出雲奪還作戦終結から三ヶ月後
俺はケヤルガの回復術で元の顔に戻ったが、気が緩めない事が幾つかある
恭子の症状と獅子堂家の存在
恭子の精神は安定になり回復し戦線復帰はいつでもいけそうだ
唯依は泣いて喜び抱き締めたそうだ
獅子堂家だが、これは厄介な連中でその当主である長女は黒い交際していると噂がある
俺は欺衛軍本部の中隊長執務室…恭子が使ってる部屋で佳織や上総が調べ上げた情報を記載してる書類を見ていた。
佳織が裏社会の情報屋を頼ってまで調べた結果、信じられない事が書かれていた
先ず獅子堂家長女の風音は両親の死後、獅子堂財団代表に就任早々、裏社会での繋がりを積極的に交流する
姉妹の中では母親的存在で、義理の弟である響鬼を陰に陽にサポートする
短気な性格で、売られた喧嘩は買う主義。腰にマウントしたRPG-7バズーカを構え、自ら戦う事もある
年齢は22歳、若いな……。
此奴が親玉か……佐渡島同胞団を潰そうとした悪の根源ってところかな?
先述の通り、風音は裏社会にいる住人との繋がりがあり、どんな理由であろうと徹底的に潰す女だ
次女の高嶺は冷静沈着で理知的。獅子堂家で唯一様々な剣術を使う衛士であり長刀使いだ
年齢は20歳
此奴は放置してもよさそうだな、害はない。
三女の秋葉は性格は明るく前向きだが、既に各々の立場を見出す姉妹に対し、自分だけ何もないまま日々を過ごしていることに少なからずコンプレックスを抱いており、自分にしかできないことを追い求めている
衛士ではないのか……軍に所属していない。
年齢は17歳か
此奴も放置だな
四女の那実も欺衛軍の衛士だが、此奴は問題児のようだな
年齢は14…訓練衛士か
……何があったかは詮索しないでおこう
五女の桜は12歳にして博士号を取得した天才。無邪気かつ舌足らずで、擬音を織り交ぜた独特の喋り方をする。その内容は……普通の人間では理解できない
で、義弟の響鬼は欺衛軍の衛士でありながら風音の権力で最新鋭の機体を与えられ、操縦センスは唯依と互角に渡る
年齢は19歳
俺にとっては嫌な印象しかないが衛士としての腕は一級品だ。
「ん?」
その書類を見続けると数々の悪事が露見した
蓮川の訓練事故は獅子堂風音が仕組んだ妨害工作であり、元々蓮川は衛士の適正はあるとは必ずしも言い難かったが、彼女も挽回の為訓練を励んでいた
だが、それを快くない連中は少なからずいたからか当時の女子訓練生を利用して蓮川が乗った訓練機のパーツの一部を欠如させ事故が起きたという訳だ
蓮川自身は結局退校し、清々しい笑顔で両親と共にオーストラリアに移住し平穏に過ごしている
もし蓮川が帝都防衛戦で学徒兵として参加したら確実に死んでいただろう
理由は分からず仕舞いだが、蓮川は衛士にならなくてよかったと思う
俺は溜息を吐き中隊長執務室を退室し手に持ってる書類を封筒の中にしまい、資料室に保管した
「元の顔戻ったとはいえ、この顔は欺衛軍に相応しくないな…俺としては良かったが」
「何が良かったの?」
隣に回復したばかりの恭子が俺に話しかける
「崇宰大尉……もう大丈夫ですか?まだ休まれた方が」
「何よ、私がそう易々と倒れると思ってるのかしら?それに他人行儀はやめなさい」
「?」
「元の顔戻って良かったわね……」
と恭子は俺の頬に触れつつ耳元に近づき囁く
「私の事は恭子と呼んでいいわよ」
!
それって……?
