ようやくアメリカ側のスタッフが今日到着するそうだ。
やっと俺達の任務であるガンダムの演習を行える。
演習は明日の予定だ。
さて、演習前日である今日朝のブリーフィング。
だが急遽本日、アルゴス小隊に広報のための撮影任務が入った事をドーゥル中尉が告げた。演習場の整備や撮影機材の関係だそうだ。
内容は……
「ソ連の戦術機とアメリカの戦術機との共同撮影よ、悠一」
「あ?」
だが俺はこれに、大いなる破滅の危機があることを発見した。
この破滅をさけるべく、俺は果敢に諫言を行うことを決行する。
「東西両陣営の雄・アメリカとソビエトの実験機が、母なる地球の象徴であるアラスカの大自然を背景に、エレメントを組んで飛ぶ……素敵な光景ね」
東西両陣営の雄・アメリカとソビエトの実験機が、母なる地球の象徴であるアラスカの大自然を背景に、エレメントを組んで飛ぶ……か。
俺は咄嗟に吹き笑った
「ぶは!」
笑いを堪えられず大声で高笑いをする
「ぐはははははははは」
「何笑ってるのよ」
「失礼、つい笑っちゃったぜ。まさかあの”猿丸”がアメリカのアクティヴイーグルを乗るとは笑える話だ」
「ああー? どういうことだテメー! アタシの腕がこの程度もできないヘッポコとでも言うのかぁ!?」
よりにもよって、”猿丸”がアクティヴイーグルに乗るのか
あのガキが、共産主義、社会主義思想で脳をやられているであろうソ連の衛士、ましてや同胞国等の欠片である東欧州社会主義同盟と仲良く撮影など出来る筈がない。
「マナンダル少尉! 発言は許可をとってからにしろ。豊臣少尉も仲間をサルと呼ぶのはやめろ」
「へいへい」
どうでもいいがこのブリーフィングの光景……小学校の自由時間の光景と言っても過言ではないな
ま、俺にやられるのが見え見えなんだがな
仕切り直しだ
「衛士としての腕は貶しません。むしろ大きく秀でたものがあることを認めます。ですがこの任務に求められるのは品性と実力。マナンダル少尉にソ連衛士と仲良く撮影飛行ができるとは思えません」
「貴方も品性の欠片がないでしょ」
「こりゃ一本取られたな」
俺は全員の顔を見回したが、一人を除いて全員「もっともだ」と言う顔。
「この任務に限っては、ジアコーザ少尉もしくはブレーメル少尉。どちらかが代わりにアクティブに乗る事を愚考致します。ドーゥル中尉、如何でしょう」
しかし俺が尽くした諫言は届かない。
アルゴスは破滅の昏い道を歩み行く。
「まさに愚考だな。撮影の求める飛行はかなり難易度が高い。両名ともしかるべき時間があれば熟すだろうが、撮影は今日だ。アクティブイーグルに乗り慣れ、操縦技術に優れるマナンダル少尉に任せる。マナンダル少尉、豊臣少尉の心配は杞憂だな?」
「勿論です! 豊臣の心配する事など何ひとつ、全く起こりません!」
おうおう、言ってくれるねぇ
フラグ回収ってとこか
”猿丸”と一緒に死ぬのは勘弁だぜ
さて、演習前日の今日よりやっとフルアーマーガンダムに乗れる。
俺と鈴乃の今日の予定は、互いのガンダムの機動チェック。アルゴスは撮影だ。
正式な衛士となったいま、流石に俺一人だけパイロットスーツはもう着れないので、衛士強化装備を着なければならない。ただし対G性能は普通のものより格段に向上させてある。
99式衛士強化装備弐型……これが俺が着る強化装備だ
因みに鈴乃は99式衛士強化装備着用しつつ99式気密装甲兜と言う名称の簡易ヘルメットを被り機体を操縦する
アルゴス小隊とともに衛士強化装備を着て格納庫に集合した。
互いのチームごとに今日の予定を確認する。
「明日の演習、準備は出来てる?」
「あだぼうよ、俺がそんなヘマすると思ってるのか」
「思わないけど、軍律も言葉使いもダメのようね」
「?」
「彼奴に勝ちたいんでしょ?ダリル・ローレンツに」
………そう、だな。
彼奴を倒すまで俺は絶対に死なねぇ
俺は鈴乃と傍にくっつきつつ笑みを浮かび合う
”猿丸”は「こいつウゼェ~!」とかほざいた。
「衆人観衆の中でハデに転んで泣いちまえ。お姫様」
「ソ連衛士と乱闘して営倉にブチ込まれなさい。”猿丸”が」
「ぐぬぬうぅ!」 と、睨む”猿丸”だが鈴乃は涼しい表情で無視した。
そこにアルゴス常識人2人がたしなめる。
「やめなさいタリサ。2人とも任務で争わないの。ミスが出ないよう、互いにフォローしあうのがチームよ」
「まっ、タリサのお守りはこちらの役目だ。互いに相手の仕事には口出しせず、自分の仕事を完璧にこなそうぜ」
