ブルーフラッグ
プロミネンス計画総責任者、クラウス・ハルトウィック大佐が発案した
ユーコン基地に所属する各国実験小隊参加の大規模模擬戦闘プログラム
参加機体は……
・国連軍アルゴス試験小隊
F-15・ACTV アクティヴ・イーグル
XFJ-01a 不知火弐型
・ソビエト連邦イーダル試験小隊
Su-37UB チェルミナートル
・東欧州社会主義同盟グラーフ試験小隊
MiG-29OVT ファルクラム
・欧州連合第一スレイヴニル試験小隊
JAS-39 グリペン
・欧州連合第二
F-5E トーネードADV
・豪州
F-18EA アドヴァンスト・ホーネット
・大東亜連合ガルーダ試験小隊
F-18E スーパーホーネット改
・中東連合アズライール試験小隊
F-14Ex スーパートムキャット
・アフリカ連合ドゥーマ試験小隊
ミラージュ2000-5 MK.2
・統一中華戦線バオフェン試験小隊
J-10 殲撃10型
その概要はAH演習によって互いの技術を評価研鑽する事を目的とした、総当たり形式の戦術機同士の模擬戦である
悠一Side
アラスカに戻った俺と鈴乃だが、佐渡島同胞団専用格納庫内で恭子からの指令を待ち構えていたが……。
「何でガンダム出れねぇんだよ!」
「悠一、良く聞いて。ブルーフラッグは戦術機同士で競い合うイベントなの。ガンダムは別世界の技術を携わった機体だから参加できない」
ガンダムは別世界の技術を携わった機体……ああ、その通りだ
本来ならこの世界に存在してはならない。しかし納得いかねぇんだよ
俺は不満たらたらで意地張ると鈴乃は優しい笑みでガンダムではない別の機体を指で指した
「その代わり、貴方はこの機体で参加させるわ」
「これは……」
俺が見た戦術機は……。
不知火を基にした戦術機で関節部のシーリング処理やサブアームを有した背部兵装担架を装備し、普通の戦術機を上回る火力を持ち、尚且つ重装備でありながらも撃震や瑞鶴に匹敵する推力を持つ
頭部はデュアルアイではなくツインアイになっている
武装
2連装突撃砲
ロケットランチャー
突撃砲×4
近接戦用短刀(両腕部に2つ)
追加装甲(サブアーム保持で2つ)
近接戦用長刀(オプション装備)
92式多目的自律誘導弾システム
おいおい、これはフルアーマーガンダムの戦術機Verか!!?
だが、この装備を見る通り、火力が半端ない!
「94フルアーマー……不知火を基にした重装化機体よ」
鈴乃はそう言いながら俺に優しい笑みを振る舞った
「……」
俺は口が開いたまま驚愕し何も言えなかった
「どう?光学兵器が付いてないのは残念だけど、火力と重装備好きな悠一なら気に入ってくれると思って、紅林が態々不知火を調達してそれを重装備させたのよ」
「うっす、俺一人でやったんで大変だったっスよ」
紅林、ご苦労様だ
「ふふ、気に入ってくれたかしら?」
俺は歓喜し鈴乃を抱き締めた
「おお!俺の為に調達してくれたのか!サンキュー鈴乃☆」
「ちょ…兵が見られてるわよ」
「あの、そろそろ時間が」
紅林の一言で俺は鈴乃を抱き締めるのをやめた
「ブリーフィング、行ってくる」
「待って」
鈴乃は俺を止め顔に近づきそっと俺の唇を重ねる
「!」
「……続きをやりましょ、2人で」
「……すぐ戻るさ、2人で乾杯だ」
ユーコン基地のブリーフィングルームでは各国の試験小隊の衛士達が集い模擬戦闘中継の映像を見ていた
「わりぃ、遅れた」
VGがにやけた表情でユウヤを絡みヴィンセントが俺に「ちょっとこっち来なよ」と一言を添える
ん?ユウヤどうしちまったんだ?
「悠一、ユウヤの奴さ、ソ連から戻ってこっちどうも様子がおかしいと思わないか」
あ?何の話だ?
ユウヤ困ってるだろ
「…あ?何の話―――」
「戦術機馬鹿のお前が模擬戦中継より唯依姫に夢中なんだもんなぁ?」
「―――はあッ!?」
おいおい、マジかよ
あの唯依がユウヤを!?
