みが生じる。あぁ、畜生。

昨日の自分を全力で呪いたくなる、阿呆かよ?もうちょっと抑えとけやと。

 

まぁ要は、ひどい二日酔いという奴だ。

 

あーイテテ。なんて呻きながら上体を起こす。

ちょっと力むだけで頭をズキン!という鋭い痛みが突き刺す。あぁほんと畜生。

 

まだ半分ぼんやりとした頭で、目の前の惨状を見ながら昨日のことを振り返る。

昨日は、寒くなってきたからとシロが言うので、押し入れから炬燵を引っ張り出して構え、

二人してあーでもないこーでもないと言いながらスーパーで材料を買ってきて、結局すき焼きにしたのだった。

明日明後日は2連休、死ぬには良い日だと、ついビールやら何やらがぶ飲みした。その結果が今のこの様だ。

シロも意外といけるクチで、パカパカ飲んでいたから、

今は炬燵の向かい側にうつ伏せで横たわる彼女も、目覚めた時には酷い事になるだろう。

 

炬燵の電源を入れっぱなしだったからか、酷く喉が渇いていて、上半身だけやたらと寒く感じる。

炬燵で寝るといつもこうだ。風邪をひくのもさもありなん。

 

昨日の片づけ、というものは一旦頭から追い出す。シロが起きたら二人でやろう。

鍋、カセットコンロ、食い残しの数々に、各種酒の空き瓶空き缶、そのほか諸々。

今は見ているだけでげんなりする。

 

痛む頭をおして、気合一発立ち上がる。

 

「うぐっ!」

 

痛みのあまりつい声が出た。畜生。

 

とりあえず水だ、水。そう思い台所へ向かう。

流しの下から新しいコップを二つ出して、一つにポットからお湯を半分ほど入れると、ちょうどお湯が切れた。ギリギリセーフ。

沸かしたのがいつだったかすら覚えていないお湯は、猫舌の自分でもどうにか飲めるくらいにまで冷めていた。

グッと一気に飲み干す。

あぁ、この一杯がたまらない。

 

続けて、換気扇を回して、棚の上に置いてある灰皿と煙草を構え、火を付ける。

シロが、ここかベランダの外でしか吸わせてくれないのだ。

以前一度だけ、彼女が「そんなに良いものなの?」と聞くので、その時吸っていた分を途中止めで渡し、吸わせたことがあるが、

「わ!マスターと間接チューだ!!」とテンションを上げた直後、予想通り激しく咽こんで涙目になっていたのを思い出す。

 

2、3回ほど大きめに煙草をふかして一心地ついたところで、ヤカンに水を張り、ガスコンロにかける。

ふと時計に目をやると、午前9時前だった。

まぁ、そんなものだろう。

 

そのままぼんやりと煙草をふかし、適当なところで灰皿に押し付けてもみ消す。

ヤカンの水がいくらかぬるま湯くらいになっているのを見越して、もう一回コップに注いでグッと飲み干したあたりで、

ぼちぼち自分も活動準備ができてきた。

 

シロを起こそうと、寝そべる彼女の元へ行き……最高に幸せそうな顔してやがんなコイツ。

とりあえずほっぺをつんつんしてみる。反応が無い。

もう一度つんつんする。なんぼか口元をもごもごさせただけで、また幸せの国に帰りやがった。

なんなら追加でだらしなく口を開いてよだれまで垂らす始末だ。この幸せ者め。

 

なんとなく頭をなでて、シロを起こすのを一旦諦め、部屋の空気を入れ替えようとベランダを開け放ち、網戸にする。

 

「あ゛っ!!」

 

寒風が脳に突き刺さり、まだ二日酔いの残る頭に致命傷を受けた。慌ててベランダのサッシを閉じる。

 

うぇ~寒みぃ~など思いつつ、再び炬燵に座った。

BGM代わりにと、テレビをつける。丁度天気予報だ、今日は一日晴れらしい。

しばらくそのままテレビを眺めていると、ヤカンがピーピー叫びだし、お湯が沸いたのを知らせてきた。

のっそりと立ち上がり、ヤカンの口を開けてコンロの火を止め、ポットにお湯を注ぐ。

コップを二つと、ペットボトルの水をもって炬燵に置きに行き、もう一往復してポットを炬燵まで持ってくる。

 

