トータルイクリプスサンダーボルト   作:マブラマ

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第22話 Unchained Melody

悠一Side

2001年9月21日

国連軍ユーコン基地 佐渡島同胞団専用格納庫

 

俺は鈴乃と一緒に互いのガンダムを整備していた

「紅林ばかり任せっきりじゃ私達が悪く思われちゃうでしょ?」

衛士強化装備でアトラスガンダムのコクピットに乗り点検する

いつ見ても美しいぜ鈴乃

勿論、俺も衛士強化装備着用している

「何?」

おっと、目が合ってしまった

下心を隠せ俺

落ち着け、落ち着くんだ

「…」

鈴乃は鼻で笑い、ジト目で誇らしげな笑みを浮かべる

「さては私の強化装備姿を見て興奮したな?」

「え?いやそんな事は」

「この変態…」

鈴乃はそう言うとコクピットから降り俺を抱き締め互いの唇を重ねた

「体力は保たないと長くセッションは出来ないわよ」

と言って、再度唇を重ね「ちゅっ」と音を立て色気を増した

「ふふ、今日の私は少し熱ってる……一緒に寝て構わないか?悠一の部屋に」

「…ああ、良いぜ」

俺は鈴乃を抱き締めようとするが、紅林が血相な顔して俺と鈴乃に近づいた

「大倉大尉、豊臣少尉。大変です!」

「どうした?血相な顔して……何があったんだ」

「基地に……中東連合専用格納庫でテロリストにより襲撃され機体を強奪し司令部との連絡は途絶しました!」

マジかよおい……これは笑えないぞ

「あと、東欧州社会主義同盟第666戦術機中隊専用格納庫も襲撃されました。ラーストチカ35機とファルクラム1機強奪され格納庫にいた衛士は全員死亡しました」

ラーストチカって……彼奴と666の衛士がいるところじゃねぇか!

ファムとアネット、シルヴィアは無事なのか?

クソ!何も出来ねぇ!

辺りは騒然としていた

各国試験小隊の戦術機が強奪され基地司令部との連絡が途絶し通信が使えない

「紅林、アルゴス小隊の連中は!?」

「篁中尉達は無事でしょう、そう易々と倒れませんよ」

良かった……唯依は無事だったんだな

「恭子と連絡取れるか?」

「確認します」

紅林は折り畳み式の携帯電話でアンテナを伸ばし日本にいる恭子と連絡を試みる

一体何がどうなってやがる!

軍用通信だけが使えないだけだ

民生用でなら使えるというのか?

そうなんだな紅林

でもジャミングで妨害されてるから期待はしないがな

「……もしもし?崇宰恭子さんは今其方にいらっしゃるでしょうか?」

おい、何処に電話してんだよ!

まさか恭子の武家屋敷か?

「はい……至急で……はい……そうです……」

………。

「あ、はい!そうです、今ユーコン基地で大変なことが起きまして……はい、そうです……」

いつまで時間かかってんだ?

もう襲撃されてもおかしくないぞ

早く助けに行かねえと

「はい、少々お待ちください……豊臣少尉、恭子様が貴方に話があると言っています」

俺は紅林が持ってる携帯電話を持ち耳に傾ける

「お電話代わりました」

《代わりましたじゃないでしょ!貴方、今までユーコン基地で何してたの?》

相当怒ってるようだ

面倒臭いがここは自分で処理しないと

「今の状況を報告すると、ユーコン基地にテロリストにより襲撃されたらしい。唯依と連絡取れないし司令部まで連絡取れねぇ!」

《唯依は無事なのね?》

「……そう願いたい、いや生きてる。アンタが見込んだ衛士なら絶対に死なない筈だ」

彼奴は生きてる

この携帯電話はジャミング対策とかしてるのか……流石日本の技術ってとこか

《私は日本から一歩も出られないからアドバイスだけしておくわね。唯依を必ず生かしなさい…!あの娘は私と血の繋がってる可愛い娘同然だから……もし死なせたりしたら私が許さないわ》

つまり絶対に助けに行けって事かよ

場所分からないのにどうやって……?

