多重並行世界転生T情報交換掲示板   作:時械神ラツィオン

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サジタリウス杯プラチナ無事取れたので番外編(小説形式)投稿に来ました。

※設定補足

この作品におけるテイエムオペラオー:
・三女神含め、関係者の誰もが意図せずしてそうなってしまった「周回者たちの救済措置」。
 ただし、スカウト難易度そのものは高め。
・思い出したのは「願い」ではなく、「願いなら既に」。
・ドトウ、この世界にもついて来てくれて、感謝する。
 だから、君には()()()()()を。

この作品におけるメイショウドトウ:
・どちらかと言えば「この時代は」側だが、同時代にいた絶対者のせいで「時代が違えば」側に分類されがち。
・「願い」を求めてやってきた先に、絶対者が居座っていた。
・救いは……救いは無いんですかぁ?


番外編1

 『バタフライ・エフェクト』という考え方が存在します。

 ある時点で生じた小さな差異が、将来的にはどのような変化へと成長するのか想像のしようもない、という思考実験の一種です。

 「蝶のひと羽ばたきが、地球の裏側に達する頃には竜巻に成長しているかもしれない」、というナンセンスがその名前の由来なんだとか。詳しくは知りません。

 

 トレーナーさんは、私のトゥインクルシリーズの最中、()()()()()()()()()ことができました。

 バタフライ・エフェクトの由来に反し、トレーナーさんの行動は何ら天気に変化をもたらしませんでした。

 けど、人の選択により決められる()()()()()()()()()()()までは、苦い顔をして最後まで「わからない」としか言ってくれませんでした。

 

 トゥインクルシリーズの最終地点。URAファイナルズの決勝。

 告知条件は、阪神レース場、芝2200m右回り。

 当日の状況は、重バ場、「()()()()()()()()()()()()」。

 

 ここに辿り着くまでの道をトレーナーさんが作ってくれました。

 

 だから。最後くらいは。

 

 ◇

 

 番外編: 晴れの日が得意な『リードサスペンス』と、妄想癖のあるトレーナーさん(前)

 

 ◇

 

 ジュニア期、私はまだトレーナーさんのことを「有能だけど虚言癖のある新人」程度にしか捉えていませんでした。

 

 ◇

 

 私達、レースに出るウマ娘が最初に覚えることを推奨されるのは『コーナー回復◯』というスキルです。

 

 はっきり言って、これを1つ覚えて、スピードに特化した練習をしていればオープンレベルではかなりいい戦いができます。

 

 半ば常識のような知識。私も競技ウマ生で最初に覚えるのはこのスキルだとぼんやりと思っていました。

 

 だから、トレーナーさんのその言葉に私は耳を疑いました。

 

「違うぞ、リード。

 君が一番に覚えるべきは『コーナー回復◯』じゃない。

 『晴れの日◯』だ」

 

 何言ってんだこのポンコツトレーナー、と声に出さなかった私は偉いと思います。

 表情には出てたみたいですが。

 

「ホープフル、ダービーに加え、春天、秋天は君が走る時は全部()()()()()()

 ……いや、本当なんだって。だからその目をやめてくれ」

 

 なるほど。狙う重賞の条件がはっきりしているなら、それに特化したスキルを取得するのは大きなアドバンテージになるでしょう。

 トレーナーさんの言ってることはわかります。

 ただ、信じられるかとは話が別です。

 

 それらのレースが全部晴れるというのは、全部トレーナーさんの頭の中の出来事では? なんて、口にしないだけの優しさが私にはありました。

 ストレートな皮肉を口にしたら、この人泣いてしまいそうですし。

 

 数ヶ月単位で先の天気を当てることなんてできっこないですよ、とやさしく反論を述べます。

 

「……信じてくれ。俺は()()()()

 

 またです、トレーナーさんの妄想癖。

 

 ただ、一概にこれを嘘と切り捨てることが私にはできませんでした。

 私は既に一度、このトレーナーさんの無茶苦茶な指示に()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()

 