「ぶはっ!」
俺は思わず吹き笑った
「ぶ…くくく…ぐははは」
「悠一?どうしたんだい」
「うはははははははは」
「ユウヤ、悠一が笑ってるぞ」
ヴィンセントが俺が吹き笑い大声出してる事を指し、ユウヤは焦りつつ顔が赤くなる
「ぐははは……や…失礼……ぶ!ぐぶ!ククク…やべぇ、テンション上がってつい本音が…ぷ…くくく…」
「おう、そう言う事かい。という事はとうとうやったのか~オイ!?」
VGの脳内にユウヤが唯依と互いに手を携え身を委ねつつ激しく営みをする場面が浮かんできた
VG、ヴィンセントはともかく俺はまだ大声で笑っていた
「わかるぜ~最初反発し合った分、逆に燃えるんだよなぁッ!?」
ヴィンセントはそう言うが、ユウヤは
「バッ……バカかお前等そんなんじゃねぇッ!!」
否定した。そうだよな
あの篁家の一人娘が易々と恋人同士になれる訳ないよな
「聞きましたか?ミスタ・ジアコーザ」
「な……何だよ」
「……勿論です、ミスタ・ローウェル」
ヴィンセントとVGは広い面積のブリーフィングルームで衛士達の前に声を上げた
「オ~イみんな!此奴、篁中尉の事”唯依”って呼んだぜ~ッ!!」
「しかも見つめて「ジュテ~ム」とかいってンだぜ~ッ!!」
ユウヤが「ンな事言ってねぇ!」と言おうとしたが、ステラと”猿丸”によりVGとヴィンセントは制裁された
「ステラ怒らすとやべぇな…」
と俺は心の底からそう思った
総合デブリーフィングをほったらかした俺はすぐ鈴乃達がいる佐渡島同胞団専用格納庫に行った
「あら、もう帰ってきたの?」
「バックレた」
俺はそう言うと、鈴乃は怒りを露にせず、呆れた表情を浮かび溜め息吐いた
「はぁ…貴方ね。自分が何やったか分かってるの?恭子様から指令が来たわよ」
「恭子から?内容は」
「ブルーフラッグは参加しない」
「な……どう言う事だ!?」
不参加って事かよ!
何考えてやがる、恭子
「安心しなさい、東欧州社会主義同盟のベアトリクス・ブレーメ総帥から特別に模擬戦闘する機会を設けてくれたわ」
何だよそれ……幾らお偉いさんでもそんなことは出来ねぇだろ!?
「出来る筈がない……と思い込んでるけど、私と貴方の立場をもう一度思い出しなさい」
鈴乃は何か意味深な事を言い出した。
あ、俺は嫌われてるんだったな……。
理解してくれている衛士以外は
特にクリスカは毛嫌いされている
イーニァは俺が怖いと思われたから近づいてこない
「どう?少しは理解したでしょ」
鈴乃が言ってる事はご最もだ
そう言う事か
衛士界隈から嫌われている
それは紛れもない事実だ
何にせよ、俺の戦い方が卑怯で悪役みたいな感じだ
「そうだったな、そうか…参加できないのか」
「ベアトリクス・ブレーメと言う女傑はね、ウルスラ革命で勝利を掴み東ドイツを戦闘国家として生まれ変わり数々のBETA戦闘で貢献した列記とした指導者なのよ。彼女は不可能を可能にすることが出来るほど優秀な女性よ」
彼奴もベアトリクス側だったよな
この機会は二度とないかもしれない
だったら受けるしかないだろ
「その模擬戦、受けるぜ!彼奴との勝負なら引き下がれないんでな」
「では恭子様から伝えておくわね」
「ああ、頼む」
良平Side
ソ連での遠征任務を終えた後、俺はユーコン基地に戻り東欧州社会主義同盟専用格納庫に入りラーストチカやファルクラムが並んでる一番端っこにあるサイコ・ザクを見つめていた
「ブルーフラッグだけど、戦術機同士の模擬戦だから…」
「分かってる、ファム姉は俺の事を理解している」
理解し難いのは分かってる
サイコ・ザクに代わる機体があれば俺はまだ戦える
「ダリル君がこの中にある戦術機では乗るのは無理ね……」
ファムは寂しげな顔をした
分かるよ…俺も戦術機で戦いたい
でも無理だよな……。
と思った時、シルヴィアが俺に声をかける
「ダリル、見せたいものがあるわ。ファムも良いかしら?」
「え?ええ、勿論よシルヴィア」
