晴子Side
大尉がリフトを使って離脱するまで1分……耐え抜いてみせる!
―私は逃げていた。みんなが戦っているのに、他人事みたいに冷めた目で見て…巻き込まれない場所を探していたのかもしれない―――だから国連に行こうとしたのかも。
だけど今は違う。人類は勝てる。日本を――家族を――弟を――太一を護ってやれる!
「―――凄乃皇がッ!!」
見ると凄乃皇に多くの戦車級が張り付いていた。このままでは装甲を食い破られてしまう。
「しまった!このままじゃ大尉が――――」
瞬間、警告音が鳴り響いた
同時に強い衝撃。首が痛い。機体は大破、そう直感した……筈だった。
ゴロ…ゴロゴロ…
キカ!
ガラガラガラガラ
雷が鳴り響き目の前にいる要塞級に落とした
そして黒焦げになり崩れ倒れる
「え……?」
そして、帝国軍の不知火5機と不知火擬き1機、そして撃震1機が凄乃皇に接近しそのうちの1機が私の機体に駆け寄る
《晴子ちゃん、大丈夫!?助けに来たよ!》
アームナイフ型の突撃砲を構えてる不知火に乗ってるのはXM3トライアル襲撃で茜を庇って戦死した筈の築地多恵だった。
「築地…?」
築地機はアームナイフ型の突撃砲を構え守りに入る
《大丈夫だから…大丈夫だからね!》
《此方佐渡島同胞団ムーア中隊の大倉鈴乃大尉だ。聞こえるか?国連軍の衛士……いやA-01部隊の柏木晴子少尉》
佐渡島同胞団という組織に属する戦術機中隊の大倉大尉が中隊率いて応援駆け付けて来た。
《ムーア2、左側にいるBETA共を駆逐しろ。ムーア3は私の警護だ。ムーア4とムーア5はムーア2の援護に回れ!》
《了解!》
《承服しました!》
《了解です!》
《了解しました》
その様子を見ると、戦車級数体が歯が全部折れたり陥没してる個体も…さらに不知火擬きは長刀を構え最短距離で兵士級数体辻斬りし要撃級は二連装の突撃砲で120mm弾を放ち次々と殲滅していった
「(築地が何故生きてるのかは後回し…今は目の前にいる敵を叩く)」
絶対に許してはならない…どんな理由であろうが私達の仲間を傷つけた代償払って貰うからね!
とは言っても凄乃皇は無防備状態、私は築地に守られている
死の直面を見てしまった私は情けなく感じつつ小さな笑みを浮かべ涙を流した。
泣いてる場合じゃないのは分かってる。
操縦桿をぎゅっと強く握り120mm弾で…私も戦わなきゃ誰が大尉を…!
生きる希望を掴んだ私は120mm弾を放ち接近してくる戦車級BETAを殲滅
それと同時に築地機はアームナイフで凄乃皇に張り付いてる戦車級を次々と斬りかかった
《離れろ!離れろ!絶対にやらせはしないよ!》
次の瞬間、築地機が凄乃皇から離れ…
キカッ
ガラガラガラ
また雷が落とし…凄乃皇に直撃した!
伊隅大尉は未だに凄乃皇の中にいる
無事だといいけど……
《今日の天気は雷か?気象予報は外れたとでも言うのか?》
《外れる事は良くありますからね。大尉―――鬼頭さんはどう思いますか?》
《天候は変わりやすい。いつ雨降るか分からないんだよ紅林君》
《そんなもんですかね……》
戦闘中に会話……随分余裕あるね。
で、一人はジャズを流しながら戦車級や兵士級を駆逐している
その時、見慣れない戦術機が凄乃皇に急接近してくる
撃震や不知火じゃない…あれは、アリゲートル!!?
