悠一Side
2001年8月18日
ミーティングでエヴァンスク・ハイヴ近辺のBETAの増大が衛星情報で認められたことを告げられた。それら数万のBETA群が警戒区域であるミリコヴォ地区に侵攻中だという。
試験部隊はBETAの侵攻阻止を任務とするソ連軍部隊に随行して、いよいよ実戦試験が始まる。
というわけで、今日はそこの前線基地へと移動。
BETA到達予測は明日早朝らしいので夜間出撃は免れたが、今夜は自分の機体のある格納庫で即応待機である
「さて。アルゴスの連中は待機部屋でおねんねしてるが、俺と鈴乃は機体の整備をしなきゃならないよな」
撃震や不知火等の機体の整備はそれぞれの衛士がやっている
それを仕切ってるのは紅林だ
と言う訳で寝る前の今だが、機体を実戦状態にするために格納庫だ。
もっとも俺のフルアーマーガンダムと鈴乃のアトラスガンダムの方も然程特別な整備は不要だが、紅林が一応は点検しておく
すると頭を掻いて鈴乃もやって来た。
「参ったわね、初陣のブリッジス少尉に、アルゴスの皆がBETA戦のコツなんかを教えていたんだがな。その話の流れで、私のBETA戦の経験とか聞かれたわ。その殆どが佐渡島での戦闘だけどね」
「ベテランなのに初陣とはな…」
実は鈴乃の事を好意抱いてるのは確かだ、が彼女に隠し事はないのか聞いてみることにした。
「ところで鈴乃」
「ん?」
「俺に隠し事とかないのか?」
「ふふ、そういう悠一こそ隠し事はあるのかしら?」
!
おいおい、図星突かれたぜ
「ないな」
俺は誤魔化した
「私は知ってるのよ?貴方が隠してる事……当てて良いかしら?」
「いいぜ、当てるものならな」
鈴乃は人差し指で唇をそっと触れつつ妖艶な笑みを浮かべる
「当時佐渡島にいた時、シェアハウスの地下室の中にあるマッサージ室で都と激しい営みをしていた」
当てちまったよ……。
「違うかしら?」
「……」
「どうやら当たったみたいね」
「ま、今回俺らはほとんど戦闘をしない予定だからゆっくり過ごそうぜ」
不知火弐型の整備を終えたユウヤの専任整備士のヴィンセント・ローウェル軍曹が通りかかった。
「あれ、本当に衛士が整備やってるんスか。でも明日は早くから出撃ですよね。手間取るようなら、手伝いますよ」
「大丈夫だ。フルアーマーガンダムは、然程調整は要らないように出来ている…と言っても優秀な整備兵のおかげだけどな」
「アトラスガンダムも同じだ」
「そうですか、羨ましい事です。不知火弐型の方は速すぎる実戦調整のせいで大変なんですよ。ユウヤは初陣だってのに、こんなモンに乗せるなんて。お偉いさんのやることは!」
「ヴィンセント、溜口で構わないぜ。ユウヤが心配か?確かに明日は彼奴に頑張って貰わなきゃいけないが、それをフォローするのが俺らの任務だ。安心してくれていいぜ☆」
あのジャール大隊のガキ共がオレら派遣試験部隊に憎しみを抱くのは無理ないと思ってしまう。
「そうか。んじゃ、お言葉に甘えて。我ながら過保護だとは思うんだがね」
「気持ちは分かるが、テストパイロットとはいえ、衛士ならいつBETAの戦いに出されるか分からん。バックアップが整っているうちに初陣はすませた方が良い」
と鈴乃は真顔で言った
「まぁとにかく、ユウヤは、もうやるしかねぇんだよな。だったら明日はユウヤを頼む! お二人さん」
「任せときな!」
「ブリッジス少尉に華々しい初陣を飾らせ、帰還させてみせるよ」
と、そこへ唯依がハンガーへはいってきた。
なんだ、見回り監督とかしているのか?
俺達は敬礼をして迎える。
「今夜の就寝時間は普段より早めになる。明朝0600に作戦区域で部隊展開だからな。作業を早めに終わらせ、さっさと待機室へ行くように」
「了解しました」
即応待機は深夜でも緊急出撃ができるよう就寝も機体の近くになる。
なので今夜の寝床はこの格納庫内にある待機室でざこ寝だ。
「因みに女性陣は中華統一戦線のバオフェン小隊と一緒に寝ることになる。あそこの衛士は女性だけだからな」
そう言ってクルリ踵を返すと、足早に行ってしまった。
「フン、高みの見物で他人を見下しやがって……開発主任の肩書を与えられて嘸嬉しいだろうな」
「悠一、そういうところが嫌われる原因なのよ」
鈴乃が言ってる事は正しい
嫌われてるのは自分でも自覚している
「なぁ鈴乃、今夜は」
「分かってる」
とまぁ、本当に鈴乃にしがみつかれて激しいジャズを演奏するような一夜を過ごした翌朝。
防衛ラインまでフルアーマーガンダムに乗って出動。
支援砲撃の爆音と噴き上がる爆炎によって一日は始まった。
良平Side
ソ連軍による海上艦隊と支援砲撃の面制圧。
それを抜けたBETAに機甲部隊と戦闘ヘリによる二次面制圧。
無数の砲弾と炸裂弾の連続する爆発によって海岸線一帯は灼熱の地獄と化した。
だが…………
《砲撃が………薄い?》
《もしかして戦車の数が足りてないのか?》
あの面制圧は薄い。
あれでは相当数を撃ちもらし、予定より早くこの第一次防衛線に抜けてくるだろう。
俺はサイコ・ザクで旋回飛行しつつソ連軍や滞在している国連軍のアルゴス小隊の監視任務を遂行してる
《戦車の数が足りないのは今まで戦力を使い過ぎて消耗してるからだ》
紅いアリゲートルに乗り駆けるニコラはキリっとした表情で豪語する
《ソ連軍も国連軍双方激しい戦いだろう。だがな、我々ヴェアヴォルフ大隊が来たからには異星起源種を無能な国連軍より殲滅出来る》