「勘違いしないで、私は貴方の恋人ではないし、まぁ…その、親しい愛する友人ってところかしらね」
凛々しい笑顔を浮かべる恭子は、お姫様みたいな表情で俺の手を繋ぐ
「私は貴方の事を信用してるわ」
「俺は衛士界隈から嫌われてる恥晒しの衛士だぜ?」
「関係ないわ、いつまで過去の事を引き摺ってるの?」
「……恭子、アンタ」
「悔しかったら結果を示しなさい。結果を」
この笑顔が、恭子のこの笑顔が見たかったんだ
まるで恋愛映画に出てくるヒロインみたいな感じだ
恭子は俺の顔をじっと見つつ真顔で説明口調で言い放った
「獅子堂財団……帝都を拠点とする人類史上最大最強最悪の大企業。素粒子工学技術を実用化しようと試み、スペースコロニーの開発に取り組んでいる。これによって人類は宇宙に進出することが可能となり、その功績から莫大な富と権力を手に入れ、全世界に大きな影響力を持つ……オルタネイティヴ5推進派の企業でもあるわ」
「オルタネイティヴ5?」
「詳しくは知らないけど、明星作戦でのG弾投下は存じてるわね?あれは米軍の主導だったけど獅子同財団と絡んでる可能性は否定できない」
何だと……!?
「獅子堂財団、佐渡島同胞団を圧力をかけてまで消滅しようとしているわ。御剣財閥からの支援は打ち切られるのも時間の問題ね」
恭子は険しい表情を浮かべる
佐渡島同胞団は御剣財閥が支援している……それが打ち切られたら、佐渡島は二度と奪還果たせず存在そのもの消滅する
「殿下は獅子堂家の連中を信頼している。暴力団と繋がっていることも知らずに……」
「おい、待てよ!その殿下は獅子堂家の連中の本性は未だに知らないと言いたいのか?」
俺がそう言うと、恭子は頷いた
「殿下を口で上手く誤魔化せても我ら帝国欺衛軍衛士の一人であり崇宰家次期当主であるこの崇宰恭子には誤魔化せは出来ない!」
恭子は般若みたいな顔になり征夷大将軍を欺いてる獅子堂家の連中を憎しみを込めて怒りを露にする
「気持ちは分かるけどさ、とりあえず落ち着こう。な?」
俺は恭子の怒りを収めつつ慰めた
「そうね、ここで血涙を流しても意味無き事……如月中尉から連絡聞いたかしら?」
「ん?いや何も」
「帝都城で五摂家と欺衛軍並びに帝国軍上層部の将校達が緊急招集されたわ。無論私も帝都城へ行く。貴方も行くわよね?」
帝都城……征夷大将軍殿下と御対面出来るのか
「ああ、恭子の頼みは断れねぇ。俺も行く」
正直、この世界に来てから一度も征夷大将軍とは面識がなかった
いよいよか……。
「あ、それと殿下の前に失礼な態度を取らない事。いいわね?」
と恭子は念には念を押す形で俺をジト目で見つめた
「はいはい、分かった分かった。己の態度を弁えろ……そうだな?」
「はぁ……理解出来たならよし。行くわよ」
恭子は俺の手を繋いだまま半ば強制的に資料室から出る
「何処って…」
「言ったでしょ?帝都城に緊急招集されたのよ」
「……了解しました、恭子様☆」
俺は軽いノリで恭子に向け「恭子様」と言った。
そして、俺と恭子は手を繋いだまま帝都城へ向かった。
帝都城……所謂、日本帝国の事実上最高権威である征夷大将軍、煌武院悠陽の住処だ。
史実で言えば徳川幕府歴代将軍の拠点であった江戸城に該当する
煌武院とは五摂家の一つであり、日本における明治維新以降、将軍家でありながら代々歴史ある一族だ。