 ジュニア期9月のOP戦、芙蓉ステークスでの指示に最初は反対しました。

 私の得意作戦は、「差し」です。全然指示内容と合っていません。

 

“大丈夫だ。今この時期に速さに特化した君を捉えられるやつはいない。沈む前に終わる”

 

 なお、速さに特化した練習を課したのはトレーナーさんなので、自作自演もいいところです。

 

 その後、反論をことごとく潰されて私は渋々トレーナーさんの奇策に従いました。

 

 そして、6バ身差でまわりのウマ娘たちをちぎりました。

 

 その時の経験値(スキルポイント)を今後どう活かすのか? ということを今回は話し合っていたわけで。

 

 結局、私が折れる形で話し合いは決着しました。

 勝たせてもらったようなものだと思っていたし、少し踊らされ(信じ)てみたかったのです。

 

 天皇賞春秋覇者。

 そんな、夢のような肩書を()()()()()()()()()()()なんて蜜のような言葉に。

 

 ただ、その時は「いつかの私の偉業」を語る彼の表情の意味を私は理解していませんでした。

 

 わかりました。信じますから。だから、そんな辛そうな顔をしないでください。

 そして、また私を勝たせてくださいね?

 

 ◇

 

 ジュニア期の終着点。ホープフルステークスは堂々のG1レースです。

 芝2000m、右回り、中山レース場。

 当日の発表は、良バ場。「()()()()()()()()()()()()()()」。

 

 勝てる。トレーナーさんのその言葉を信じて、勝負の場に私は脚を踏み入れました。

 

 ◇

 

 レースの中盤で、私は「あ、勝てない」と思いました。

 

 前のウマ娘を捉えることができる気がしませんでした。

 ミニキャクタス。

 並走トレーニングをすることもある、クラスメートでライバル。

 

 脚が重いし、息は辛いし、これを少しでも楽にしてくれる『コーナー回復◯』にしとけば良かったって後悔に押しつぶされそうになります。

 ……もう力を抜いちゃだめかな?

 

 ◇

 

「諦めないで」

 

 はっきりと、そんな言葉が聞こえました。

 

 ◇

 

 変な感覚でした。

 

 頭の中で悪魔が「もう楽になりなよ」と語りかけてきます。

 これはわかります。()()()()()()()()()

 

 この、「まだ諦めちゃだめだよ」って語りかけてくる天使の声は一体どこから?

 ……私、二重人格だったっけ?

 

「よく前を見て」

 

 ミニキャクタスがふらついていました。

 

「さらに前を見て。ゴールがもう見えてるよ」

 

 声に気を取られてしまい周りが見えておらず、気がついたらもう最終直線。

 

 そこでさらに「あれっ?」となります。ミニキャクタス、垂れてきてる?

 

 あっ、となりました。

 もしかして、ミニキャクタス、コーナー回復をポシャった……?

 

 パッシブスキルとアクティブスキルの差。

 条件さえ合えば必ず発動するパッシブスキルと対照的に、どのレース条件でも発動する可能性があることと引き換えにアクティブスキルは()()()()()()()()()()()()()

 ジュニア期、戦い慣れてなくて「レース中に頭を回す余裕のない」私達ならなおさら。

 

 トレーナーさんが私に『晴れの日』を取得させた説得材料の1つでした。

 

 千載一遇のチャンスでした。

 もう一度、脚に力を込めます。

 

 ……もうとっくの昔にからっきしで、どんなに振り絞っても、スピードは出ませんでした。

 でも、それなら最後までこの速度だけは維持しよう。

 

 ミニキャクタスの横に並んだ瞬間とゴールを駆け抜けた瞬間が同時でした。

 

 写真判定の末、体勢有利で私はG1バになったのでした。

 

「よく頑張ったね」

 

 ゴールの直後にそう言ったっきり、その声はしばらくの間パタリと聞こえなくなったのでした。

 

 ◇

 

 都市伝説というか、ウマ娘たちの間でまことしやかに囁かれている噂があります。

 

 スキルの正体は、いつかの誰かのウマ娘の心の残滓、だということです。

 そして、これを半ば事実として私達は受け入れています。

 なぜならば、スキルを取得したその日の夜に「変な夢を見た」ウマ娘は数知れず。

 まぁ、私が見たのは白昼夢ということになるのでしょうか?