それは暴論だ
そんなの出来たら苦労はしない
「我々が下手に動くと、同胞国であるソ連が不信感を抱く事になります、大隊長」
《それにだ、表の情報機関は役に立たないから裏の情報屋である伍代からの情報によると日本が開発した試製99式電磁投射砲をここミリコヴォ地区で運用試験行うらしい。我々はそれを強奪するんだ》
舐めてくれる。
試験部隊はお守りの必要な赤子か。
しかし試製99式電磁投射砲の強奪任務を遂行するとは思わなかったな
ジャール大隊のチェルミナートルが国連軍と共闘している
この試製99型電磁投射砲の威力は中々のものだ。
この程度の劣勢は覆せる程に。
「やりましょうか?」
《駄目だ、勝手な行動は許さん》
俺はニコラと言い争いになろうとしたその時、轟音が響き渡り、不知火弐型の持つ巨大砲から眩い光条が放たれた。
それは真っ直ぐBETAに突き刺さり、間断のない衝撃波と恐ろしい轟音が鳴り響き、BETAを極小の肉片に変えていく。
そして99式を全弾撃ち終わった頃。
戦場はBETAがまばらに点在するだけのものとなった。
《な…》
《これが電磁投射砲…》
《凄い威力ですね……》
当然だ、これだけでBETA群は殲滅出来るからな
一斉に各国の部隊は残ったBETAに襲いかかる。
アルゴス小隊の皆も
《ダリル、貴様が先に行け。我々はソ連軍の前線補給基地に襲撃し先ほど言った通り電磁投射砲を強奪する。ソ連政府からは許可を得ている》
俺がBETAを誘うための囮になる訳か
「了解しました。ダリル・ローレンツ少尉、ソ連軍及び国連軍の支援に行って参ります」
俺はサイコ・ザクのブースターを上げ加速し国連軍の支援に向かった
悠一Side
俺の仕事はメインのテスト機の護衛とデータ取り。
想定外にBETAの接近を許しでもしない限り戦闘はない。
戦闘中の不知火弐型及び搭乗者のユウヤの様子を細かくチェックしていく。
バイタル正常。格闘機動に歪みなし。
全く初陣のお手本になるくらい問題のない奴だ。
「試験は問題なく終わりそうね。あとは此奴等さえ、いなければ……」
鈴乃が言いたい事は分かる
楽なこの任務にも問題はある。
それはソ連軍ジャール大隊から分けて派遣されている俺達の護衛部隊だ。
《よーよー、そのオモチャみてぇな戦術機、ヘンな突撃砲、それでホントに戦えんのかよ。ちょいと、そこで死に損なってるBETAで格闘やって見せてくんね?》
《さっきから一匹も倒せてねーじゃねーか。ちっとは撃墜数稼がねぇと切り捨てられんぜ、お嬢ちゃんよ》
《そりゃないって。偉いトコのオジョーサマっしょ。こうやって後ろからお行儀良くついて行くだけでも戦果になる訳よ》
《ぎゃははは、そのための派手で使いモンにならなさそうな戦術機か! でっかいランドセルつけたあっちの兄ちゃんの戦術機といい、お国で飾りモンにするならBETAの体液なんてつけらんねーなぁ!》
此奴等…俺達を好き放題言いやがって、親はどういう教育してんだ!?
テスト機の随伴機なんだから、積極戦闘とかしないのは当たり前だろ!馬鹿が!
とにかく問題は、このジャール大隊分隊のガキ共だ。
万が一の場合に撤退支援をするのが任務であるはずだが、護衛対象であるはずの俺にやたら煽ってヤジを飛ばして来た
「おい、何とかならねぇのか?イヴァノワ大尉」
ナスターシャ・イヴァノワ……ラトロワ中佐の側近の一人でありジャール大隊の副官である
階級は大尉だが、年齢は15歳と言う大隊副官として最年少の女性衛士だ
15歳だぞ?
あんなのが副官とはな……だからガキばかりだったのか
冗談じゃねぇ、子守りなどまっぴらだ!
俺は不満を抱いたとき、一つ目の戦術機…いやモビルスーツが俺達の前に来た
サイコ・ザク……ダリル・ローレンツだ!
《ソ連軍ジャール大隊副官のナスターシャ・イヴァノワ大尉ですね、自分は第666戦術機中隊のダリル・ローレンツ少尉であります!》
《ダリル少尉、ラトロワ中佐から詳しく聞かせて貰った。カタリーナと言う女含め貴様は此奴等の恨みを買っている。故にこの程度は我慢しろ。適度にガス抜きをさせなければ、見境なく狙ってくるかもしれんからな》
あの茶髪サイドテールの可愛いルックスを持ったアイドルみたいな体型をしてる女の事か
東欧州も面子があるからな、恨みを買われたのは無理もないか
《自分は理解しているつもりです》
すっと答えやがった、何被害者面してんだよ……。
《それだけではない。あの件で奴らはラトロワ中佐にキツイ懲罰をくらった。逆恨みだが恨みは恨み。悪いが貴様の安全のためにも、私は介入するつもりはない。豊臣少尉も含めてだ》
《分かりました、では此方の意向に従います》
大人しく従ったぞ此奴
なんでラトロワ中佐に喰らった罰の恨みが、こっちに来るんだ!?
俺は関係ないだろ!
何よりフルアーマーガンダムとアトラスガンダム、サイコ・ザクへの冒涜、雑言は許しがたい!!
いっそビームライフルで真下から撃って蒸発させるか?
と、鈴乃の映像が立ち上がった。
《ムーア2、怒りを任せるな。この任務も結果上首尾でもうすぐ終わり。あと少しの辛抱だ》
俺は2連装ビームライフルのトリガーからそっと指をはなした。
なんて絶妙なタイミングで通信を送ってくる。
突然サイコ・ザクは機体を止めた
「おいおい、どうしたんだ?ダリル・ローレンツ。トラブルか?」
ダリルの声に応えず、感応の感度を上げる。
場所は………地下か!