《ガンダムのデモンストレーションの効果はどうだったかしら?光学兵器はダメでも実弾兵器での戦術機開発は可能よ》

「最初は皆驚愕したが、戦術機とは遥かに及ばないオーバーテクノロジーだからか……ダメだった。いい結果出せなくてすまねえ」

ブルーフラッグ以前に構造が全然違うから作れないよな……。

《何処で作った会社なのかは聞かれてなかったみたいね》

アナハイムエレクトロニクスとか言ったら「聞き慣れない名前の会社だ」と言われる始末だ

《大倉大尉に代わって。彼女にも伝えたい事があるわ》

俺は頷き、鈴乃に携帯電話を渡し代わる

「大倉です、恭子様お久しぶりです」

《久しぶりね、元気そうにしてるわね。貴女に伝えたい事あるわ》

「はい?それは…」

《佐渡島での戦闘で早乙女まどかと言う衛士の名は聞き覚えがあるかしら?》

「早乙女……あ、はい。確か佐渡基地に赴任してた衛士の1人ですが…彼女がどうかしたんですか?」

《帝国軍公式では戦死と記述してるけど、全く異なる事実よ。能登少尉が機械に詳しかったから帝国軍のデータベースにハッキングし漸く真実が知ることが出来た》

早乙女が生きてるっていうのか?

確かに彼奴だけは船にいなかった。

では今まで何処に…?

「早乙女少尉が生きてると言うのですか?」

信じられない……しかし恭子が嘘吐いてるようには見えない

《1人だけ基地に孤立しBETAから逃れたみたいね。当時新兵だとしても脱走した素振りは見えなかった》

どうやって生き延びたんだ?

それが知りたい

《豊臣に代わって頂戴》

鈴乃は携帯電話を俺に渡し代わった

「俺はガンダムで出る。アンタは唯依の事が好きだろ?」

《口の利き方は相変わらずだけど、この件が終わったら日本へ帰国させる。これ以上ユーコン基地に留まる訳にはいかない》

やっと日本に帰れる

俺はふと安堵したが、今はそう言ってられない

《外に出たら全ての外部からの通信での交信はできない。戦術機同士の交信はある程度使える》

「……了解したぜ。俺達は日本に帰る!それまではお預けだ」

《……ふふ、口が軽い男。じゃそろそろ切るわね》

恭子はそう言って、携帯電話を切り通話終了した

俺はフルアーマーガンダムのコクピットに入り機体を起動した

鈴乃もコクピットに入り機体を起動させ迎撃態勢を取る

互いの機体のハッチを閉め同時出撃しアルゴス小隊の衛士達がいる専用格納庫に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良平Side

 

俺はナタリーから事前に渡された”義手”を今使っていた義手と入れ替えた後、難民解放戦線が占拠したユーコン基地の中央作戦司令室で国連軍MPに変装しここにいる国連軍将校を銃口向けていた

