トータルイクリプスサンダーボルト   作:マブラマ

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第18話 ベスト・オブ・カムチャッカ

悠一Side

ソ連カムチャッカ州 アベチャ湾

佐渡島同胞団所属戦術機揚陸艦『司馬』甲板

 

接岸間近のアナウンスが流れ、俺と鈴乃は甲板へ上がった。

季節はもう真夏の8月。天候も晴れだというのに、ここには蒼天はない。

青みがかったライトグレーに鉛色のまじった、息苦しい空だ。

ソ連第一級の軍港であるはずのこの場所だが、その寂れた景観が気分を滅入らせる。

あちこちの港湾設備はどれも古くサビとタールまみれ。

桟橋に係留されたままの軍用艦は朽ちるままに放って置かれている。

「しみったれな場所だな、随分と寂れてるぜ」

「恐らく整備の人員も設備も前線に回さざるを得ない状況だっただろう」

「国連軍に不信感抱いてる俺達が国連軍の作戦を加えるだと?クソ上層部が何を考えてる?遂にイカレちまったか」

現在、アルゴス小隊のメンバーは別の戦術機揚陸艦で上陸前のブリーフィング中。

部外者の俺達は身の置き所がない。

「レーニンが築き上げスターリンが国民を大粛清しフルシチョフがスターリン批判して挙句の果てにゴルバチョフはペレストロイカを発動して国を滅ぼされたかの社会主義大国のソ連がこんなザマとはな。態々来て見たい景観じゃないぜ」

ソ連…ソビエト社会主義共和国連邦と言う社会主義国家は、俺とダリルが生まれる前に既に滅んでいる。

こっちのソ連は領土が殆どBETAに侵食しているにも関わらず、未だ存在している。

社会主義の統制経済というのは戦乱に強いシステムらしい。

最も、史実のソ連と異なりゴルバチョフが暗殺されたから存続してると言うのは正確的だろう

フルメタルパニック!かよ……冗談じゃねぇぜ

「それにしても演習のための客員であるはずの私達が、一体何故このような場所に来なければならないんだ?あまりの超展開に目眩がしそうだ……」

鈴乃、それは俺に聞いてるのか?

それは見当違いだぜ、知る訳がない。

「恭子も佐渡島奪還の為色々と動いている。斑鳩少佐もそうだ……」

「私達は未知の戦術機ガンダムの操縦者としてそれなりに注目されている……恭子様が貴方を期待している」

ソ連への出向が決まってから俺はずっと不機嫌だ。

何でも日本の方で対BETA戦線の趨勢を決める重要な計画があるらしいのだが、いつまでもそれに参加できないのでイライラしている

あの曲者の香月博士に手柄を先に取るわけにはいかない

佐渡島は俺達が取り戻す!

彼奴が仕切ったら実験道具として島ごと消滅させるのがオチだ

「ここペドロパブロフスク・カムチャッキー基地は北東ソビエトの最南端。日本の北海道はオホーツク海を挟んですぐそこだ。アラスカよりずっと日本の近くに来たじゃない」

鈴乃は俺に抱き着き慰める

胸当たってる……少し興奮してきたぞ

「それが慰めになるとでも思ってるのか?海外で全く関係のない戦術機開発の任務をやらされて貴重な時間を潰しているのは変わらねぇよ、山城と能登、甲斐、岩見は今頃どうしてるだろうな」

そうだ……アラスカ・ユーコン基地でのガンダム演習の後に恭子から命じられた次の任務は、唯依が主任となっている『XFJ計画』の手伝いだ。

それもソ連まで出向いて、不知火弐型という改修戦術機の実戦演習のサポートをせよとのことだ。

ふざけてるのか?

恭子は悪くはないが、クソ上層部…特に欺衛軍だ。

欺衛軍上層部はパワハラが蔓延し征夷大将軍殿下はそれを参ってる……シャレにならないぜ。

俺達が、全く関係ない戦術機開発の手伝いなどをさせられるのだろうか?

2機のガンダムという、この世界ではオーバースペックな戦力を計画から遠ざけている意味は何なのだろうか?