再び炬燵に腰を下ろしたところで、シロが起きた。

ヤカンが目覚ましになったようだ。

 

「んむぅ~。」

 

などと漏らしてから手をついて仰向けになり、そのまま起き上がってくる。

眠たそうに眼を擦り、擦りして、何度か瞬きすると、眼前に俺を見つけたのか

 

「……ふへへ。おはよう、マスター。」

 

と、幸せそうにふやけた顔で挨拶してくる。

 

「おはよう。」

 

挨拶を返し、彼女の為にコップに白湯を用意していると、

 

「ねぇ、マスター。」

 

「なんだい?」

 

つい今まで、幸せそのものという顔をしていたシロが、

 

「わたしね...」

 

「おう」

 

その幸せそうな表情のまま、顔の上半分を青ざめさせ――

 

「……キモチワルイの」

 

「わー!待て待て!ここは待て!」

 

「ごめんダメなの...」

 

「ダメじゃねぇ!がんばれ!!」

 

「できないです!」

 

「力強く言うな!その元気があるなら歯ぁ食いしばって立て!」

 

「今のでもうだいぶアガってきちゃった...でそう。」

 

「阿呆かよ!?ほらトイレ!は間に合わねぇか、あと5秒こらえろ!ゴミ箱用意するから!!」

 

「うっ……(✩キラキラ✩)はーっ、はーっ……。」

 

「あっ……。あぁ……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「…………ごめんなさいますたぁ。次は、もっと頑張るから!」

 

「……できれば、今頑張って欲しかった。」

 

「で、でも!いちおうなんか取り皿の上に落としたよ!」

 

「あぁ、なんぼかテーブルの上に飛び散ってるけどな。……こたつ布団の上にやられるよりはマシか。」

 

「うぅ、ごめんなさいぃ...」

 

「まぁやっちまったモンはしかたがねぇ、口ゆすいでおいで。」

 

「はぁい……。」

 

シロとの生活は、大体こんなもんだ。

 

 

興奮して血流が改善されたからか、頭痛がなんぼか収まってきた。

まだじんわり痛いが、寝起き直後からすると大分マシだ。

朝イチからブチかましてくれたシロが、ありがたいやらなんとやら、だ。

 

流しから使い捨てのビニール手袋とビニール袋を持ってきて、2枚重ねにしたビニール袋にシロの(✩キラキラ✩)を回収、

口を縛って、これは生ごみで良いんだよな……?等と考えながら流しの適当なあたりにポイ。

ついでにビニ手も裏返すように脱いで、これはこれで小さいビニール袋に入れてポイ。

そんな感じで処理を進めていると、洗面所に行ったシロが戻ってきた。

 

「マスター!スッキリしてきたよ!スッキリシロちゃん!」

 

「おう。シロちゃん、頭は?」

 

「悪いです!」

 

「知ってる。痛いかどうか聞いてるー。」

 

「うー、ちょっと気合入れたりすると痛いかも...」

 

「ん。ならシャワーでも浴びてくるかい?昨日風呂入れてねぇし。」

 

「おふろ!は、マスターと一緒に入りたいな!行こう!」

 

「先にこの辺の片づけしてからな。そこに白湯を用意してっから、それ飲んだらテーブルの上の、スグ片せそうな奴から流しに運んでくれ。」

 

「了解だよ!重ねちゃって良いかな?」

 

「オーケーだ。」

 

シロにざっと指示を出しつつ、自分も新しいビニ手で雑巾を握り、爆心地周辺の物をどかしながら掃除を進めていく。

 

「タバコくさーい!」

 

「おっと、今の状況で俺と臭いの話をするつもりか?受けて立つぞ?」

 

「うっ...今は勝てない...」

 

「だろうな。」

 

「マスター、運ぶものは終わりかな?」

 

「そうだな。次、サランラップとなんでも良いからおハシよぉーい。」

 

「はいよー!」

 

「ん、そしたらな、なるべくひとつのお皿にまとまるように残りモン集合させて、一杯になったらラップよろしく。

で、空いたお皿はまた流しなー。」

 

「わかったよー!」

 

「あ、鍋だけそのまま。今日の朝メシにするから。」

 

「オッケーだ!」

 

よしよし、いまのところ順調だ。

 

 