そして日本帝国軍とは独立した組織である帝国欺衛軍は城内省の管轄下であり独自の専用装備を使用することが伝統となっており、斯衛軍専用の戦術機として撃震の改修機である瑞鶴、局地戦用第三世代型戦術機武御雷を配備している。
だから色分けしてる訳だな
そう心の底から関心してた時、鈴乃も帝都城に来ていた。
理由は……言うまでもないな。
「崇宰閣下」
鈴乃は恭子に向け「崇宰閣下」と呼び真顔で敬礼する
恭子も真顔で敬礼し返した
「『閣下』は控えなさい。今まで通り崇宰大尉と呼んで構わないわ」
「しかし貴女は五摂家の一つの次期当主であり溜口で接する訳には」
「良いのよ、楽にしなさい」
とそう言って恭子は和やかな笑みを浮かべる
「帝国軍上層部並びに一部の将校が既に到着しています。悠一」
鈴乃は俺に話しかける
「駒木や沙霧大尉も来てるわ」
………。
「……ふふ、嘘よ嘘。駒木は別件で来れないから安心しなさい」
おいおい、驚かすなよ
本当に来るのかって思ったじゃないか……。
「念には念を押して言っておきます、征夷大将軍殿下は日の本の国の象徴であり尊敬すべき御方……くれぐれも失礼のないようにしてください、豊臣少尉」
恭子は他人行儀で真顔しつつ俺と接した
「はい、承服致しましたよ。崇宰大尉殿」
俺は軽い口調で「承服致しました」と一言を添える
「分かればいいのよ……ほら行くわよ」
「へいへい」
「何?その態度は」
「了解しました!」
さてさて、その征夷大将軍とやらのお偉いさんと御対面しますか。
俺達は帝都城の中に入り大広間に入った
そこには五摂家の衛士達と帝国軍将校等が集っている
帝国軍欺衛軍の合同会議と言ったところか
俺は真ん中にいる女性が……おい、嘘だろ、まだ子供じゃねぇか!
あんなガキが征夷大将軍殿下かよ
日本の長が、1人の少女だとは驚いた
俺は欠伸をしつつ正座で座り込む
「こら、殿下の前よ。欠伸しないで」
欠伸くらいいいだろうが……。
征夷大将軍が真ん中で左側にいるのは欺衛軍、右側にいるのは帝国軍
勿論唯依達もいる
「煌武院悠陽……我が日本帝国の現・政威大将軍殿下よ」
恭子は静かに小さい声で俺の耳元で囁く
煌武院悠陽………此奴が征夷大将軍なんだな。
高貴で冷静沈着な性格であり穏やかな面はありそうだ
内心は不安で一杯だったがまったく不安に感じていない者が2人いた。
俺と鈴乃だ。
そして時刻は深夜0時になった時、悠陽は鈴乃に声をかけ前へ座らせた
「其方にいる女性、前へ」
鈴乃は真剣な表情で目の前にいる悠陽と対面し会話し始めた
「佐渡島同胞団の大倉鈴乃大尉です」
「貴女様の活躍は存じています。佐渡島の戦いは御辛かったでしょうが帝国軍の坂崎都大尉を失った事は極めて遺憾だと心の底から悔やんでいます故」
「ハッ、自分は一軍人として任務を遂行したまでです。坂崎大尉も一軍人として最後までBETAと戦ってまで自ら殿を務めていました。自分の無力さがあり、彼女を救えなかった事が……悔やんでおり悲しさを感じ涙を流しました」
鈴乃は都を救えなかったことを悔やんでいる
俺だって同じだ
都が下した最後の命令の意味は「生き延びろ」
その一言しか浮かばなかった
「では貴女様の目的は何でしょうか?ぜひお話して頂きたいのです」
佐渡島同胞団の存在意義だろうか?
