「え、ウル、サス?」
彼の自虐の言葉を止めたのは、いつの間にかファルコンの後ろにいたウルサスだった。
分かっていたようにカタストロフが手を離すと、入れ替わりにウルサスがファルコンを強く抱きしめた。ウルサスもファルコンも青い炎で燃えていたが、二人ともそんなことは気にしなかった。
「なんで、なんで言わなかった! なんで言ってくれなかった! 『俺とずっと一緒にチームを組んでてほしい』って、そんなに思い詰める前に一言くれてさえいれば、俺はお前を安心させられたのに!」
「な、言えるわけねえだろ! 言ったらお前たちを俺に縛り付けることになる! そんなのお前たちのためにならねえ!」
「あああああクソだな! 俺はお前にそんなに信頼してもらえてなかったのか! こんなクソ野郎が誠実なわけがない! 俺はお前よりよっぽどクソ野郎だ!」
「は、はぁ!? 何言ってんだ!? 意味が分かんねえよ! 俺の方がクソに決まってんだろうが!」
「ふざけるな! 君より僕の方がよっぽどクソ野郎だ!」
「ワーラット?」
いつの間にかファルコンの肩にはワーラットが登っていた。
ワーラットもやはり青く燃えていたし、その目は涙であふれていた。
「気配り上手何て、直接面と向かって意見を言えないから、裏でこそこそしてるだけだ!」
「違う! お前は俺が頭悩ませてるって時、すぐ察して手伝ってくれた! お前は人のこと良く見て行動してくれる! 最高のやつだろ!?」
「いいやクソ野郎さ! 僕は知ってたんだ! 君が何かに凄い悩んでるって気づいてた!
なのに言ったら気に障るんじゃないかってクソなこと気にして言わなかった卑怯者だ!」
「!! お前……」
それはファルコンにとって衝撃的な一言だった。自分の中にある恐怖に気づくとしたら、確かにワーラットだと彼は思っていた。だから絶対に気づかれないように、ワーラットの前ではそんな素振りを見せないように気を付けていた。しかしそれでも気づかれていたというのだ。
呆然とするファルコンにワーラットは泣きながら笑った。
「馬鹿。僕に対する当たりが突然強くなったら、何かあったんじゃないかって気づくに決まってるだろ?」
しかし当然のことだったのだ。ファルコンは内面を必死に隠そうとした結果、外面では非常に攻撃的になっていた。特に注意していたワーラットに対しては。
普段から人を良く見ているワーラットがそれを見ておかしいと思わないはずはなかった。
「それで君が一人になった時にこっそり近づいてみれば、見たことないほど焦燥してるじゃないか! 『絶対何かに悩んでる。でも僕にも言えないってことはきっと簡単に口出しできることじゃないんだ。じゃあ君が言ってくれるまで待つしかない』なんてすぐ諦めて! 君の暴言がどんどん酷くなってもきっといつか前みたいに軽口叩いてくれるって、行動もしないのに期待してたんだ!
そこまでを一気に言うとワーラットはファルコンの肩に立ち、彼の頭に抱き着いた。
小さな体を目いっぱいに広げて、絶対離れたくないものに捕まるように力強く。それでいてとても大切なものを優しく包み込むようだった。
「ごめん、ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい、こんな意気地なしの僕なんかでいいならずっと一緒に居るから、だから、だから、前みたいに自信あふれる君に戻ってほしい……」
「ワー、ラット……」
「俺は」
それは絶対に出さないようにかみしめていた口から漏れたような、激情に塗れた声だった。
先ほどよりもよっぽど
「俺は、お前がワーラットに酷いことを言うのを止めさせようと、ただそれだけしか考えていなかった」
「そんなの……当然だろ?」
「ああ、俺は当然のように、
ウルサス族の強い腕力がファルコンを再度強く抱きしめるが、ファルコンは全く痛みを感じなかった。
「『暴言を人に向けてはいけない』なんてちょっと話が分かるやつなら誰だって知ってる! 俺はお前がちょっとどころか十分に話が分かるやつだって知ってたのに! 馬鹿みたいにそれしか言わなかった! それがお前を余計にイラつかせてるって気づきもしなかったんだ! 俺は……」
ウルサスは腕を離し、目に腕を押し当て、そして叫んだ。
「俺はお前が悪いやつになったなんて、アホなことを本気で信じてたんだ!」
それはウルサスが自分で気づけていなかった、自身の思い込みの酷さだった。
「本当に笑えるのは『それでも前はいいやつだったんだから、正しいことを言ってやればきっと戻る』なんてとんでもない押し付けさ! 正しいことなんて、それさえ『俺が考える俺が正しいと思うこと』だとよ!? 本当に頭使ってんのか、ってそりゃあなるわな!
