第24話 Speak Low
帝都防衛戦、佐渡島防衛戦から3年
人類は異星起源種「BETA」と数十年にわたる戦いを未だに続けていた。
滅亡の危機に追い詰められた人間たちが、
過酷な運命の中でどのような生き様をみせていくのか―――
そしてある1人の少年が地球にいる人類を救うために戦う事を決意していた
悠一Side
2001年10月22日
ユーコンテロ事件から一ヶ月後、俺と鈴乃は日本に帰国し恭子の命令により帝国軍衛士として練馬駐屯地へと赴任
事務仕事に励んでいた
帰ったらデスクワークかよ……俺はまだまだ戦えるってのに
フルアーマーガンダムとアトラスガンダムだが全て帝国軍が管理する事になりモスボール保管する事になった
ここ練馬駐屯地は佐渡島同胞団の拠点の一つだ
因みに本部は帝国国防省の地下にある。
さて、一時的にガンダムを乗れない俺と鈴乃、今日は地道に業務をこなす日々を過ごしていた
「クソ上層部が、俺と鈴乃をデスクワークだぁ?アメリカの犬に寝返ってトチ狂ったか」
どうも怒りが収まらねぇ
不貞腐れてる
その態度を見た鈴乃は俺に一喝した
「馬鹿者、戦ってばかりでは衛士は務まらないぞ!」
と気迫ある歴戦の衛士みたいな顔で言った。
久々に見たぞ、その顔
これから先どうするのか……
「ガンダムに乗れないのは悲しいけど、双方の機体のデータを極秘裏に作成し参考してまで開発した戦術機がある。ブルーフラッグやレッドフラッグの事もう忘れたのか」
94フルアーマーか
ビームとかは出ねぇけど火力がある機体だって事は変わりはない
武装はてんこ盛りだしな、俺好みの戦術機だ
「ああ、あれ気に入ったぜ」
と誇らしげな笑みを浮かんだ
鈴乃は小さな笑みを浮かんでこう言い放った
「ふふ、気に入ってくれて何よりだ……でも無茶しないで」
「鈴乃……」
「この先私達どうなるのかな……」
鈴乃が寂しげな表情を浮かびそう呟いた後、俺達の前で見慣れた女性と偶然会った
その女性は鈴乃に向け笑みを浮かびながら敬礼する
「お久しぶりです、大倉大尉……豊臣少尉もお元気そうで何よりです」
その髪型に真面目そうな態度を取る女性……まさかと思うが
「早乙女か?」
かつて佐渡基地司令部第三戦術予備部隊A中隊に属した早乙女まどかだ。
「はい、少尉も相変わらず口が軽い男ですね」
早乙女はニコッと俺に向け笑った
早乙女の笑顔見たの久々だな
「生きててよかった……」
鈴乃は早乙女を抱き締め涙目で言葉をかける
「え?ちょ、大倉大尉!?」
「今まで、何処ほっつき歩いてたんだ……心配したのよ……うぅ…う…ぐすん」
「………何も言えなくて申し訳ありません、大尉」
鈴乃は抱き締めながら泣き啜った
「うぅ…早乙女の……馬鹿者が……うああああああん」
早乙女は泣き崩れた鈴乃の頭を撫で寂しげな表情した
ふと突然消えてしまった早乙女が今ここにいること自体正直驚いた
「大丈夫です、大丈夫ですから……もう勝手にいなくなったりはしません。だから泣かないでください」
早乙女は悲しげな表情で鈴乃を慰める
「そっか、とにかく生きててよかったぜ」
「……」
早乙女はジト目で俺の顔を見る
ん?何だ、俺の顔に何か付いてるのか?
「五摂家の崇宰恭子大尉と戯れてるようですね、羨ましいですね」
「あ?待て待て、確かに恭子と抱いて寝たことはあるが戯れだなんて」
「それが戯れだっていうんですよ!」
そんなに怒るこたぁねぇだろ!
「早乙女、一応言っておくが恭子の事は本気で愛してるからな」
「口だけは一人前ですね。それで?崇宰大尉から何か言われたんですか?」
恭子は今までは異名の通りまさに鬼姫で清く美しく正しき指導する女性だが、最近は俺には相変わらず手厳しいが、表情が柔らかくなっている
転生されてから4年の月日が流れたのだから、本当の恋人同士に……いや恋仲ってところかな?
「ずっと会えなくて寂しかったと言ってたぜ」
と俺は半分冗談交じりで言った。
「豊臣少尉があの恭子様と……想像つかないですね」
「3年間、今までどこにいたんだ?鈴乃も心配してたぞ」
3年も消息不明になってたんだ。
どうやって生き延びたのかそれを知りたい
「……私はあの時、BETAが佐渡島に侵攻したのを知りつつ現実から逃げていました。死ぬのが怖くて……いつかBETAに喰われて死ぬんじゃないかとぞっとしたら…本当に怖くなって……出撃命令が出ても、強化装備に着替えず、民間人に装って誰にもバレずに佐渡島から脱出しました」
え?おい、これって無断で、突然戦線離脱したってことなのか?
脱走、したのかよ………。
「ちょっと待て。お前は都と鈴乃、草野、村田、駒木がまだ戦っているにもかかわらず自分だけ逃げたって事か?普通なら重い処罰下される筈だ。二度と衛士として活動することはなくなる」
「斑鳩中佐が、コネクションを使って私を庇ってくれました」
斑鳩少佐が?いや中佐に昇進したから斑鳩中佐か
その斑鳩中佐が何故帝国軍の一女性衛士を擁護したんだ?
あの気障な男に限って何考えてるか分からない
五摂家の一員として圧力をかけたっていうのかよ
非現実的過ぎる
「えへへ、斑鳩中佐に恩返ししなくちゃいけませんね♪」
と舌をペロッと出し微笑んだ
早乙女、斑鳩中佐にちゃんと感謝の言葉を送れよ
「ユーコン基地、行ったんですね。どうでしたか?」
鈴乃は泣き止み、早乙女に向け優しい笑みを浮かべる
「各国の戦術機が勢揃いしてたわ、アメリカは勿論だが、ソ連、イタリア、スウェーデン、東西ドイツもその他諸々……一番印象残ったのは篁中尉が開発主任としてとある計画と関係してる不知火弐型という戦術機を手掛けてる。ボーイング社のハイネマン氏も関係してるがな。そこでガンダムの売り込みしたんだが、ダメだった」
そりゃあな……この世界で光学兵器を作る事は困難だ。
「でもここにいるってことは早乙女も?」
「はい!佐渡島同胞団ムーア中隊に所属することになりました。改めて宜しくお願いします!大倉大尉」
早乙女は誇らしげな笑みを鈴乃に向け敬礼
鈴乃は早乙女に握手を求める
「ああ、佐渡島に再びの栄光を…異星起源種に死を!」
早乙女も鈴乃の手に両手でがっちりと握手を交わした。
良平Side
国連軍・ユーコン基地に残った俺含む東欧州社会主義同盟の衛士達は、アルゴス試験小隊の衛士達の活躍をただ、ただ傍観してた
俺達がユウヤ達の輪に入るのは傍迷惑だと思い不干渉となった、がそれは表向きでその実態は東欧州社会主義同盟の事実上トップであるベアトリクスが不知火弐型のデータを盗み、それを似たような戦術機を開発しようと目論んでいる
ソ連のクリスカ・ビャーチェノワ、イーニァ・シェスチナはユーコン基地内で知名度あるのは当然だが、もう一人クリスカと瓜二つの顔を持つ衛士がいたのだ。
マーティカ…マーティカ・ビャーチェノワだ。
マーティカはクリスカと同じくらい匹敵するぐらいの操縦センスを持つ衛士だった。が廃棄同然の扱いをされ処分された。敗北という理由で。欠陥品だから
そう、最初からクリスカ、イーニァ、マーティカの3人は人権なんてなかった。
ESP発現体だからだ。
事実を知ったユウヤは自分と似た境遇であったクリスカに共感して助けることを決意
俺達は怒りを通り越すほど呆れ、これを聞いたベアトリクスは大激怒
ESP発現体増産に深く関わったペリャーエフ博士とその当事者であるイェシー・サンダークを粛清しようとしたが、総書記であるアイリスディーナは「ソ連政府の許諾なしで不可能」と言われ、2人の粛清は一時断念したそうだ。
ユウヤはクリスカ、イーニァを連れPhese3に換装した不知火弐型1号機を強奪、テロリストと同様扱いされアメリカ、ソ連、国連軍から追われる立場になる
事前にアメリカからは接触がありアメリカに逃げ込めばいい条件で何とかなったがクリスカやイーニァがモルモットになるので断念
サンダークとの一騎討ちは何とか逃げることに成功
だがクリスカやイーニァは一定時間内に薬飲まないと体組織が壊れることが判明
唯依との一騎討ちは何とか退けるが唯依も本気ではなかった
クリスカの故郷に行くが、不知火弐型Phese3は超高性能でラプターより段階上のステルスと敵機の弾薬燃料から自機に補給できたりする能力があり逃避行は問題なかったが、逃げてる途中でクリスカは力尽き死亡
イーニァは最重要機密なのでクリスカより薬飲まないといけない期限は長かったためまだ余裕はあった
ソ連と複雑な関係のバラキン基地指令に保護される
薬は裏からサンダークが手を回していたため手に入った
同じくバラキン基地指令に保護されていたラトロワ中佐達と合流
これ以上ユーコン基地にいる理由がないのでベアトリクス達はユーコン基地から出て、カムチャッカ経由で補給を受け佐渡島に向かう
俺達も含めてだ
ユウヤがその後どうなったかは知る由もない。
何故、東欧州社会主義同盟の戦艦や戦術機揚陸艦、戦術機空母が佐渡島に向かうのか?