それしかないだろう
「佐渡島同胞団という組織……その目的を是非お教えしたいのです」
「佐渡島同胞団の目的は我が日本帝国領土の島の一つ、佐渡島をBETAを追い払いそれを奪還する。存在意義は今のところ『佐渡島奪還悲願』という目的です」
日本の有力企業やらがバックについてる佐渡島同胞団が戦術機や艦艇を揃えられるのは御剣財閥からの支援と五摂家の斑鳩家、崇宰家が組織作成を図ったのもある
指揮系統煩雑化させる集団なんて作る理由がないと等しいが、佐渡島奪還悲願を目的を掲げていることは変わりはない
「佐渡島奪還と言う目的があるなら組織を作る必要性はないとわたくしは思っています」
悠陽は佐渡島同胞団の存在を否定してしまった。
おいおい、まさかとは思うが……。
そして黒い軍服を着てる衛士と1人の女性が会話を割り込んだ
「島1つを拘って今すぐ奪還する必要性はないと思いますわ」
「それにあんな島、他国にくれてやって良いと思います……で?天下の崇宰家次期当主様が何故生き延びたんですか?おかしいですよね、出雲の時は既に死んでいてもおかしくないくらいです。いっそいなくなった方が良かったのですが」
風音と響鬼が醜悪な論理で悠陽に向かって平然と言い放った
「殿下は存じてると思いますが、佐渡島ハイヴを攻略するのは多額の費用が必要かと、例えば……島1つ消滅させるほどの威力を持つ自爆装置を備えた機動要塞とか」
悠陽はその一言を聞いて唖然とした
これは流石に見ていられないと思い俺は悠陽の前に立った
「お待ちください殿下、佐渡島同胞団は必要な存在です。他国に売り渡すなど…殿下はお望みではないでしょう」
俺は悠陽に咆哮する
だが、風音が余計な一言を悠陽に言った
「必要な存在?何処なのかしら?」
「!」
この女……征夷大将軍の前だぞ
「我々獅子堂財団は佐渡島同胞団の存在意義は虚無に近いと思い、解散を命じて頂けないかと所存です」
……此奴!
「豊臣、戻りなさい!」
恭子は俺を戻ってくるよう命じた
だがな、こんな理由で解散とか納得いかねぇ!
「殿下は日本本土を再びBETAの手に墜ちる事は望んでいない……ここにいる皆だってそうです。世界中の衛士達が皆揃って必死に頑張ってるんだ!」
風音は怯む様子はなく次々と身勝手な発言を言い放った
「殿下、この不届き者の1人の甘言を耳傾ける必要はありませんわ。存在意義がない集団は解散すべき……佐渡島奪還は後からにしては如何かと」
悠陽は風音の言葉を聞き、とんでもない事を言った
「……大倉鈴乃大尉」
「ハッ」
「佐渡島同胞団はわたくしの命により解散を言い渡します」
風音の思惑通りになる
焦った俺は征夷大将軍である悠陽に対し暴言を言い放った
「……しれっと切り捨てんじゃねぇ!ぶっ殺すぞ!クソアマが!!」
その言葉を聞いたここにいる皆はざわつき始め恭子は立ち上がり俺の暴言で堪忍袋の緒が切れ怒りを露にし般若顔になり俺を近づいた
「貴様!殿下の前に無礼な態度を!!」
顔近づけられると……鬼だ
まさしく鬼姫と相応しい表情だ……。
「殿下に対し暴言を吐くなど言語道断!欺衛の衛士として恥を知らないのか!」
ああ、そうだよ!俺は欺衛の誇りとか武家のどうとかどうでもいい!
鈴乃の願いを、叶えたいんだ!!