答えなんか知るかよ

「日本に帰るか?私達だけ2人で誰も知らないところでひっそりと過ごすのもいいかもしれないわね……」

「…………………任務を放棄して帰ってどうなる。ただ脱走兵として処罰されるだけだ。恭子がそれを許すと思ってるのか?」

手土産なしで日本に帰れない

「馬鹿な真似はやめておけ、都に合わせる顔がなくなっちまうだろうが……」

戦線放棄や任務放棄の脱走は本当に日本を敵に廻してしまう。

当然、恭子の信頼はなくなり二度と取り戻すことはない

ここは大人しく国連軍の言いなりになり任務に従事しよう。

「まぁ。軍の脱走というのは思った以上に重大事……それは従順承知している。文句は言わないのが大人だ」

鈴乃は嘘が下手だな

分かってるんだぜ?

「…今回のアラスカ任務の事を思い返してみろ。2機のガンダムの演習によって戦術機技術を売り、各国の戦術機技術の向上、及び各国の支持をとりつけることだ。そしてそれは大きく成功した」

俺達は香月博士の駒ではない

自由に駆け巡る一衛士だ

そしてモビルスーツは大好きだぜ…戦術機も含めて

戦場も……ここは自由だ!!

「俺達に日本に帰ってほしくない何かがある。となると、それは……………」

俺は何かを言おうとしたが、鈴乃を見るとハッとしたように我に返った。

「すまん、忘れてくれ。とにかく任務に励むとしよう。今はそれしかないからな」

「ええ、そうね」

寂れた港の景観から背を向け、俺と鈴乃は甲板から降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

XFJ計画部隊用 野外第三特設格納庫

 

「『試製99型電磁投射砲』か。ビームライフルを知らなきゃ、『スゲー』とか言っていただろうな。最も、帝国軍がこんなものまで造っていた事は驚きだが」

俺はこの格納庫の主役のその圧倒的体積の火器を見上げた。

今回の実戦試験には不知火弐型と並んでこの電磁投射砲の実戦運用も行う。

既にこれは各国への販売が決定してはいるが、実際の運用はまだなので、その実戦データが必要だというのだ。

俺達がソ連と協力してまで来させられた理由が、これのお守りの為だ

無論、建前であろうが。

俺が格納庫に出向いたのはこれを見る為ではない。

事前のソ連との取り決めで、各国の兵器を置く格納庫には、その国独自に防諜対策をする事が許されている。

つまりここはソ連内において数少ない盗聴の心配の無い場所であり、内密の話をするには打って付けって事さ

俺は電磁投射砲の前にただ一人立つ人物に敬礼をする。

「佐渡島同胞団ムーア中隊、豊臣悠一少尉参りました。ご用は何でしょうか、篁中尉」

俺を呼び出したのは、この遠征中の上官・篁唯依中尉だ。

可愛い過ぎる上官との付き合いも、それなりに長くなったものだが、俺だけが呼び出されたことは初めてのような気がする。

「来たか。悪かったな休憩中に。私の時間が今しか取れなかったのだ」

「構いませんよ…珍しいな☆大倉大尉抜きに自分だけを呼ばれるのは」

篁中尉は「ついっ」と恥ずかしそうに目を逸らした。

そんな顔も妙に可愛い。

不幸な事だ。軍人が可愛い過ぎて良いことなんて一つも無いというのに。

「う、うむ…それ故の気安さというか、馴れ合いがどうしても出てしまう。この話は完全に私情を挟まずにしたいのだ」

成る程な、そう言う事ね

あのポーランドの亡霊と異名があるシルヴィアなら慣れ合うのは嫌うだろう

そりゃそうだろ、任務以外での接触は避けたいと考えがあるだろうからだ

私情を挟まずにしたいか……んじゃあ、篁中尉の話聞かせて貰うとしよう☆

「どういったお話でしょうか、中尉殿」

「豊臣少尉、貴様はこのソ連遠征による実戦テストについて、どう思う?」

「日本国内で可能な実戦テストを態々ソ連に出向いて行うことも不可解な事ですよ」

BETAとの戦闘は日本国内にもいくつもある。

佐渡島に赴いても良いし、関西でも北九州でも選び放題だ

何か裏があるな……。

「そうだ。私もドーゥル中尉とよく話し合ったが、実に不可解な事が多い。この決定がいきなり決まった事も、我々試験チームの意見を聞かずに決められた事も、早過ぎる実戦テストへの移行についても。ソ連が何かしら謀略をたてている可能性も多分にある」

だろうな……ソ連のお偉いさんはとうとう頭のネジが外れたのか

獅子同財団と裏で繋がってる可能性は高いが、これは推測でしかない

恭子も何か隠してるのか?