シロが仕分けと梱包を開始したのを確認し、自分は今使っていた雑巾とビニ手を纏めて、またビニール袋に放り込み、

後ろから「お宝ぁ~♪」などと聞こえてくるのをスルーしつつ、洗い物は……朝メシ食ったらまた出るな、適当に水だけぶっかけて後に回そう。

一度手を洗って、シロが梱包した物から順に冷蔵庫に仕舞っていく。

 

「そういや、酔いつぶれてそのまんまだから歯磨きもしてないなぁ。」

 

「私なら大丈夫だよ♪」

 

「大丈夫なわけあるかバカチン。口の中ってのは雑菌とかすっげー増えやすいんだぞ?カビの仲間とか。」

 

「ひゃあ!……今マスターとちゅーしたら、すごい臭いしそう...」

 

「オマエモナー。」

 

「そうだった!」

 

「なんならさっきの(✩キラキラ✩)の分シロちゃんの方が――」

 

「わー!わー!待って待って待ってー!」

 

「というわけで、歯磨き大事。OK?」

 

「お、オッケーだ!」

 

「よし。ほんなら片づけはこんなもんで良いから、シロちゃん歯磨きへ、行きまGO!!」

 

「いぇっさー!」

 

俺が洗面所を指さすと、シロはビシィ!と敬礼してから、トテトテ駆けて行った。

 

 

冷蔵庫へ仕舞うべきものを仕舞い終えたので、鍋にフタをして自分も洗面所に向かうと、

シロが鏡の前でにぃぃ~っと歯をむき出しにしながら歯磨きをしていた。

年ごろの乙女感ゼロで最高にアホっぽいが、なんか楽しそうだな、と思ってしまった。

 

やり始めるまではめんどくさいと思い、やり始めたらトコトン!と言った調子が見て取れる。

ガールに血液型があるのかは知らんが、有るとしたらコイツはきっとB型だろうな。

 

そんなことを考えながら、自分も歯磨きを始めると、

シロが歯ブラシで、やたら前歯をゴシゴシ、シャカシャカしながら、足首の動きだけで横へにじり寄ってきて、

ぴとっ。といった感じに引っ付いてきた。

 

表情に一斉変化はない。アホ面のままだ。

多分、「あっ、マスターだ。とりあえずくっつきたい!……くっついた!ヨシ!」くらいにしか考えて無いと思われる。

もしくは、思考回路が一切動いていないか、どっちだろうな?

 

最後のうがいを二人そろって吐き出し、歯ブラシを片付けた。

急ぎ目にやらねばならないことが、あと一つ。

 

「マスター!お風呂入ろっ!お風呂!」

 

「その前に、やらねばならぬ、ことがある。」

 

「えー、なんだろ?テーブルは片付けたし……、わかった!着替えとタオルの用意だ!」

 

「それもだけどな、もっと大事なことだよ。」

 

「ふぇ?……えーっと、えーっとぉ…… わかんない!」

 

「うん。答えはな、部屋の窓を開けて換気する事だ。あの匂いの篭った部屋で朝飯食いたくはないぞ?俺。」

 

「あー!なるほどー!」

 

「というわけで、シロちゃん!GO!!」

 

「いえっさー!いっくよー!!」

 

と、シロを元気よく送り出したところで、ふと思い出した。

彼女はさっき、『気合入れたりすると頭が痛い』と言っていた。

つまり、

 

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーーッ!!!」

 

 

シロの、二日酔いが残る脳にも、寒風が突き刺さると言うことだ。

 

 

今、俺はシロと二人で炬燵の同じ一角に、うつ伏せで入っている。

 

彼女の悲鳴を聞いた瞬間、指示ミスに気付いた俺はとっさに洗面所から出て

 

「シロちゃん!炬燵にダイブ!!」

 

と指示を飛ばした。

シロは俺の指示を即座に実行、炬燵にヘッドスライディングの要領で侵入し、そこから出て来なくなった。

ひとまず彼女の安全が確保されたのを確認した俺は、取り急ぎ脱衣所にバスタオルを用意し、

風呂桶に栓をして、リモコン操作で自動お湯張りを開始。

溜まり始めたのを確認して、炬燵の中のシロに、恐る恐る安否を呼び掛けたところ、

 

無言で炬燵のこちら側が持ち上がり、そこから恨めしそうな顔で手招きをするシロが見えたので、えいやと覚悟を決め、

寒風の中炬燵へ侵入、今に至るという訳だ。

 