しかもサブアームに追加装甲が2枚付いている
《東欧州社会主義同盟ヴェアヴォルフ大隊のカタリーナ・ディーゲルマンだ。貴様達を援護に含めその航空機動要塞を鹵獲しに来た》
《待ってください、ディーゲルマン中尉。あれは我々だけでは鹵獲出来ません!》
そりゃそうだよ。凄乃皇は人類の希望ともいえる兵器なんだよ。
何の考えなしで鹵獲する事なんて不可能だよ。
そう思いつつ、東欧州の連中の会話に大倉大尉が割り込む
《ディーゲルマン中尉、それを持ち帰ってどうする気だ?》
《我がヴェアヴォルフ大隊はブレーメ総帥の命を受け任務遂行しに来ただけだ》
《その任務は凄乃皇・弐型を鹵獲なのか?》
馬鹿じゃないの?あれは00ユニットしか動かせない兵器よ。
どうやって運用するっていうのよ
《その通り、その中に誰かがいるのか?》
カタリーナという衛士は凄乃皇に近付くが、コクピットハッチを探してる
《他の者はBETA共を殲滅しろ。私はコクピットハッチを探る》
コクピットハッチを探ってる次の瞬間、一ミリも動かなかった凄乃皇が突如動き出し飛行し始めたのだ
そう、伊隅大尉は手動での自律制御の起動を成功した
それを見たカタリーナは凄乃皇から離れる
《ッ!》
呑気に見ているうちに伊隅大尉から内部無線が繋ぎモニターに映った
《柏木、よくここまで持ち堪えたな!》
「伊隅大尉…」
《……全く世話を焼かす部下だな。あの雷がなかったら凄乃皇は起動できなかった。奇跡って起きるものだな―――帰ったら一から鍛え直してやるから覚悟しとけよ!》
「了解!」
凄乃皇が動く瞬間を見た佐渡島同胞団の衛士達も驚愕していた
《大倉大尉、凄乃皇が…》
《何だと!?馬鹿な…動けなかったんじゃなかったのか?!》
《と、とりあえず退避しましょう!》
《早乙女の言う通りだな。総員退避だ!》
と大倉大尉の号令で戦術機中隊の機体は退避させた。
《逃がすな!あれは人類の勝利を導く兵器だ。傷付けるなよ》
《了解!》
東欧州のアリゲートル5機は凄乃皇に張り付き動きを監視する
大倉大尉はカタリーナの行動は不可解と感じ少し怒りを露にした
《ディーゲルマン中尉!本気で言ってるのか!》
《本気も何もこれは我々ヴェアヴォルフが頂くわ》
ありゃりゃ~、これは全く分かってないね……。
《ふざけるのもいい加減にしろ!あれは香月副司令が作り上げた航空機動要塞だぞ!!》
怒るのも無理ないよね~。私はドン引きするよ。
《……貴様にどう言われようと私の勝手だ》
その時、カタリーナ機が鈴乃機に突撃砲の銃口を向ける
《人類は必ずしも絶対に一つにはなれない……ブレーメ総帥の名言よ。それを忘れたのか?貴様は》
確かにそうだけど今は人類を一丸として戦わなきゃいけないんだよ
揉め事なら他に当たってよ
《だが、それを覆そうとしてる少年がいる!》
《誰だ?》
《国連軍の白銀武だ―――一人の少年が我々人類に希望を与えた英雄だ。彼も必死に奮闘している》
《たった一人の少年が英雄だと?ふふ、まるでテオドール・エーベルバッハね。要塞級殺しや東ドイツの英雄と称えられていたのに今はテロリストに墜ちた…白銀武と言う少年も何れエーベルバッハみたいに闇墜ちするに決まっている!》
怒声を上げ生々しい会話をしてる二人を見て私は呆然とした
このまま仲間割れして対人戦になりかけるがカタリーナは冷静に対処した
白銀達は既に『最上』に向かって後退している
となれば……?