無論、俺は撃つつもりはない

ただ、様子を見るだけだ

ヴァレンタインと言う難民解放戦線の実行部隊の長を務める女性は”指導者”と通信しやり取りしていた

「マスター、中央作戦司令室の占拠を完了しました」

《―――現状の報告を頼む》

「は――――」

ヴァレンタインの報告内容はこう記述した

全細胞は15時丁度に作戦を開始

国連駐留部隊の監視システムをハッキング

15時07分 通信センターを占拠

15時15分 『ゴルフ』を狙撃 これを排除

15時40分 『神の剣』の守護者に潜伏細胞が合流

同15時40分 強襲部隊が第二作戦司令室を占拠

15時43分 各演習場にて試験中の開発部隊を制圧

15時45分 三軍の即応部隊を同時襲撃 これを掌握

戦術機部隊が行動を開始し現在各国試験小隊の戦術機破壊を実行中

作戦開始までは約40分を予定――――

良く出来た作戦だが、この戦術を仕掛ける人物は恐らくファムとアネット、シルヴィアが良く知ってる人物1人しかいない

我ながら参ったよ、とてもじゃないが1人で立ち向かうのは無理だろう

《頑張ってくれているな……彼らの献身を讃えたい》

「はい、皆この為に生きてきました。『ゴルフ』と『インディア』は確保しましたが『ホテル』の所在は不明、発見次第報告致します」

国連軍MPに扮した構成員が何らかの変化が気付いた

「―――外部に通信試みている者がいます!場所は―――司令部ビル4階第6通信室」

《ほぉ……司令部内でまだそんな真似ができる者がいるのか》

「マスター――――私が行きます」

《君が行ってくれるのはとても頼もしいな。だが行動はくれぐれも慎重に―――君を失いたくない》

「お気遣い感謝しますマスター、声明前には必ず戻ります」

《ああ、是非そうしてくれ》

間違いない、あの男は………ファム達の戦友だった衛士の一人だ

テオドール・エーベルバッハ…………かつてウルスラ革命でシュタージに立ち向かった一人の青年

その青年が何故テロリストになったのかは俺は知る由もない

これは推測だが………義妹のリィズ・ホーエンシュタインを喪った事が原因だ。

しかし、彼女は既に精神崩壊しとてもじゃないが正気ではいられなかっただろう

テオドールとリィズは普通の義兄妹だった

俺は怒りを覚えた

この男が、世間知らずで自らの我欲で人類を消滅しようと目論む

擁護できないただのテロリストのリーダーに成り下がった外道だ!

俺が、仕留めなければならない相手だ!

彼を憎んだ

《全世界に我々の意思を示す名誉は、君にこそ相応しいのだから》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前に遡る

俺はナタリーが経営していたバーの事務所で、ナタリーは俺の義手を差し替える

「今の義手では、重火器類は使えないから入れ替えるわね」

そう言うと、今まで使った俺の義手はボストンバッグの中に入れる

「……ありがとうナタリー、これで俺は満身創痍で戦える」

「うん、あの…こんなこと言うのもなんだけど良いかしら?」

ん?ナタリーの様子が変だ

体が熱って顔は赤くなっている

「私、貴方と初めて出会ってここに来た時は既に…心臓がドキドキしてたの」

何が言いたいんだ、これはもしや

まさかと思うがカミングアウトするのか

「でも、私……幼少期に出身地のフランスからカナダへ疎開してきた難民だったの。貧しくて苦労の連続での生活だった。それで救われるものを救いたいと言う理由から難民解放戦線に入ったの」

そういう境遇だったのか……俺はナタリーの事何もわかっていなかった

辛い人生だった……彼女の顔を見るとそう思えてくる

「それで、うん……」

ナタリーは急に口籠った

言えない事とかあるのか?

俺は優しい表情でナタリーに話しかける

「誰にも言わないよ、ほら…二人だけの秘密として俺に話してくれないか」

「誰にも言わない?」

「うん、約束するよ」

その約束を果たせることが出来るか…俺は正直不安だ

ナタリーは更に衝撃な発言を言い放った

「男の人とこうやって話すのは、ダリル君が初めての相手よ。実は私、同性愛だけど貴方がこうやって話してると心が癒されていく……ときめくのよ」

同性愛だったのか……しかも俺が初めての相手

男性との恋愛感情を芽生えたナタリーは両性愛になっていった。

「俺の事を恋愛感情抱いてくれたんだね。嬉しいよナタリー」

「ふふ、ありがとう」

ナタリーは俺を抱き締め顔を近づける

「私の事、好きになった?」

「とっくに好きになったよ」

「彼女、いいの?ほったらかして」

ファムの事言ってるのか?

俺はこう誤魔化した

「ただの戦友だよ」

「私の想いが、貴方を守られたい…」

ナタリーは俺の唇を重ね抱き締める

互いの舌を絡め合い、ナタリーは身を委ねる

事務所の中で俺とナタリーは抱き締め合う

バーテンダー服を脱がし、赤い下着を包んだ豊満な胸を露にした

「来て…」

「……」

俺は唾を飲み込み、ナタリーの胸を揉み触りながら首筋を舐め回す

「あぁ…ん。くすぐったいわ」

「ごめん…」

「ふふ……偶には恋人気分は良いわね」

そして俺とナタリーは甘く切ない行為をしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベアトリクスSide

東欧州社会主義同盟ヴェアヴォルフ大隊専用格納庫(旧グラーフ試験小隊専用格納庫)

 