「うぅ...ひどい目にあった... ますたーのばかぁ...」

 

「ごめんて。」

 

「……そんなマスターに、今からバツをあたえます。」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「シロちゃんの抱き枕になることです。」

 

「抱き枕ですか。」

 

「抱き枕です。いっさいのていこうは認めません。」

 

「なるほど。用意できました、いつでもどうぞ。」

 

「ほいだば。」

 

そう言うと、隣に寝ていた彼女はごそごそと体勢を変えつつ手足をこちらへ伸ばし、全力で抱き着いてきた。

 

「ぎゅううぅ~! ……ふへへ♪」

 

果たしてこれが罰なのか、どうなのだろうか。疑問ではある。

 

 

『♪~お風呂が沸きました』

 

しばらくシロに抱き着かれたまま、顔をスリスリされたり、突然髭をブチ抜かれたりと好き放題にさせていたら、風呂が沸いた。

 

「あ!お風呂わいたって!マスター!」

 

「そうだな。」

 

「入ろう!」

 

「そうだな。でも問題があるよ。」

 

「ん~?何かな?何かな~?」

 

「俺たちは、炬燵から出たら、死ぬ。」

 

「そうだった!……どうしよう?」

 

「……ここはひとつ、シロちゃんが気合でベランダを閉めるというのは」

 

「また髭抜くよ?マスター?」

 

「やめよう。」

 

「うん。……ってことはマスターが閉めてくれるの?くれるよね?」

 

「いや、それも無理だ。」

 

「えぇ~!?わたしさっきアレしたんだから、マスターもアレするべきだと思うな!」

 

「いや実は俺もな、シロちゃんが起きる前に一度換気しようとしてアレしてん。『あ゛っ!?』ってなってん。」

 

「そうなの?」

 

「そうなの。」

 

「そっか~。」

 

「それでな、こうしようと思う。」

 

「どうするの?」

 

「……二人とも気合で風呂にダッシュし、風呂でこの頭痛を取る。それから体が温かい内に、ベランダのサッシを閉める。

換気の時間もしっかりとれて、一石二鳥というわけだ。」

 

「おお~!ナイスアイディア!流石だね、マスター!」

 

「うむ、着替えの用意とかは一旦忘れよう。すべては気合で解決していく方針で。」

 

「了解だよ!」

 

「よし、では行くぞシロちゃん。用意は良いか?」

 

「オッケーだ!」

 

「オーケィ、スリー」

 

「ツー!」

 

「ワン」

 

「「GO!! ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーーッ!!!」」

 

 

入浴を済ませた俺とシロは、裸にバスタオルを巻き付けただけの状態で寝室に走り込んで着替えを行い、

体温が高い内にベランダのサッシを閉じるというミッションを、予定通りに完了した。

 

今俺は、昨日のすき焼きを鍋焼きうどんに転生させるべく、卵と袋うどんを求めて冷蔵庫を探り、

シロは、なんか鼻歌歌いながらご機嫌な調子で、TATSUYAで借りてきたDVDを漁っている。

 

俺が冷蔵庫の前で苦戦していると、ふと彼女から声が掛かった。

 

「わ!マスター!たいへんだ!たいへんだー!!」

 

「どしたん?」

 

「このDVD!へんきゃくきげんが昨日までだよ!」

 

「なんだと!?」

 

うっかりしていた!今時間は!?10時まであと15分!バイク飛ばせばギリ行けるか!?

冷蔵庫のドアを荒っぽく閉めながらシロに指示を飛ばす。

 

「シロちゃん!DVDを回収!メットとジャケット持ってバイクへGOだ!急ぐぞ!」

「はいよー!」

 

自分はとり急ぎ玄関でヘルメットとグローブ、バイクの鍵をひっ掴み、ドアを開け放ちながらバイクへ走ってセキュリティロックを解除、エンジンを掛け暖機を始める。

幸い日常からメンテを欠かしていない愛車は、一発でスタートしてくれた。ありがてぇ。

そのまま手早くメットとグローブを着けてスタートチェックをしていると、ジャケットとリュックを装備したシロが飛び出して来た。

慌てていても玄関のカギを締め忘れないのは偉いぞ、後で褒めてやろう。

 

「マスター!これ!」

 

「おう!ナイス!」

 