《どうかな?その少年を甘く見ているな》
《何が言いたいの》
私は二人の会話に介入し、説得させる
「白銀君の事、そんな風に見ていたのですか?」
《そんな風に?》
「彼はそんな事するような人じゃありません!私は分かります。白銀君が00ユニットを必死に守ってまで回収し私達の為に頑張っている――発言を撤回してください!」
《……》
全員沈黙
1分後、カタリーナは申し訳なさそうに私達に謝罪した
《…発言を撤回するわ。申し訳ない…彼の苦労が理解してなかったわ》
私はその言葉を聞いて安堵な表情を浮かんだ。
白銀達は上手く後退したみたいね……あとは凄乃皇を―――。
そして、甲21号作戦は終局に近付いてきた………あとは頼んだわよ白銀君。
ベアトリクスSide
東欧州社会主義同盟所属戦艦『カール・マルクス』艦橋
「ヴェアヴォルフ大隊、SWエリアに到着。BETA群と交戦し始めました」
「同時にXG-70が再起動確認。ヴェアヴォルフ大隊のカタリーナ・ディーゲルマン中尉の判断で誘導しています」
「佐渡島同胞団の戦術機部隊と合流、戦闘に入りました」
「戦車揚陸艦『ツヴァイクレ』、佐渡島にてT-72戦車部隊『クリーベル』の上陸を確認!」
「南沙諸島から朝鮮人民軍の艦隊や戦車揚陸艦、戦術機部隊が佐渡島に接近し増援に参りました!」
騒がしいけど、皆頑張ってるみたいね
国連軍とインペリアルアーミーも奮闘してるけど時間の問題…後退し佐渡島から離れる筈よ
「上手く行ってるみたいね―――ニコラ」
「はい、切り札使いますか?」
ツァーリ・ボンバツヴァイ…同胞国であるソ連が開発した爆発規模が最大の水素爆弾ツァーリ・ボンバをG弾2~5発分搭載した曰くつきの水素爆弾。
これを投下するのは………必要ない
「いや、アレの投下は凍結しましょう」
「え?しかしハイヴを攻略するには反応炉を」
「RBDを搭載したサイコアリゲートルなら反応炉を破壊出来る筈よ」
「サイコアリゲートル……ダリル・ローレンツ一人で?」
無理と言いたいのねニコラ。
………いや、無理とは必ずしも言えないわ
「ただの戦術機とは違うのよ。彼なら必ずやるわ」
今は見守るしかないわね
そう思った次の瞬間、オペレーターの一人が私に報告した
「第666戦術機中隊!A-02擱座地点に到着!」
「直ぐに移動しろと伝えろ。場所は佐渡島ハイヴの中にある反応炉だ!」
「は!第666戦術機中隊応答せよ!此方カール・マルクス、第666戦術機中隊応答せよ!」
《此方シュヴァルツ01、了解。移動を開始します》
《シュヴァルツ02、了解》
《シュヴァルツ03、了解》
《シュヴァルツ04、了解――――ブレーメ総帥、反応炉に行けばいいんですね》
時間がないわ、急がせるか
「ああ、途中で佐渡島同胞団の戦術機部隊と合流するから彼等と協力しなさい。ダリル少尉、貴方一人で反応炉に行くのよ。その戦術機があれば今までの戦術機より遥かに敏感に反応すると証明できる。出来るわね?」
私が望む答えは来るのか……分かってはいるけど
《はい!やってみせます!あと敬礼が出来ず申し訳ありません》
「ええ、頑張ってね」
私はモニターに映ってるダリル少尉に向け敬礼し彼等を見送った。
悠一Side
東欧州社会主義同盟の連中と合流した俺達だが、不穏が感じる
何か裏があるんじゃないか?と
だが今はそんな事どうだっていい
俺達はあくまでも鈴乃達の思い出の場所を守らなければいけない――そう決意して化け物の巣穴に突っ込もうとしている
「残弾はまだ余裕がある。巣穴に入るまでは持つかどうか分からないが、やってやる…やってやるぜ」
ハイヴは既に凄乃皇・弐型によって砕かれた
しかしまだ中にBETAがうじゃうじゃといやがる
俺達だけで…彼奴等と組んでまでやれるのか?