これには政治的な理由がある
まず一つ目は同胞国であるソ連、仮想敵国であるアメリカがベアトリクスの意向を逆らったらどうなるか思い知らせる為だ。
半ば脅迫紛いに近いが……国連軍より先回りして佐渡島ハイヴを攻略する意欲があるのも言える
二つ目は以前、国連軍副司令の香月夕呼の暗殺計画を企てていたが急遽それは白紙撤回し、彼女の思惑をわざと野放しにする形でその通りにする事だ。
具体的な理由としては彼女がいる横浜基地は最新鋭の設備が揃えており彼女の言葉だけであらゆる面で兵器開発を携わり、他国と交渉する術があるからである。
三つめは強引に佐渡島を占領し再建させる事
何やらニコラ曰く『人類の命運に全て香月女史に託したらとんでもない事になる』と
確かにそう言えるかもしれない
国連軍は佐渡島が仮に消えたらその島の存在自体蔑ろにされ最初からなかったという扱いにされるのだ
ベアトリクスは国連軍が仮に佐渡島ハイヴを攻略したらどうなるかを考察していた。
最初は上手くいくが、何らかのトラブルが発生し、とある兵器を放棄
回収不能になり、島ごと消滅させる
………しかし、幾ら考察しても国連軍の動きがどうなってるかまではわからない。
もしかすると日本政府と交渉して強引に佐渡島ハイヴの上にG元素が含まれる水素爆弾を落とそうとしているのか?
そして現在、俺達は戦術機空母『ヴィリー・シュトフ』の格納庫で俺はモズボール保管されたサイコ・ザクを見つめていた
サイコ・ザクに乗れないのは寂しいが、モズボール保存する理由は『リユース・サイコ・デバイス』を戦術機としての技術を転用しそれを参考にした戦術機を開発する為である。
勿論、構造は全然違うのでそのままサイコ・ザク量産なんていうのは絶対に不可能だ。
サイコアリゲートルが作られたのはその為である。
「ありがとうサイコ・ザク……またな」
またサイコ・ザクに乗れる日が来るまで俺は待つしかなかった。
悠一Side
練馬駐屯地の第三会議室で俺と鈴乃、早乙女の3人だけで会議をしていた
佐渡島同胞団は今国連軍の管轄下に置かれている状況でこの先どうなるか分からない
「今後の方針だが現在、我々は国連の管轄下に置かれている。いつ解散命じられてもおかしくはない」
鈴乃は難しい表情で言い放ち、早乙女も強張った表情をしつつ言い放った
「では我々佐渡島同胞団に新兵が入ってくると?」
「ああ、”人類の救世主”ってところだな。豊臣少尉」
俺は鈴乃の顔を見て返事し敬礼する
「は――」
鈴乃は会議室の外に待たせている新兵に「入れ」と一言を添えて、その新兵が「失礼します」と言ってから第三会議室に入ってきた
鈴乃が片手に持ってるバインダーに挟まれた書類によれば……
白銀武
………小さな愛国者ってか?
「小さな愛国者だ。しっかり面倒見てやれよ、豊臣」
「はあ?」
「上層部から先程連絡が来た、『我が同胞団は国連軍横浜基地の保衛に当たり訓練衛士を死守せよ』との事だ」
新兵は俺の顔を見て珍しそうな目で向ける
「207B分隊の白銀武訓練生です!あの…貴方が”FG”の衛士ですよね」
ヒヨッコじゃないか
勘弁してくれよ
「我が国が異世界の技術で作られたガンダムを参考にして戦術機を開発して造る訳だ…今や少年少女の憧れの的……貴様と私は英雄だ。無論ガンダムを操る衛士もな」
鈴乃は誇らしげな笑みで語った
………
………冗談じゃない、子守りなんぞまっぴらだ。
「あの香月副司令の事だ、ここに白銀武訓練生が来たのは挨拶だろう」
な……あの女狐!
何を考えてやがんだ!
頭の中がモヤモヤしてるが、鈴乃に抗議しても意味がない
「尚、貴様だけだと不穏な空気があるから早乙女少尉も付いていくことにした」
鈴乃がそういうと早乙女は前に立ち敬礼する
「早乙女まどか少尉です、以後お見知り置きを」
前々から思ったが、早乙女ってヴェアヴォルフのファルカに似ているよな
その真面目な態度
規律をしっかりと守る駒木と同様典型的な衛士の見本と言っても過言ではないだろう
……クソ面倒臭い事推し付けやがって!
「で?俺と早乙女も訓練学校からやり直せと?そう言いたいのか」
「そうだな……一度恭子様に相談して貴様を訓練生に降格してやろうか?」
恭子だったらやり兼ねない……下手に怒らすと拙い
国連軍横浜基地訓練学校第207衛士訓練小隊B分隊は訓練小隊だ。
斯衛軍で言えば……規模が全然違うが佳織が率いたファング中隊に近い
ファング中隊は訓練も禄に満足受けてはいない学徒兵ばかりだったがB分隊は本当のヒヨッコ衛士が集う正真正銘の訓練分隊だ。
それを俺が纏めるって訳だ。
「尚、207衛士訓練小隊の教導官は神宮司まりも軍曹。そうだな白銀訓練生」
「はい!」
白銀は真顔で言った。
「だから俺と早乙女が横浜基地に……」
「ああ、御剣財閥の次期当主候補である御剣冥夜は知ってるな?」
御剣……そういや佐渡島同胞団のバックには御剣財閥が支援してくれてるよな
まさか、あの御剣冥夜か?
「名前だけ知っています。直接は会った事ありません」
「そうだろうな……他に総理大臣、貿易商、帝国軍将校、国連関係者の父親がいる女性もいる」
「あの、香月副司令の命令で自分はここに来ただけですが発言の許可を!」
「許可する」
「自分は地球にいる人類を救う為に来た人間です!」
そりゃあ、良かったな
ん?今なんて言った
人類を救う為に来た人間……救世主って言いたいのかよ
本当に人類救済したいなら誰もこんなクソッタレな戦争はしてないぜ
「それだけか?白銀武訓練生」
鈴乃は問いかけるが、白銀は俺にこう言い向ける
「……豊臣少尉、貴方は国連軍を嫌ってるみたいですが何か嫌う事情とかあるんでしょうか?」
「事情?へっ、嫌うも何も俺は国連軍の連中は全く信用してねぇ!これが本音だ」
俺は白銀に国連の不満をぶちまけた後、第三会議室に突然入ってきた女性がいた
香月夕呼だ
「あら?佐渡島同胞団の皆さん揃って白銀に何吹き込んだのよ」
鈴乃と早乙女は香月副司令に敬礼する
俺はバルカン式敬礼をした
「敬礼はやめて頂戴、私軍人の敬礼って苦手なのよね……で、豊臣少尉…だったっけ?ごめんなさい、私最近物忘れが酷くて」
おちょくってやがる
物忘れって絶対嘘だろ
「それに何?敬礼のつもり?」
「スタートレック御存知ないんですか?副司令」
「知らないわよ、それ映画なの?悪いけど私は研究で忙しくて見る暇ないの。ごめんなさいね」
此奴……絶対見返してやる!俺達が、佐渡島を取り戻すと!