シロが俺の分のジャケットを投げ渡して来たので受け取り、素早く袖を通す。

その間に彼女もヘルメットを着け終わったようだ。

先にバイクにまたがってブレーキを握り、バイクを直立させサイドスタンドを払う。

 

「よし!シロちゃんカモン!」

 

「ホイサー!」

 

勢い良くシロが搭乗してくるが、それを両足できっちり支える。

直後、彼女の両膝が俺の横尻をホールド、両手が俺の腰に回り、

 

「スタンバイおっけーい!」

 

出発準備が完了した。

 

「オッケー!行くぞシロちゃん!」

 

「れっつごー!!」

 

クラッチレバーを握り切ると同時にギヤを1速に蹴り込む、

ブレーキを放ってアクセルを煽り、再びクラッチを繋げば――

 

 

 

「やーーーーーーーーーーっ!!♪」

 

 

 

 

――返却は、間に合わなかった。

 

不運と踊るが如く、行く先すべての信号が目の前で赤に変わり、

いつもは素通りしている押しボタン式さえも、道を閉ざした。

急ぐ用事が有る時に限ってだいたいこうだ。ちくしょう。

 

今日の開店時刻、午前10時までに店外返却ボックスに投入できればセーフだった。

しかし、大きな信号をあと2つ残して、今目の前で踏切が閉まった。……時間が10時丁度。タイムアップだ。

 

「やぁ、駄目だったな。」

 

「駄目だったね。」

 

「しゃーない、せっかく外に出たんだし、何か食ってから返しに行くか―。」

 

「わ!良かった!わたしお腹ぺこぺこ~!」

 

「俺もだよ。てかシロちゃん(✩キラキラ✩)までしといて、今何か食う余裕あんのな?」

 

「むしろ(✩キラキラ✩)したぶん空っぽになってるカンジする。」

 

「マジか。すげぇな、流石シロちゃん。」

 

「ふふ~ん!」

 

これが若さか……とか思うのは、俺が歳とったからかね?まだ若いつもりなんだけど。

 

「何かコレ食いたいって希望有るー?」

 

「えっとねー、うんっとねー、ラーメン!」

 

「まだ店やってねぇよ。」

 

「えぇーーっ。じゃあ駅前のうどん屋さん!」

 

「家に鍋焼きうどんの準備があるけど。」

 

「むーっ!じゃあ逆に何があるのさ!」

 

「……ごめん、何も考えてねぇや。いつものファミレスくらいしかすぐ思いつかん。」

 

「それじゃあいつもとおんなじじゃん!もー!」

 

「いやごめんて。」

 

「そんなマスターに、今からバツをあたえます。」

 

「バツは後で受けるので、運転中はやめてください。」

 

「わかりました。」

 

「えらいえらい。」

 

「えへへ♪」

 

「しかしあれな、やっぱ寒いから何か暖かい物食いたいな。」

 

「車買わないの?快適だよぉ~?」

 

「そうだけどさ、なんか負けた気がする。」

 

「でもマスター、この間『マジで死ぬかと思った』とか言いながら、すっごく震えて帰ってきたよね?」

 

「いや確かに、アレはマジで死ぬかと思ったけど。」

 

「で、しばらくわたしを湯たんぽにしてた。ずっとひっついてた。」

 

「シロちゃん暖かいから。ちょっと幸せだった。人間の世界に帰ってきたのを実感した。」

 

「わたしはちょっとしんどかったよ!マスターにぎゅ~ってしてもらうのは嬉しいけど、

あの時は、『わたしが暖めてあげないとマスターが死んじゃう!!』って、すっごくあわあわした!」

 

「うん、ありがとう。」

 

「で、車は?」

 

「また今度。」

 

「もー!」

 

「シロちゃんは、やっぱ車の方が好き?」

 

「わたし? んー……。わたしはバイクの方が好きかなー。」

 

「どして?」

 

「だって、ずっとマスターとぎゅ~ってしてられるもん!」

 

「そう。」

 

「そう!それが大事!」

 

「シロちゃんは可愛いな~。」

 

「んふふふふ~っ♪ あ、踏切開くよ!マスター!」

 

「お、じゃあいつものファミレスに向けてハンドル切るぜー!」

 

「んもーーーっ!!!」

 

 