……出来る訳がねえ
しかし弱音を吐いたら自分が死ぬだけだ
《ハイヴが砕けたとはいえここにいるBETAはまだ健在だ。消耗戦になるが覚悟は出来てるな?》
覚悟は出来てるさ、鈴乃。
俺は「はい」と一言を言う前にカタリーナが割り込む
《中途半端な覚悟だったら貴様が死ぬだけだ。腹を括れ》
言うじゃねえか……。
凄乃皇・弐型と国連軍の不知火は健在だ。
不知火に乗ってるのは伊隅大尉か柏木少尉のどちらかだ。
《フランチェスカ中隊の機体の残骸です…全員やられたんですね》
《ああ、彼等はよく頑張ったと思う》
最初に突っ込んだ中隊か………
ハイヴを攻略しようとしたんだ…無駄死にではない。
気合を引き締めて目の前の現実を受け入れ異星起源種との戦いを挑もうとしたが、突如クローディアからオープン回線が繋がれた
《我々佐渡島同胞団は東欧州社会主義同盟の艦隊と無事合流し朝鮮人民軍の戦術機揚陸艦3隻とフリゲート艦1隻や戦術機部隊も加勢していくそうだ。ムーア中隊はヴェアヴォルフと合流したな。帝国海軍と国連軍は佐渡島から戦線離脱した…》
《クローディア艦長、まだ離脱していません》
隣にいる咲野少佐がツッコミを入れた。
おいおい、勘違いかよ…こっちの世界のクローディアは抜けてるところあるな
俺が知ってる『クローディア・ペール』と全く異なるようだ……。
《…国連軍A-01部隊『ヴァルキリーズ』隊長、伊隅みちる大尉聞こえるか?》
クローディアは手動での自律制御で飛行している凄乃皇・弐型に乗ってる伊隅大尉に問いかける
《クローディア中佐、何用で?私は副司令の命令を従ってる一衛士です》
《分かっている。貴女を巻き込んでしまって申し訳ないと思ってる》
《いえ、其方も苦労なされてますね。心中お察しします》
まぁ、伊隅大尉は香月女史の命令に従ってるだけだから彼女一人の責任ではない
香月夕呼……狡猾過ぎるマッドサイエンティストだ。
《中佐、私の部下達に最期の言葉を伝えたいのですが、許可を願えませんか?》
伊隅大尉はこう嘆願する
《香月副司令と話したいのか?》
《それも含めてです》
《……分かった。許可する――――》
柏木少尉は伊隅大尉の言葉を聞き黙ってるわけではなかった
《大尉!それでは私も…》
《ああ、記録上戦死した事になる。私はここで退場させて貰うよ》
伊隅大尉の決意は変わらなかった
自分が死んでも部下が受け継いでくれて最後まで戦い続けると。
「…」
俺は静かに黙るしかなかった
鈴乃は悲しげな表情で言い放つ
《伊隅大尉……理解した上でそう言ってるんですか?貴女が死んだ事になれば二度と部下達の顔見れなくなりますよ》
《柏木も一緒だ》
と伊隅大尉は前向きで言い放った。
《大倉大尉、本土に帰ったら香月副司令に頼んで病院に私と柏木の死亡届を作成してくれ。そうしたら私達は一生消え続けてやる》
………。
《伊隅大尉……》
《私と柏木の死体を確認したと白銀達に伝えてくれないか?地球にいる人類を守る為なら喜んで死んでやるさ》
クローディアは伊隅大尉の頼みを呑み咲野少佐にそれを伝える
《…何で…何で貴女だけこんな……!》
鈴乃は悔しい表情しつつ涙を堪えた
《各戦術機部隊に告ぐ!伊隅大尉の『最期の言葉』として国連軍の…帝国軍の秘匿回線を繋げ。咲野少佐》
《了解しました、クローディア艦長》
《全員静粛!》
そして俺達含め他の戦術機部隊の衛士も静寂に…なった。
白銀Side
俺は元の世界に戻る為―――地球にいる人類を救ってBETAを倒すべく夕呼先生が主導するオルタネイティヴ4を完遂する為に奮闘している
横浜基地に残ったまりもちゃんも冥夜や委員長、彩峰にタマ…美琴を見送り俺達の帰りを待っている
全てを終わらせるべく先生は佐渡島を犠牲にしてBETAを殲滅しようとしていた
それは人類の勝利を掴む為だから犠牲は付き物だと俺は割り切っていたが…俺にも予想できなかった出来事が起き、天羽組っていう極道組織の小峠がそれを阻止してまで夕呼先生達が乗ってる戦艦を乗っ取ったんだ。
佐渡島は天羽組のシマの一つだ―――この時はまだ知らなかった。
裏に東欧州社会主義同盟が絡んでいた事を……。
それを知った俺はどうすべきか?
今はそれを考察してる場合じゃない。00ユニットを…純夏を…そしてここにいる人達を守らなければ!
巨大なモニターの全面には、伊隅大尉が映し出されている。
その顔は以外にも清々しく思えた。そのモニターの前には俺がいる。本来、私的な通信は不要なのだが戦艦最上に、帝国側の指揮官達が要請し、有線の秘匿回線を繋いでくれた。
――――大尉…数分後にはもういなくなってしまうなんて…
ダメだ…!顔に出すな!!
