トータルイクリプスサンダーボルト   作:マブラマ

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第16話 ラプター

悠一Side

 

鈴乃によれば、自分がシステムを弄ればステルス機でも探知することを可能にできるそうだ。

だが、あえて俺はそれをさせない。

どこから来るか、いつ襲われるかも知れないステルス機の緊張。

それを、どうしようもなく楽しんでしまう自分がいる

つまり俺だ。

「待ち兼ねたぜ」

あらぬ方向から砲撃が飛んできた。それを既に察知した俺は機体を急発進。

俺の居た場所には、ペイント弾の塗料がベトリ。

「はッ、いい腕だ。初弾を当ててくるとはな!」

これがラプター……素早く動いてるな

だがな…!

「死角から撃つとはな、ただの熱り野郎じゃねえ。これは戦術機じゃなくモビルスーツ。戦術機の網膜投影システムじゃ死角になっても、モニターにはバッチリまる見えなんだよ!」

初撃を外した敵は、すぐさまフルオートの斉射に変えてきた。

精密にして密度の高い良い斉射だ。

俺は水平跳躍で砲弾を掻い潜りながら移動。

あたり一面の爆発と轟音と黒煙が拡がる中を匍匐移動で進む。

フルアーマーガンダムの加速と旋回性は素晴らしく、この砲弾の嵐にもまるで当たる気がしない。

やがて戦術マップに突如敵性光点ブリップが出現。

ステルスも接近すれば反応は出るようだ。

光点ブリップ目指して進むと、やがて砲撃が止んだ。

「……………?」

疑問が湧いた。

ブリップマーカーが動かない

そんなバカな。砲撃が止まったのに動かないなんてあり得ない。

「俺も分かった。欺瞞だな。マヌケな俺を釣り上げるポイントは…………ここだ!」

俺は光点ブリップを無視して想定される狙撃地点へ向かう。

するとまたまた突然に敵性光点ブリップが出現。

「さて、終わらすぜヤンキー」

俺は機器にテープを貼ったカセットレコーダーの電源を入れ軽快なジャズを流した

ラプターが目視でハッキリ見えた。

機体動作に驚愕が伝わってくる。

魂を込めて撃って撃って撃ちまくる!

だが……………

「逃げられた!? 普通なら、これで終わりなんだがな」

ラプターは被害を小破にとどめ、いち早くこちらの有効射程範囲から離脱した。

流石ラプター…………いや、あれは機体性能だけじゃなく腕だな。

良い感じに振り回すもんだ。

「だが勝負は見えた。オーディエンスはなしだ!」

俺はフルアーマーガンダムを加速させ、兎狩りにはいった。

一度見つけてしまえば、あとは機体性能の差で距離をつめて、逃がさなければいい。

「ジャズが聴こえるか?アメ公!互いに脱落するまで最後まで勝負を楽しもうぜ!」

俺はラプターのパイロットを煽る

ラプターは爆走音も考えずフル・スロットで距離を取ろうとする。

されど此方のフルアーマーガンダムはあっさり併走。

そのまま突撃砲を撃ちまくる!

そして加速で接近しサブアームに付いてる追加装甲を放棄しラプターの背後からがっしりと掴む

「これで身動きは出来ねぇな……」

そしてジグザグ飛行でラプターを投げつつビルの窓に叩き付ける

サブアームで短刀を装備しつつその刃でラプターの管制ユニットに突きつける

「その状態じゃ限界が来たようだな」

もう一つのサブアームで短刀を振り回す

「終わりだ……アメ公!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴乃Side

 

今日は主任務のはずの演習日。

なのに私は朝から今まで基地内医局で精密検査の一日だった。

流石、トップクラスの衛士精密検査。女の尊厳、踏み躙る事色々してくれるじゃない

医局の片隅でそんな風に黄昏れていたが、夕方頃、やけに医局内が騒がしくなった。

騒ぎの元の場所に行ってみると、それは幾人もの白衣の医療従事者が誰かを担架で搬送している現場だった。

「訓練中に事故でも起こったのか? あれは一体誰なんだ?」

「俺の今日のセッションの相手さ」

いつの間にか悠一の後ろに、紅林が来ていた。

「演習は終わったんですね。それで結果はどうでした?」

「まぁ、な。時間切れの優勢勝ちだったが」

悠一は歯切れ悪く言った。

「フルアーマーガンダムを駆ってまで、随分としょっぱいですね」

衛士も機体も並ぶものがないほど最強クラスの組み合わせなうえ、超ハイスペックな戦術ナビゲーター兼整備兵の紅林までいて、時間切れまで持った衛士がいることが信じられない。