いや、そんな事はないと願いたいぜ

「また、これは内密にして欲しいが、ソ連側の士官から『日本はアメリカより我々と手を結ぶ事を考えてほしい』といった内容を仄めかされた」

西と東が手を携える事でBETAは倒せますってか?

カティア・ヴァルトハイムじゃあるまいしそんなもんは出来っこない

阿保臭いとしか言いようがないからだ。非現実的過ぎる

ベアトリクスが言った台詞を思い出した

”人類は必ずしも一つには絶対になれない”

この台詞が印象強く残る……名言と言えるべきか

「しかしこれは無理な話だ。彼らが掲げる社会主義思想はソ連の力が低下した今でもなお脅威だ。我が国には皇帝陛下、政威大将軍殿下ならびに武家といった、古くから続く権威が数多くあるのだからな」

そりゃ社会主義にとっては美味しそうな粛清対象が数多くある。

下手に手を組んでその思想を日本国内に広められたら、最悪国は分裂する。

笑えねぇよ……まるで架空戦記物の作品だ

「故にこの場所に長く留まると何が起こるか分からん。諸君やアルゴス小隊の安全の為にも、速やかなアラスカへの帰還を果たしたい」

「最もなご意見です。自分はアラスカにではなく、ここから日本への直行を望みますが」

唯依は俺の本音まじりの冗談には答えず苦笑いをした。

この件に彼女にできるのは最も親近感があり尊敬している恭子へ尋ねることぐらいだからな。

言うんじゃなかったな。

「だが我々は軍人だ。命令とあらばどのような任務にも従事し、結果を出さなければならない。故にできるだけ早く結果を獲得し、速やかに帰還するのが理想と思われる」

「完全に同意です。自分も速やかな任務達成をのぞみます」

「その為に必要なものは不知火弐型およびこの電磁投射砲の実戦による規定数のBETA撃破の戦闘データ。これが理想値に達すれば、たった一回BETAの侵攻を迎えるだけで帰国が叶うかもしれない。かなり極端だが、ドーゥル中尉はこれを目指すべきだとの意見だ」

「おおっ!♡」

「だが、それを為すには、扱う衛士に無理をしてもらわねばならない。不知火弐型に搭乗するブリッジス少尉は初陣だというのに」

恭子から修行受けたのでこれは流石に理解している

死の8分

BETAとの戦闘による初陣の出撃で死亡する衛士の平均生存時間が8分だという。

BETAとの戦闘の過酷さをよく表す言葉だ。

故に初陣の衛士は無理をさせず、生き延びさせる事が指揮官の役目である。

つまりユウヤに真逆のことをさせてしまうって事か。

「実に危険極まりないが、ドーゥル中尉の意見では、貴様らムーア中隊がブリッジス少尉の直援につけば十分可能であるという。どうだ?」

それが今回の呼び出しの用件か。

しかしガンダム2機を随伴のお供に出撃とは。

王侯貴族のごとくじつに豪華な初出撃だな、不知火弐型。

「豊臣少尉。貴様が優れた衛士だということは、この付き合いでもよく分かる。それを見込んで聞きたい。貴様が考えてこの案についてどう思う。やはり『たった一回で全てを完了させる』というのは無理が過ぎるか? 正直な意見を遠慮無く述べてほしい」

一応ユウヤの為に真剣に考えてみた。

だが、やはり答えは決まりきっている。

そもそも初陣とはいえ、BETAとの戦闘に直援なんて豪華なものがつくことはない。

それに衛士は本来、無理をくぐり抜けるのが本分だ。

ユウヤ・ブリッジス、お前は優れた衛士だ。

お手並み拝見といきますか!