俺が大尉に返せるとしたら衛士として一人前の態度を見せるくらいしかないんだ…!!
《―――白銀》
大尉が話し始め俺に最期の言葉を投げかける
《…00ユニットは無事らしいな。よくやったぞ》
「…ありがとうございます。あの…そっちは大丈夫ですか?」
《ああ―――主機に雷に打たれて動いたからな。ラザフォードフィールドが守ってくれている》
凄乃皇は無事動かすことが出来たんだ
でも、数時間は持たないだろう…。
《佐渡島同胞団の連中と東欧州社会主義同盟の連中が揉め合っていたが、今は落ち着いている―――副司令の取り計らい、多少気が引けるのは確かだ》
「え?」
《全く…貴様ももう少し広い視野を持てればいいんだがな。私は何人もの部下を殺し、多くの人の死を関わって来た私にはこのような死に場所を与えられただけでも十分なんだ》
「そんな………大尉は立派じゃないですか…自分の生命と引き換えに多くの人達を救うじゃないですか…ッ!!」
こんなのってアリかよ
大尉がいなくなるなんて俺は…俺は…!!
《勘違いしてるようだが白銀にも言っておく。私の本音は貴様が思っているほどの御立派なものじゃないんだ》
え…?
《今、私が一番強く思っているのは、結果的に救う事になった多くの命の事でも人類の未来でもない。ましてや神宮司軍曹の事でもない――――》
何処がいけないんだ―――!?
大尉はオルタネイティヴ計画の為にずっと自分の手を汚してまで戦ったんだ!
人類の為だろうが戦友の為だろうが家族の為だろうが…汚れ役をやって来たのは事実だ!!
「結果的に大尉のおかげで多くの命が救われるのは事実じゃないですか!?最後の数分に―――心の中で家族や恋人の事を考えるのはそんなに悪い事ですかッ…!?…俺は誰がなんと言おうと大尉を尊敬します。大尉の行いは――――立派だと思いますッ!!」
…くそっ、泣くな。ここで泣いちゃダメだ。
ここで俺が涙を見せちゃダメなんだ…!!
《…白銀、部隊の連中を頼んだぞ。貴様の強さをみんなにも分けてやってくれ…》
「…俺は全然強くありませんよ…」
《白銀―――貴様は十分強い。貴様の戦う理由が何処か達観している訳が、貴様が特別なのだと感じる訳が…今日ハッキリ分かった》
「え…」
《…00ユニットの被験者は貴様の恋人なのだろう…?》
―――――…!!
大尉は知っていたのか…!?
《貴様が名を呼んで彼女を抱き起こしたときに分かった。純夏と言う名は昨日聞いていたからな…》
………。
《―――貴様と彼女に降りかかったであろう。悲劇と心の傷の深さは…想像を絶する。00ユニットの真実を知りながら第四計画の中枢任務を熟すなど――――私には絶対に耐えられないだろう。今までの貴様の働きを思い返すと貴様の強さを知ると同時に自分の弱さが情けなくなる―――》
「違います…!大尉が考えているようなことじゃ…!!」
俺はそんな大層な事してない――ただ純夏を守りたいだけなんだ。
《多少の違いなど問題じゃない。彼女に対する貴様の態度を見ればわかる…》
大尉は最初から気付いていたのか
《貴様がたまに見せる甘さ――というか独特の優しさは、私が今までに出会った誰もが持っていないものだ。それだけの悲劇を体験しながらそういう優しさを失っていない貴様は…強いと思う》
伊隅大尉は俺の事を一人前の衛士として認めてくれた
これは事実だ―――俺が行った事は全て無駄じゃなかったんだ
《そして、衛士としての才能も持ち合わせている…もしかしたら貴様は『人類の救世主』なのかもしれないな…》
そんな事は無い…と言い切れない
俺はその甘さの所為で散々人に迷惑かけて来たのに…!
救世主…俺はそうありたい
でもそれは俺一人じゃ出来ない――――
だから大尉や神宮司軍曹のような人達が傍にいて欲しいのに…!!