ユーコン基地にあるグラーフ試験小隊専用格納庫は我々が使う事になり、新たに配備されたファルクラム、既存のラーストチカはシュタージカラーに塗り替えていった

私の部下であるカタリーナは整備兵の服装に着替え戦術機の整備作業を仕切る

「急げ!モタモタするな!」

あらあら、やる気が出て良い事ね

しかし、私は既に察知していた

ユーコン基地にテロリストに襲撃されてる事を

その首謀者は……

「総帥、第666戦術機中隊に交信しましたが連絡取れません」

ニコラは私に現状報告

「こんな事するの、調べるまでもない」

「裏社会の情報屋の伍代ですか、信用していいのですか?」

「今まで伍代に頼りっぱなしだったから今回はそうはいかない。今すぐ出れるか?」

ヴェアヴォルフはいつでも出撃出来る

あの男はアイリスディーナをほったらかしてまで何をしたいのかしら?

鬼畜の所業とはこういう事ね……彼の顔を思い出すだけで甚だしい

666の衛士だった青年がテロリストになった

実に馬鹿馬鹿しいわ

「出撃許可をください!いつでも出られます」

「……推進剤の注入は」

「は――既に完了してます」

………このままでは埒が明かない

「出撃させろ。私も出る!ファルクラムを用意しろ!」

「は――直ちに」

再び、我々を歯向かおうと言うのか………。

エーベルバッハ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠一Side

 

俺と鈴乃は互いのガンダムに乗り出撃し、アルゴス試験小隊専用格納庫に向かっていた

俺は不安だ、彼奴らがどうなってるか

もしかしたら死んでる?いやダメだ

そんなの恭子が許すはずがねぇ!

絶対に日本に帰って日本にいる獅子堂家を見返してやる!

「鈴乃、状況は?」

《もうすぐ着くぞ、準備は良いな》

「おう、ここは二手で別れよう」

《私は666の専用格納庫、悠一はアルゴス試験小隊専用格納庫に行って》

「了解したぜ」

俺と鈴乃は二手に分かれる

10分経たず、アルゴス試験小隊専用格納庫に到着したが、俺が着いた頃には既に戦闘は始まっていた

数は……分からねぇ

マーカーを確認する

「アメリカのイーグルとファルコンか……あのイーグルはアルゴス試験小隊が保有してる機体だ。となるとファルコンが……」

俺は機器にガムテープで固定しているカセットレコーダーの電源を入れ軽快なジャズを流しながらそのまま敵のファルコンに向け突っ込む

「ジャズが聴こえるか?クソ野郎共!貴様の命を貰いに来たぞ!」

2連装ビームライフルで敵機を次々と撃破

《くっ……何故だ………!何故だッ!!》

アルゴスの連中と交信する暇はない

連中も今忙しい

《それにノイズ……いやジャズが聴こえる!まさか”FG”……!?》

テロリストらしき女性衛士の悔やんでる

目的を果たさなくて単に悔やんでるだけだろ

同情の余地はないと俺は心を鬼にしてテロリストのクソ共が乗る戦術機に向けその1機をサブアームでシールドを投げ当てその機体の背後から掴み盾代わりにする

《うわ!な、何なんだ!?》

《貴様、何する気だ!?》

「俺を撃つ気なら本気で撃ってみろ、この衛士を殺す覚悟があるならな!」

《撃て!撃ってくれ!ジゼル!!》

テロリストが乗る戦術機数機は俺が乗るフルアーマーガンダムに向け突撃砲で連射するが当然ながら当たる筈もなく軽々と回避する

《クソ!速いッ!》

「は!俺からのプレゼントだ!」

俺はジゼルと言う少女が乗っていると思われる機体を目掛けてランドセル左肩部に装備してる6連装ミサイル・ポッドで大型弾頭を射出しサブアームで掴んでる敵機を放し飛ばす

《が!》

「光れーーーーーーッ!」

ドフッ

敵機は爆散する

《貴重な戦力を………》

アルゴス小隊の連中は次々と敵機を撃滅

軽々と払い除ける

《よくも……ッッ!》

ゴォッ

ジゼルが乗る機体は俺が乗るフルアーマーガンダムに向け急接近

そんなに死に急ぎたいのか………。

俺も最大全速で加速飛行し、スコープで照準を定め大型ビーム砲で砲撃しジゼル機の頭部を破壊

恐慌状態になったジゼルは焦りだし怒りと怨念を露にしつつ両腕保持してる突撃砲で俺に向け……ではなくユウヤが乗る不知火弐型の後ろで砲撃する

《何も……知らない癖にぃぃぃぃぃぃぃッ!!!》

クソ!ユウヤに当たる

その時だ、長刀を握り構えている兜のような形をしてる頭部がある戦術機がジゼル機の左脚を切断した

黄色い武御雷……!