それでお前には俺の考えばっかり押し付けて、お前が何を思っているのかを聞き出そうともしない! お前が言ったことが全部本当に思ってることだと決めつけたんだ! お前は何も変わってなくて、不安に押しつぶされそうだったのに!
こんなやつが誠実だなんて、口が裂けても言えるものか!! 」
きっとブライト王国の人間がその懺悔を聞けば、思い当たる言葉があっただろう。「偽善者」。「聖人気取り」。周りの人間のことを考えているようで、本当はただ自分の意見を通して気分良くなりたいだけ。それは確かに誠実とは程遠いと言えるだろう。
しかし、ファルコンは、目の前で背中を丸めて泣くクマの獣人に、フ、と笑いかけた。
「それでも、お前は誠実なやつさ」
「な、何で」
「お前は確かに俺から話を聞き出そうとはしなかったけどな、俺が言ったことは絶対に聞き逃さなかったろ?」
ファルコンがウルサスの肩に手を添えた。
「俺がどんな無茶な指示出しても、何とか実行しようとしてくれる。絶対に無理なことを言った時は『無理だ』って正面から言ってくれる。俺の目を見て『信じてる』って言葉にして言ってくれたのはお前が初めてだった」
「ワーラットも」と、ファルコンは自分にくっついてるワーラットの頭を撫でた。
「意気地なしだなんて言うな。お前が狩りで尻込みしたことなんて一度もなかったじゃねえか。確かに一人だと怖かったのかも知んねえけど、俺たちとだったらどんな怪獣相手だって立ち向かえただろ? だとしたらお前は一人で抱え込むんじゃなくて、他の二人に相談するべきだったのさ」
ワーラットは答えず、ファルコンに押し付けた顔をただ少し縦に振っただけだった。
ウルサスは呆然とその言葉を聞いていた。彼は「信頼は自分から裏切ってしまったのに」と言おうとしてファルコンに制された。
「俺も、お前も、二人ともが信じてた気持ちをすっかり忘れちまってたのさ。どっちが悪いとか、そんなのねえよ。
──強いて言えば、どっちも悪かったのさ」
「俺は答えを恐れずお前らに相談していれば良かった。お前は俺の悪いとこを指摘するだけじゃなくて、俺と本当の会話をするべきだった。それだけだったんだよ」
「ま、だけ、にしちゃあ俺達には難しすぎたんだけどな!」と吹っ切れて笑うファルコンに、ウルサスも思わず笑ってしまった。
「……すまない、ありがとう、ファルコン」
──ああ、それは本当に俺達には難しすぎることだったな
その時、ファルコンはウルサス越しに何かが見えた気がした。
何だ、と思い焦点を合わせて──
──ウルフが、己の獲物で、首をかき切る光景──
「てめえ!!」
その体が地面に倒れる寸前で、ファルコンはなんとか受け止めることに成功した。その速さは追い風でもないのにカタストロフに突っ込んだ時と同じくらいだった。
しかしそんなことには気づかず、ファルコンは必死にウルフに呼びかける。
「おいっ何してんだ! おまっ、ふざけ、ん、な……?」
そこまで話して、ファルコンは口をぽかんと開けてしまう。ウルフの首についていた傷が青く燃え上がったかと思うと、すっかり綺麗になくなってしまったのだ。普通なら吹き出す血さえも、そもそも出ていなかったように見えた。ウルフ自身も目を見開いて首を触っているところを見るに、本人にも予想外のことだったようだ。
そうして傷が完全に完治していることを悟ると、ウルフは目を伏せた。
「……そうか。
「っ」
ウルフの声にファルコンが我に返ると、先ほどまでと打って変わって憤怒の形相でウルフの胸倉を掴んだ。
「てめぇ、どういうつもりだ?」
しかし、ウルフは目を逸らして答えない。
「なんで死のうとしてんだって聞いてんだよ」
ウルフはやはり答えず、なすがままにされている。