「アンタはそれでいいのか?」
「!」
「アンタは佐渡島にいた住民の気持ちが分かるか?あの人達は故郷を失われ、苦しい生活を強いられて過ごしてるんだ!それを蔑ろにするのは……最早鬼畜の所業だ!!」
俺は怒りを露にし睨み付けてる恭子に言葉をぶつける
「アンタもだ、征夷大将軍殿下。民の気持ちを考えて行動を示してると思いがちだがそれは単なる思い込みだ!分かるか……大切な人を失った人の気持ちを!」
その様子を見た悠陽の側近の一人、月詠真耶は一喝した。
「貴様!殿下の御前であるぞ!!」
「今は俺と殿下が話してるから黙って聞きやがれ!!」
「な……何だその態度は!」
恭子は更に俺に睨み付け怒りを表す
「今すぐ謝りなさい」
沈黙……恭子の怒りのオーラがここにいる皆を黙らせた
「謝りなさい!」
恭子は俺に謝罪を要求する
……表情は般若みたいに怒りを露にしてるが涙を流している恭子は唇を噛み締める
「くっ………この愚か者が……!何故、言う事を……聞かない……!」
俺は恭子が悲しみつつ泣いていると悟った
冷静沈着で今までの様子を黙って傍観した斑鳩少佐は重い口を開いた
「お見事だよ、崇宰大尉……豊臣少尉も」
「あ?」
「(崇継……どう言う事なの?)」
「殿下の前で平然と暴言を吐き彼女の命を下したにも関わらず君はそれを叛いた……が君は単に殿下の前に暴言を吐いた訳ではないだろ?」
斑鳩少佐は俺の暴言を単に吐いた訳ではないと解釈し、佐渡島同胞団を解散を仕向けた風音と響鬼を糾弾する
「獅子堂風音……だったかな。君達の発言は日本に対する冒涜だ。島を他国に渡すなど笑止千万。これは冗談では済まされない事だよ」
「……しかし、同胞団の存在意義は」
「ないと等しい…その通りかもしれないね。大倉鈴乃大尉と豊臣悠一少尉の熱意は確と伝わったよ。佐渡島をそこまで拘ってまで奪還を悲願している……それを実現するのは我々欺衛の役目だと思っております。殿下」
風音は冷静さを欠け悔しそうな表情を浮かんだ
「君もだよ、獅子堂響鬼」
「な……斑鳩少佐、誤解です!自分は欺衛の為に」
「島1つを他国に渡すことが欺衛の為だと自分の発言を正当化するのかな?」
斑鳩少佐は響鬼に向け言い放ち、笑みを浮かんでいるが目は笑っていない
静寂な怒りだ
「それは……」
響鬼は表情が真っ青になり焦っている
「崇宰大尉を亡き者になればよかったという発言は如何に不適切な発言か君は分かっている筈だ。豊臣少尉も欺衛の衛士としては最低レベル。それは言うまでもない……好き放題で軍規違反してまで振る舞う事は凄いよ。殿下は外で起きてる出来事は全て把握してはいない」
そうか……征夷大将軍殿下は辛い事あるんだな
俺としたことが、見誤ったぜ
悠陽は斑鳩少佐の目を見た真剣な表情で話した
「斑鳩少佐、わたくしは豊臣悠一少尉の事は欺衛軍には相応しくない存在であり自由奔放である故に問題を頻繁に起こしてる者は嫌っています。なのでわたくしの評価だけでなく、殆どの人達は豊臣少尉の事を嫌っているとしか言えません」
「ならば、その嫌われ者を好かれる衛士に変貌させれば評価は変わってくると」
「そんな簡単に出来る筈がありません。貴方はそれを出来ると言いたいのですか?」
おいおい、斑鳩少佐…殿下に盾突くのか?