あの戦術機に乗ってるのはただ一人しかいねぇ。

「唯依か?」

《なァッ――――――!!》

ジゼル機はそのまま墜落していった

が、俺は逃さない

墜落したジゼル機に突っ込み2連装ビームライフルの銃口で管制ユニットのど真ん中に叩き付けた

《ぐ!》

「そんな身体じゃお前はここで限界だな」

《此奴ッ!無慈悲で…》

俺はランドセル側面に装備されてるビームサーベルをサブアームでラックから取り出しそれを握る

「終わりだ………」

《マスター……少佐……申し訳ありません。姉さん……ごめん》

刃を向けそのまま葬った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァレンタインSide

 

「クリア」

「ここもか……」

難民解放戦線の実行部隊のリーダーとして私は国連のユーコン基地に襲撃し関連施設を次々と制圧していった

「――――クリア」

「奪われた無線機で我々の動きを盗聴されているな」

「はっ」

「追跡班に伝達―――指示があるまで無線の使用は禁ずる」

正規の軍人と我々ではこれほどの差があるというのか……

私はそう悟った次の瞬間、照明が消え、真っ暗になり銃声が鳴り響く

そして私についてきた構成員は全員死んだ

私の背後に誰かが銃口を突きつける

「動くな――――!武器を捨てて両手を挙げろ」

「……」

この声は聞き覚えがあるような……

私は観念し武器を捨て両手を挙げる

「話を聞かせて貰う……貴様達の人数は?誰の手引きで侵入した?」

「……答えるとでも?」

「……それは困るな、素直に話して貰いたい。私も外道には身を落としたくない」

目線を右に向けると私が知ってる人物がいた

「……―――!ドーゥル大尉……!?」

イブラヒム・ドーゥル大尉

かつて私の命を救ってくれた恩人だ

「……!?貴様は……」

私は包み隠さず正直に答え正体を明かした

「私の名前はメリエム・ザーナー、かつてラシティのキャンプで貴方に命を救われた者です。我々は難民解放戦線です。貴方は多くの難民を救い、手を差し伸べてくれた英雄だ。是非我々と行動を共にして欲しい」

「……私は英雄などではないし大尉でもない。難民解放と言えどもテロリストと手を組んでいる貴様達に荷担するなどあり得ない」

………。

「………声なき者の声を世界に発信し認めさせるには……綺麗事だけで済むとは考えていません。世界に変革を齎す貴い犠牲なのです」

「あの時……私の命令で部下達が死んだ。部下達が命を賭して守った子供が成長し難民解放運動の闘士として私の前に現れた。この運命の皮肉を亡くなった部下達に詫びるつもりはない、何故なら私は自分が生きてきた結果の全てを受け容れると決めているからだ」

ドーゥル大尉は冷静に私と話しかけ説得する

「……大……尉、私は……」

ピピッ

ヘッドセットから交信が来た

ピピ

ピピ

「……」

ピッ

「……なんだ」

構成員の一人から交信し私は瞬きしつつ頷く

「―――――……え……、…………そう……か。分かった、すぐ戻る」

……。

「妹が死んだ、たった今……」

「……君の妹も難民解放戦線に……?」

「優しい子だった。母親を亡くした後、悄然とする私を慰めてくれた。……私は姉だというのに彼女に何一つしてやられなかった……」

あぁ、やっぱり私は最後まで戦わなければいけない

救われるものを救うべき……最後まで

「……その身をくべる事で妹は私の心にもう一度火を点けてくれた……やはり私は戦わなければいけない」

私はドーゥル大尉に別れを告げる

「お別れですドーゥル大尉、我々と歩みを共にして貰えないのは残念です……」

「考え直せメリエム!君の妹は君が不幸になる事を望みはしない!」

「……戦いを望んでいるのは私自身だ。撃ちたければ撃つがいい」

そう言い残し立ち去った

「……その先は茨の道でしかない―――何処にも繋がっていない可能性すらあるのだぞ、メリエム・ザーナー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴乃Side