「あ、そうそう。基地の見学は自由よ。その代わり国連軍のBDU着て頂戴。帝国軍制服だと周囲の目で変に見られるわよ」
まぁそうなるよな、横浜基地か……。
仕方ない、国連軍のBDUに着替えるか
「私は本部に行く、上層部に色々と報告しなければならない事があるからな。横浜基地の見学楽しんで来い」
「はぁ、了解しましたよ。大倉大尉」
とにかく俺と早乙女の2人は見学という形で横浜基地へ直接行くことになった
ベアトリクスSide
東欧州社会主義同盟所属戦艦『カール・マルクス』
艦長室
アラスカから出港しカムチャッカ経由で給油を受ける形で佐渡島に向かった私含め我が同胞達
艦長室で私はニコラに例の開発データの記録を取る準備をさせた
「準備は完了です、総帥」
「では、始めて頂戴」
民生用ビデオカメラでニコラは艦長室の椅子に座り机に両肘をつけ両手を重ね組んでる私を撮影した
「……これは個人的な記憶であり自分の冷静を保つための独白である。私はベアトリクス・ブレーメ。東欧州社会主義同盟総帥として戦艦カール・マルクスに乗艦している」
一枚のフロッピーディスクを手に持ちカメラに向ける
「私直々の下でリユース・ベアトリクス・デバイス……長いからRBDと呼ぶわ…その開発を積極的に力入れ携わってきたが、その機能は完成し、データは全てフロッピーディスクに入っている、がこれをアイルランド本部に持ち帰らないといけないのだが、このままでは努力が水の泡だ」
ニコラは真剣な表情でビデオカメラで私の記録映像を撮影する
「両手両脚を失った衛士をサポートする為に奮闘し、RBDを搭載した戦術機、サイコアリゲートルが完成しレッドフラッグでその性能と出力、運動性、速度を下等なアメリカ等の西側諸国の連中を思い知らせ見返してやった。自分の手足のように自由動けて機動性を保つことが出来る。分からない人がいると思うから特別に教えてあげる。これは戦術機開発史上圧倒的な脅威を誇り旧型のアリゲートルが最新鋭機と対等に戦えるように仕上げている………カメラ一旦止めて頂戴」
ニコラは私の指示通り、カメラを止める
「最後のところは編集しておきます」
「いや、このままにしておきなさい」
「了解しました」
私はニコラにブロニコフスキー少尉の事を問う
「……ニコラ、最近ブロニコフスキーとちゃんと話してる?」
「はい?」
「彼女は寂しがり屋さんなのよ、一緒にいてあげなさい」
ユーコンテロ事件以来、ブロニコフスキーと話す機会はなかったわね
ニコラには休暇を与えるか。一番良く頑張ってるもの
「ニコラ、貴女は暫く休暇を与えるわ。ゆっくり休みなさい」
「了解です」
ニコラは恍惚の笑みを浮かべ艦長室を出た。
ニコラが艦長室から出た後、私はノートパソコンを立ち上げ極秘裏に入手した国連主導のとある計画の全貌が掲載してるフロッピーディスクに入れ閲覧し始める
インテグレート計画
各国の軍を統一してBETAの脅威に立ち向かうという思想の計画であり計画の中の1つとして国連で独自の新型の戦術機の開発し今現存する戦術機を改修して戦闘データを取りつつ、同時に各国の戦術機の性能を底上げする計画というものが国連主導で進められている内容だ
……各国の軍を統一?
現実的にあり得ないわ……遂に国連軍の連中も頭が狂ってしまったか
人類は必ずしも絶対に一つにはならない………考えるだけで馬鹿馬鹿しくなってきたわ
「そうよ……何れにせよあの計画は空中分解して頓挫するに決まっている。RBDのデータでそれを搭載した戦術機を量産すれば、BETA大戦終結の近道になる……」
そろそろ私も休もうかしら、疲れが出てきたわ
私はそう思いつつ、艦長室から退室し自室で休息する形で眠りについた
悠一Side
俺と早乙女は鈴乃の進言により国連軍横浜基地に来て見学という形で中へと入ろうとしたが
「待ちなさい、そのまま入るつもり?」
香月副司令は俺には理解しがたい言葉を交えつつとある計画の事を説明した
「まぁ実際基地に入ってから説明した方がわかりやすいんだけど私は研究で忙しいからここで言っておくわね。実は国連でインテグレート計画という各国の軍を統一してBETAの脅威に立ち向かうという思想の計画があってね。その計画の中の1つとして国連で独自の新型の戦術機の開発をするという計画が進められているの。だけど中々これが行き詰っててね、今現存する戦術機を改修して戦闘データを取りつつ、同時に各国の戦術機の性能を底上げする計画というものが国連主導で進められている。無論日本主導のオルタネイティヴ4も含めてね」
……根っからのオルタネイティヴ5を反対している立場だけの女じゃなさそうだ
インテグレートかインテリジェンスか知らねぇが、各国の軍隊が統一してBETAの脅威に立ち向かう……?
無理に決まってるだろ、そんな事は
計画が頓挫するのがオチだろうな
非現実的だ
「そんなのアメリカにでもいる国連軍にでもやらせておけばいい。開発衛士なんて俺には合わねぇ。俺は戦術機が好きなだけで自由に戦場を駆け回りたいんだ」
「…全部話すと長くなるから省くわ。それとこの計画、日本側が他の国に比べて多額の資金を提供しているの。だから日本を選んだというのも理由の1つ」
「……資金を他より多く提供する代わり日本側には優先的にデータを寄こせって事か?」
香月副司令は思わせぶりな顔つきをする
「そういうこと。日本はハイヴ保有国だからより戦術機の開発に焦っている。実際日本は戦術機の開発に技術的な手詰まりはしていると聞くわ」
「日本も手段は選んでられないっていう感じか」
「まぁ見方によってはそういう風にも考えられるわね。手続するから一緒に入って」
そして香月副司令と雑談をしている間に基地の中へ
青いメットと国連軍の装備を着た黒人とちょび髭の衛兵が入口に立っている。
香月副司令は無言で衛兵に許可証を提示する。
「確認が取れました。どうぞお通り下さい副司令」
そしてそのまま横浜基地の敷地内へ香月副司令と共に俺と早乙女は一緒に入っていく。
中に入るとそこには案内役を務める黄色いショートヘアの女性士官がいた。
「横浜基地通信士官のイリーナ・ピアティフ中尉です」
イリーナという女性が横浜基地にいる一人の通信兵……所謂CPだ
「佐渡島同胞団の豊臣悠一少尉だ」
「同じく早乙女まどか少尉です」
「じゃ、あとはお願いね」
香月副司令はそう言い残し、歩き去った
イリーナは「基地へ案内します、此方へどうぞ」と澄ました顔で言葉を添え俺と早乙女に基地の中へ案内した
無論、ここにいる衛士の接触は避けブリーフィングルーム、会議室、食堂、格納庫等イリーナの指示に従い基地の中へ見学した
「私達、国連の衛士として配属されるんでしょうか?」
早乙女は不安げな表情で俺に問いかける
「挨拶しに行くだけだ」
「そうですか……私は一帝国軍衛士として全うしたいです」
数時間後、案内し終えたイリーナは「あとは自由行動ですのでごゆっくりとご覧ください」と一言を残し、去っていった
国連軍のBDUを着てる俺と早乙女は基地の中へと歩いてる途中、セキュリティパスカードが廊下に落ちておりそれはそれを拾った
「これは……」
そしてBDUの胸ポケットの中へ入れる
「何やってるんですか?」
「へへ、頂き☆」
カードを見つめながらそう呟いた。このレベルのセキュリティパスの権限が与えられる人間は恐らく極僅かだ。
セキュリティパスカードに書かれてる名前はシモーネ・レージンガー
階級は少佐
当然だが、ウルスラ革命に参加したシモーネ・レージンガーとは全くの別人である
生きていれば30代半ばだな。
横浜基地の下から嫌な感じがする。この基地は普通じゃない。どうしても気になって仕方がない。確かめてやる……。俺自身の目で。
俺と早乙女は地下へと向かっていった。段々と副司令室のあるほうに向かっていく。
部屋に入ると中は書類やら本などでかなり散乱としていた。
「お世辞にも綺麗とは言えねぇな……相対性理論とか物理学の本ばかりだ」
「ダメですよ、勝手に入ったら何言われるか分かりませんよ」
「大丈夫だ、狭苦しい部屋でよくここにいるな……」
部屋には国連のマークがついた青い旗に”Alternative(オルタネイティブ)Ⅳ”と書かれたものが部屋に飾られていた。
「……普通の国連の基地ではないと思っていたが。いよいよキナ臭い匂いがしやがる。こっちの部屋は……この奥から」
もう1つある奥の部屋をカードを使い開ける。
「何だ?部屋は暗くて……!?」
「……これ、人間の脳…ですよね?」
「……ああ、人間の脳だ」
俺は一瞬戸惑った。暗い部屋の中に人間の脳が青いシリンダーに浮かんでいたのだ。見たこともない光景だった。
「何だ?部屋は暗くて……!?」
何なんだ此奴は!?