そんな人間じゃないだろ
「勘違いしないで頂きたいのですが、殿下に対し盾突くようなことはしていません。豊臣少尉に再教育が必要かと」
「再教育……ですか」
「無論、私ではなく崇宰大尉がそれを実行し欺衛のいろはを最初から最後まで教える形で佐渡島同胞団を存続するというのは如何でしょうか?」
恭子は斑鳩少佐の言葉を聞いて怒りが静まり呆れ果てていた
鈴乃も驚愕し言葉を失った
「崇宰大尉も、私の提案を受け入れてくれると有難い」
「………了解しました」
恭子はそう言うと悠陽の方に向く
「お話は纏りましたか?」
「殿下、佐渡島を奪還悲願を目標を掲げている佐渡島同胞団の存続をどうか受け入れて頂く所存であります!豊臣悠一少尉の再教育は私、崇宰家次期当主である崇宰恭子が全責任持って遂行して見せます!」
恭子は凛とした表情で悠陽に言い放った
「……そこまで言うのであれば、佐渡島同胞団存続を承認しあとの事は貴女に一任します。崇宰大尉」
「ハッ!有難き御言葉感謝します」
何とか事を収まり解決した……のか
欺衛のいろはを全て最初から最後まで叩き込まれる羽目になったが、悔いはない
都の仇を取り鈴乃の悲願を叶える
俺はとっくにそう誓ったから
帝都城から出て2時間後、合同会議を終え、俺は恭子と鈴乃と共に大手町のオフィス街に歩いていた
この街並みも元にいた世界と変わらないんだな
「全く、殿下の前に暴言を吐くなんて良い度胸してるわね……斑鳩少佐が丸く収めて獅子堂財団が佐渡島同胞団を解散を仕向けた証拠として反社会勢力と繋がりがあると証明されたわ」
「そうか……でも許せなかったんだ。故郷を失った国民を使い捨てるなんて、耐えられなかったんだ」
佳織の調査のおかげで悠陽は獅子堂財団を見限り信頼を失くしていった
だが、それは獅子同財団だけの事だ
肝心の獅子堂家の連中は信頼を失わず保っている
「だからと言って、暴言吐くことはないでしょ?」
確かにそうだ、常識的に考えれば……だがそうせざる訳があったんだ。
「……すまねぇ恭子、迷惑かけちまったな」
「ふふ、冗談では済まされない事で-50点と言いたいところだけど」
「?」
「100点満点よ、自分の意見を主張するのは良い事よ」
へへ、そうかい
少し照れるじゃねぇか……。
「但し!他人の意見も聞くことも大事よ。自分の主張ばかりだと皆から嫌われるわよ」
「おう、気を付けるよ」
「あとはそうね……我ら欺衛、戦場において常に先陣あり。退く機は殿を務む」
ん?出雲奪還作戦の時に言った台詞だな
「恭子、俺はその言葉の意味が分からねぇ。欺衛のいろはを身に付けたい…教えてくれないか」
俺がそう言うと、恭子は子供じみた表情でクスっと笑みを浮かべる
「ふふ、勿論よ。我ら欺衛、戦場において常に先陣あり。退く機は殿を務む……その言葉の意味は欺衛たるものの衛士が戦で常に前へ突き進み、退く機体は殿……分かりやすく言えば前線へ出て後ろにいる機体を守りに入る。そんなところね」
そういう意味だったのか………。
「知らなかった訳ね。少しずつ普通の欺衛の衛士として常識を身に付けましょう」
「了解です」
「うん、何年かかるか分からないけど貴方自身の努力次第で皆から好かれるようになるわよ」
好かれる衛士ね………。
「好かれる衛士ね……悠一なら出来るわ」
鈴乃も割り込む形で会話に参加する
「……一度失った信頼は二度と取り戻せないのよ。それを挽回する為に他人を罵らずに自分を磨くことが大事よ」
「要するに自分磨きか」
「そうよ」
恭子は突如立ち止まり、俺の方に振り向いた
「誰だって恐ろしい事はあるわ、恐れを知りつつ立ち向かう……今夜は深く眠れそうね」
と優しい笑みを浮かびつつ俺の手を繋ぎ始める
「では私も」
鈴乃ももう片方の手を繋ぐ
ん?どういう事だ…これは
何なんだこの構図は……!
「大倉大尉も付き合ってくれるかしら?」
「はい、恭子様の為なら何なりと」
鈴乃、いつから恭子の僕となったんだ?
圧迫……俺が真ん中で左右から挟まれ圧迫している
そう歩いてるうちに野次馬が俺達を3人揃って手繋ぎしながら歩いてるところを見られてしまった
「あ、恭子様だ」
「真ん中にいるのは誰だ?一般武家の衛士にしては髪型が似合ってないな」
「右にいるのは帝国軍の女性衛士だ。何で恭子様と共に挟んでるんだ?」
おいおい、見られてるぞ
「あ、此奴!豊臣家の恥晒しの衛士だ!」
「何で恭子様と一緒にいるんだよ!」
「ホント、恥晒してるだけでいいよな」
此奴等、好き放題言いやがって……!