「やりましょう。要するに自分らはブリッジス少尉がBETAを倒している間、それの直援に付けば良いのだな? 任せてください。彼奴も不知火弐型も無事帰還させてみせますよ。その上で、彼奴に初出撃世界最高のスコアを出しましょう!」

「いや、流石にそこまでは求められん。だが、よかろう。もしブリッジス少尉も了承したなら、その方針でいく…………そう言えば遅いな」

「何がです?」

「いや、実は意思確認のために、当人であるブリッジス少尉もこの場に呼んだのだ。だが、いまだに来ていない」

「それは変ですね。近くを見てきます」

俺は踵を返して行こうとしたが、ふと目の前の電磁投射砲が目に入って、もう一つの疑問を思い出した。

「ところで電磁投射砲の操者は誰に? 自分が直援任務なら、別の者が扱わねばなりませんが」

「私だ。私が指揮所を離れ、武御雷で扱う」

アンタがやるのかよ!

でもまぁ、京都防衛戦で生き延びた1人だ

欺衛軍上層部に期待されてるのは理解できる

「篁中尉自身が?」

「電磁投射砲の試験運用は、アラスカへ来る前の私の任務だ。その長所も短所も知り尽くしている。私が扱うことが最も結果を出せるだろう」

ほぅ、ではお手並み拝見するか

「了解致しました。篁中尉もブリッジス少尉も必ず守ってみせます」

「いや、私の方はアルゴス小隊がつく予定だ。ムーア中隊はブリッジス少尉の直援に専念してくれ」

「了解しました。それは今からですね」

俺は今度こそユウヤを探しに格納庫を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良平Side

 

ユーコン基地に滞在してる俺と第666戦術機中隊衛士はベアトリクスから指令を下った

その内容は俺をサイコ・ザクの試験運用する為、ソ連のカムチャッカ半島南部に戻り国連軍との共同作戦に参加してほしいとの事だ。

命令に従い俺はカムチャッカ半島に戻り、ソ連軍の拠点の一つであるカムチャッキー基地に赴任。

そこにはヴェアヴォルフ大隊の衛士が待ち構えていた

「ダリル少尉、待っていたぞ!我が大隊との作戦参加感謝するよ」

「ミヒャルケ少佐、国連軍との共同作戦と聞きましたが具体的にどのような作戦内容ですか?」

どんな内容か知る必要がある

サイコ・ザクを持ち込んでカムチャッカに戻ったんだ、無謀だと思うがここは聞くしかない

「内容?国連軍と共に戦うのは心痛いが止むを得ん。同胞国のソ連の頼みは断れないからな」

東ドイツはソ連の同胞国の一つだ

社会主義体制が根付いてるどころか単に断れないだろう

「少佐、基地の中へ散策したいのですが許可をください」

「……カタリーナ」

「了解♪」

カタリーナは軽い口調で一言を添える

「ソ連軍の衛士がいるからウロウロしないようにね」

「了解です、ディーゲルマン……同志中尉」

「カタリーナで良いわよ、アンタは私達の同志だから、ね?♪」

ね?って……とにかく基地の中見なければ分からない

そういう訳で俺はカタリーナと共にソ連軍衛士も含めてカムチャッキー基地を散策した

基地内は広いな

ソ連軍衛士が色々と説明してくれて基地の中の様子は分かった

……だが、野外格納庫が立ち並ぶ一画の狭い通用路の片隅で十代の少年少女七人がソ連女衛士2人を取り囲んでいた。

「カタリーナ」

「どしたの?」

カタリーナもその光景を見たが、壁際に隠れ様子を見る

「助けないのか?」

「下手に動けばやられるだけよ。様子見しましょう」

様子見……そうだな

とりあえず少年少女の動きを見張る

「お前らか?アラスカから来た腰抜け共は」

1人は冷静だが、もう1人は怯えてるな

「クリスカ……」

「大丈夫よイーニァ」

「おいネーチャン無視してんじゃねーよ、それとも何か?俺達みたいな連中と口利いちゃいけねーってママに言われてんのか?」

一人の少年は2人を煽り嘲笑う

「私はソビエト陸軍中央戦略開発軍団331特殊実験開発中隊のテストパイロット、クリスカ・ビャーチェノワ少尉だ」

クリスカ?今クリスカって言ったよな。

その隣にいるのはイーニァだ。

紅の姉妹……スカーレット・ツインだ!