「ねぇ、もう出ましょうよ……私…怖くなりました」
早乙女は涙目でここから立ち去ろうと俺に言うが、基地の中に少女が一人いた
見た目は中学生か……ガキが何でここにいるんだ?
訳分からねぇ
頭にうさぎの耳みたいな機械をつけているが、国連の制服を着ているということはおそらくこの基地の人間なのだろう。
「あ…」
「おい、お前この部屋は何だ?ここで何をしている」
「……」
だんまりかよ!
「……」
「おい……俺の質問に答えろ」
………クソ!イライラする!
「黙ってねぇで何とか言ったらどうなんだ!?あぁ?」
俺は目の前にいる少女を睨みつけ執拗的に問いかけようとしたが次の瞬間、俺の背後から拳銃を片手に持った香月副司令が銃口に向けられる
「答えるのはアンタよ!」
俺はこの部屋の事と少女に気をとられ完全に油断していた。
「チッ……!」
「ご、ごごごごごごめんなさい!私は豊臣少尉と一緒についてきただけで」
「両手を挙げてゆっくりこっちを向くのよ」
俺と早乙女は観念し両手を挙げた
付いてねえよ……
「私は一衛士として、その…あの……」
「少し黙ってくれるかしら?気が散るわ」
おいおい、動揺し過ぎだぞ早乙女
「…このフロアに武器は持っていけない筈よ。……でアンタこんな場所に潜り込んできて何が目的なの?」
「俺は誰かさんのセキュリティパスカードを拾い、この部屋に入っただけだ。別に疚しい事とかはしていない」
「はぁ……?」
香月副司令は拳銃を構えながらそう言った。
「大丈夫です。この人は嘘を言っていません……。ただ本当に純粋にここに来たかっただけです……」
「まぁ、社がそういうなら」
そういうと拳銃を降ろした。どうやら香月副司令は青髪の少女の言っていることには絶対的な信頼を置いているように俺には思えた。でなければこんな場面で拳銃を降ろす筈がない。
「日本人じゃないが、日本語が通じないと思っていたけど喋れるんだな?」
「……」
「何でこんな場所に脳みそがある?俺には理解し難いね。まさかと思うがここで人体実験してるのか?」
「そんな非人道的な事流石の私でもやらないわ。無断で入ってきた奴に答えられる訳ないでしょ?それと何?私の質問に答えてくれたらアンタの質問にも答えてあげなくもないわよ?」
「俺がこの基地に来てからどうも下から誰かがずっと泣いているような気がした。それを確かめに来た。ただそれだけだ」
ハッタリだがこう答えるしかない
「あっ……」
「……」
俺がそう答えると二人は何か思い当たる節があるのか、一瞬顔に緊張が走ったように思えた。
「ふぅん……面白いこと言うわね……」
あ?何がだよ
「私は香月夕呼…自己紹介するまでもないけど。こっちは社霞。私はこの国連軍の横浜基地の副司令をやっているわ」
早乙女は初対面だったな
初めて会った相手が国連軍の副司令だなんて……とまぁそれは置いとくか
「貴方が斯衛軍問題児、豊臣悠一。全くここに来てさっそく副司令室に無断に入るなんて……」
「さて、質問には答えてやったぞ。もう1人そこにいる女は何だ」
「機密事項だから細かいことは答えられないけど、まぁ私の助手ってとこかしらね」
「……わかった次の質問だ」
俺は一呼吸置いて次の質問をした。
「この基地の地下に何がある?」
「……反応炉よ」
「……BETAのか?」
「えぇ、この基地は横浜ハイヴを再利用して現在建設中なのは知っているわよね?」
俺と鈴乃に恭子は流石にこの事は知っている
忘れる筈がねぇ
「明星作戦に参加した衛士の一人だから流石に知っている」
「この基地はハイヴの研究を行っているから他の国連基地とは違ってちょっと特殊なのよ。そういった事情もあって現在も研究の為反応炉だけは稼動状態にあるって訳」
成る程な、ここは特殊な基地なんだな
しかも研究の為に反応炉だけ稼働しているなんてシャレにならないぜ
「最後の質問……この青いシリンダーの脳みそは何だ?」
「その質問に答えることは無理ね。この横浜基地の最重要機密にあたるから」
答えられない、やっぱり疚しい事あるんだな!?
「どうあっても答えられないと?」
「えぇ」
香月副司令がそう言うと俺は脳が入ったシリンダーの方へと近付いていった。
「答えられないっていうなら、自分で調べるまでだ」
「はぁ?どうする気」
「な、何する気なんですか?豊臣少尉」
「……こうするんだよ」
「あっ……!」
俺はシリンダーに手を触れた。
しかしシリンダーに俺の手が触れた瞬間
「!!!!……うっ!!!」
な、何だこの感覚は……⁈
頭が、いてぇ!
俺の頭の中に、誰かの声がしてやがる
(タケルちゃんに会いたい……)
脳に直接声が響いた……とても悲しい叫びだった。
!!!!…うっ!!!な、なんだこれは!?
手に触れた瞬間強烈なまでの強いし思念のようなものが俺の頭の中に言葉が響いた。
タケルちゃん……?
まさか白銀の事言ってるのか?
頭の中にイメージが広がっていく。
何だここは……どこだ?この景色は……。
沢山の人がいる……。街がある。……みんな楽しそうにしている。BETAなんていない……これはまさか俺とダリルがいた元の世界か?
誰だお前は!
(タケルちゃんとの思い出たくさんある。タケルちゃんに……会いたい)
何を言っているんだ……や、やめろ……!俺の中に……俺の頭の中に……
「入ってくるなぁぁぁぁぁ!!!!!ぁぁぁあああっ!!!!俺は白銀武じゃねええええ!!!お前なんか知るかよッ!!!俺は、ジャズを好んで愛する一人である豊臣悠一だ!!覚えておけ!!!」
そして俺はその場で気絶してしまった。
脳のシリンダーに触れた後、俺はどこか知らない世界に連れていかれた感じがした。
…………暫くすると意識が戻った。
「うぅっ……」
「気が付いたみたいね」
「豊臣少尉!死なないでください!」
「勝手に死なすな!」
何とか動けるようになった。俺は意識を失っていた間ソファーに寝かされていたようだ。
早乙女は泣きべそをかいていた
「俺は……気絶してたのか」
「えぇ。突然アンタが叫び出した後ね。まぁ数分程度だけど」
「……数分」
だが脳が入っているシリンダーに触ってから……俺はかなりの時間が経過したように感じた。
そう……何か月という時間が……
あれは何だったんだ?あの景色……そして……。
「アンタ何したのよ?あれに触ったりして」
「……安心しろ。別に危害を加えることなんかしてねぇよ」
そう言って俺はソファーから起き上がる
「――悪かった。邪魔したな……」
「あら、もういいの?」
「ああ、練馬に戻る。あばよ、曲者の副司令さんよ」
「また遊びにいらっしゃい。とりあえずあんたのセキュリティレベル。この部屋に入れるぐらいは上げといてあげるから」
「ばいばい」
少女は俺と早乙女に手を振る
「……あぁ気が向いたらな」
そういうと俺と早乙女は薄暗い部屋から出ていった。
あの脳みそ、あれは何だったんだ?だがとても調べられる代物じゃなさそうだ……。香月副司令もあれを使って何かしようとしているみたいだが……結局分からず終いだ。それとあの霞とかいう奴、どう見ても日本人には見えねぇ……。
色々と疑問に思いながらも、それ以上は無駄だと思い練馬駐屯地に帰った。
――練馬駐屯地 戦術機格納庫
2001年11月下旬
朝の起床、俺の乗る機体、94フルアーマーの整備がほぼ完了したという鈴乃から連絡があった。
そして俺は格納庫へと向かった。
昨日は奇妙なもん見ちまった
アレに関しては二度と触れねぇけどな
深く詮索しないでおこう
そこには鈴乃ともう1人見知らぬ女性が隣にいた。
「おはよう、豊臣少尉」
「ああ、おはようさん。昨日は変なもん見ちまったぜ」
「変なもの?まぁそれは置いといて、紹介しよう、我が同胞団で戦域管制を担当することになった根岸千恵曹長だ」
「根岸千恵曹長です!以後宜しくお願いします」
「豊臣悠一少尉だ、スピーカーは常にONにしてな。ジャズが聴こえたら俺が出撃する合図だ」
そしてこちらをじっと見つめてくる。しかし表情からは何も感情を読み取れない。だが心の奥底のようなものに悲しみや恐怖のようなものが見え隠れしているように見えた。
「……俺の顔に何かついているのか?」
「いえ何も…」
無表情で何を考えているのかよく分かんねぇ
偶然通りかかった整備兵主任の佐竹博文技術大尉が千恵の姿を見て目を丸くし驚愕した
「千恵!?」
「え?博文、ここにいてたのね」
ん?何だ恋人同士かよ
佐竹の顔を見た千恵は満面の笑みを浮かべ話しかける
「な、何で君がここにいるんだ!」
「えへへ、ムーア中隊の戦域管制を担当することになったのよ」
ここでイチャイチャするんじゃねぇ!