しかし、これで互いに任務に出るのは少しおもしろくない。だったら………
「んじゃ、賭けと行こうか」
「はぁ? 何をだよ!」
「もし、お前が撮影任務を滞りなく熟したなら、俺達は以後サル呼ばわりはしない。そちらも、俺達が演習を完璧に熟したなら鈴乃を”お姫様”と呼ぶのをやめときな。こう見えても本土防衛軍で佐渡島防衛戦に生き残った衛士の一人だ。タリサだったか?お前が鈴乃に対し言ったのはそれは佐渡島の人間に対する冒涜だと俺は解釈するぜ」
「こう見えてもは余計よ」
ステラ、VGは「なるほど」と言うように頷く。
「良いんじゃないかしら? 仲直りのきっかけになりそうだし」
俺は確信している。以後も俺は彼奴を”猿”と呼び続けることを。
そして彼奴が鈴乃をお姫様呼ばわりをやめさせる完璧なプランだ。
「整備の連中に面白い博打を提供してやれそうだぜ。悠一。あんたもやろうぜ!」
まるで銀行のような博打だな、VGさんよ。
俺達の成功と彼奴の失敗にに預ければ、利子がついて返ってくる。
「ふふ、仕方ないわね。恭子様の頼みだもの……悠一のお守りは私の役目よ」
おっ、心強いな鈴乃は、いや前からそうか。
「しかしよタリサ。真面目な話、さすがにここまで舐められっぱなしじゃ、同じアルゴスとして立つ瀬ないぜ」
「そうね。衛士は戦闘だけじゃなく、あらゆる状況に対応し、滞りなく任務をこなすことも重要な資質よ」
「ああ、分かっているよ。ガキじゃないことを証明すりゃいいんだろ? ひとつソ連の冷血女どもと仲良く握手でもしてくるぜ」
撮影任務の機体搭乗前に、アルゴスの3人はソ連衛士の待機所へと向かった。
これは見逃がせないな。
「私も行ってくる。あの”猿丸”は確実にやらかす。だから決定的瞬間を見て、悪役中隊長の如く笑わなければな」
「……………程々にな。本当に仲が良いな、お前ら」
さて。ソ連チームの待機所。
そこのソ連女衛士に、今日の撮影フレンドリーによろしくをしに行った”猿丸”の結果は……。
―――――――パアァァァン!!!
「……なっ……にすんだゴルァーー!!!!!」
握手に差し出した手を見事に振り払われた。
鈴乃は予定通り悪役中隊長の如く。気高く声を響かせて。
「クククク…あははははははははははははは、ははははは…! 流石は冷血ソ連衛士。”猿”と握る手は持っていないという事か」
幼い雰囲気の少女衛士を側に連れているソビエトチームの女衛士は、そんな鈴乃をジロリと見る。
「馬鹿笑いはやめろ享楽主義者。人前で声を立てて笑うなど、貴様は本当に衛士か? 西側の衛士育成機関は欠陥だらけのようだな」
そう言われると鈴乃は怒りを露にする
「日本帝国軍の一中隊指揮官だった衛士に喧嘩を売るのか? 少し気になってたが隣にいる子供はなんだ?そんな子供を連れ回し侍らせ、くっつきながら待機するのがソ連衛士の流儀なのか!?」
少女に指刺して言うと、女衛士は指先から少女を守るように前に立つ。
「………………イーニァはれっきとした我が国の衛士だ。復座仕様となっている私達の機体に、私とともに搭乗する大切なパートナーだ」
「訓練兵が何故ここに?ふふ……」
冷静になり鈴乃は佐渡島防衛戦の話をソ連の衛士に振る。
確かに衛士強化装備をつけてはいるが、訓練兵かと思ったぜ。
俺の決めつけだが平凡な音楽趣味のこの女が、任務に託けて随伴させ、隠れてイチャコラしてるのかと思ったぜ
「佐渡島防衛戦……東側である貴様でも知ってるだろ?」
「アメリカに見捨てられ島1つBETAに吞み込まれ挙句の果てに犬死になった衛士が沢山産んだ事だろ?流石に私達でも知ってる」
ソ連女衛士は鈴乃を侮辱し都が佐渡島で戦死した事含めて犬死と言い放った
「あの島には5万人が住んでて、その中には民間人が沢山いてた!新潟で佐渡島にいた衛士の殆どが徴兵されて島の守りが手薄になってしまった……あの時、地獄を見ていた。BETAに喰われる島の人間が犠牲になり橘司令や坂崎大尉が死んだ!不安で悲劇で…私は悲しかったんだ!それなのに貴様は坂崎大尉達の事を侮辱し貶した!最早鬼畜の所業だ!」
鈴乃は敵意を剥き出しソ連女衛士に怒りをぶつけた
「心中お察しするよ、我々は慣れ合いを好まない。二度と近寄るな!……………いや、貴様。さっきイーニァを侮辱したな。その罪、安くはない。覚悟しておくんだな!」
「貴様を完膚なきまで叩き潰す……!」
うわっ、険悪になってきたな……。
ヤバイ! 鈴乃がやらかした!?