「中央のエリートさんですかぁ……」

「で、それがどうした?だから何だって?」

此奴等……知ってて煽ってるのか?

「私達は祖国の為に戦う同胞……なのにお前達はどうして敵意を向けるんだ?」

クリスカは怯まず少年少女と立ち向かい説得しようとしたが、俺が期待してた少年少女の行動とは真逆になり怒りを露にし荒い声で言われる。

「同胞ォ……?調子に乗ってんじゃねぇぞッ!党の雌犬がァッ!!」

何と醜悪な考えでクリスカとイーニァに不満をぶつける

「自分達だけさっさと逃げやがった癖に、何が同胞だクソがッ!!いざとなったら俺等は捨て駒じゃねえかッ!!散々搾取しやがってッ!!ぶっ殺すぞクソアマッ!!」

「ま、待ってくれ!お前達だってソ連軍の」

「違う……お前はロシア人だッ!!」

「ソ連なんて元からねえんだよッ!!」

「テメエ等ロシア人が押し付けたんだッ!!」

何を言ってるんだ……ソ連に住んでる人はロシア人の筈…。

そうか、この少年少女はソ連の傀儡国に住んでた人間

他民族か……此奴等は!

「……ロシア…人……?」

「惚けてんじゃねえぞ……お前の部隊はロシア人しか入れねえんだよッ!!」

「アラスカに逃げたのは殆どロシア人だろッ!!」

「前線で戦ってるのはそれ以外だッ!!」

此奴等が言ってる事は理解してるつもりだ

ソ連政府は他の民族の事はお構いなしでロシア人だけアラスカに移住し安泰な生活してる訳だ

特に政府関係者はBETAの恐怖から怯え、安全圏な場所でいる。

少年達が言ってる事はご最もだ。

それは政府関係者に言ってくれ

あの2人にぶつけても何も解決しないだろ

俺はそう思っていたが、突如クリスカの動きが鈍くなりふらつき始める

「クリスカぁ…!クリスカぁ…!」

「…だいじょうぶ……だよ……だいじょう……ぶ…」

「オイオイッ!!そんな小汚ぇ所にへたり込んで何しようってんだ!?」

「ビビり過ぎて漏らしちまったんじゃねーぇのッ!?」

少年の一人がクリスカの背中に軍靴で蹴り上げた

「チッ、やっぱり腰抜けじゃねぇか、みっともねえ……ッ!」

「こんなんで良く衛士とか言えるよな……クソの役にも立たねぇぜッ!」

彼奴等……好き放題で言って

俺は前に出ようとしたがカタリーナに肩を掴まれ止められる

「ダリル、ダメよ。私、シュタージの衛士として色々な現場や戦場を見てきたから分かるわ。あれは半グレ衛士よ」

カタリーナの言う通りだ

半グレ衛士か……筋は通ってる

イーニァは半泣きしクリスカは戦意喪失でふらふらになり意識が遠のく寸前だ

「此奴等どうする?剥いちまうか!?」

「ああ、金剛の刑なッ!8番格納庫のフェンスがいいじゃん!?」

何と半グレ少年衛士はクリスカとイーニァを慰み者にして二度と衛士としての活動を出来なくしようとしてるのだ。

「拙い…犯されるわ」

カタリーナは怒りを抑えるがすぐ切れる寸前だ

「おい~~332中隊のオヤジに喰わせるぐらいなら先にいただいちまおうぜ!!」

クリスカが動けまいと悟った半グレ少年衛士はイーニァを羽交い絞めしクリスカと無理矢理離れさせた。

「いやだぁ!!いやだよぅッ!!」

「ッ!?」

「はなれたくないッ!!いやだぁぁぁッ!!!」

「おいっ、そっちからも引っ張れ!」

「やめてくれ……ッ!!その娘は……その娘は私にとって……!!」

とクリスカは助けを乞うが当然そんな甘い考えでは通用せず半グレ少年衛士の一人はクリスカの前髪を掴んだ

「かはッ!!」

だがイーニァはただの少女とは思えない力を出し踏ん張っていた。

クリスカは……?