俺だって恭子とイチャイチャしてぇけどそれをやる機会がないんだよな……。
「戦域管制?CPって事か」
「うん、博文に心配かけたくないから無理しないようにここにいる衛士達をサポートしたいのよ」
あんなんで上手くやっていけるのか?
「すまねぇが、イチャイチャするなら他へ辺りな」
「あ、すまない。千恵は俺の恋人なんだ」
そうかい、どうでもいいけどな
鈴乃は咳込み無理矢理2人をイチャイチャするのを止める
「…さて、紹介も終わったし本題だ。あれが豊臣少尉に搭乗して貰う戦術機だ」
鈴乃が指した方向に収納されている戦術機があった。
94フルアーマー……俺がこれから戦場へ駆けて行く相棒だ
正式名称:94式重装備型戦術歩行戦闘機
「紅林君が手掛けた戦術機は丁寧に整備してあるな……」
と佐竹は呑気な表情で言い放った
「各関節部にシーリング処理はしてある。几帳面があって豊臣少尉好みの武装てんこ盛りの機体に仕上げてある」
鈴乃はこう説明した。
「へぇ、結構凄いんですね」
「メインカメラはデュアルアイではなくツインアイ、色は緑から黄色に変更。機体色は勝色と白、深緋色に塗られている。更に追加装甲2枚で2連装突撃砲、ロケットランチャー、92式多目的自律誘導弾システムだ」
まぁ俺が乗る機体だからな
同胞団が帝国軍に金を積んだまで造られてる
紅林曰く「佐渡島ハイヴ攻略での運用を想定した機体」と語っている。
「で、その隣にあるのは…」
鈴乃は94フルアーマーの隣に収納してる機体を指で示した
「94サブレッグ……不知火をベース機として開発した水陸両用戦術機。正式名称:94式水陸両用戦術歩行戦闘機」
94サブレッグ……?
「腰部に装着する飛行用ブースターユニットであるサブレッグは本機を象徴する装備であり背部兵装担架の代わりに性能を発揮するんだ」
これは言うまでもないがアトラスガンダムの戦術機Verだな
「跳躍ユニットが破損しても脚部にあるウォータージェットを装備しているからな。第二の跳躍ユニットと呼べる代物の機体だ。これは私が乗る」
佐竹は「ええ!?貴女が乗るんですか?」と驚愕しつつ言葉を添える
鈴乃は誇らしげな笑みでこう言い返す
「ああ、そうだ。実際この戦術機に乗りたい衛士は誰もいなかったからな」
サブレッグがなかったらただの配色が黄色と白、黒色に塗られた不知火だ。
これを失うと機動力と武装の半分以上が失われるため、装備を越えて生命線とさえ言える。
「この2機の他に94ブルGという機体はあるにはあるのだが……中途半端に作られた戦術機でこれが帝国軍の次期主力機有力候補の1つだとは思えないわ」
佐竹は「そうなんですか」と一言を添える
その恋人である千恵はだんまりと立っている
「元々は不知火弐型の発展試作機として開発されたが、篁中尉が携わった『XFJ計画』によって作られた一つでもあるな」
「不知火弐型?あの機体がですか」
「全く違うな……これでは94フルアーマーと変わらん。少しテコ入れしておいた」
俺は94ブルGの頭部をよく見たが、不知火の頭部にラーストチカのセンサーマストを無理矢理取り付けた頭部だ。
頭部の容……メインカメラも不知火というよりラーストチカに酷似している
武装は…
突撃砲×4
近接戦用短刀(両腕部に2つ)
追加装甲(サブアーム保持で2つ)
近接戦用長刀(オプション装備)
92式多目的自律誘導弾システム
増加装甲内ミサイル
特殊機能はサブアーム
背部兵装担架に4基備わっている簡易マニピュレータ。武器の保持や使用が可能。
………化け物クラスの戦術機だ
こんなの普通に考えれば造れる筈がない。
「アメリカの戦術機の部品で組み立てようと考えたが、国連が所有してる機体には施せられない。我々の立場からすれば裏ルートでソ連の戦術機の部品を入手しそれを組み立てるぐらいしかないからな」
だからこんな形の戦術機か………
「豊臣、この機体はいつからラーストチカ顔になったんだ?と思ってるだろ」
言われてみりゃそうだな、日本にソ連のスパイがいるのではないか?と疑われるぐらいのレベルだ
「資料通りに戦術機開発は必ずしもないぞ。何でもかんでもアメリカのストライクイーグルではなくソ連のラーストチカの冠さえ付ければ売れると思ってる人間はいると思うよ」
「成る程……」
と佐竹は感心しつつ頷いた
「…この3機の実戦データを取りつつ、大尉は日本主導で戦術機を作らせる……そう言いたいんだな?」
「私はしがない中隊指揮官よ。最終的に戦術機に関する会社や御剣財閥に任せればいい」
鈴乃は冷静に振る舞い凛とした表情で言った。
「……豊臣少尉、すぐ私の部屋に来てくれないか?話さねばならないことがある」
「ああ、分かった」
俺は鈴乃についていき鈴乃の部屋に行った。
数分後、鈴乃の部屋についた俺は部屋の中に入り、ベッドの下に座り込んだ
鈴乃は俺の隣に座りつつ真剣な眼差しで俺に話しかける
「横浜基地に何か不審な点があったのか?」
そう問いかけるが、隠してもしょうがないので俺は全て話した
「……明星作戦でアメリカが横浜ハイヴにG弾投下した事は知ってるな?その下にBETAの反応炉があった」
「……見学コースと違うルートに行ったのね。それで?」
「暗い部屋の中にシリンダーがあってそこに入ってるのは人間の脳だ」
信じられないが、こればかりは事実だ
しかし、一体何だったんだ?
俺がシリンダーを触れた途端、少女の声が聞こえた
何かのメッセージを白銀に送ろうとしていた
「……」
鈴乃は少し黙り込み、俺を包むこむように母性をあふれ出すような感覚で抱きしめた
「もう喋らなくていい。悠一……横浜基地で見たモノは最初から見てなかったことにすればいい。それ以上の詮索はしないで」
「鈴乃……」
俺は鈴乃の顔を覗くと少女みたいに無邪気な笑みを浮かんでいた
「もう3年経つのね……佐渡島で起きた地獄の日々の事」
鈴乃はその手で俺の頭を撫でた
冷たい手だ……眠たくなってきた……ずっとこのまま鈴乃といられたら
「ん?」
?
「ふふ、悠一。白銀武という少年は何かしでかすかもしれないぞ」
どうしちまったんだ?鈴乃
白銀が何をしでかすと言うんだ。
地球にいる人類を救う為にこの世界にいる……か。
おめでたい事だな
佐渡島同胞団は国連軍の管轄下だ
白銀やヴァルキリーズの連中と共闘する機会が増える
負けられねぇ……彼奴との決着はまだ付いてないから物語の舞台から退場する気はない
鈴乃は笑みを崩さず格納庫で見た94ブルGの事を話した
「94ブルGの事だけど、あの機体は元々都が乗る予定だったの。でも完成される前に佐渡島で戦死してしまったから誰も乗りたがらないのよ。『坂崎大尉が乗るべき機体は指一つ触れられません』ってね」
94ブルG……名前からにしてはどっかで聞いたことがあるような戦術機…ではないな。だとするとモビルスーツ
ブルGというモビルスーツの存在は俺やダリルも知っている
まさか、ブルGまでもこの世界に!!?