ダリルは地下にBETAが潜って地上から出てくることを悟った。
《大方、急にビビっちゃったんじゃねぇの? シェルショックだけはカンベンしてくれよォ》
《幾ら楽しいBETA狩りがお預けだからって、アンタのお守りはゴメンだからね。怖いんなら自分の足で帰んなよ》
《見かけにビビんなよォ。コイツら、要はでっかい虫と同じだぜ。慣れりゃバカでも退治できるぜ》
もう、此奴等の煽りも気にならない。
迫る危機を知ったなら、ガキ共もこんな邪気塗れに笑っていられなくなる。
特に最後の奴。馬鹿はお前……退治されるのもお前だ。
BETAの知能はお前如きがバカにできるものじゃない。
佐渡島での戦闘で体に染みつくほど知ってしまったからな
《今、この真下の大深度地下ではBETAの大群が侵攻してくる。狙いは後ろの前線基地》
《ハァ?》
ダリルがそう言うなら、俺もそいつの進言を賭けるしかないな
「分かったよダリル・ローレンツ、お前の言葉を信じるぜ」
《お前に信用されても嫌な男だな……》
「今は互いに共闘する事を専念しろ。お前との決着は後回しだ」
前線基地BETA襲撃により全試験部隊は試験任務を中止。
現在、試験開始地点まで後退。CPの指示待ちだ。
不安な待機時間のなか、いち早くBETAの基地襲撃に気がついたダリルは時間潰しの肴だ。
《な、なぁ。本当にその機体の震度計、地下のBETAが分かるのかよ?》
とか、タリサもちょっと慄いた感じだ。
「サイコ・ザクに震度計は付いていない、この機体は元々宇宙寄りだ。それに何でBETA群が地下にいるの分かったかは俺の直感だ」
直感ね……。
お前はニュータイプか!
馬鹿馬鹿しくなってきたぜ……。
《そりゃ凄ぇ! ウチの国じゃ何度も糞ッタレ共の地中進行にやられてよ。でもそいつがありゃ借りが返せるってもんだぜ!》
《なぁなぁ、そいつも販売しねーのかよ。地中進行は光線級と並んでBETAの最大厄介の一つだし、それだけで英雄になれるぜ!》
ならねぇよ!
しかしダリルもダリルだ
「無理だよ、だってこの機体は四肢欠損でないと動けない機体なんだ」
そりゃそうだ、誰があんな機体乗るんだ?
しかし中華統一戦線バオフェン小隊の連中。衛士とはいえ、もう少し女らしく出来ないのか。
俺は嫌いじゃないぜ
《…そ、そんなことより今はBETAだ! 地下BETAの侵攻は続いてる》
「な…まだ増えるのかよ。こりゃ、帰り道なんて無くなるぞ!」
《帰る場所そのものが無くなるかもしれないわね。BETAが前線基地を奪い、そこのエネルギーを得たなら、その後ろのペドロパブロフスク・カムチャッキー基地も危ないわ》
ステラの最悪な未来予想に、全員が色めき立った
《くッ、バオフェン1より各機!我が小隊はこれより基地に帰投する!》
《おい、落ち着け!推進剤も弾薬も試験で消耗したまんまだろ。ガス欠でBETAの渦に立たされたらどうすんだよ!》
《そうだ落ち着け。サンダーク中尉も説明していただろう。ここは地形的に航空爆撃が使える。被害は大きいかもしれないが、基地陥落、などという事態までには至らないはずだ》
そんなこんなで、わちゃわちゃやっていると、やがて基地との連絡会議で離れていたジャール大隊の一団が戻ってきた。
《全試験部隊、傾注! HQから指示が来た。ラトロワ中佐、お願いします》
イヴァノワの幼くも凜とした声が響いた。
改めて思うが、本当にこの部隊は損耗が激しいんだな。
こんな女の子が大尉で副官だし、隊員は全員中学生くらいだ。
ジャール大隊ただ一人の大人、ラトロワ中佐が貫禄ある声で続いた。
《全試験部隊の諸君、HQからの指示を伝える。これより大隊は、諸君らお客さん方を退避地点まで誘導する。我々はそこで補給を受けた後、戦線を構築するために離れるが、諸君はそこで別途指示があるまで待機して貰いたい》
待機か…………。
出来るなら、そんな指示なんか無視してフルアーマーガンダムで基地一直線。
群がるBETA共を手当たり次第になぎ倒して一掃したいのだがな。
しかし他国の軍属がそんな勝手をする訳にはいかない。
やったら軍法会議で死刑になるほどの、唯依や鈴乃に類が及ぶほどの重罪だ。
基地にいるドーゥル中尉やヴィンセントは心配だが動けない。
クソ!
同胞団の上層部も未だに動きがみられていない
《尚、殆ど戦闘をしていないムーア中隊には協力を要請したい。分隊と共に目標地点へと出向き、我々が補給を受け向かう間、時間稼ぎを願う》
!!!!
《この要請は断ってもらっても構わない。拒否によるペナルティーは何も無い。HQからの要請だが、大倉大尉。どうだ?》
拒否なんかする訳がない
鈴乃、アンタ次第だぜ?
答えはもう決まってる筈だ
《ラトロワ中佐。爆撃をするなら戦術機部隊の出動はありませんよね? それに時間稼ぎを自分らへ求めるほどの余裕のなさ。もしや…………》
お前には聞いてねぇよ!義足野郎!
《勘の良い坊やだね。そうだ。光線級まで出てしまった。『時間稼ぎ』は基地の人間が退避するための時間を作るものさ》
《やはりそうですか》
なんて冷静に状況を分析できる奴なんだ!
ダリルが『受けます』と言った瞬間、出力全開、全力疾走で誰も彼も引き剥がして、現場に飛び込もうとした俺とは真逆だ
そして光線級の名が出た途端、この場の誰もが戦慄している。
《で、それを理解したうえで聞きたい。この要請を受けるか否か》
《受けます》
《本当に良いのかい? 他国のために危険な橋を渡るよ》
《この前線基地が抜かれれば後ろのペドロパブロフスク・カムチャッキー基地が脅威に晒されます。そこは日本の真上にある対BETA最前線基地。ここまでBETAに迫られては、日本の極北方面へ多大な負担をかけることになります》
彼奴の言う通りかもしれない
だがお前ではなく鈴乃に聞いてるんだよ
何でお前が承諾するんだ!おい!
《私もです、ダリル少尉の言う通りこのままでは他国に向け脅威を晒されるかと》
鈴乃……お前は、優しいな
《だったら、しょうがないねぇ。ジャール2、自分の小隊を率いて付いていっておやり》
おいおい、何か嫌そうな顔してたぞ
ラトロワ中佐、本当はこの要請を断って欲しかったんだな。
《そしてこの防衛戦には我が国試験小隊のイーダル小隊も同行する。補給も優先して受けさせるように、とのことだ。イーダル。試験のあとの連戦になるが、やれるかい?》
あの2人も来るのか……だがここで嫌だと言える状況じゃない
やるしかない!