《今日の戦闘での貴様は――とても新任とは思えなかったぞ》
「…それは大尉のおかげじゃないですか。大尉がしてくれた催眠療法があったからで――」
そうだ、俺一人で努力を重ねてきた訳じゃない
みんなのおかげだ
《ふふ…安心しろ。貴様はそれを自分で克服したんだ。あの時貴様が受けたのは特殊な効果は何もない――ただの安静プログラムだ》
…!?
《この作戦が終わったら種明かしをするつもりだったが――伝えられてよかった。――これで文字通り…貴様に怖いものはなくなった筈だ》
そうか――大尉は俺に自信をつけさせようと…
「…はい、ありがとうございました…」
《さて―――長くなってしまったな。皆にもお別れさせて貰おう》
もう――――大尉とはこれで…!!
俺は涙を堪えつつモニターに映ってる伊隅大尉に敬礼した
そして同時に大尉は敬礼し返した。
「…お世話に――なりましたッ…!!」
涙が止まらない…これで本当に、別れるなんて…いなくなるなんて
《…泣くな…男だろう》
もう、堪えられない―――
「…ッ……す…すみませ…ッ…――――オレは…ッ。もっと大尉に…色んな事を、教えて…貰いたかったのに…………っ!!」
《……》
……悔しい
正直悔しい……一人の衛士を助けられないなんて
「……ッ。く……」
《―――私も多くの先輩と同じく基地に咲く桜となって貴様達を見守る。何かあったら…桜並木に会いに来い。人類を…頼んだぞ》
「……はい……!オレが…オレが必ず守ります!」
《…さらばだ…白銀》
「……さようなら、大尉ッ……!」
大尉の最期の立ち会い――――そのモニターの前にはA-01部隊のメンバーが揃っている
本当にこれが最期なんだと俺は確信した。
全員何も言わずにモニターに映ってる大尉に敬礼を行う
《―――伊隅だ。困難な任務ばかりであったが…今日までよく耐え私について来てくれた。貴様達は最高の衛士であり私の誇りだ》
タマ、委員長、美琴、彩峰、冥夜も―――俺も含めて最高の衛士だと大尉から評価された
《任務半ばで先立つことは甚だ遺憾であるが、貴様達であれば安心して後を任せられる。私亡き後も人類の勝利とオルタネイティヴ4完遂に向け、これまで以上に精励してくれることと確信する》
そう言い告げると速瀬中尉に言葉を放ち、A-01部隊の後釜を託す
《―――速瀬、部隊の指揮は貴様に任せる…宜しく頼むぞ》
「――――はい!お任せください!」
宗像中尉も大尉に向け名残惜しそうな表情を浮かびながら言葉を放った
「大尉…お世話になりました。あの世は退屈でしょうが…暫く我慢していてください。いずれ私も―――」
《―――余計な心配はするな。向こうには柏木達もいる。貴様達の顔は当分見たくない》
「大尉…」
《…貴様達は急がなくていい。私達だけで十分だ》
「……」
速瀬中尉の顔を覗くと誇らしい表情を浮かんでいた
……俺達は、大尉の――伊隅大尉の遺志を継ぐんだ。
それを成し遂げなきゃいけないんだ。
《神宮司軍曹の言葉…忘れるなよ》
「――――はい!!」
そして涼宮中尉に最期の言葉を投げかけた
《―――涼宮》
「…はい」
《部隊を頼む…戦場でも後方でも、貴様の存在が部隊に与える安心感はとても大きい。速瀬を上手く扱えるのはお前だけだ――――しっかりやれ》
「―――はい!」
これが…残された時間でA-01の部隊長、伊隅みちる大尉の最後の仕事…全て俺達に―――。
《――白銀》
「―――はい!」
《せっかく貴様に教えて貰った温泉作戦…決行できず無念だ。その代わり―――貴様は必ずあの命令を遂行しろ》
「…はい。必ず―――今までの償いをします!」
《…よし、後は頼んだぞ》
「―――はいッ!!」
みんな―――安心してくれ。俺が…俺達が必ずBETAを殲滅するから
そして――――全世界の人間が戦場に出なくて済むようにするから……!
必ず、やり遂げてみせる!