「あたしも行っていい?」
アネットはファムの傍にくっつく
「ふふ、アネットちゃん付いてくる?」
「ダリルがサイコ・ザクに乗って参加できないのは分かるよ。見たいのよ…サイコ・ザクみたいに反応良好な戦術機を」
ファムは「じゃ、私の傍から離れないでね」と言葉を添えシルヴィアは「相変わらず仲いいんだから」と呟き俺は地下格納庫にある戦術機を見に行った
数分後、地下格納庫に入りシルヴィアはある機体を指で指した
「これよ」
それを見た時、俺は驚愕した
「ベアトリクスが私達のところに送ってきたのよ。こんな機体、誰が扱えるかってその一言でしか言えないわね」
シルヴィアはこの機体を見た途端、呆れ顔になっていた
ファムは少し感心そうな表情を浮かべる
「これはアリゲートルじゃない…旧型の戦術機が私達のところに来たって言うの」
「あーもう!また中古なの?何で新しい機体とか送ってこないのよ」
アネットの顔を伺うと、呆れ顔になっているがこの様子だと何度も中古の機体に乗らされてたって事が分かる
でもラーストチカやファルクラムは東欧州社会主義同盟においては最新鋭機だ
第666戦術機中隊はかつて反体制派側にいてたもののそれほど重要な役割を得て前線で戦ってる
つまり貴重な戦力だ。
「後ろよく見なさい、背部兵装担架なんか普通の奴に比べて少し変わってないかしら?」
シルヴィアがそう言うとアネットはその機体の後ろに付いてる背部兵装担架を確認する
「あ、ホントだ、この左右についてるアレは何?」
「さあ?」
「ねぇ、ダリル…あれは何なの?」
アネットがそう問いかけると俺はこう答えた
「あれはサブアームだよ、アネット。ここに届けられたという事は」
アネットは悟った
これは俺が乗る戦術機だという事を
「まさか『リユース・サイコ・デバイス』を搭載した戦術機なのか……」
「え?」
普通ならあり得ないだろう、「何でリユース・サイコ・デバイスがマブラヴ世界にあるんだ?」と
だがベアトリクスはそれを作ってしまった
このBETA大戦で人権など気にしてる場合じゃないと俺は確証した
「となると、この戦術機は俺が扱えるように管制ユニットは特注なモノを換装されてる筈だ」
「あたし達が扱えない戦術機。それって……?」
「この戦術機の名は……サイコアリゲートルだ」
サイコ・ザクの戦術機Ver……。
しかしそんな戦術機ある筈がないし作れるわけがないと思っていたが、俺の目の前にある戦術機は紛れもなくサイコ・ザクには似ても似つかないがそれらを模倣した戦術機
アリゲートルをベースに、パイロットの四肢を義肢化し管制ユニットに接続することで戦術機を衛士の身体の延長のように操縦することを可能にする機能を搭載した実験機。
サブアームは2つ付いており、突撃砲を保持しても使用可能
既に旧式化された為近代改修を施し両腕部はラーストチカの腕部を流用しモーターブレードを装備している。
従来の管制ユニットでは四肢欠損された衛士での搭乗は不可能であり特殊な管制ユニットに変えている
武装
突撃砲×4(サブアーム保持含めると6)
モーターブレード(両腕部)×2
それがサイコアリゲートルだ
そう確信した瞬間、一人の通信兵が俺に電報を伝える
「ダリル少尉、ナタリー・デュクレールさんから電報です『”カムチャッカ遠征慰労パーティー”を私の店で行うから是非来てね♪』との事です。如何なさいますか?」
”カムチャッカ遠征慰労パーティー”か
ナタリーのお誘いが来たら断れないな
行くか……あ、ファムとアネット、シルヴィアの3人どうしよう
「あたしも行きたい!カムチャッカに遠征した衛士に労いたいから……ねぇダリル、良いでしょ?」
アネットは行きたがっている
一応誘うか
「うん、良いよ。アネットも一緒について来るか?」
「え?いいの?やったー!ファム姉も行こうよ~」
「ファムも一緒に行こう」
俺はファムを”カムチャッカ遠征慰労パーティー”に誘った
どう反応出るか?