《当然です。祖国の防衛任務に否はありません。そして他国の者に遅れは決して取りません》
クリスカの奴。なんか、まだ俺を敵視している気がする。
俺はあんなヒステリックなサイコ女衛士と仲良くするのはまっぴらごめんだぜ
こっちから願い下げだ
ラトロワ中佐は最後に自分の大隊に向けて締めた。
《大隊傾注! この戦闘は時間稼ぎ。基地の人間が全員退避するまでの遅滞戦闘だ。ただし、現場には光線級が確認された。これを放置しておくことは被害の拡大を意味し、全力で撃破しなければならない。よって現地到着後、すぐさま光線級吶喊を行う!》
と言う訳で、俺のフルアーマーガンダムと鈴乃のアトラスガンダムは4機の分隊に連れられ基地へ。
まぁ、その分隊もやはり悪ガキ共で、散々罵倒され煽られながらの移動。
でも、もう慣れたぜ。
そしてその隊長は中佐の副官。最年少の大隊副官であるイヴァノワだ。
15歳で大隊副官務めるなんてすげぇとしか言えない。
カティアが中隊副官として活躍すると同じだ
そんな事はあり得ないがな
《言っておくが、自分から行く以上シェルショックを起こしても面倒は見ない。BETAに恐怖しないよう、せいぜい心を強く持て》
「へいへい、ご注文承りました~♪」
俺は軽い口調で最年少の副官に向け返答した。
転生して暫くは感じてた気がするけど、今は思い出せない。
いや思い出したくないな
ケヤルガ……俺の顔を変えた事は水に流してやる。
結果を出す、今の俺はそれだけ考えるんだ!
《我々には余裕がない。光線級吶喊を行う作戦は必ず誰か損耗が出る。だから…………私が中佐を守るために参加したかったのに………無念だ》
そう言ったその少女の顔は、家族を心配する年相応の少女のようにも見えた。
BETAがいなかったら平穏で暮らしてただろうよ
家族と一緒に幸せに過ごして、友人も沢山できて仲良くしたり学生生活を満喫したり小学校、中学校、高校、大学。社会人になってからも常に幸せに暮らし彼氏彼女作って結婚し互いに夫婦となって子供を授かり子供の成長を見届けて孫の顔を見て生涯を全うする
だから思わず言ってあげた。
「大丈夫だ、もう誰も死なせない………」
分隊と共に前線基地へと帰投したオレ達。
基地を一望できる丘陵のそこで見たものは…………
《な、なんだよコレ!基地が一面、BETAだらけじゃないかよ!》
《き、基地の敷地が埋め尽くされている……チクショウ、糞共め!》
「機体は……無事なわけないか。衛士達はミートソースになってるな」
前線基地敷地の中も外もすでにBETAで蹂躙され、あらゆる設備が刻々と破壊されてゆく。
分隊の子達にとってこの基地は家同然らしく、通信の声は無念に満ちていた。
《怯むな!命令通り遅滞戦闘を行う。まずは遮蔽物の多い場所に射撃地点を構築する。後、BETAの足を潰して浸透を遅らせろ。基地の人員が無事に安全地帯へたどり着く時間を死ぬ気で稼げ!》
イヴァノワちゃん勇ましいなぁ。
さて。俺にとっては先程の試験部隊のシッポとは違って、本当に久しぶりのBETA戦。
現場の基地は素敵にBETAに埋め尽くされて、実にヤバいぜ
これぞ本当のBETA戦だな……。
《基地がBETAに埋め尽くされてる……ここにいる戦術機や戦車はどうしたんだ!?》
「皆、やられちまったよ。誰も生きてはいねぇよ」
ダリル……お前は一体何をしに来た?
《お前と組むのは嫌だが、この状況ではそう言ってられない》
「んじゃ、蹴散らすとしますか☆てめぇら、機体から大きく離れろ!」
《どういうことだ!!まさか逃げる気か!?》
《逃がさん!こうなっては一機でも弾幕を張れる奴は必要だ。ここへ来ると言った以上、責任はとってもらう》
分かってるよ、そんな事は
分隊全員が一斉に突撃砲をこちらに向けての交渉
斉射体勢は一瞬だし、息もしっかり合っている。流石の練度だ。
《悠一、それとダリル少尉。我々の戦力で3機同時に連携すれば怖いものはない!》
鈴乃は俺とダリルで連係プレーを試みる
主機を引き上げ、フルアーマーガンダムの武装を展開にする。
BETAにはより高性能の電子機器に反応し、優先的に襲うという性質がある。
《ジ、ジャール2!西のBETA梯団が一斉にここに!》
《正面もだ!最大規模の梯団がこちらへ接近ッ!当地点はヤバい!!》
《うわあああ東までも!完全に囲まれた!退避経路なんてどこにもない!》
《なんだとッどういうことだ!?なぜ戦域全てのBETAがこちらに向かってくるっ!?概数はいくらだ!》
《よ、四千っ………いや五千ッ!わ、わからねぇ!とにかくマーカーが赤一色だ!!》
馬鹿が、フルアーマーガンダムやアトラスガンダム、サイコ・ザクを愚弄した罰だ。
恐怖に怯えてろ
「鈴乃、俺のフォローを頼む!ダリル……俺は」
《アンタとの決着をつけるまで勝負はお預けだ!》
「分かってるじゃねぇか!行くぞ!」
それまでの鬱憤を晴らすように500キロで疾駆。
まず目指すは光線級!
前方を要撃級が阻むようにふさぐが、軽くサブアームでビームサーベルを右手で握りそれを膾にしていく
やがてレーザー警戒区域にまで近づくと、それまでワラワラ寄ってきたBETAは割れるように道を開ける。
そして前方からレーザー集中砲火の歓迎。
快調快調
サイコ・ザクが前へ出てサイコバックパックに付いてるサブアームでザクマシンガンを連射
「おい、てめぇ!それは俺の獲物だ!」
《早い者勝ちだ、後れを取るから悪いんだ》
「ぐぬぬぬ…!」
鈴乃は呆れ、俺とダリルを仲裁した
《喧嘩は帰ってからにしろ。豊臣少尉。あとで私の部屋に来なさい》
「ああ、勿論だ」
レーザーを掻い潜りながら鈴乃やダリルと会話が出来る程に、光線級吶喊が余裕になってしまった。
慣れと言う奴か?