「気にせず堂々と歩きなさい。欺衛たる者、無暗に怒りを露にせずそれを買わずべし」
そう…だよな。
こんな野次馬に相手してまで怒るのは恥晒しだよな
「私の家まで向かうわよ」
「お、おう」
そして3人揃って恭子の武家屋敷に向かった。
恭子の武家屋敷……崇宰家邸に到着した俺を含め恭子と鈴乃はその武家屋敷の中に入る
玄関に待ち受けてるのは、使用人らしき女性で青い蝶の飾りで黒髪ツインテールだ
あれ?よく見ればどっかで見たような……?
「おかえりなさいませ、恭子様。今日はお疲れでしょう。ご飯の支度は済ませていますので食べて行ってくださいね」
「ええ、ありがとう葵」
アオイ?
此奴は……そんな事よりまずは腹ごしらえだ
「紹介するわ、使用人の神崎葵よ」
「宜しくお願いします、話は恭子様から全て聞きました」
「貴方達2人は今日からこの武家屋敷で住み込みする形で修行を受けて貰うわ」
は?
おいおい、勝手に決めるなよ
第一、鈴乃が承服しましたという訳が
「承服しました。恭子様の頼みは断れませんので」
承服するのか!
俺は呆れ果てていた
「さぁ、あがって。葵、今日の夕食は何かしら?」
「はい、今日の夕食は天ぷら定食です」
恭子は笑みを浮かべつつ靴を脱いで玄関から上がる
俺と鈴乃も靴を脱ぎ玄関から上がった
「さあ、此方へどうぞ」
使用人の葵が誘導し食卓へ向かう
そこに並べていたのは海老、南瓜、薩摩芋等の天ぷらと味噌汁、白米があった
椅子に座り、割り箸を左右に割り食事に手をかけ食べようとするが
「はい、そこ!食事する前に一言添えなければいけない事あるでしょ?」
ん?礼儀作法か。
食事をする前に「頂きます」と言うのは当たり前だ
「あぁ……頂きます」
「それと割り箸を左右に割るのは縁起悪いからやってはいけないのよ」
恭子は割り箸を持ち両手で水平に持って上下に割った
「これが正しい割り箸の割り方よ」
これは厳しくなりそうだな………。
「和食では、どれだけ食事中のマナーを守っていても正しく箸を使えないようでは笑われてしまうわ。大倉大尉、割り箸を持って両手で割りなさい」
「承服しました」
鈴乃は割り箸を持ち両手で水平に持って上下に割り上側の箸は、人差し指と中指の間に挟み、親指を添え下側の箸は、親指の付け根と薬指で支えた。
「夕食頂きましょ、冷めてしまうわ」
安堵の表情で夕食を無言で静かに食べる
お通夜かよ……。
「……」
恭子は和やかな表情で笑みを浮かび天ぷらを一つ食べる
「豊臣、今夜良いかしら?」
「何がだ?」
俺は恭子が何を言いたいのか理解できずポカンとした。
何を言いたいんだ?
恭子は俺に「今日は一緒に寝たい」とサインを送り頬を赤らめる
え!?
初日から夜の営みかよ………冗談だろ?