 

第666戦術機中隊専用格納庫に到着した私はアトラスガンダムから降り、中へと入ったがそこには死体がずらっと並んでおり戦術機は一つ残らず強奪された形跡がありもぬけの殻だった

「何だ……これは……」

衝撃的だった、もうここには誰も生きてる人はいないのか

そう思い込みアトラスガンダムのコクピットに戻ろうとした時、銀髪の女性が声を掛けられた

「待ちなさい」

「!」

目の前に現れたのはシルヴィアだ

「生きてたのか?他の人は?」

「ファムとアネットは無事よ。整備兵数人も……あとは」

「襲撃されて死んだ……」

シルヴィアは私の手を引っ張り地下へ降りていき、地下格納庫へと入る

「私達の機体は無事よ。地下に隠しといて正解だったわ」

「……盗まれた機体は?」

「あれは666中隊仕様に塗装する予定だった機体ね、ファルクラムはファムが乗る予定だったけどそれも白紙撤回に」

塗装前の機体だったのか

私は眉間にしわを寄せる

地下格納庫を見渡すと見覚えがある戦術機があった。

”PZ”だ

「……」

「ん?アレね、ダリルのサイコ・ザクよ」

「サイコ・ザク……?」

「そう、で?貴女は何故ここに」

あ、そうだ。現状報告しないと

「ああ、心配でここに来たんだ」

「私があんな下種野郎どもに殺される訳がないでしょ?お馬鹿さん」

揶揄ってるのか?

いや今は怒鳴ってる場合ではない

「クシャシンスカ中尉、私は大尉だ。発言に気をつけろ」

「あらこれは失礼」

軍律はそこそこだが、悪い人ではないな

「シルヴィア!今すぐ来て、難民解放戦線の声明が」

アネットが血相な顔で慌てながらシルヴィアに近づきタブレットに映ってる女性の映像を見せる

《BETA大戦勃発以来30年、BETAによって故郷を追われた我々を待ち受けていたのは難民としての過酷な生活でした。人として生きる事を我々難民は否定され続けてきました。今、世界には許されざる悪行が蔓延しています》

「ジャミングが弱まって……これは司令部からの放送!?」

シルヴィアは「そうみたいね」と一言を添えアネットはただ頷いた

《人を人として見ず己の欲望の為にのみ生きる者……特に米ソ連両国並びに国連は悪質です。安穏とした後方に居を構え世界の不正義と不平等に目を瞑る者。難民達を自らの盾として使役する者、何れも等しく神の手によって裁かれるべき存在です、我らは神の剣となりて断罪します》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベアトリクスSide

 

我々東欧州社会主義同盟戦術機各部隊はユーコン基地でのテロ行為を鎮圧すべく総出撃していた

目標はユーコン基地司令部ビル

下等なアメリカに任せたら碌なことがない

という訳で私は景気付けに音楽を流すことにした

「景気付けに音楽を流しなさい、私が許可する」

《は―――》

ニコラはスピーカーの電源を入れ軍歌を流す

 

前進!前進!前進!また前進!♪

 

 

 

炎の中で♪

 

鋼鉄が鍛えられるように♪

 

 

試練の中で♪

 

我らは強くなる♪

 

 

不敗の女傑に従い♪

 

万難に勝ってきた♪

 

誇らしい行路で♪

 

自信は百倍する♪

 

 

我らは止まらない♪

 

我らは恐れを知らない♪

 

我らは暴風を拭かせて進む♪

 

社会主義 勝利の道へ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女達、ヴェアヴォルフに入った甲斐があったわね……目標の現在位置は?」

《ここです》

リルフォート……歓楽街に外道が潜んでいるとでも?