「これは非公開の情報だけど、3年前に滋賀県で”BG”という謎の戦術機が確認されたが、調査隊が到着する前に自爆したそうだ。機体を奪われたくないからだろうな……」
やはりか、全然気付かなかった
「でも、何でその事を俺に言わなかったんだ?」
「色々事情があったのよ……それで機体の残骸を回収し、ここ練馬駐屯地にある訳よ」
「残骸だけ拾ってもな……もう動けないんだろ」
ブルGか……確か高出力・重武装によるフルアーマータイプの機体だ
元々はガンキャノンIIの発展試作機として開発されており、頭部も当初はガンキャノン系列の物が搭載されていたが、一年戦争でのガンダムの活躍にあやかりガンダムタイプの頭部に変更されている
何でもかんでもガンダム顔に変えていいものではないぞ
ガンダムもどき……だな。
「そうだな…修復することなく開発研究という口実で残されてる」
だから94ブルGを開発することが出来たのか
「悠一はもし都が生き延びてここにいたら”BG”に乗って私達と共に戦ってたと思う?」
「ん~そうだな、都なら「無用だ、2人だけユーコンへ行ってこい」と言われたかもしれない」
「そっか、都ならそういうかもしれないわね」
と言った後、鈴乃は突然帝国軍制服を脱ぎネクタイを緩んだ。
妖艶な笑みを浮かび、シャツのボタンを胸元全開まで外しつつ俺を誘惑する
誘ってるのか?これは
俺は誘い込み鈴乃をベッドに押し倒す
「きゃっ」
ベッドに押し倒された鈴乃は子犬のような可愛い声を出した
目を瞑り頬を赤らめ照れた鈴乃は色っぽい声で「早く来て」と呟いた
俺は鈴乃の要望を聞く形で目を瞑り互いの唇を重ね抱き締めつつ鈴乃の胸を揉み触りながら唇を重ねるのをやめ首筋を舐める
「あぁ…♡ちょ、くすぐったいわ♡」
鈴乃は喘ぎ声を少し出しつつ妖艶な笑みを浮かべる
「鈴乃……」
手つきがいやらしく鈴乃が履いてるタイトスカートを脱がせようとするが鈴乃に止められる
「ん…ダメよ…」
「どうしてだ?」
「そう慌てることはないわ」
俺はもう一度鈴乃の唇を重ねようとしていたその時、佐竹が突如ノックもせず部屋に入る
「失礼し…大倉大尉、何をしてるのですか!?」
鈴乃は佐竹の顔を見てギッと睨みつける
「佐竹!貴様、ノックもせず部屋に入るとは非常識にもほどがあるぞ」
「ご、ごめんなさい!それよりこれを」
佐竹は慌てた表情で手紙を鈴乃に渡した
「手紙……?誰からだ」
「分かりませんよ、ただ、送り主は『イギリス戦略研究会主宰代行 ジョナサン・チャーチル』と書かれています。勿論イギリスにはそんな研究会は存在しません」
戦略研究会……沙霧尚哉大尉か!
「ジョナサン・チャーチルっていう人は誰でしょうか?」
ジョナサンはジョジョ第1部の主人公の名前
チャーチルは第二次大戦中に就任してたイギリス首相だ
となると……
「これは何らかの暗号かもしれない。中身見て構わないか?」
鈴乃は服装を整えさっきまで緩んでいたネクタイを締め直す
「どうぞ、俺には理解できませんよ」
鈴乃は手紙の封筒を開け内容を読む
拝啓 霜秋の折、貴殿におかれましてはますますご活躍のこととお喜び申し上げます。
さてこの度、近年日本帝国政府は朝鮮半島の件についてを含め征夷大将軍殿下を蔑ろにした現体制に不満抱き、民を導きなく苦しい生活を強いられてる現状です。
このままだと日本は滅亡の道へ進むだけです。
一刻も早く決起しなければ異星起源種と対抗してまで戦場に出るのは不可となる
大倉大尉も存じておるでしょうが、我は日の本の衛士である以前に民の一人です
我々と共に決起致しませんか
帝国斯衛軍の恥晒しの豊臣悠一少尉も含め征夷大将軍殿下を迎えいる為、親愛なる日本国民であるならば協力が必須です。
返答はいつでも待つ所存です
帝国本土防衛軍帝都防衛第1師団・第1戦術機甲連隊 沙霧尚哉
「これは……!」
鈴乃はこの手紙の内容を見て呆然しつつ驚愕している
俺もただ、驚愕した
おいおい、これってまさか俺らをクーデターに加えようとしてるのか!?
冗談じゃないぜ!
沙霧大尉は日本の為に動いてるのは分かるが、こんなの意味あるのか?
「沙霧大尉がクーデター決起しようとしてるのは……恐らくだが国民ではなく、軍の都合が優先されてる」
つまり帝国軍のクソ上層部が征夷大将軍である煌武院悠陽の名を勝手に使ってまで国民は苦しい生活を強いられてるのかよ
決して意味はないわけがないが、帝国軍及び斯衛軍のクソ上層部がこんなザマとはな
「これは本人はこの事知ってるのか?」
「知らないでしょうね……このままだと悠陽殿下と国民の心が離れていく」
互いに難しい表情浮かび話してる中、早乙女が部屋に入り会話に介入した
「大倉大尉、ブリーフィングに来ないかと思ったら豊臣少尉と……」
「早乙女少尉、大倉大尉宛に手紙が」
佐竹は困惑し早乙女は鈴乃が片手に持ってる手紙の内容を覗き絶句した
「何ですか?これ」
「我々をクーデターに加えようとしている。沙霧大尉にね」
「……前々から上層部の人達が何考えてるかおかしいと思ってたんですよ。沙霧大尉が言ってる事は理解し難いとは言えませんが……」
鈴乃は早乙女の顔を伺い真剣な眼差しでこう言い放った
「天元山の火山噴火……悠一は知ってるわね」
「ああ、新聞で見ただけだが」
「殿下の名を使い国を守るためと口実に民間人に麻酔銃を使い強制的に連れ出した様子がニュースで一部始終映ってたわ」
そんな国が本当に人を守る事が出来るのか
今の日本は本当に人のための国と言えるのか
国民の象徴である殿下の意思が政治にされないという事は、国民の意思も政治に反映されない
沙霧大尉の言う通り、こんな状態だと日本は消滅する
誘いに乗るか?断るか?
選択肢は二つに一つだ
「私はこのクーデターに参加はしないし関わりたくないな。何か嫌な予感がする」
鈴乃はクーデターに関わらないと言った。
これは参加拒否という事だな。
「申し訳ありませんが私も辞退させて頂きます」
早乙女も参加拒否した
鈴乃は佐竹にクーデター参加するのか問いかける
「佐竹は参加するのか?」
「え?幾ら日本の為とは言えこんなバカげた騒ぎに参加する訳ないじゃないですか!」
佐竹も参加拒否
というか佐竹がクーデターに参加しても足手纏いになるだけだ
「紅林もこの事知ってるのか?」
「知る訳ないでしょ!仮に知ってたとしても断りますよ」
紅林の性格からにすれば妥当な判断だ。
彼曰く『お天道様に顔向けできない』と。
「鬼頭さんは長期休暇で旅行出かけていますし、もうどうしたらいいんだぁ……」
佐竹は頭を抱えて悩み始めた
「横浜基地にいる国連軍側と協力しクーデターに参加する連中を鎮圧するしかないな」
となると、ヴァルキリーズと共闘作戦か
確かに伊隅大尉はきりっとして美しい女性衛士だが、他の衛士は平凡だな
まぁ、あの伊隅大尉と一緒に戦えるとなら光栄だね
「悠一は何方側につくんだ?」
鈴乃は俺に問いかけ眉根を寄せて真剣な顔をする
「沙霧大尉の誘いに乗ってクーデターに参加するか?参加を拒み、国連軍と共闘し鎮圧させるか?クーデターに参加した場合、貴方は賊軍扱いされ最悪の場合死刑になることもあり得る」
俺は唾を飲み込み汗を垂らした
「参加を拒んだ場合は伊隅大尉率いるヴァルキリーズと共闘作戦加えクーデターを鎮圧する。私は後者を選択するわね」
俺はどっちを選べばいい?