 

 ◇

 

 私がホープフルステークスの直後、『晴れの日◯』を『晴れの日◎』まで進めたのは言うまでもありません。

 

 ◇

 

 皐月賞には出走しませんでした。

 

「出てきなよ。雪辱を果たさせて欲しいな」

 

 ミニキャクタスはしつこいぐらいに誘ってくれました。

 けど……なんとなく、「実力だけでは彼女に勝てなかった」という考えが重石になって、「うん」という言葉が喉から先に出てきませんでした。

 

「出たければ出ればいい。俺も最善を尽くす」

 

 トレーナーは、そう言ってくれました。でも。

 

 ねぇ、()()()()()()()?

 

「……曇り」

 

 散々悩みました。トレーナーさんともいっぱい話しました。

 

 ……欲を言えば、本当は、トレーナーさんに背中を押してほしかったです。

 ……私を全力で信じて、ホープフルステークスの時みたいに、「勝てる」って言って欲しかったです。

 

「君の意志を尊重する」

 

 トレーナーさんは、最後までそれしか言ってくれませんでした。

 

 ◇

 

 この時あたりから、「ああ、この人は嘘つきじゃないんだ」と理解し始めていました。

 

 ◇

 

「ま、仕方ないよね。どんな未来予想図を描いているかは知らないけど、ライバルであることには変わりはないさ」

 

 カラッと笑って、ミニキャクタスは誘うのを諦めてくれました。

 

「ま、()()()()()()()。どこかで、ね?」

 

 ◇

 

 

 

 

 

 皐月賞、最終コーナーで故障を発生させたミニキャクタスは皐月賞を最後に引退せざるをえませんでした。

 

 本日、()()()()

 

 

 

 

 

 ◇

 

 私はトレーナーに()()()()()()

 ミニキャクタスの怪我を防げたんじゃないかと。

 どうして、私と彼女を()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだと。

 

「……ごめん。でも、もう俺にもよくわからないんだ」

 

 彼は、諭すように私に言いました。

 

「わかっていたら、どうするつもりだった?」

 

 そんなの……。

 

 感情的に叫ぼうとして、でも言葉に詰まります。

 

 花を持たせるためにホープフルステークスで負けて()()()()?

 そんなことを考えること自体、彼女への侮辱だ。

 

 皐月賞は出走し損だよとでも言ってた?

 エゴも大概にしろよ。

 

 そもそもの話、()()()()()()()()()()()?

 それって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?

 

 ……でも、でも。

 

「……ミニキャクタスには、全部じゃないけど、伝えていた」

 

 トレーナーさんの言葉に、私は目を見開きました。

 

「カラッて笑って、『()()()()()()()()()()()()』ってだけ言ってた」

 

 トレーナーの言葉を噛み砕いて……涙がこぼれて来ました。

 

 私は彼女のことをライバルだと思っていました。

 けど、そんなことはなくて。

 彼女は、私のずっとずっと先を走っていたのでした。

 

 そして、もう追いつけることはありません。

 

「……なぁ、()()()()()()()? そして、()()()()()?」

 

 トレーナーさんの問いかけ。

 

「リードサスペンス、どうか君の()()を俺に教えてほしい」

 

 ……無理です。わかりません。

 そんなこと、今聞かないでください。

 

「……ああ、ごめんな」

 

 このときの私は自分のことでいっぱいいっぱいで、トレーナーさんが、どうしてそんなことを聞くのかちゃんとわかってあげられませんでした。

 

「俺は、君が教えてくれるまで()()()()()よ」

 

 ◇

 

 ……もう、すぐそこまで日本ダービーが迫っていました。





(前)とか銘打ってますが、次回以降の予定は未定。
唐突に掲示板に戻ったりします。
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