「身の程を知れ、目ん玉野郎」
2連装ビームライフルの有効射程に入った瞬間、躊躇いもなく射撃。
鈴乃もアトラスガンダムに装備してるレールガンを構え射撃
あっという間に光線級の一団は肉塊に変わった。
光線級を全滅させると、再びBETAが一斉に迫ってきた。
さっきまでの道が完全にBETAに埋め尽くされた。
まあいい。だったらBETAの死山血河を築いて強引に押し通るまでだ
と、思った瞬間、ダリルは天啓を閃いた。
《上だ!》
反射的に機体を強引に進ませる。
瞬間、巨大な衝角付き鞭数本が頭上から降り落ちてきて、躱した元の位置に突き刺さる。
迂闊にも周囲の要撃級、戦車級ばかりに気をとられ、かなり先にいる要塞級の一団には注意が薄かった。
「チィッ、上にも注意となると、ここは位置が悪い!」
移動しようにも、見回すと雲霞のごとく一面にBETAの群れ。
さらにレーダーにはBETAのマーカーが真っ赤になるほど集ってきている。
俺は大型ビーム砲でBETA群に向け砲撃し鈴乃はレールガンで射撃
ダリルは右手に持ち握ってるジャイアント・バズで乱射
接近を僅かに止めるだけでいつまでも減らない。
さらに鞭も散発的に襲ってくるので、体勢を立て直す暇すらない。
「ちょいと花火を上げてやるぜ」
6連装ミサイル・ポッドで弾幕の形成や集団戦で使われる多弾頭ミサイルを発射しつつアトラスガンダムのレールガンの音が響き、一体また一体と落ちていき、やがて全滅した。
《タフな要塞級はレールガンで一発倒せる威力があったとは改めて驚愕したわ》
「着弾を集中させれば、要塞級の巨体すら撃ち抜くことが可能だ」
別の方角から砲撃が流れてきて、目の前のBETAの群れ十数体が肉塊となった。
何処からの砲撃だ?
音声のみだが、女性らしき衛士の声が聞こえつつアニソン音楽が流れてきた
「何だ!?このキャピキャピした音楽はよぉ!これは……『少女交響曲』か!?」
《WUGちゃんの曲聴こえてる?アンタ達を援護しに来たわよ》
アリゲートルだと!?
しかも色別に緑、黄色、赤、青、水色、紫、オレンジの7機
いや後ろに付いてるのは背部兵装担架だが普通の戦術機とは全く異なるデザインだ
突撃砲2つに近接戦用長刀2つ
2連装突撃砲、ロケットランチャー
追加装甲2つ付いてやがる!
《アリゲートルブリッツ……カタリーナ、来てくれたのか!》
ダリルは嬉しそうな表情する
あの機体、アリゲートルブリッツっていうのか
《ピンチの時に来るのが我々の役目よ》
良く言うぜ、東ドイツ国民を散々無慈悲で殺しまくった癖によ
カタリーナと言う女はヴェアヴォルフの衛士だ
茶髪サイドテールにアイドルみたいな可愛い顔してる
「アンタらが来てくれて助かった。感謝するぜ」
《うん、それとアンタさ雑に戦い過ぎ。目標を達成したら速やかにこちらと合流しなさい》
「了解、そういや分隊の皆はどうしたんだ?」
《分隊?あぁジャール大隊の分隊ね。BETAの圧力が弱まった頃に別れたわ。優先的に狙われるのはこっちだし、別れた方が向こうは安全だからね》
イヴァノワ大尉達は無事か。
ホッとした自分に少し驚く。案外、あの生意気で凶暴な子達を気にかけていたんだな。
《ムーア1だ。ディーゲルマン中尉、援護を感謝する》
《よし、連携してここを抜けるわよ。まずは背中を守り合う。目の前の敵だけを倒しなさい》
アリゲートルブリッツはフルアーマーガンダム、アトラスガンダム、サイコ・ザクの背面に背中を合わせてつく。
そして猛烈な勢いで俺は2連装ビームライフルでフルオート乱射する。
次々に前面のBETAを肉塊に変えていく。
とにかく撃ちまくる!
背中からは絶え間ないフルオートの音。
前面後背ものすごい勢いでBETAの死骸は量産されていく。
《ムーア1よりムーア2、このまま微速で移動だ。基地から引き離して爆撃可能な位置まで誘引するぞ》
アトラスガンダムが先頭に立つ
眩いビームライフルやレールガンのスポットライトに包まれた、背中合わせ二機のガンダム。
観客のいない華やかなステージの自分がおかしくて、笑いが止まらなくなった。
ラトロワSide
西部海岸 西地区臨時退避地点
試験部隊を無事に退避地点へ誘導した後、整備班への指揮と各所の連絡を終えると、後は補給の推進剤注入の完了待ち。
移動補給車両の跳躍ユニットへの推進剤注入装置は、あまりスペックは高くない。なので完了まで時間がかかってしまうが、全機満タンにすることを怠るわけにはいかない。
光線級吶喊ともなれば、光線級を始末した後に空中へ逃れるのに絶対必要だからだ。
残量表示カウンターをぼんやり眺めながら、ここへ来る前のHQとの不可解な連絡を思い返していた。
《私は中央戦略開発軍団のロゴフスキー中佐だ。危急存亡の時ゆえ、私が直接基地の決定を貴官に知らせよう》
「(中央戦略開発軍団だと? 何故こいつらが防衛戦の指示にしゃしゃり出てくる?)」
中央戦略開発軍団……それはソ連軍特殊実験開発部隊を擁するエリート部隊で、主にいけすかないロシア人特権階級で固められた高等秘密組織ってやつだ。
今回の遠征に参加している曰く付きの組織連中の親玉だが、こんな状況に出しゃばるような奴ではないはずだ。
そんな自分の疑問に反し、あたえられた命令は至極まっとうなものだった。
ただ一つを除いて。
《………………以上だ。この任務には基地内にいる同胞すべての命がかかっている。貴官の忠誠に期待する》
「質問がある。我が国試験部隊のイーダルに協力させるというのは、まぁ良いさね。負担を考えればやらせるべきじゃないとは思うが、そっちの手駒のことだしね。だが他国の佐渡島同胞団ムーア中隊にまで協力を要請するってのはどういうことだい?」
《ムーア中隊は試験において射撃、戦闘機動共にしていない。推進剤も弾薬も十分なはずだ。貴隊が基地に到着するまでの間、被害を抑えるには適任だと思うが?》
「どうしてその小隊の試験の状況を………いやしかし、この難しい戦域に、実力未知数の他国の者を使うのはどうかと思うね。下手にしくじったら取り返しのつかないことになるぞ」
《ハハハ、その心配が杞憂なのは貴官もその目で見ただろう。今回派遣された試験部隊は、試験において皆高い撃破数を誇っている。未戦闘のムーア中隊もきっと活躍を期待できるだろう》
そいつらがピンポイントでポンコツだったらどうすんだ!