「あら、お姉さんも行っていいかしら?」
「うん、俺は皆と一緒に飲みたいんだ」
後はシルヴィアだけか……パーティーは慣れ合う機会が多い場だから断られるかもしれない
俺がシルヴィアにパーティーを誘おうとしたが、先にシルヴィアが無愛想な表情で言い放つ
「私は遠慮しておくわ。ここにいる整備兵や衛士の面倒見なきゃいけないから」
と断られてしまった。
「冗談よ、私も行くわ。アネットがやらかしそうだから」
「ちょ、シルヴィア。あたしがやらかすってどういう事よ!」
結局は3人共行くんだな
俺は嬉しいよ、ああ……幸せだ
そして俺含め3人はナタリーが経営してるバーで行われてる”カムチャッカ遠征慰労パーティー”に行った。
悠一Side
「すげぇ人込みだな……」
俺は今ナタリーが経営してるバー『Polestar』で行われてる”カムチャッカ遠征慰労パーティー”に来ていた
うあぁ、何だこれ
おいおい、”猿丸”がバニーガール姿で接客してるぜ
ヴィンセントとVGが笑ってるのも分かるぜ
ナタリーまでバニーガールだ
「(すげぇ…俺もナタリーを口説いてデートに行きたいぜ)」
そう思った俺だが、それだけじゃない
アルゴスオペレーター3人組もだ
う~ん、まぁまぁってとこだな
感心してたが、俺の背後から鈴乃が俺の頭に拳骨を喰らわした
「で!何しやがる!」
「鼻伸ばして……ほぅ、そうか」
鈴乃はバニーガール姿のナタリーに指をさす
「ナタリーみたいな女性がタイプだったのね」
「ば、ちげぇよ!」
喧嘩に発展しかけるが、ナタリーが仲裁に入る
「はいはい、二人共喧嘩はせず仲良くね♪」
しかし、あの3人すげぇ似合ってるぜ
ユウヤの後ろからステラが肩をポンとそっと触れる
「――――ハイ、ユウヤ、楽しんでる?」
ステラの声を聴いたVGとヴィンセントは声揃って「本命キターーーーーーッ!!!」と叫んだが、その服装はバニーガールではなくエプロン姿だった
ん?おたま……何か作ってたな?
「………あの……なんでエプロン…」
「……なんでしょうか……」
2人共は期待し過ぎたからか落胆した
お望みのバニーガール姿見れなくて残念だったな
「私だけじゃないわよ」
ステラが目線を右に向いた先は圧力鍋を持ったエプロン姿の唯依がいた
顔は何故か頬を赤らめている
「……お前………そ、その格好は……」
ユウヤは唯依に問いかけるが唯依は頬を赤らめたまま何も言わない
「…………」
チッ、面白くねぇな
俺は一旦、離れカウンター席で飲むことにした
スコッチ・ウイスキーを頼み、ナタリーがそれをグラスに注ぎ俺の元へ置く
俺はグイっと一気飲みした
お代わりを頼もうとした次の瞬間、ダリルがファムとアネットを連れバーの中に入る
ダリルは「お疲れ様」と一言を添える
「今日は非番なんだ、ナタリー。アイリッシュ・ウイスキーを頼む」
「気にしないで、今日は一緒に楽しみましょう♪」
女子力満載じゃないか!
アイリッシュ・ウイスキーを頼んだダリルは俺の顔を伺う
「良いのか?アルゴス小隊の連中と飲まないのか?」
「俺には鈴乃がいるんだ。彼奴だけいりゃそれだけで充分だ」
「他の女と同じような台詞使いまわしてない?」
「ちょ、余計な事言うなよ、鈴乃!」
鈴乃は悪戯っぽい笑みを浮かべる
「少し待ってて」
そう言うと鈴乃は席から離れユウヤとステラ、唯依のいる席に行き、唯依は皿に何かを盛りつけ鈴乃にスプーンを渡した
席に戻ると鈴乃は皿に盛りつけた料理をカウンターに置いた
「はい、篁中尉から貰って来たわ」
そう言うと鈴乃はスプーンを俺に渡す
「あ、これは肉じゃがだ」
ダリルはその盛りつけた料理の名前を言った
「ふふ、ダリル少尉は知ってたのね。これは肉じゃがと言って、日本の伝統的な家庭料理なんだ。栄養バランスも優れているから是非食べては如何?」
それくらい俺でも知ってるよ!