「んだよ此奴ッ!!チビの癖に凄ぇ力だよ……!!」

「やだやだやだやだやだやだやだああぁああッッッ!!!」

「こっちのネーちゃんとは大違いだなっ……と!!」

イーニァは嫌がりクリスカは力が尽きたか半グレ少年衛士により服を脱がされていく

「ーーーいやああああああぁぁぁ!!!」

イーニァは泣き叫び助けを求めた

クリスカの服を全部脱がした後、半グレ少年衛士の一人はズボンのベルトを外そうとした瞬間、一人の男が乱入しフルスイングで拳を半グレ少年衛士の頬を向け殴った

そしてその勢いで半グレ少年衛士は飛ばされ倒れた

「おい、大丈夫か!?何をされたッ!?」

「ゆぅ…やっ……ぅぅ」

イーニァは泣きべそかきながら一人の男の名を口にした。

ユウヤ…微かに聞こえたが今ユウヤと言ってたな

俺はその男の顔見ると……。

「ユウヤ・ブリッジス……」

間違いない……もう少し様子を見よう

「ブリッジスか……私は大丈夫だ……」

クリスカはそう言うとイーニァ泣きながらはクリスカに抱き着いた

「クリスカぁ…!……ぅぅ……」

ユウヤは少し笑みを浮かび安堵した束の間倒れた半グレ少年衛士が起き上がりユウヤに睨みつく

「オイオイ…何処の正義の味方だよ……!?」

ユウヤはクリスカとイーニァを保護し立ち去ろうとするが

「無視してんじゃねーよ、こっち向けやコラ」

「な…っ!?」

半グレ少女衛士はバタフライナイフを手にし一部除いて他の少年少女は鉄パイプを握りユウヤを絡む

「女の前だからってカッコつけると後悔するぜにーちゃん?」

「大体何なんだよお前はぁ……!死にてぇのかッ!?」

「(……ガ……ガキじゃねぇか……ッ!!)お…お前等こそ何だよ……整備兵か?」

「はぁ!?ふざけんなッ!よく見ろバーカッ!!」

半グレ少年衛士のリーダー格と思われる人は親指を左胸にあるウイングマークを指した

「ソ連軍の衛士微章……って、う……嘘だろ…!?」

こんな子供が戦術機に乗ることも珍しくはない

東ドイツだって最前線で戦い抜いたんだ。

「おいお前、何余裕かましてんだよ」

「殴った分はキッチリカタをつけっかんな……?」

俺は見ていられないと半グレ少年少女に立ち向かった

カタリーナも同時に半グレ共に立ち向かう

「何やってるんだ」

「東欧州社会主義同盟のカタリーナ・ディーゲルマン中尉だ!ユウヤ・ブリッジスだな、どういう状況か詳しく聞かせて貰おうか?」

「東欧州?何で欧州戦線にいるアンタらがここにいるんだ?それは置いといてまぁ見ての通り、こいつらに襲撃されている真っ最中だ」

「オーイオイオイ、まーた、どっかのお節介が来たのかよォ。ゲラゲラゲラ」

「外国のキレイなお姉ちゃんよ。アタシら、このエリートロシア女共にアタマきてっからよ。どーしてもボコらなきゃすまねーんだわ。コイツみてーに邪魔しねーで、大人しく『回れ後ろ』してくんない? そうすりゃ無事でいられっからよォ。アヒャヒャヒャ」