だが恭子の顔を伺ってみると冗談ではなさそうだ。
俺は「勿論だ」とサインを送り返す
その光景を見ていた鈴乃は寂しそうな顔をしていた
「……」
「どうした鈴乃、寂しい顔して」
「都が生きてたらあの光景とかしてたんだろうなって思ってただけよ」
鈴乃は俺に寂しげな顔で言った。
「都……坂崎都大尉の事かしら?」
「あ、はい」
恭子は芝居がかった笑みを浮かべながら白米を一口を食す
「彼女の意思は貴女に託されたのよ、豊臣もそうでしょ?」
都の仇は絶対に取らなきゃいけない
分かってる
分かってるさ
「暗い話は御終いにしましょう、ご飯が冷めちゃうわよ」
会話は終え、俺達3人は夕食を楽しんでいった
夕食を済んだ後、俺は1人で恭子がいる小広間に入った
そこには白装束の恭子が畳で正座しながら優しい笑みを浮かべ来るのを待っていた。
「待っていたわ、時間はぴったりね」
と恭子は小広間にある時計を見て時間針を見る
「あ、ああ…で、俺なんかで良いのか?」
「良いも何もこれは貴方の為に着たのよ」
俺は恭子に近づき目の前に正座する
緊張が隠せない……。
「初めて?」
「畳の部屋ではな」
「そう、緊張してるのね」
恭子は俺の手を掴み自らの胸を当てさせた
心臓だ、鼓動が鳴り響いている
「鼓動を感じてるかしら?」
感じてるも何も、ヤバい……興奮してきたぞ
「焦らないで、私は逃げないから」
恭子は白装束を脱ぎ、美しき白い肌を晒しつつ顔は上気して恍惚となって、宙に幻を追っている表情になる
何も着けてないのかよ
余計に興奮するぜ
「顔近づけなさい」
「では、失礼して」
俺は頭を下げ、恭子の顔に近づく
恭子は無言で俺の唇を重ね抱き締める
舌を上手く絡め唾液と唾液を重ね激しく激しく体と体を重ねながら抱き締める
甘く良い匂いが漂っている
「なぁ、恭子……」
「なぁに?」
「俺の告白聞いてくれないか?その…前回の時忘れてると思ったからよ」
「もう一回かしら?」
ぞくっとするほど艶かしい清く美しい、俺のモノにしてやる
「ああ、俺と結婚前提に付き合ってくれないか。お前の事一生大事にするから」
俺はもう一度恭子に告白した
「『付き合っていただけないでしょうか?』ほら訂正して…」
「俺と結婚前提に付き合って頂けないでしょうか?」
「『お願いします』」
「お、お願いします……」
火のように、いつまで燃えつづく情炎と、それに耐えうる豊満で厚艶な肉体の所持者だ
恭子は和やかな笑みで俺の顔を見つつ唇を重ねた
「ふふ、この事は唯依や他の皆には内緒よ」
「恭子、愛してるぜ」
「他の女性にその台詞を言ったんでしょ?」
「へへ、でも一番好きなのは恭子だからな」
「口が軽いだけの調子乗る男なんだから」
今まで恭子は何人かの女性が憧れ、その目標として衛士になった者もいれば、何人かの男は彼女を振り向いてくれると思い告白しようとするがそれを躊躇い高嶺の花として距離を置きつつ好きな女性衛士であることは変わりはない。
この日本国民全体で彼女に恋をしなかった者はいない
だが、それは昨日までだ
今日からは俺の『彼女』だ
「……私の事が本気で好きなら様々な修行と鍛錬を乗り越える筈よ」
恭子は和やかな笑みを浮かべる
「俺も乗り越えられるかな、正直不安だぜ」
「乗り越えられるわ、唯依まではいかないけど無理に高い目標を掲げる必要はないと思うわ」
そう言って笑みを崩さずキスし俺は恭子の首筋を舌で舐め回す
舐め回したら恭子は官能的な声を漏らし喘ぐ
「んん……ぁ、くすぐったい」
「ん、そろそろ入れようか?」
「まだ早いわよ」
「んじゃ、このまま抱き締めながら一緒に寝ようか」
「……」
?
恭子、どうしたんだ。
「明日は私が直々叩き込んであげるから覚悟はしなさい」
あぁ、そう言う事か
「こんな美人の女性からの頼みだったら断れないよ」
こうして俺は恭子とそのまま抱き締めながら深い眠りについた
次回、2人がいよいよユーコンへ出向します
お楽しみに!!