「聞いてんのか!! ウルフ!!」
「落ち着け」
激しくウルフを揺さぶるファルコンの手を、ウルサスが止めた。
「いや、落ち着かなくていい。話を、聞いてやってくれ」
「ウルサス?」
その言葉は妙だと、ファルコンは訝しんだ。まるで、ウルフが自殺しようとした理由を知っているかのようだ。しかしウルサスの真っすぐな目を見て、ファルコンはゆっくりと手を離した。
ウルフは、パタリ、と雪の上に倒れた。空に広がる雲をぼんやりと見ている様子があまりに普段と違って、ファルコンは戸惑いながらもウルフの言葉を待った。やがてウルフが静かに目を閉じて、口を開いた。
「お前を、殺そうとしてた」
時が、止まったようだった。
「お前は、俺のことをチームに誘ってきたときから傲慢で、まるで上の立場から話しているようだった」
その時の中で、ウルフだけが口を動かしていた。
「気は合わないだろう。性格が癪に障る。でもちょうど金が欲しいときだった。だから、
いつもより輪をかけて静かな声だったが、吹雪にかき消されはしなかった。
「その最初の仕事で、お前が立てた作戦が、俺には全く思いつけてなかった」
当時のことを思い出して、ウルフの口が緩む。
「どうしたらそんな大胆な作戦が思いつくのか。しかも、まさにこの4人の組み合わせでないと実行できないものだ。『最初に受ける仕事を見越して俺たちに声をかけたのか』と勘違いしそうになった。そうではないと知った時、俺は武者震いが止まらなかった」
ファルコンも思い出していたが、正直ウルフがそんなに興奮していた様子だったとは思えなかった。ウルサスも首をかしげていたが、やっとウルフの隣まで歩いて来たワーラット*1だけが「凄い嬉しそうだったよね」と言った。
「ただ、作戦には一つだけ致命的な見落としがあった。最後の最後で忘れてしまえば全滅する危険性のある罠だった」
──それを俺が指摘した結果、狩りは大成功した
「『こいつは凄い頭が回るやつだ』と思ったし『ただ最後の詰めが甘い』とも思った。そして最後にこう思った。『こいつと、このチームに協力すれば、もっと高みに近づける』」
「気づけば二、三回付き合うだけのつもりが十回、二十回と増えてた。どれも俺では思いつけない作戦が決行され、そして俺の気づきで全員の命が助かったこともあった。『俺のおかげ』なんて言うつもりはなかった。気づけば、ただただ『このチーム全員の勝利』というのが嬉しくなっていた」
そこでウルフの口が止まった。いつもより各段に回っていた舌が、口が、震えているのが他の三人にも分かった。
「……お前が、ワーラットに当たり始めてから、くだらないミスをするようになった」
「っ……」
「以前までのお前なら見逃さない、当たり前の問題が無視された作戦。チームの誰かが異様に危険にさらされる酷い戦い方。最初の数回は何かの間違いだと心を落ち着かせていた。だが……いつしかそれが当たり前になってしまった。それで俺は思ったんだ。
──ああ、こいつも結局、他のやつらと同じで口先だけだったんだってな」
「俺もウルサスと同じ、自分が考えたことが正しいと思いこんだ。それでもウルサスより酷い。俺はお前が変わってしまったと思わず、
ウルフの目から涙が静かに落ちていった。
「そう思ったら『こんなやつに無駄な時間を使わされたのか』と怒りが湧いて、一刻も早くチームからおさらばしたくなった。でもきっと『チームを抜ける』と言えばお前はまたうるさく喚くだろう。もう俺はお前の声を聴きたくもなかった。
だから、今日、狩りが終わったら、事故に見せかけてお前を殺すつもりだったんだ」
「俺とワーラットは、昨日ウルフからそのことを聞いていた」