「それとも一緒に剥かれる? 裸にすりゃ、けっこうな見世物になるぜェ。ヒヒヒヒッ」

半グレ少年少女は醜悪な笑い声をしつつカタリーナを慰み者にしようと考えてた。

「おいおい、此奴義足付けてやがるぞ、何で障碍者がここにいるんだよ!」

「ブレーメ総帥閣下の命令でここに来ただけだ」

ベアトリクスの命令でここに来たことは事実だ

だが、ベアトリクスの名を挙げても半グレ少年少女は恐怖心抱かず怯まなかった

「は?それが何?まさかそんな身体で衛士だって言いたい訳?ふざけるのも程々にしやがれ!」

半グレ少女少女衛士が俺の義足を見て挙句の果てに障碍者を馬鹿にしている

此奴等……クリスカとイーニァを慰み者するだけなくカタリーナを慰み者をしようと試み俺の義足や全世界にいる障碍に立ち向かっている者を馬鹿にした

「……俺の足を笑ったな!」

半グレ少年少女は鉄パイプで周りをガンガン叩いたり、ナイフをペロペロしたりしている

此奴等は軍のフライトジャケットを着ているし、階級章もつけている。

軍に属している人間には間違いない。

幾ら子供とはいえ、度が超え過ぎてる

「呼び出しを受けたんで行く途中、イーニァの悲鳴が聞こえてきてな。来て見るとクリスカとイーニァがコイツらに襲われていたんだ」

「成る程ね、状況は把握したわ。そこのソ連兵!貴様らが今行おうとした事は下劣で醜く底辺な人間であり……生きる価値がない外道に過ぎない!ソ連衛士の皮を被ったアメリカの豚共が!!」

カタリーナは半グレ少年少女をアメリカの豚と煽り誹謗中傷した。

その言葉を聞いた半グレ少年衛士の一人はカタリーナに怒りを向ける

「………………お前、いま何つった?」

「あら、聞こえなかったのかしら?もう一度言うわ。貴様らは醜く卑劣で底辺な人間であるアメリカの豚よ、豚!ソ連衛士であるクリスカ・ビャーチェノワ少尉とイーニァ・シェスチナ少尉を我欲の為に慰み者しようとしおまけに私を慰み者しようとしたわね?これは国家による……いや、ソ連衛士達による反乱と侮辱としか極まりない!」

カタリーナは怒りを露にし覇気を出した

だが、東ドイツの人間がいるにも関わらず半グレ共は怯まなかった

「俺達がヤンキーみたいだと!! ああっ!?」

「ふざけんじゃないよ! こんな地獄の底で毎日BETA退治をやらされているあたし達のどこが、後方で偉そうに最新設備でふんぞり返ってるヤンキーに似ているってんだい!?」

「その態度だ、貴様らはソ連衛士としての誇りがないのか?そうだとしたら……貴様らは生きる資格等、ないッ!!!」

カタリーナは般若顔になり半グレ少年少女を生きる価値がない外道衛士と見做し怒りの言葉を言い放った

「許せねぇ…………! もう外からの客人だか知らねェがかまわねェ! やっちまおうぜ!」

「そうね! 此奴等が来るたび、こっちは余計な苦労をさせられて死人が出るんだもの。ここで思いしらせてやるわ!」

それはもう冷笑まじりの遊びのような目じゃない。

本当の本気に殺気を孕んだ人殺しの目だった。

人を殺してる経験がある、これは殺戮者の目だ

拙い、カタリーナがやられる!

「身の程知らずが」

半グレ少年衛士の一人が鉄パイプでカタリーナに当てようとしたが、カタリーナはそれを上手く回避し顔面を蹴り上げた

「同胞国の衛士を慰み者にしてどうする気だ!ゴラァ!!」

半グレ少年衛士は蹴りの一撃で倒れ、それだけで戦意喪失に陥った

「貴様らも同罪だ……覚悟しろ」

さっきまで威勢あった半グレ共は怯え、泣き喚いた

「ひぃ!」

そんなことお構いなしでカタリーナは半グレ少女衛士の一人をその拳で顔面に目掛けて殴った

「味方である衛士にレイプさせるな!死ね!!」

カタリーナは怒りをまだ収まらず、半グレ少女衛士の一人を拳で顔面陥没させ戦意喪失した

「無関係な人間を巻き込むな!下種が!!」

次々と半グレ少年少女を捕まえ拳で顔面陥没させ戦意喪失まで陥った。

クリスカがカタリーナを止め、言い放った

「貴様は状況を悪化させに来たのか? 彼らはあれでも祖国ソビエトの前線を守り続けてきた同胞。それをよりにもよって、一般兵士すらBETAとの戦闘を経験していない天国連中のヤンキー呼ばわりとは何事だ!」