考えなくても理解はしている
「俺は………国連軍と共闘する選択肢を取る」
恭子が俺がクーデターに加担しただなんて喜ぶわけがない
寧ろ嫌われる以前に関わりたくないと言われるオチだ
「それは、本当だな?」
「ああ、愚策だが国連軍と共闘する術しかないからな」
「……分かった、沙霧大尉宛に断りの手紙書いて送るわ」
「おう、すまないな」
「大丈夫よ、私は一衛士としてやるべきことをやったまでだ。佐竹、斯衛軍の能登少尉から送られた両陣営のデータ確認出来るか?」
鈴乃は佐竹に和泉から送られた国連軍、クーデター軍の個人情報が掲載してるデータを確認を試みる
和泉は衛士としての活動ではなく斯衛軍のハッカーだな
易々と国連軍のセキュリティを突破し国連が管理するコンピュータからデータを窃取することが出来る
その高度な知識や技術は和泉の父親譲りだろうな、多分
「はい、確認します」
佐竹は手に持ってるノートパソコンを開き国連軍、クーデター軍の個人情報が掲載してるデータを俺と鈴乃、早乙女に見せた
「此方です、ご確認を」
画面を覗くと……国連軍側の情報が膨大な数の個人情報が載っている
第207小隊の所属衛士は
白銀武
御剣冥夜
榊千鶴
彩峰慧
珠瀬壬姫
鎧衣美琴
……全員訓練兵か、どっかから寄せ集めた新米だろ
ん?ちょっと待て、一人だけ正規兵がいるな
名前は……神宮司まりも、か……。
顔写真から見れば美人だが帝国軍出身で当時の階級は大尉
都や鈴乃と同じ階級だったのか
で、今は軍曹か……帝国軍から国連軍に衣替えしたら同じ階級という訳にはいかないってか?
「本来なら不正行為ですが、遠田技研の能代浩行社長の計らいにより帝国軍及び佐渡島同胞団上層部は承諾を受けました。これにより帝国斯衛軍の能登和泉少尉のハッキング行為は正当化されることになります」
佐竹はこう説明した
「よく目通しておけよ、神宮司軍曹除いてこの中にいる衛士は単なる寄せ集めではない」
「鈴乃、言わなくても分かるぜ?」
俺はそういうと、鈴乃は小さな笑みを浮かべ俺の頬を触り佐竹や早乙女の前に一瞬だけ唇を重ねた
すると佐竹は驚愕し早乙女の顔は恥ずかしそうに赤く染まる
「大胆だ…」
「大倉大尉……」
俺も鈴乃を抱き締め唇を重ねつつ舌を絡め10分間ディープキスする
互いに口から離し鈴乃は俺の頭を撫でる
「ふふ、悠一は覚えが早いな……」
「そうか?」
「そうよ、ちゃんと人の言うこと聞いて口が軽いのは相変わらずだけど一歩一歩成長してるわ」
鈴乃は俺の顔を見て和やかな笑みを浮かべた。
佐竹や早乙女がまだいることに気づき笑みを崩さずこう言い放つ
「鬼頭少尉を急遽ここに来させろ、出来るか?」
佐竹は難しい表情になり困惑しながら言った
「無理ですよ、彼はアフリカにいるんですよ」
アフリカ大陸はBETA支配下から逃れている
鬼頭はそれを逆手に取りアフリカに行って旅行しているだろうな
「そうか、下がっていいわ」
「「は――」」
佐竹と早乙女は部屋から退出し去っていった。
「鈴乃、お前を死なせたくない。だからクーデターに参加するとか馬鹿な真似はやめてくれ」
「さっき言った筈よ、私は参加しない……安心して、私は死なない。死んだら…都の仇が取れない…」
俺はもう一度鈴乃を抱き締める
そして数時間激しく営みを励み互いに昇天した
恭子Side
帝国斯衛軍本部にて現体制の日本政府が不穏な動きがあり帝国軍にいる一部の人間がクーデターを決起しようとしているという情報が入り、私は今、大隊長執務室で中佐に昇格した斑鳩崇継と1対1で話していた。
「君の働きは素早いね、斯衛の為だけではなく佐渡島同胞団をサポート役まで携わるとはまさに天上天下唯我独尊だよ、崇宰大尉」
崇継は気障な笑みを浮かびつつ私の顔を見て話す
「今更でございますが、中佐になられたのですね。おめでとうございます斑鳩中佐」
「無理に丁寧口調で言わなくていいよ。そうだね、2か月前に昇格したよ」
「いえ、そうは参りません故。五摂家の斑鳩家当主の前で失礼な態度を振る舞うことは出来ません」
私は崇継の前にお辞儀し深く頭を下げる
「頭を下げなくていい、帝国軍の動きは察知している。目的は恐らく朝鮮半島の件だね」
私は崇継がそう言われると頭を上げる
「光州作戦……ですか」
光州作戦……3年前、国連軍と大東亜連合軍の朝鮮半島撤退支援を目的とした作戦。後に光州作戦の悲劇と呼ばれる彩峰中将事件が発生する。
光州作戦の悲劇とは脱出を拒む現地住民の避難救助を優先する大東亜連合軍に彩峰中将が同調し協力したため、結果的に国連軍司令部が陥落。指揮系統の大混乱を誘発し国連軍は多くの損害を被った。国連は日本政府に猛抗議し、彩峰中将の国際軍事法廷への引き渡しを要求。国連の要求に従えば軍部の反発は必至、逆らえばオルタネイティヴ4が失速すると考えた内閣総理大臣榊是親は、最前線を預かる国家の政情安定を人質に、国内法による厳重な処罰という線で国連を納得させた。それに先立ち榊首相が彩峰中将を密かに訪ねた際、日本の未来を説き土下座する榊に対し彩峰は笑顔で人身御供を快諾。帰路の車中、榊は彩峰の高潔に心打たれ、静かに涙したという。
「他にも明星作戦でのG弾投下や日米安保条約の一方的な破棄、佐渡島の件も含まれるね。帝国軍の沙霧尚哉大尉がクーデターを決起しようと試み、日本で東ドイツのウルスラ革命を再現しようとしている……」
崇継はニヒルな笑みで拳に頬を当て机に肘をつき寛いだ。
「そんなの……絶対に不可能です!!仮にウルスラ革命を日本で再現したら、空中分解され日本は滅びていく運命を辿る事になります!!」
「うん、革命を成し遂げるには誰かが革命の象徴として壇上に上がらなければならない。東ドイツはカティア・ヴァルトハイム、アイリスディーナ・ベルンハルト、そしてベアトリクス・ブレーメの3人が挙げられる。日本は誰が革命の象徴として壇上に上がると思うんだい?」
誰って……私が知ったことではないわ
ここは……私の名前を挙げるか
「……私でしょうか?」
「君がかい?」
「斑鳩中佐が仮に日本で革命を起こそうと考え誰を革命の象徴として君臨するかこの私、崇宰家次期当主の崇宰恭子の名を挙げるかと」
貴方が考えてる事は御見通しよ、崇継
そうやって私を利用する気なのよね……でも悪くはないわ
「革命とクーデターの意味は違うのは理解している。が征夷大将軍殿下の名を利用して国民を欺き蔑ろにされてる事は見過ごせはできない」
でしょうね、これが事実だとしたら
「BETAと戦う以前の問題として国が崩壊する可能性がある、その現状を打破するのが…沙霧大尉や彼を慕わってる衛士達の最終目的だ」
これが沙霧大尉の目的……成る程、要するにクーデターはBETAとの戦いにもとても重要
「こんな状況でも政府と国民が一丸になれず、揺らいでいる今の日本が、BETAに勝てるわけがない……ベアトリクスなら日本に対しこう発言する筈だ。『日本帝国はアメリカの犬であり、鬼畜の所業だ』『私の考えは間違ってなかった、人類は必ずしも絶対に一つにはなれない』『鬼畜米帝の犬に成り下がった日本は外道中の外道であり、政府関係者だけでなく軍上層部は私利私欲のために金を貯え他人を陥れ、国民の生活を苦しめている』『日本人の皮を被ってる貴様等に日本を守る資格はない!』『害悪の巣窟である日本は今やアメリカの犬ではなく国連の犬に成り下がろうとしている』と」
確かに…あのベアトリクスなら言うでしょうね
「日本はスパイ天国と世間から言われている。情報省の役人達も他国のスパイが日本にいるか確かめてるが見つけるのは難しい」
「然り、我等五摂家の不始末であり他国のスパイが日本に流れていく……この罪は何れ問われるというのですか?」