ウルサスの言ったことに驚いたファルコンは顔を上げた。ウルサスの目は後悔の色に塗れていた。
「俺はすぐ反対したが『ならこのまま危険すぎる作戦を立てるやつの下にいるのか? 遠くないうちに死ぬぞ』と言われると、何も言い返せなかった。俺も、ワーラットも、そこで『もう一度ファルコンとしっかり話そう』と言うには、疲れて切ってしまっていたんだ。もっとも、根本的な問題を解決しようとせず、自分たちで作った負担に疲れていたのだが、な」
そのウルサスの言葉にウルフは息を吐いた。
「分かっただろう? ウルサスも、ワーラットも、俺よりよっぽどまともで良いやつだ。どれだけ貶されても楽しい時があったから信じたいと、俺がお前を殺すと言っても決して乗っかってはこなかった。俺だけだ。俺だけが過去をなかったことにして簡単に仲間を切り捨てるクズさ。
……さっき、お前は言っていたな。『俺みたいなやつは生きているべきではない』と。
お前じゃない。このチームで本当に死ぬべきなのは俺なんだよ」
そう語り終えてウルフは目を閉じた。ここまで言えば感情的なファルコンは自分を非難してくれるだろうと彼は考えていた。死ねなくても、自身のことをめった刺しにでもしてくれるかも、と期待していた。そして、その後、このまま雪に埋もれて二度と目を覚ましたくないと、彼は本気で考えていた。昨日までとは全く反対の意味で、彼はファルコンの顔を見たくなかった。
「……そう、か。
――ありがとう、ウルフ」
だから、自分の胸に暖かいものがくっついてきたとき、ウルフは本当に驚いた。慌てて目を開ければ、ファルコンが自分の上に倒れこんで抱き着いている光景が目に飛び込んだ。一体、何を。そう言おうとして、ファルコンの言葉に遮られた。
「俺も人のことは言えねぇけどさ、お前、もっと自分の気持ちに素直になれよな」
「な」
ウルフは「本当にお前には言われたくない」と思ったが、胸からジロリと見上げてくるファルコンの目に黙るしかなかった。
「勝手に失望した、とか言ってんのは建前だろ?
――お前、俺たち全員が苦しんでんの、見てられなかったんだろ?」
ウルフの心臓が跳ねる。
「俺はなんでかわかんないけどずっと機嫌が悪い、ワーラットは俺に何も言い返せない、ウルサスは荒れる俺に対してキレるばっかりになった」
「客観的に見て地獄だわな」とファルコンはため息をついた。
「もし俺にむかついてるだけだったら、わざわざ二人に計画を打ち明ける必要なんてなかったろ? それを言ったのは要するに『仲間殺しの罪は俺が背負うから、お前たちはチームのことを忘れて別のところで生きていけ』ってことだろ?」
「な、そうだったのか!?」
ウルサスが驚愕の声を上げると「あー、お前は気づいてないと思ってたよ」とファルコンが呆れた。
「どっちかっていうと、それを伝えたかったのはこいつに、だろ?」
そう言うと、ファルコンは起き上がり、すぐ隣にいたワーラットの頭を撫でた。ウルフは内心激しく動揺し、ワーラットも自覚があったようで、目を伏せてなすが儘にされている。
「お前まさにウルフ族!って
その言葉に、カチン、と氷のように固まったウルフ。その様子を見てニヤリと笑ったファルコンは、悪い顔でウルフの声まねを始める。
「『大丈夫かワーラット』『怪我はないかワーラット』『いい傷薬だ使えワーラット』『疲れてないかワーラット』『ちゃんと夜眠れているかワーラット』『美味い果実酒が手に入った飲めワーラット』、他にも……」
「う、うああああああああああ!? やめろやめろやめろおおおおおおおおおお!!」
──なんだ、なんだその言葉は! それではまるで俺が発情期に、発情期に、め、め、メスに求愛しているかのようではないか……!