実力未知数の者を修羅場に置くなんざゴメンだ!
…………と言いたかったが、さすがに他国の衛士の罵倒は控えた。
「全世界社会主義国の盟主の面子はどうしたんだい。他国に祖国の危機を救ってもらうなんざ、大国の沽券に関わるんじゃございませんかね」
《基地の直近に光線級が出たのだ。国家の体面を気にしている場合ではないよ。今は他国に借りを作ってもこの危機を凌ぐことが重要。基地司令部はそう判断した》
今更らしくないことを……今までその大事な大事な体面のために、どれだけ現場の人命をすり減らしてきたと思っている。
「なるほど、賢明なご判断ですこと。ですがその苦渋の決断が、たった二機の戦術機の戦力を借りるだけってのは如何なもんだ。幾ら何でも、国家の面子の天秤に釣り合わないんじゃございません?」
《ラトロワ中佐。この協力要請は中央の承認を得た正式なものだ。疑念は挟まず、佐渡島同胞団ムーア中隊の豊臣少尉へ要請したまえ》
「……………了解。だけど、この戦いに機体が無事でいられる確率はないよ。相手にしてみれば貴重な実験機を他国の防衛戦でオシャカにしてしまうんだ。受けるとは思えないけどね」
《無論これは要請だ。相手の承認がないならば無理強いは出来ないよ。大倉大尉が断るなら、この話はここまでだ》
………………?
「光線級出現の話はしてもいいんだね? まさか『それは秘匿したまま要請しろ』なんて言うんじゃないだろううね」
《当然だ。そのような信義に悖る行いを中央が承認すると思うかね?》
思う。
というか信義など踏みにじって、何もかもブン獲って、後で屁理屈で押し通して済ますってのが昔からの上のやり方だったろう。
何故、この件に関してだけは誠実国家みたいなことを言う。気持ち悪い。
しかし言質は取った。
BETAと進んで戦いたがる変態はたまにいるが、光線級のいる戦場に出たがる奴はまずいない。
多分、戦場を体感させるためだけに送ってきた、という所か。
だったら光線級の話でもすれば体よく断るか。
「わかった。言うだけ言うよ。じゃ、重金属雲はケチらずにまきな。悪巧みばかり巡らせて、後方支援の役割を怠るんじゃないよ」
《ムーア中隊へつける分隊は貴官のもっとも信任のおける有能な者をつけたまえ。そしてそこの小隊の豊臣機の戦闘機動を映像に余す事なく記録するように》
なるほど。目的はあの実験機のデータか。
確かに従来の戦術機の構造とはまるで違った作りをしていた。
だったら、尚更そんな機密の塊のような戦術機を実戦に使う要請なんて断るだろうと思ってたが予想に反してたった一言で了承した。
ダリル・ローレンツはその顔に怯えも恐怖もなかった。
あれはもしや、歴戦か?
と、そこまで考えたとき、HQと連絡を取り合っていた部下が急を告げた。
「ラトロワ中佐、現場の状況が急変!それに伴い命令内容の変更があるそうです。通信お願いします!」
ちっ、やはり外国のお客さんは厄介を運んでくれる。
ターシャ、お前は私の副官だ。
こんなつまらないことで死ぬんじゃないよ。
部下から奪うようにマイクを取り、スピーカーの向こうのCP将校にがなりたてる。
「ラトロワだ!何がどう変わった。先行している分隊は無事か!?」
《ツェー04補給基地戦域において、先遣のムーア中隊により光線級群は既に撃破。BETA群、ツェー04補給基地より前面二千メートル地点へ移動。同中隊により急速に数を減らしている…ツェー04基地司令部発。ジャール大隊は直ちに補給作業を中断し戦域に向かえ。ムーア中隊がBETA群を全滅させる前に引き上げさせるように。以上です》
一体何がどうなっている!?
本当に外国からお客さんが来る時は禄なことがない!
ニコラSide
我がヴェアヴォルフ大隊はソ連軍のツェー04補給基地で襲撃を試み、日本が開発した試製99式電磁投射砲の強奪任務へと励んでいた
「総員傾注!これより我が大隊は国連軍やソ連軍においてBETA戦闘してる間にツェー04補給基地に襲撃し試製99式電磁投射砲を強奪する」
しかしそれは現実的ではない
何故ならソ連は我が東ドイツの同胞国だからだ
が、今のソ連政府は腐敗してることにありブレーメ総帥閣下が政府関係者を上手く丸め込み承諾した
《ニコラ、まさかソ連の基地で日本が開発した兵器があるとはな。どういう風の吹き回しだ?》
「理解し難いな、身分が高いものは安全圏に行きそうではない者は前線で戦い選択肢しかないのだからな、ロザリンデもそう思うだろ」
《カタリーナは分隊率いて別行動、ダリル少尉はジャール大隊や国連軍の支援に行った。で?強奪した後の事は考えたのか?》
………。
全く考えてなかった。
「ああ、勿論だ。ロザリンデ、成果を果たさないと意味はないからな」
私は見栄を張り嘘を吐いた
嘘吐いても何も得られないが、作戦計画をちゃんと練っておけばよかった
突如、ファルカから通信が来た
《大隊長、ダリル少尉からの報告です》
「何だ?今は作戦行動中だぞ」
《ハッ、手短に申し上げます。現段階でツェー04補給基地戦域において、先遣のムーア中隊により光線級群は既に撃破》
「ムーア中隊?佐渡島同胞団か」
《はい!》
どうなってるんだ?
《ですが全て殲滅した訳ではなく一部減らしただけです!このままだと我々はこの基地丸ごと全滅します!》
「任務放棄するわけにはいかない。13、14は基地の保守任務だ。ソ連軍衛士はもうここにはいない。早く電磁投射砲を強奪するぞ」
《13、了解》
《14、了解!》
もうすぐBETA群が…いやここにはBETAの死骸ばかりだ。
我々は慎重に電磁投射砲をゆっくりと互いに協力しそっと担ぎ込む
その時だ、別方角からBETAが迫ってきたのだ
数は……軍団規模だと!?