結局近場のファミレスへ入り、俺はチキンとトマトのスープにパンを、シロは元気よく「オムライス!」を注文した。

途中シロが口の周りをケチャップでベットべトにしていたので、紙ナプキンでゴシゴシしてやったところ、彼女は

「んむぅ~~!」など呻きながらされるがままにされ、拭き終わったら何故か「えへへ~♪」と、ゆるんだ顔になっていた。

 

俺はスープの具だけ先に食べ、残りのスープにパンを千切り浸しながら食べていたのだが、

パンが残り一口分ほどになったところで、スープが先に無くなってしまった。

正直味の薄いパンだけを食べるのは得意ではないので、心の中で唸っていると、

満足そうに自分の腹をさすっていたシロが、こちらをじっと見ながら無言で口をパカッと開いた。

 

自分は一度手元のパンに視線を落とすと、大きく開いた彼女の口に、それを放り込んだ。

彼女がしばらく咀嚼して、ごくんっと飲み込んだのを見て

 

「おいしい?」

 

と、尋ねると

 

「うん!マスターにあーんしてもらったから、おいしさモリモリだよ!」

 

満面の笑みで返答された。

多分そのモリモリの使い方は違う気がするが、まぁ、なんとなく伝わるし、彼女が幸せそうなら別に良いかと、一人納得する。

 

食後のデザートにパフェを注文しようとしたので、

 

「外をバイクで走ったらまた冷えるぞ?やめときやめとき。」

 

一応止めはしたのだが、

 

「心配するない!なんとかなるなる♪」

 

シロは聞く耳を持たなかったので、

その後しばし、パフェを頬張りながら幸せそうにしている彼女を眺めながら、コーヒーを啜った。

 

会計を終えて外に出ると、さっきまで射していた日の光は雲の影に隠れ、

昼に近づいているはずなのに、気温はファミレスに入る前と変わらない。なんなら体感温度は低い程だ。

 

「わ~っ、寒い~~っ!!」

 

やはりパフェで冷えたのだろう、シロが寒そうにしている。

 

「だから言わんこっちゃない。」

 

「うぅ~、こうなったらぁ~!とう!!」

 

「どわっ!」

 

勢いよくシロに抱き着かれた。

 

「えへへ~♪マスターあったか~ぃ♪」

 

「いかん。体温を吸われている。」

 

「ん~すりすりすりすり~♪」

 

「……シロちゃんがそれで暖まるなら良いんだけど、できれば人前でだっこしてすりすりは控えて欲しい、恥ずかしいから。」

 

「え~、そうなの?」

 

「うん。」

 

「ふぅ~ん?」

 

小首を傾げながら、下から覗き込まれた。

 

つい気恥ずかしさから、視線を明後日の方に逸らしたら、

 

「えいっ」

 

短い気合の掛け声と共に、右頬に柔らかい感触が触れた。

 

アホかこいつ、恥ずかしいって言ってんのに。

 

思わず視線を戻すと、思ったより至近距離に幸せそうなアホ面があった。

 

「ふへへ~♪あったかいね!マスター!」

 

「……いや寒ぃよ。」

 

照れ隠しのセリフだと、きっと彼女にはバレていない。




作業用BGM:特に無し。生活環境音。


以下没シーン

※コタツにて

「ね、マスター。」

「なんだい?」

「実はわたし、今パンツはいてないの」

「なんで!?」

「あのね...ちょっと言いにくいんだけど、寝てる間に...コショコショ...」

「……なんだと!?」

「……シ、シロちゃんは、あきらめと寝相がわるいのだ!!」

「それで誤魔化せると思うなよ!?

この後バイクに炬燵布団を積んでその上にシロちゃんが座り、コインランドリーへ
道中でシロちゃんが、炬燵布団で積みあがった分の身長差を活かしてマスターのうなじにチュッ
運転が乱れてあわあわしながら走り去るENDの予定でしたが、ヘルメットをしているマスターのうなじにチュッとするのは
「(マスターの)メットがジャマでやりづらいです!」とシロちゃんが言うので没になりました。
ちなみにマスターはフルフェイス、シロちゃんはジェットヘルメットのつもりでしたが、
描写を入れるとテンポが悪くなる、というか、マスターのうなじにチュッとしないのなら、メットの描写要らないな?となりました。
シロちゃんバイクジャケットにジェッヘル似合うと思うんだ。
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