「貴女を助けたのに、恩を仇で返すのか?」

俺は見ているだけではいかないのでカタリーナを止め怒りを収める

「やめてくれ!」

「何故止める!?此奴等はソ連の恥晒しだ!」

「もういい……カタリーナ。皆ドン引きしてる」

はぁ…カタリーナ、やり過ぎだ

「貴様たち、何をやっている!」

突然に通用路に、凜とした女性の声が響いた。

すると殺気をはらんで戦闘態勢を取り戦意喪失になった半グレ少年少女は、弾かれたように直立不動の姿勢をとった。

――――――カツカツカツ

規則正しい軍靴の音を響かせ、背の高いサングラスをかけた女性士官が現れた。

その後ろには彼奴とと女性将校が続く。

「貴様ら、それぞれの機体の整備補給の時間であろう! この命令違反は高くつく。今すぐそれぞれの持ち場に戻れ。駆け足ッ!」

 「「「了解!」」」

さっきまで狼の群れのようだった奴らが、訓練された犬のように整然と駆けていってしまった。

最前線の兵士は『狼のように獰猛で犬のように従順でなければ生き残れない』という訳か。

「ブリッジス少尉、無事か!?」

女性将校が青い顔をして俺達の元へ駆けてきた。

「ああ、大丈夫だ」

女性将校は、そこらに散らばった鉄パイプやナイフを見て眉を寄せた。

そしてカタリーナは立ち去ろうとする女性士官を引き留めた。

「お待ちくださいラトロワ中佐。貴女の部下が、私の部下に度を超した危害を加えようとしたようです」

「何者だ?」

「東欧州社会主義同盟のカタリーナ・ディーゲルマン中尉です」

「同じくダリル・ローレンツ少尉です」

ラトロワ……?

俺は女性士官が着てるフライトジャケットに付いてる紋章を見た

この紋章は……ジャール大隊だ

という事はフィカーツィア・ラトロワ中佐か

「そのようですな。どうも申し訳ない、ディーゲルマン中尉」

「中佐。彼らには処罰をして頂けるのでしょうね、其方の方から。二度とこのような事がないように」

「約束しよう。今回だけは許していただけるとありがたい」

「………ええ、今回だけ。ですが次回があった場合には、問題とさせて貰います。そして二度と外に出られないよう屠らせて貰います」

「感謝する。では、私はこれで」

女性士官は踵を返し、そのまま立ち去った。

何とも、貫禄のある人だ。

カタリーナはかなり怒っているらしく、彼女らの去った方向をいつまでも睨んでいた。

「……災難だったな。何があったんだ?」

悠一が話しかけてきた。

ユウヤはイーニァとそれを慰めているクリスカを顎で「クイッ」と指して言った。

「ああ。どうにもソ連内のいざこざで、この二人が襲われててな。見過ごせなくてそれに参加しちまったというわけだ。東欧州の人間も何故か来てくれたんだが、事態を悪化させてヤバかったぜ」

俺はカタリーナの顔を見て一言を添える

「やり過ぎだ、カタリーナ」

「ごめん、どうしても許せなかったのよ」

カタリーナは落ち込んだ表情でしょぼんとした

「ソ連のジャール戦術機大隊指揮官のフィカーツィア・ラトロワ中佐だ。呼び出したユウヤがなかなか来ないってんで探しに出たんだがな。そこで途中で出会って同行してくれた。『もしかすると自分の部下が悪さをしているかもしれない』ってんでな」

それで俺達と出くわしたと言うのか

「あの半グレの衛士、やはり衛士だったのか。ウイングマークを付けてたがあんなのが衛士だなんて信じられないな。親はどういう教育してたんだか」

「そして奴らジャール大隊が、外国から来訪の試験小隊の随伴を担当しているらしい。つまり実戦テストの間、俺達を安全に守っていただけるというわけだ」

「お前がここにいる理由は分かった。で、その隣にいる人は篁唯依中尉だろ?」

「平凡な音楽趣味を持ってるお前が知ってたとはな、少し感心したぜ」

「お前に褒められても嫌な男だ」

「……………こりゃ、頼もしい部隊に随伴していただけるもんだぜ」

不安だらけのこのソ連遠征に、さらに不安要素が加わった。

そして数日後。

いよいよBETAの大群が基地に襲来した。




折角なのでクリスカとイーニァの場面を出しました
お二方のファンが悲しむと思うので、内容はお察しください
次回は国連軍、佐渡島同胞団、東欧州社会主義同盟、ソ連の4つの勢力でBETA戦闘を繰り広げていきますよ!!
お楽しみに!!
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