絶対に―――俺はこの時そう決意していた。
鈴乃Side
我々佐渡島同胞団は国連軍A-01部隊の長、伊隅みちる大尉の嘆願で部下達に最期の言葉を投げかけた
静寂の中、私達は伊隅大尉の言葉の真意を、理解したような気がする
そして30分後、漸く終えた
《――…―――終わった…》
《もう、宜しいですね?》
《ああ、部下達には会えないのは寂しくなるが――致し方あるまい》
『司馬』艦長のクローディア中佐は伊隅大尉の嘆願を応え、少し笑みを浮かんでいた
仕事を終えたように安堵していた。しかし
《間も無く佐渡島ハイヴに近付きます!》
ムーア中隊の他に後方に任せてるルウム中隊とガイア中隊がいる
さらに東欧州社会主義同盟のヴェアヴォルフ大隊まで佐渡島の戦域に介入していた
「総員傾注!」
私は号令をかける
「もうすぐBETA共の巣窟に向けこれを殲滅する。が我々だけでは戦力が足りない。ヴェアヴォルフ大隊と共闘しハイヴの中にいるBETAを全て殲滅させる!気を引き締めていけ!」
《――了解!》
部下達含め他の中隊の衛士は私の指示に従い既に砕けた佐渡島ハイヴに向かった
当然、BETAも私達に襲い掛かってくる
「漸くお出ましだ―――各機、敵を殲滅せよ!我に続け!!」
《おっと、俺も行かせてくれよ♡》
悠一が乗る94フルアーマーが94サブレッグの隣に寄せつつ砲撃準備を整える
「アローヘッド・ワンで仕掛けるぞ!悠一!」
《OK!合言葉はトラストだな?》
もう、すぐに調子に乗って……それが貴方の個性ね。
《承服しました!》
駒木は以前よりやる気が出てるな―――その顔はまるで歴戦の衛士だ。
速度を上げ最大全速で全機飛行しつつ外のBETAを…殲滅する!
戦車級や兵士級などの小型種が少数だった為すぐに殲滅したのだが、ここで詰んでしまった
「ッ!」
《どうした、鈴乃!?》
「…入り口が塞がれてる(何と言う事だ。これでは無駄死になるだけじゃないか…クソ!もうすぐ取り返したのに)」
ハイヴは砕け切っている
原型もなくだ
しかし入り口が塞がれてはどうしようもない
……ではBETAは何処から出て来た?隙間からか……隙間!?
「早乙女、レールガンはあるか?」
《は!ありますがそれで何をするのです?》
早乙女は預かったレールガンを返し、それを構え隙間を狙いに定める
「凄乃皇・弐型の荷電粒子砲を頼るのもアリだが、伊隅大尉はそれを動かすのがやっとだ」
《申し訳ない――私はそれを動かすだけで精一杯だ。だが、守りには活用出来る》
ラザフォードフィールド………それしかないか。
突如、柏木少尉が乗る不知火が地上に着陸し動きが止まる
《柏木、貴様はここまでだ。よく守ってくれた》
《いえ、面目ありません。私は指示に従っただけです》
ん?左側の跳躍ユニットが破損している。しかも推進剤漏れだ
このままハイヴの中に入って戦っていたら間違いなく即死だ。
《ヴェアヴォルフ、聞こえるか?》
伊隅大尉はヴェアヴォルフに任されてるカタリーナに言い向ける
《何だ?》
《柏木を頼む。勝手に粛清はするなよ―――その時は、貴様を撃つ》
カタリーナは小さな笑みを浮かびこう答えた
《ふふ、今は共闘してる身。やらないわよ?命の保証は…約束するわ》
その目は濁っておらず嘘を吐いていなかった
本当だと確信する
「少し離れてください」
私はレールガンでハイヴの隙間を目掛けて放った
そして、その衝撃で中にいるBETAが外に出る
《大倉大尉!BETAが出てきました!》
《戦車級、兵士級に要撃級…小型種ばかりだがまだ中に大型種がいるかもしれん》
紅林は戸惑いつつ驚愕してたが鬼頭は冷静にBETA属種を特定した。
ハイヴの外に出て来た戦車級、兵士級、要撃級はまず早乙女機に襲い掛かる
《……死に晒せ!この化け物共がッ!!》
ガガガガガガガガガガ
早乙女機は120mm弾で応戦、戦車級を次々と撃破!
まだまだ数が増える……早乙女機は怯まず再度120mm弾を放った
ガガガガガガガガガ
《駒木中尉!援護を!》
《分かったわ!早乙女、無茶はしないで》
駒木が乗る94ブルGも加勢し早乙女機を援護!