でもまあ、肉じゃがなんて久々だな……俺のお袋がよく作ってたな
子供の頃が懐かしいぜ
俺はスプーンを手にして、肉じゃがを一口食べた
「熱いから気を付けて」
口に含んだ肉じゃがをよく噛んで食べる
「……美味いよ、参ったぜ」
俺がそう言うと鈴乃は優しい笑みを浮かび頬を赤らめた
「そうか……喜んでくれてよかった」
「お前が作った料理じゃないだろ」
俺が突っ込むと鈴乃は「そこは突っ込まないの!」と言われた
「俺も食いたいよ」
「あたしも!」
「お姉さんも良いかしら?」
3人揃って……!
ファムとアネットが肉じゃが食べてる姿一度見たい
どんな反応するか…。
鈴乃はもう一度席から離れユウヤとステラ、唯依のいる席に行き、唯依は皿に肉じゃがを盛りつけ鈴乃にスプーンを渡した
席に戻ると鈴乃は肉じゃがをカウンターに置いた
「はい、どうぞ。召し上がれ」
そう言うと鈴乃は3人にスプーンを渡す
3人は肉じゃがを一口食べる
感想は……
「美味いよ、凄く美味しい」
「美味しい!」
「美味しいわね」
3人共美味しいと何回も言って喜んだ
「篁中尉にお礼言いなさい」
「おう、そうしておくぜ」
クリスカとイーニァ見かけねぇな
まぁ、あの2人に関しては眼中にない
楽しければそれでいい
俺はユウヤ達がいる席を遠くから覗いた
そこに鈴の飾りがついたツインテールの女性がユウヤの前にいた
彼奴は…………!
確か……誰だ?
鈴乃は俺にこう呟く
「鈴の飾りが付いてる女性衛士、私もにわかだけど名前だけは知ってるわ」
「中国…台湾…そのどっちに属してる衛士だろ?」
「統一中華戦線は知ってるか?」
鈴乃が問いかけると、俺は少しだけ思い出した
カムチャッカにいた中国人か!
「いや、知らないな」
「あの女性は統一中華戦線バオウェン小隊の崔亦菲中尉」
イーフェイ……?
「2つの祖国を持っている……衛士の一人でもあるわ」
中国、台湾
東ドイツ、西ドイツ
北朝鮮、韓国
これらの3つの共通点は分断国家だ
史実世界では東ドイツと西ドイツは統一出来たがあとの2つは政治的事情により統一していない
と言うより指導者がぶっ飛んでて何考えてるか分からない
史実もこの世界と同じ境遇だってのか?
冗談じゃないぜ
本来なら東ドイツはウルスラ革命で反体制派がシュタージを打倒したことにより勝利を掴み急速に民主化を進んだのだが、ここはそうではない。
ここはベアトリクスが革命に勝利した世界線だ
つまりこの世界線にいるカティアは現実を突きつけられ、生きてるとしても軟禁生活送ってるだろう
ズーズィは指導者に向いていない。あれは私怨だ
ハイムは社会主義体制の東ドイツ存続は望んでいない事から指導者としては相応しいが残念ながら社会主義体制の指導者としては相応しくはない
そう、革命と言うセッションは終わっても戦争と言うセッションは終わらない
まだ戦争は終わらない
プレイヤーが入れ替わるだけさ
ベアトリクスSide
東欧州社会主義同盟所属戦艦『カール・マルクス』艦長室
私はアイルランド本部にある戦術機開発を携わってる研究施設の長と連絡を取り合っていた
「そう、完成したのね」
《ええ、イェッケルン議員やベルンハルト総書記からは猛反対されたのですが、我々の熱意が伝わり漸く完成しました!試作機をユーコン基地に移送し無事配備されました!》
アイリスディーナが猛反対したぐらいの戦術機開発だから彼女の気持ちは分からないまでもない
BETAに手足喰われた衛士にサポートする為に開発を尽くした
今更人権など気にしてる状況ではない
「よくやってくれたわ、これでBETA大戦はいち早く終わらせる事が出来る」