《我々だけでは対処しきれません!撤退を!》
「馬鹿者が!ここで手土産なしで帰る訳にはいかないだろ!!」
《ですが!》
ファルカ、分かってくれ
私はブレーメ総帥閣下の為に大義を成し遂げなければいけないんだ
《戦車級だ!》
《大隊長、命令を!》
戦車級……。
拙い、このままでは基地丸ごと鉄の塊になってしまう
「総員砲撃開始!兵器使用自由」
部下に命令を下し、迫ってくる戦車級に砲撃
その間、電磁投射砲を持ち帰る
よし、あと一歩だ
「早くしろ!電磁投射砲をBETAの魔の手に差し伸べるな!!」
時間がない
「ダリル少尉を呼べ!」
《え?ダリル少尉ですか?》
「そうだ!この電磁投射砲を担ぐ手伝いするほか目の前にいる赤蜘蛛を一匹残らず殺せ!」
悠一Side
《悠一、弾幕を張れ!》
いきなり通信から鈴乃の声が響いた。
「あだぼうよ!一発ぶち抜いてやる」
2連ビームライフル、大型ビーム砲、6連装ミサイル・ポッドを同時砲撃し弾幕を張る
《3時方向から高熱源反応が来る! 索敵範囲よりさらに外からの攻撃だ!!》
カァァァァッ
――――で、デカイ!!
何だ、この膨大な高熱線は!?
ドォォォン ズゥゥゥン…………
《ト、トーニャ! キール!》
後ろのジャール大隊の幾つかの戦術機が爆散した。
通信から散った仲間を呼ぶ声が哀しく聞こえる。
隊を俺達より大きく離れさせたのが禍いした。全ての盾にはなれなかった。
《ラトロワ中佐、ここは私達に任せて撤退を!急いでください!》
《こんな訳も分からないままやられるのはごめんだ。全機退避!光線級のセオリー通り、高度はとるな!死ぬなよ佐渡島の衛士》
蜘蛛の子を散らすように撤退するジャール大隊と紅の姉妹
鈴乃は双方に向け敬礼した
いや、『私達に任せて』ってどうすりゃいいんだ!?鈴乃
この超展開……何がどうしてこうなったか、シナリオでも読ませてくれよ大倉鈴乃先生よぉ!
「おい、何に狙われたんだ!?」
《光線級のレーザーだ》
《ムーア2、重光線級の反応があるわ!警戒を怠るな!》
重光線級だと!?
上空にレーザーの閃光が走った。
すると残余のBETAの始末をしていた航空爆撃隊が、全て爆散した。
ペドロパブロフスク・カムチャッキー基地に来たとき説明されたが、この一帯は2000メートル級の成層火山アヴァチャ山に守られ、光線級のレーザーは空も含めて攻撃されない
《ムーア2、奴の狙いは私達だ。ジャールと逆方向に行く。アヴァチャ山を目指せ!》
言われるまま鈴乃のアトラスガンダムについて行く。
カァァァァッ
再び此方にレーザーがきたが、照射の位置とタイミングはわかるので、大きく避けて躱す。
「本当に照射してきやがった!」
《とうとうBETAが俺達を本気で狙いにきたという訳か……》
《BETAは戦った相手を学習し、それに対応した戦術を行う知能がある。だが、ガンダムは強過ぎた。【どのような戦術を駆使しても倒せない相手】BETAの大元はそう見たんだろう》
「おいおい、つまりアレか?新種のBETAが来るって訳か?」
レーダーに反応が来た。
これは戦術機……いや違う戦術機の形をしているBETAだ!
《2人共、新種のBETAが来るぞ!》
ダリルが声を上げる
《確認する……これは、戦術機!?馬鹿な!戦術機の皮を被ったBETAがいたなんて信じられない!》
鈴乃は驚愕し焦った
「数は?」
《4体、あとの2体は…》
ダリルが言いかけようとしたその時、戦術機の皮を被ったBETA2体が両目からレーザー照射した
「うあ!」
何とか回避だ!
《概在のBETAでは倒せない…………なら、新種のBETAを生むしかない。その答えがアレ、か。謂わば『戦術機級BETA』と『光線戦術機級BETA』。全く大物に見てくれたわね》
戦術機の皮を被ったBETA
戦術機級BETAか
「戦術機の皮を被った高所遠方から極大出力のレーザーを照射するBETAだと!?」
カアァァァァァァッ
ドォォォン………
こんな大出力なのに、おそろしく間隙が短い。
どうにか躱したが、このままではジリ貧だ。
いっそ光線級のセオリーの逆で空中を行くか。
躱さなきゃいけないなら……
《照射範囲は広くとも、20キロ以上先から照射してくるなら余裕で躱せる。別れましょう。私達が囮になる、その間に逃げて!》
「俺も連れていけ。俺達は逃げるんじゃない。奴を倒すんだ!」
《俺も行く!ここで退きさがったら生き延びれない》
鈴乃…ダリル……そうか、ならやる事は決めてるな?
やってやるさ
「分かった!出来るだけ近づいてみよう。奴の姿を見ながら倒す方法を考えろ、ダリル!」
《いちいち言わなくても分かってる》
「憎めないねぇ」
アトラスガンダムはサブレッグを乗せながら上昇。
サイコ・ザクはスラスターを展開し、旋回飛行
俺が乗るフルアーマーガンダムはレーザーを躱しながら、その元凶へと舵を向けた。
アヴァチャ山を越えて見たもの。
最初、俺はそれを小山の上に戦術機がいるように見えたが戦術機ではなかった
あれは戦術機級BETA、全長18m その他データなし
ただ言える事は戦術機級BETAの派生種である光線戦術機級は両目からレーザー照射するのが特徴であり何よりも戦術機の武装である突撃砲と長刀を扱える
背部兵装担架のようなものは手が2本ある
驚いたのは光線戦術機級のレーザー照射照準の正確性。
中央の広範囲極大レーザーすら苦労しているのに、突撃砲を握り構えてる戦術機級BETAにまで狙われてはたまらない。
《こんなことなら、地上を行った方が良かった?集中するのはレーザー照射する戦術機の皮を被った2体よ》
「どっちにしろ近づけないだろう。鈴乃でも距離が近くなれば躱すのは不可能になるぞ」
《近づいたとしても、素早い動きで交わされるし。ビームライフルは勿論、恐らくレールガンでさえ、かすり傷しか負わせられないと思う》
分析したダリルはさらに驚くようなことを言った
《俺が前に出て奴の動きを封じ網にかかる!》
戦術機の皮を被ったBETAの対策考えてたのか?