そう言いたいのねニコラ

「よし、リルフォートで3つに分かれて迎え撃つわよ。」

《は――》

「カタリーナ小隊は念の為だ、ソ連領域の基地へ向かえ!」

《総帥、難民解放戦線の声明があります》

「見せろ、音楽を止めなさいニコラ」

《は――》

ニコラは音楽を止めロザリンデは難民解放戦線の声明と見られる映像を表示した

《我々はユーコン基地を完全に制圧しここに住まう10万を超える人間を人質としました。我々は人質諸共この地に散る覚悟があります、我らの要求は以上の通りです。ひとつ、世界のすべての国々が即時難民を受け入れる事―――》

馬鹿が、貴様らテロリストの言葉を聞く耳持つと思うのか

気持ちは分からないまでもないけど

でも難民を介抱すると口先で言ってるだけ

最早鬼畜の所業だ

「テロリストは全員粛清しろ」

貴様等みたいなテロリストが生きてても意味がない

そう、”本当の生きる価値がない外道”と判断し葬る!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィアSide

 

「動き出したわね…」

「うん」

専用格納庫にいるのは私含めファム、アネット、大倉大尉のみ

ファムも後からきてタブレットに映ってる女性の声明を見て聞いていた

《―――交渉中であるにも関わらずアメリカは爆撃機を出撃させました。司令部の近隣には市街地があり今なお数万の民間人が存在しているというのに!アメリカは自国の権益を守るために彼ら諸共我々を処分しようとしているのです。我々はテロリストとして処断されるのは覚悟しています》

何、彼奴……結局は自己満足を得たいだけのイベントしたいだけでしょ?

《しかし考えてみて頂きたい、だからと言って平然と民間人を見捨てるアメリカも正義と呼べるのかを!》

基地に爆撃機ね、何がしたいの?

「こんな……」

「カムチャッカの時と同じだわ」

アネットは困惑し大倉大尉は難しい表情を浮かべる

ダリルがいない……私達に何も言わずにいなくなってファムが寂しがってるわ

「だからと言ってテロリストには屈しない。そうでしょファム」

「ええ、ダリル君……今何処にいるのかしら」

ファムは涙目で本当に寂しがっている

私のヘッドセットに通信が来た

《……お!漸く繋がった》

「……誰?」

《おいおい、しらばっくれるのはよせよ、シルヴィア♡》

大倉大尉が私のヘッドセットを奪い通信のやり取りをしていった

「今何処にいるの?」

《鈴乃か?この様子だと666の格納庫にいるって事だな》

アンタこそ白々しいわよ

ま、関係ないけど

「で、アルゴス小隊の連中は無事なの?」

《ああ、皆無事だ……と言いたいところだがそうはいかない状況となった》

!?

一体何が起こったの?

私は再度タブレットに映ってる女性の映像を確認した

《アメリカの非道な行いはこれに留まりません。今から公開するのはアメリカ大統領とソ連書記長の間で直接交信された内容の録音です……》

《此奴を見る限り本気でやるつもりだぞ!俺は今アルゴスの連中と合流して強奪されたラーストチカと交戦中だ》

「分かった、私も其方に向かう」

《おう、頼むぜ》

交信終了

大倉大尉はヘッドセットを私に返却した

「クシャシンスカ中尉、出撃できる機体はあるか?」

「地下格納庫にある機体ならいつでも出られるわ」

強奪を免れた機体は666の塗装やエンブレムを施した戦術機だけ

いつでも出られる

「あの、私もアトラスガンダムのコクピットに入れて貰えないでしょうか?」

ファムは突然アトラスガンダムのコクピットに入りたいと言い出した。

何考えてるのよ、ファム

秘策でもあるの?

「アトラスガンダムは全天周モニターだ、下が丸見えになるが構わないか?」

「構いません、私はやるべき使命があります」

ファムの目は熱意を秘めており大倉大尉はそれを伝わった

ん?ファムが持ってるのは何かしら?

ラジコンのリモコン………に見えるけど

考えるまでもないわね

「ファム、私達はいつでも出られるわ。出撃命令を出して頂戴」

私の言葉を聞いたファムは出撃の号令を出す

「……総員傾注!これより我が中隊はテロリストの鎮圧に向かう。奴等に黒の宣告を下せ!」

私達と大倉大尉はそれぞれの機体に乗りテロリスト鎮圧に向かった。




いよいよ『レッドシフト』発動です!
さて、悠一とダリル
鈴乃、ファム、アネット、シルヴィア
それぞれの立場で交差しテロリストに立ち向かう!
次回のお楽しみに!
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