紅の姉妹といい、この世界にはバケモノみたいな衛士パイロットがいる。

「この結果は相手の衛士を褒めるべきだな。45分、高速機動を続けて徹底的に俺に射撃のタイミングを許さなかった。その代償があれさ。ついでにラプターもスクラップだ」

悠一は緊急搬送で処置をうけているその衛士らしき男を親指で刺した。

あの痛々しい姿は、現代の戦術機で宇宙世紀のモビルスーツに抗った証か。そう聞くと、あれも勇者の姿に見える。

「でも、そこまで演習の勝負に拘って入院なんてバカみたいじゃありませんか。しかも最新鋭のテスト機までもスクラップにして。負けても死ぬ訳じゃあるまいし」

紅林は染み染みとした表情で言った

「向こうにも負けられない事情があったのかもな。それともバカみたいに負けず嫌いだったか……」

「相手の人、俺が救助でハッチを開けたとき泣いてたな」

「え⁈勝負に負けて泣く人だったのか?悠一」

「さぁな、戦場は男も女も関係ねぇ。平和な人生送るのは彼奴を倒してからだ」

「確かに衛士に男女の別はない。皆等しく戦場に出て命をかける戦士なのだから」

「それでもだ。男は女に無様な姿を見せたくないんだよ」

悠一とそんな話をしていると、そこに篁中尉が来た。

彼女は、演習の進行が忙しくて医局ここに来ることは出来ないと、言っていた筈だが、理由を聞いてみると、やはり仕事絡みのことらしい。

「実は、漸く我がXFJ計画の機体である不知火改修機が組み上がりテスト機動をおこなえるようになったと、連絡があった。貴様達のガンダムも参考にしたので、相当なじゃじゃ馬になるらしい」

「メインテストパイロットは誰に?まさか”猿丸”か!? あれがじゃじゃ馬に乗ったら、世にも恐ろしい暴走が起こるな」

「いや。メインテストパイロットを務めるのはユウヤ・ブリッジス少尉」

「………………誰だ?」

「どういう事だ、篁中尉!」

「ユウヤ・ブリッジス少尉はアメリカ陸軍戦技研の者であり、今日の豊臣少尉の相手を務めた衛士だ。どういう経緯か国連へ出向となり、我がアルゴス試験小隊に所属することとなった」

「成る程、それでこれから上官として挨拶に行く訳だな?」

篁中尉がこの基地内医局にきたのはそのためか。

「いや、この決定は本人であるブリッジス少尉抜きで決められたものらしい。私はその決定をブリッジス少尉に伝える役目を負わされた」

あ、軍内で嫌われているのか?

悠一と同じ境遇かもしれない

「そういう事なら、自分も連れて行ってください。今日の演習を務めてくれた事の礼と、これから暫くやっていく仲間として挨拶をしようと思います」

悠一が興味を示したので私もつき合うことになり、皆でユウヤ・ブリッジス少尉の病室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウヤ・ブリッジスは、自分がアルゴス小隊に入ることになったことを篁中尉に聞かされても、「そうか」と返しただけだった。

そして会話しようにも、まるで興味なさそうに「ああ」とか「好きにしろ」とか「くだらんことを聞くな」とか返すだけ。

唯一会話らしきことができたのは、部屋から出る前に悠一に話しかけたことだけだった。

「豊臣悠一……」

「何だ?」

「俺は負けていない」

「……………そうだな。だが、俺達が負けていけないのはBETAだ。俺との勝負なんて、高価なテスト機をぶっ壊してまで拘る事じゃねぇ」

「拘らずにいられないのさ。俺みたいな日本人の血が混じったアメリカ人にはな。いつか必ずアンタにもフルアーマーガンダムにも勝ってみせる」

それだけの会話で私達は病室を出た。

検査に行く悠一と別れると、私は院内ラウンジで篁中尉とユウヤ・ブリッジスについて話した。

「彼を部下として使っていく事は出来そうか?」

「衛士としての技量は相当優秀ですが、扱い難そうな男でした。苦労しそうです」

そうだな。自分が日系アメリカ人だと、どうして悠一との勝負に拘らなければならないんだ。全く意味不明な奴だ。

私は話を変え、佐渡島防衛戦について全部話した

「篁中尉、佐渡島防衛戦は知ってるな?」

「はい、確か北陸でのBETAとの戦いですよね」

「そんなところだ、私は佐渡島でB中隊の長を務めていた。京都防衛戦から一か月後、駒木と言う一人の女衛士が佐渡基地に配属され坂崎都大尉が率いたA中隊に赴任し、佐渡島と言う島の一つで皆平和に過ごしていた。いつBETAに襲われるか分からないまま……その9日後、佐渡海峡からBETAが襲来し私と坂崎大尉は奮闘したが第7波襲来した時点で燃料と弾薬が底を尽き次々と犠牲者が生まれた…衛士だけでなく民間人まで犠牲になった。シェルターに逃げてもBETAに喰われる人達もいた。生き残ったのは僅かな人数であり坂崎大尉は自ら殿を務め戦死した」

暗い話だが、それを聞いてる篁中尉は表情一つ変えていない

「私もその生き延びた1人だ。佐渡島陥落から数日後に佐渡島奪還を悲願を掲げ佐渡島同胞団を設立。支援は御剣財閥と山城財閥が全面協力している。佐渡島からBETAを追い払うのは私達の悲願だ」

「……」

「すまない、暗い話してしまって……」

「いえ、私は気にしておりません。一つ気になった事があります」

「何故帝国軍衛士である貴女がユーコン基地に来たのですか?」

「貴女の知り合いからの頼みで来てるのよ、帝国軍上層部から好きに使っていいと許可されたわ」

本当の理由は斑鳩少佐の計らいでここにいると言うのが正しい答えだが、無理あったか

「大倉大尉、その知り合いとは一体誰ですか?」

「帝国欺衛軍の崇宰恭子大尉だ」

「!」

篁中尉は突如、衝撃が走った

未知の生物を見てしまいそれを驚いたような顔をしている

「恭子様の……」

戸惑っているのか………いや寧ろ驚愕してる?

「豊臣少尉から伝えてください。『私は恭子様と違うから恭子様以上に厳しく指導するから覚悟して置け』と」

「分かったわ、本人に伝えておく」

 

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