まぁいいさ、愛する人の為に守り抜く……恋愛映画だな
「俺達が引いたら彼奴は北東ソ連を皆焼き払っちまう。そしたら誰も彼も全滅だ!倒せなくとも無力化して時間を稼ぎたいが、どうすれば良いのか」
《それが出来たら苦労はしない、重武装に火力を拘り過ぎてるお前が言う台詞じゃないだろ》
「何だと……!?」
《2人共、喧嘩はやめろ!作戦行動中だ》
鈴乃の怒号で俺とダリルを仲裁した
こうやって飛び回って注意をこちらに向けているのがせめてもの時間稼ぎ。
攻めるなど、三銃士が剣を使って要塞攻略に挑むようなものだ。
《リユース・サイコ・デバイスならどんなBETAだって倒せる!》
ダリルはそう言い、加速を上げサブアームに付いてるザクマシンガンや右手に握り持ってるジャイアント・バズを連射
戦術機級BETA1体殲滅した
残り3!
「お前にしてはよくやるじゃないか!」
《偶々当たっただけだ》
続いては鈴乃がアトラスガンダムがレールガンでレーザー照射しようとしている光線戦術機級BETAに向け直撃した
残り2!
「残るのはお前等だけだな」
俺は増加装甲内ミサイルを展開し戦術機の皮を被ったBETAに向け弾幕を張り一斉攻撃
これで殲滅だな
ふと束の間、俺達は戦術機級BETA(光線戦術機級も含め)を殲滅した事は変わりはない
これで安心して帰れるぜ
と安堵に浸ろうとしたが、鈴乃が重い空気で複雑な表情で言い放つ
《……国連軍からの伝達だ》
「?」
《読み上げる…ジャール大隊は壊滅、帰還数は……なしだ》
は?
今帰還数がないって言ったよな
……そうか、ラトロワ中佐も覚悟を決めて戦場に散っていったか
そう感心していたが、それだけでは済まなかった
《……新たな情報が入った、補給基地で電磁投射砲が強奪されたわ》
何だって………!!!?
《……》
ダリルは何か知ってそうだな?
何を隠しているんだ?
「あそこはBETAに埋め尽くされてる筈だぞ!どうやって…」
《それを実行したのは……》
鈴乃がそれを指揮した人物を言おうとしたがダリルが先回りする形で言い放つ
《ヴェアヴォルフ大隊大隊長、ニコラ・ミヒャルケ》
「!」
《ウルスラ革命時は副官だったが、自分が掲げた作戦を見栄を張ってた無能指揮官だ》
その無能指揮官が何で生き延びたんだ?それが知りたいんだ
《大隊指揮官になったのは恐らくベアトリクスが革命に勝利したからのも含めて彼女の寵愛によるものだと思われる》
さらっと言いやがったな
カタリーナが会話に割り込む
《恐らく電磁投射砲を強奪して似たようなもの作ると思うわ》
《似たようなモノ?》
《ええ、我々が扱うとっておきの最強に誇れるとんでもない武器よ》
おいおいおいおい、まさかと思うがビッグガンとか言うんじゃないだろうな
幾らG元素を応用してもそれはあり得ないぜ
《その名は……》
カタリーナが東欧州版の電磁投射砲の名称を言おうとしたが、ニコラから通信が来た
《カタリーナ、良くやった。我が大隊は無事BETA群を避け電磁投射砲を手に入れた。帰還するぞ。ダリル少尉もだ》
《了解……》
カタリーナは落ち込んで呆然とした表情のまま6機のアリゲートルブリッツを率いて飛び去って行った
《俺も行くよ、ファムと連絡とらなきゃならないんだ》
「そうかい、じゃあお疲れさん。あとは俺と鈴乃がやっておくぜ」
《……今回はお前と共闘したが次はない。貴様との宿命を断ち切ってやる!》
「ふっ、その台詞はそのままそっくり返すぜ」
命をかけてBETAと戦ってきた連中を、自分らの都合が悪いからと抹殺するような奴らは、どうしても許せない。危険くらい買ってやるさ。
都、草野、早乙女、村田……俺はアンタ達の事は一生忘れない
仇は絶対に取ってやるからな
報告
2001年8月19日
軍団規模のBETA群が突如としてカムチャッカ内陸部に出現
第3防衛戦を超えツェー04補給基地までの侵攻を許すも、ソ連軍第3軍第18師団第211戦術機甲部隊”ジャール大隊”の活躍と佐渡島同胞団ムーア中隊の奮闘と支援砲撃によりこれを殲滅
新種のBETAである戦術機級、光線戦術機級両方殲滅
極東戦線は瓦解の危機を脱する事に成功した
尚、今回の戦闘においてジャール大隊は壊滅、帰還機なし
同時に日本が開発した試製99式電磁投射砲は東欧州社会主義同盟戦術機大隊『ヴェアヴォルフ』により強奪
その一件の強奪によって東欧州社会主義同盟は技術を盗用していった。
日本に返還される事は…………なかった。
登場人物紹介4
紅林二郎
日本帝国軍本土防衛軍佐渡基地第三戦術部隊予備部隊に属した整備兵
B中隊付きの整備員を取りまとめる整備主任。階級は少尉(前任者がインフルエンザで死亡した為、相当の地位となる)
23歳の青年男子で、長身に体育会系の引き締まった体格をしている。
佐渡島防衛戦で生き延びた後、鈴乃と行動を共にし佐渡島同胞団に入り引き続き戦術機しつつ新たに配備したフルアーマーガンダムとアトラスガンダムを1人で整備する
モデルは名前の通り漫画系YouTubeチャンネル『ヒューマンバグ大学』の動画に登場するキャラクターである紅林二郎
次回からはブルーフラッグですが省く可能性があります
戦術機同士の模擬戦闘ですからな……(-_-;)
そこは見てのお楽しみという事で
次回のお楽しみに!