《ただ、問題なのは国連の副司令である香月夕呼です。彼女は黙ってはいないでしょう》
あの女狐か……。
始末するにはまだ早い……早まってはいけない
「人権などこの状況下でいちいち気にしてる暇はどない。気の毒だと思うがやらざるを得ないのよ」
《それと『リユース・サイコ・デバイス』を搭載した戦術機、サイコ・ザクと似たような機能を備え付けました。ベース機はアリゲートル。旧型の戦術機ですが従来のアリゲートルより反応が素早く動ける筈です!》
リユース・サイコ・デバイスか………確かパイロットの四肢を義肢化しコックピットに接続することでモビルスーツをパイロットの身体の延長のように操縦することを可能にする機能だったわね
《名前をそのまま使う訳にはいかないので別の名称とかあれば…》
サイコ・ザクの存在のおかげで四肢欠損でも操れる戦術機を開発することが出来た
私は机に置いてある戦術機のデータが書かれてる書類を見てふとこう呟いた
「『リユース・ベアトリクス・デバイス』…これが我々の世界における概念の機能よ」
《『リユース・ベアトリクス・デバイス』…閣下、ご自身の名前から付けるんですか?》
「構わない。リユース・ベアトリクス・デバイス装備アリゲートル……長いわね」
不敵な笑みを浮かび口元をニヤリとしつつ私は言い放った
「サイコアリゲートル……その名前の方がしっくりと来るでしょ?」
《では私はそろそろ研究に励みに行きますのでこれで》
と言い残し研究施設の長との通信は途絶し連絡を終えた
「……」
安堵な表情で艦長室から出ようとした時、ロザリンデが血相な顔しつつノックせずに艦長室の扉を開き中へ入った
「ブレーメ総帥!大変です!」
「ロザリンデ、どうした?部屋開ける時はノックしなさいと親から教わった筈よ」
「ブルーフラッグの模擬戦結果ですが……」
ブルーフラッグ?
ああ、役立たずのグラーフ試験小隊か
彼奴等に関しては期待していない
結果が出さなければ粛清するのみ
ロザリンデはタブレットを差し出す
そこに映っていたのは
「あら、これは中東連合のスーパートムキャットね。これがどうかしたの?」
「紅の姉妹が乗るチェルミナートル、悪魔ですよ!これは我々が敵う相手ではありません!」
「それで?」
「それだけです」
私は呆れ顔になり溜め息をついた
何しに来たのよロザリンデ
冷やかしに来たのかしら?
「そうだとしても我々は勝利を掴まなければならない」
「しかし!」
「下がれ」
「ハッ、失礼しました!」
ロザリンデは私に向け敬礼しそのまま去って行った
「……単機で一個小隊相手に、驚異的ね」
チェルミナートルの資料データを見た私は呟く
「あれが、紅の姉妹……何れ切り捨てられる哀れな衛士がねぇ…」
ブルーフラッグに参加してるのはグラーフ試験小隊
第666戦術機中隊は戦力の要の一つとして補う為不参加
佐渡島同胞団という組織も不参加のようだけど、私が手配した模擬戦演習を実行すれば問題ない
不参加同士の1対1の勝負
私は艦橋にいる乗組員にカムチャッカからアラスカまで出港を命じた
「私だ、今すぐアラスカに向かえ」
悠一Side
俺と鈴乃は基地内の個室でブルーフラッグの模擬戦映像中継をテレビで見ていた
相手は……統一中華戦線か
どんな戦い方してやがる?
おいおい、”猿丸”の奴苦戦してるな
あの動き、相当慣れた剣術だ
長刀を上手く扱ってる
VGとステラも焦りだしたぞ
「動き出したわ」
「ああ」
撃ってきやがった!
上に撃ったぞ
だがビルに当たってるな、何を考えてるんだ?