初めて客観的に自分の言葉を聞いたウルフは顔が一気に熱くなり、そこら中を転げまわりたくなる衝動に駆られる。しかしまだファルコンが乗っているせいで動くことができない。そのため何とか耳と目だけでも塞ごうとするが、二つの手で四つは塞げないとワタワタし始めた。彼の頭から瞼を閉じるという発想は完全に抜け落ちていた。
さすがにそこまでポンコツになったウルフは見たことがなかったので「こいつ何やってんだ?」と首を傾げつつ、ファルコンは声まねをやめた。
「ま、お前が仲間を大事にしてることは俺には、つ・つ・ぬ・け、だったわけよ。だからそんなお前が俺をどうしても殺したいと思ったのは、
急に真面目な話に戻ったので、ウルフの手は何とも中途半端なところで固まってしまう。それに内心吹き出しそうになりながらも、ファルコンは真面目な笑顔を見せた。
「だから、感謝してんだ。やり方は不器用すぎんけど、俺のこと止めようとしてくれて、ありがとうな。
──やっぱお前を俺のチームに入れて良かったわ!」
「僕からも、ありがとうと言わせて」
呆然とファルコンを見ていたウルフの片手を、横から小さな小さな二つの手が掴んだ。
ワーラットの、暖かい手だった。
「君が僕のことをずっと気にかけてくれてて、それが本当に支えになってた。ファルコンがすっごい無茶な要求してきて、正直『死ねばいいのに』って思っても、君がフォローしてくれるおかげで頑張ることができた」
「おい」「黙っておけ、あとお前が悪い」「はい」
雑音が聞こえた気がしたが、ウルフの両耳はもはやワーラットの声しか拾わず、ウルフの両目は自分の手を握ってくれるワーラットしか捉えていなかった。
「僕たちの中で一番しゃべらないけど、誰よりもチームの皆が楽しんでることを喜んでくれてた。そんな君が喜んでくれるのが嬉しくて、もっとチームを楽しくしようとやってこれたんだ。本当にありがとう。
――これからも、僕たちと一緒にチームで狩り、しようよ」
「……仲間殺しをしようとしたんだぞ」
「うん、それはちょっと短絡的、いや、直接的すぎたね」
「許さるわけない。いつ、また裏切るか分からない爆弾を抱えるのか?」
「裏切ってなんかない。僕も、ウルサスも、ファルコンも、裏切られたなんて思ってないよ」
「でも、それでも、それでも……!!」
「うん、それでも、だよ。
殺さなくって、良かったでしょ?
そう思ってくれてるんだったら、それで十分だよ」
──……なんて、暖かい、手なんだろう
視界はにじんでぐちゃぐちゃだった。でも、その手はしっかりとつかんでいた。
「……すまない……すまない……」
──すぐには自分を許せない。それでも
「こんなクズな俺でも許してくれるなら」
──こいつらと一緒に居たいと、心の底から思った
「これからもどうか、一緒に居させてくれ」
ウルフ族とワーラット族。
普通なら背の大きさの比較対象にすらならない二種族のはずなのに。
今、この瞬間だけは。
ウルフの体はあまりにも頼りなく、小さく。
そして、ワーラットの背中は、ウルフを支えられるくらい大きかった。
============================================
『そろそろ話しても良いか?』
『雪山の恐怖』が呼びかける。それを聞いたファルコン以下四名はというと、
――半目でカタストロフのことを見ていた。
「いや、何でもなさそうに言ってるけど、あんた俺たちが全然話聞かないからって
『そろそろ話しても良いか?』
あっはいっすみませんっ」
余計なことを言うなとウルフがファルコンの頭をはたくのと、赤い光がじろりと睨むのは同時だった。ファルコンははたかれた場所を抑えながら必死に目をそらした。
しかし、カタストロフが咳ばらいをして気を取り直すと、空気が一瞬で真剣なものに移り変わる。
『
「
「お前はもう少し丁寧にだな……全く。
「フフ、まあファルコンらしいよ。
「あなたには感謝しかない。
『では、また近いうちに会おう』
そうしてカタストロフが彼らに背を向け吹雪の中に消える直前、ファルコンが「あっ!」と叫んだ。
『どうした?』
「そういや、負けっぱなしは性に合わねぇんだ」
──次合うときは改めて四人で狩りに挑戦させろ、
その言葉に、一瞬
──いいだろう、受けて立つとも──
その返事はとても、とても楽しげだった。
こうして、それなりに有名だったファルコン、ワーラット、ウルサス、ウルフの4人チームは
「しかしまぁ良くあんな啖呵を切れたものだな」
「はん、こっちは愛武器壊されてんだ。借りは返させてもらわねえとな?」
「むしろ僕たちには
「それにどうやって
「んー、まあ難しいな。これまでのどの狩りよりも、むしろ今までババリアが挑戦したどんな狩りよりも難しいんじゃねえか? でも」
「でも?」
「俺のチームなら勝てるだろ! 俺はそう信じてるしな!」
「くさいセリフだな」「くさいね」「くさすぎて鼻が曲がるな」
「おい、てめぇら!」
「「「「……」」」」
「フッ」「フフフ」「ンン」「ククク」
──アーッハッハッハッハッハ!!!!
(第二話 フローズン・アニマルズ 了)