「いや、私と君含め日本国民全体は時流れば、殿下は民の信用を得ることは出来ると思う」
殿下は、日本の象徴であり我々が敬愛せねばならぬお方……。
崇継が放った言葉はどういう根拠があるのか私は疑問を抱いた
クーデターか……嘆かわしい
いつも側近として私の傍にいたファング中隊の長だった佳織は今日で衛士としての活動は引退し衛士訓練学校の教官として全うすることになった。
「……如月中尉は衛士を引退し訓練学校の教官に転向するようだね」
「――は、大変寂しいです。私の傍にいつもいた彼女は退いても私を尊敬しますと、言ってました」
寂しい―――でも出会いあれば去る者は追わず来る者は拒まず
いつか私も、退き時が来る
不安を募っている……まだ未熟ね、何の為に斯衛の衛士として活動してる
「佐渡島同胞団はクーデターに加勢しない……よいな?」
「は――」
そして数日後、帝都でクーデターが勃発した
良平Side
2001年12月5日
カムチャッカ半島経由で佐渡島に向かってる東欧州社会主義同盟所属戦術機母艦『ヴィリー・シュトフ』艦内で俺はファムから呼び出しで艦橋に向かう
廊下へ歩いてる途中、周囲に見られ俺を注目していた
「あれが、ダリル・ローレンツ少尉か…」
「ユーコンで試作戦術機のサイコアリゲートルに乗った衛士。見ろよあの手足」
「すげえな…本当に四肢が義手義足だ」
「リユース・ベアトリクス・デバイスという機能を装備したサイコアリゲートルと繋がると戦術機を自分の手足のように操れるんだろ?」
「それで切断?」
「いや、元々は五体満足だったが、細菌性髄膜炎という病気にかかって全部切断したらしい」
皆、俺を見ている……義手義足で戦術機に乗って戦う衛士は過去の戦闘で一切そのような衛士は一人もいなかった。
勿論、過去のBETA戦闘に置いて手足を失くした衛士は引退するかCPに転向する道しかなかったが、それも今日までだ。常識は変えられた
そして新しい義手を取り換えてくれた
慣れないと思うが、馴染むまでのリハビリだ。
艦橋の入り口でファムが待ち構えており俺は敬礼した。
「ファム大尉、新しい義手を用意して頂きありがとうございます」
「ふふ、貴方はエースパイロットよ。その義手を使いこなして一日早く慣れてね♪」
ファムは笑みを浮かび敬礼し返す
艦橋に入り、ファムは通信兵にアイルランド本部にいるアイリスディーナとの映像回線を優先ケーブルで接続させた
「艦長の許可は事前に承諾したわ、ダリル君はベルンハルト大尉と話すのは初めてね」
ファムはニコニコと笑みを浮かべ俺の顔を見て話す
確かに初めてだが、緊張している
”救国の女神”とご対面か……。
「音声回線も同期完了!交信どうぞ!」
艦橋内にある大画面でアイリスディーナの映像が映った。
《ファム、御苦労様だ。ユーコンの件は大変だったそうだな》
「大尉、其方の状況はどうなってるんでしょうか?」
《……現状維持だ。欧州戦線は西側のツェルベルスやフッケバインが対処している……ん?お前がダリル・ローレンツ少尉か。色々と聞きたい事あるが、話に付き合って貰えないか?》
断れないな、これは
「は―――お初にお目にかかります、ベルンハルト『大尉』」
アイリスディーナは少し笑みを浮かべ会話を始める
《……ユーコンの時は難民解放戦線に潜入しそのメンバーであるナタリー・デュクレールと接触し拘束したそうだな。彼女はアイルランドに移送する形で事情聴取を受けて貰う。テログループの本拠地の所在や最終目的とか聞かなければならない》
ナタリーは今、『ヴィリー・シュトフ』の営倉の中にいる
酷い扱いは受けてないはずだ
《……本来ならば、貴様達は欧州戦線に戻って貰いたいところだがそうではない状況になってしまった》
「と言いますと」
《日本でクーデターが勃発した》
クーデターだと……何か理由があるはずだ
《朝鮮半島の件も含め米軍のG弾使用、日米安保条約の一方的な破棄…それが原因だろう》
日米安保条約の一方的な破棄は日本にとっては許し難い事だ。
俺はアイリスディーナにある人物の事を聞いてみた
「ベルンハルト『大尉』少しお聞きしたい事があります」
《何だ?》
「……テオドール・エーベルバッハという衛士は御存じでしょうか?ブレーメ総帥閣下はテログループを仕切ってるのは彼だと断定しています」
黙り込んでしまった……アイリスディーナは数分、いや数十分口籠り考え込んだ後、クスっと笑みを浮かべる
《その名を聞くのは久々だな。テオドール・エーベルバッハはかつて私の部下であり私の意志を成し遂げようとした同志の一人だった。ダリル少尉はウルスラ革命を知ってるな?》
「―――は、聞き齧り程度ですが」
《なら問題ないな、今から話す事をよく聞いてくれ、あれは彼がまだ心の灯があった頃に遡る…》
俺とファムはアイリスディーナが東ドイツでの革命…ウルスラ革命の事やテオドールとベアトリクスの決戦、カティアの死、テオドールが何故キリスト恭順派を身を寄せテロリストに成り下がってしまったかを全て耳を傾け話を聞いた。
……テオドール視点でアイリスディーナの話を聞くと、義妹のリィズが反体制派に処刑させられたことにきっかけでタガが外れ、その矛先はベアトリクスに向けシュタージそのものを打倒しようとした
しかしベアトリクスの部下以前に本来亡き者であったイングヒルトの機転によりテオドールはベアトリクスに敗北。
そしてカティアの死がきっかけで彼はテロリストになってしまった
………どう言えばいいか分からない
けど、彼には彼なりの事情があったはずだがナタリー等の他の人間を利用し切り捨てるなんて俺は許せない!
彼奴の所為でナタリーは不幸になっていく……!
《……という経緯だ、テオドールはもう私が知ってるテオドール・エーベルバッハには戻らないだろう》
アイリスディーナは寂しげな表情をする
《ダリル少尉は何故私とファム達がこの時代に生きているんだと疑問思っただろうが、簡潔に話すぞ。私は”救国の女神”として称えられベアトリクスによって生かされた。私含め666中隊の衛士は戦力の要の一つとして利用しているから失いたくはないだろう》
それは言えるかもしれない
アイリスディーナとベアトリクスは元々仲がいい親友だったが、彼女の兄、ユルゲンの死によって2人の友情は修復不可能と言われるほどヒビが割れてしまった
元には戻らないだろうと彼女はそう腹を括っていたはずだ
「そうだったのですね。ブレーメ総帥と今も…」
《革命終結するまで仲が悪かったままだが、ベアトリクスは『アクスマンに利用されてユルゲンを殺させた』『ユルゲンは貴女を生かしたのね。今まで誤解してごめんなさい』と言われて修復したよ》
成る程……。
《話が大分逸れてしまったな、日本でのクーデターの件は我々東欧州社会主義同盟は関与しない。本部からの決定事項だ》
下手に関われば国際問題になりかねない
ここは、傍観するしかないな
《交信終了する、祖国万歳!》
と言い残し、アイリスディーナの交信は終了した
「ファム姉、頼みたいことがあるが…構わないか?」
「?」
「俺が彼の代わりに意志を継ぎ、欧州を、いや全人類を救ってみせる!だから協力してくれないか」
「貴方がテオドール君の代わりに?」
分かってくれなくていい
でも俺はファムの…みんなの笑顔を守りたいんだ。
ただ、それだけなんだ
「ああ、ファム姉。改めて思ったが君と出会えた事が奇跡だ。一生ファム姉を愛し遂げる」
「ダリル君……私も貴方が好きよ。ありがとう……」
俺とファムは艦橋から出て、部屋で愛の営みを励んでいった
次回から帝都クーデターの話です!
タケルちゃん、出るかも?
悠一は国連側につきクーデター軍と対峙します
そこで偶然見た者は……
お楽しみに!