ユウヤが乗る不知火弐型の上空からビルの破片が飛び散り、それを何か回避する
猪突猛進か、まるで伊之助じゃねぇか
これ以上近づけさせまいと不知火弐型は背面撃ちで突撃砲の120mm弾を後ろからくる敵機に向け射撃するが、逆に敵機が突撃砲を捨て長刀を構え接近し加速し始めた
距離は詰まれる
長刀を振り回した敵機は突撃砲を一刀両断
そのまま放棄させるに追い込まれた
そして不知火弐型も長刀を握り曲芸飛行で敵機が持つ長刀を受け止め着地した
「おいおい、これどうなるんだ?」
目では見えない速さ
長刀を何度も受け止め衝突する
敵機は何度も切りかかる
今度は敵機が不知火弐型を挑発し誘い込んだ
おいでってか?舐めてやがるぜ
不知火弐型も敵機に向け長刀を振り回し切りかかる
しかし怯まない
この時点で不知火弐型は傷だらけだ
長刀同士での一騎打ち
跳躍ユニットを噴出し最大限まで性能を発揮しつつ加速を上げ長刀を振り回す
斬り返しは……不知火弐型の方が先手を取り敵機を一刀両断した
「あれが不知火弐型……同じ不知火とは思えない速さだ」
鈴乃は驚愕し感心した
そりゃそうだろうよ
この結果からみればユウヤが乗る不知火弐型の圧倒的勝利となった。
ベアトリクスSide
私は戦艦『カール・マルクス』含め戦術機揚陸艦『ぺーネミュンデ』を率いりアラスカへと向かった
『カール・マルクス』の艦橋で周りの様子を伺った。
ロザリンデがまた血相な顔をしつつ荒い息を吐き慌てた様子で艦橋に駆け走り私に報告する
「はぁ…はぁ…大変です!」
「今度は何だ?冷やかしなら結構よ」
「はぁ…はぁ…はぁ…ブルーフラッグで我々東欧州社会主義同盟グラーフ試験小隊とアメリカ軍の派遣部隊インフィニティーズとの対戦結果ですが…」
「早く言いなさい、私は暇じゃないのよ。それにまだ始まったばかりじゃない」
ロザリンデの口から信じ難い結果を言い放った
「対戦結果が撃墜4。アメリカ軍側の損害は0。尚、状況が確定するまでの所要時間は……4分です」
………この役立たずが!
私は冷静に振舞い鬼のような目で睨みつきこう言い返した
「もうあの小隊にいる衛士は役に立たないという証拠になった。その結果だ!」
「と申しますと……?」
「ユーコン基地にいるグラーフ小隊の長と連絡取れるか?」
「ハッ、確認します」
ロザリンデは通信兵に無線機を借り、ユーコン基地にいるグラーフ小隊の長と連絡を試みる
「ブーフだ。グラーフ小隊の小隊長と話がしたいが構わないか?」
ロザリンデは通信越しで何度も頷き、相手側が了承を得たからか難しい表情を浮かべる
そして、私に無線機を渡す
「ブレーメだ、貴様……よくも私の顔を泥塗ってくれたわね」
《も、申し訳ございません!アメリカ軍のラプターがこんなに速かったとは思わなくて…》
口答えする気か、この愚鈍が
「誰が喋っていいと言った?貴様のくだらぬ意思でものを言うな」
《私はブレーメ総帥閣下のために命をかけて戦います!》
「貴様は私の言う事を否定するのか?」
《いいえ、次こそ!次こそは必ず!必ず勝ち取って見せます》
馬鹿か此奴は、もう敗北されたと言うのに「次こそは勝つ」と命乞いで言ったわ。
私は鼻で笑う
「……私が問いたいのは一つ。何故貴様等小隊はそれ程まで弱いのか。ステルス戦術機のラプターに敗北したと言って終わりではない。そこから始まりだ。より他の衛士を超え、より強くなり、私の役に立つための始まり。革命から18年、第666戦術機中隊とヴェアヴォルフ大隊は顔ぶれが変わらない。犠牲者含め引退した衛士を除けばBETA大戦早期終結に常に貢献してるのは、第666戦術機中隊だ。しかし貴様等グラーフ試験小隊はどうか?何度入れ替わった?」
沈黙、何も言えない、か。
「最期に言い残すことはないのか?」
《もう少しだけ御猶予を頂けるならば、必ずお役に!》
しつこいわね此奴……。
「具体的にどれ程の猶予を?貴様はどのような役に立てる?今の貴様の力でどれ程のことができる?」
《寵愛を…総帥閣下の寵愛を受けて頂ければ!私は必ず今度こそインフィニティーズに勝って見せます!より強力な衛士となり戦います!》
「何故私が貴様の指図で寵愛を受けなきゃいけないの?甚だ図々しい……身の程弁えろ」
《……!違います!!違います!!私は!》
何が違うと言うの?ホント、身の程弁えてほしいわね
「黙れ、何も違わない。私は何も間違えてない。全ての決定権は私に有り、私の言うことは絶対だ。貴様に拒否する権利はない。私が”正しい”と言った事が“正しい”貴様は私に指図した」
グラーフ試験小隊Side
東欧州社会主義同盟グラーフ試験小隊専用格納庫
待合室でブルーフラッグでアメリカ軍の派遣部隊インフィニティーズのラプターに敗北した責任で小隊長は突如連絡が入ったベアトリクスと無線機でやり取りしていた
《もう一度言う、最後に言い残すことはないのか?》
「あぁ…あ…」
恐怖心で怯え何も言えない小隊長
必死で命乞いをする
《グラーフ試験小隊は解体する。結果が出せなかった貴様等の行いを後悔するがいい》
「待ってください!」
通信が途絶された後、待合室の中から国連軍憲兵を扮した者達が囲まれ、小隊長は恐怖の連続で何も抵抗しなかった。そして……。
ダァーン!
凶弾に撃たれ絶命した
ナタリーSide
「お待たせして申し訳ありません」
事務室に入った私はコーヒーをお盆に乗せて片手で持ち、ある男と対面しタオルを渡した
「……緩み切っているな」
「ご勘弁を。ここではその方が目立たないのです」
男はタオルで両腕を拭き顔まで満遍なく拭いた
「そうではない、この基地全体に漂う空気の話だ。お前達はよくやっている」
男はそう言った
私はテーブルの上にコーヒーを置く
「スケジュールはどうだ。遅れが出始めていると聞くが」
「申し訳ありません。突発的な大規模演習やそこへの米国派遣など色々ありまして、大事を取って一時的に搬入を止めました。遅れは挽回可能な範囲に止めています」
「そうか、”民間人”がそろそろ動き始める頃だ。奴等に後れを取るな」
「は―――”指導者”の到着までには帳尻を合わせます」
「……む」
男はコーヒーを口を含みこう言った。
「―――インスタントであっても合成品ではないな。こんな高級品が出回っているのか……」
「南北アメリカ大陸では誰もBETAと戦争なんかしていないんです。ご存知ありませんでしたか?少佐?」
顔や腕を拭き終わった男は左手に胸を当てこう言い放った
「では――――この大陸の連中にも教えてやろう。戦争の興奮と愉悦をな」
男との会話を終えた私は店を閉め、店内の清掃作業を行った
ダリルが私に声をかける
「手伝おうか?」
「あら、じゃあお願いしようかしら?」
何なの、このときめく感じは
心臓がドキドキしてる
「ダリル君、トイレ掃除お願いね」
「了解♡」
頼もしいわね、ダリル君
あ、そうだ。誘い込もうかな……義手義足だけど後方支援なら役に立てる
カウンターやテーブル、床を拭き磨き汗をかいた
数分が経ち、ダリルはトイレ掃除を終え「次何すればいい?」と問いかけた
「じゃあ、そうね……私から素晴らしい提案するわね?」
勧誘すれば入ってくれる筈……ダリル君は分かってくれる
「ん?何だい?」
私は凄味ある笑みでダリルにこう言い放った
「貴方も私の同志にならない?」
「入る」と言ってくれる筈…だが予想外な返答を言われた
「良いよ、但し条件がある」
「ホント?ん?条件って」
「俺と彼奴の勝負を見届けてくれないか」
それは模擬戦の観戦を誘いに来た
「ふふ、悠一の事を指してるのね?良いわよ、ダリル君が戦術機に乗って戦うところ、見たかったの」
「うん、すぐ来た方が良いよ。これから始まるから」
「でも…」
私が口籠るとダリルが私の手を握り引っ張り店の外へ出て走る
「ちょ、何処に」
「大丈夫だよナタリー、俺はアンタの味方だ」
私はダリルの事を信頼するようになり身を受けてくれた。
シャロンやレオンを出そうと思いましたが、主人公の嫌われ者設定により残念ながら全部カットしました。
シャロンクラスタの皆様、申し訳ありません(-_-;)
次回はブルーフラッグ不参加の衛士だけ集うレッドフラッグと言う模擬戦プログラムの話です
悠一と良平がいよいよ対決しますよ!
お楽しみに