2連装突撃砲で120mmを放った
早乙女機はサブアームについてる追加装甲2つを管制ユニットに覆い尽くす形で守りに入り突っ込む
《異星起源種が……舐められたら衛士を語る資格はありません》
次の瞬間
《粉々にしてやる……!》
早乙女は普通の女性とは思えない威圧をかけた顔になり目の前にいる戦車級数体を目掛けて120mm弾を放った
駒木はそれを便乗する形で兵士級数体に120mm弾で迎撃
見る見るうちに数が減っていく――――私が出る幕ではないと思ったがそうは問屋は卸さない。
私もレールガンで要撃級に向け放つ
しかし連続で使用したら当然の如く、弾が切れてしまう
補給コンテナは恐らく仮にあるとしたら間に合うかどうか分からない
1時間後、放出されたBETAはこれで全部殲滅…問題は中にいるBETAが何匹いるかだ
「各機、残弾報告!」
《弾と推進剤は節約して温存している。まだいけるぜ》
《120mm弾の残弾数があと5発です》
悠一はまだいけるのか…駒木は120mm弾除いてまだ余裕ある―――と。
《拳で戦ってきたので弾はまだあります!》
《同じく》
《まだいけます!》
紅林、鬼頭、『豊洲』もまだいけそうだな。
「紅林、マニピュレーターが壊れるぞ。突撃砲を使え!」
《了解です》
全く、しょうがないな――――しかし紅林が倒したBETA数体を見るとどれもこれも陥没してる
特に兵士級は原形を留めていない……。
《折角武器あるんだしさ、有効的に使おうぜ。ガンダムファイトかよ》
悠一は困惑した顔で紅林にそう言った。
確かに言える。BETAを倒す方法は基本的に突撃砲と長刀、短刀の3つでシンプルな武装だ
――――ん?ガンダムファイト…って何だ?
《あの、ガンダムファイトってなんスか?何かの競技ですか…?》
《いや、拳と拳で語り合う競技だ。まぁ、そういう作品に出てくる競技だけどな》
《あ、なんだ架空の競技なんスね》
作品内に出てくる競技か
「そもそも戦術機は『ガンダムファイト』という競技に当てはまらないだろ?TSFファイトなら分かるが」
戦術機同士の拳の語り合いの競技なんてある筈がない―――あったらオリンピックの競技の一つに含まれるのか?
…今はそれどころじゃない。伊隅大尉がここにいるんだ。集中しなければ中隊の士気が下がってしまう
《収まったみたいだな…》
「ええ、だがこの穴の広さでは凄乃皇・弐型は入れない」
レールガンで隙間を広げたのはいいが、この大きさでは凄乃皇・弐型は入れない
終わったな………と思っていた
「(古いデータだが、これを賭けるしかない)総員傾注!今からハイヴの中に突入しBETA群を殲滅する。ハイヴの構造データを送る」
私はハイヴの中の構造を掲載してる貴重なデータである『ヴォールクデータ』を各戦術機部隊の衛士に送信した
《これって、ハイヴの中の構造か!?》
《大倉大尉、これってまさかと思いますが…》
「ああ、そのまさかだ」
これを見た悠一と駒木は唖然
《大倉大尉、これってヴォールクデータですよね…?当てになるんですか》
「ハイヴの構造のデータはこれしかないからな。他にあったら誰か教えて欲しいものだよ」
疑心暗鬼だが、攻略するにはこれを賭けるしかない。
私は戸惑いを見せず、戦術機が入れるほどの穴に恐る恐る入る
《おい、どこ行くんだ!そっちはBETAが沢山いるんだぞ!》
「だからこそ入るんだ。何を怖がってる悠一――――お前らしくないぞ」
《鈴乃…》
凄乃皇・弐型はここまでだ。
伊隅大尉には悪いがここで待たせる術しかないな
察したのか伊隅大尉は凄乃皇・弐型の動きを止め着陸させた
《大倉大尉、中は危険だがやると思えばやるしかない――与えられた任務は全て遂行すべきです》
伊隅大尉……その通りだ。
一衛士として与えられた任務は遂行するのみ…それは理解している
「突入の合図をカウントダウン5秒数えろ。早乙女!」
《は!カウントダウン開始します――5……4………》
緊張感が走るこの鼓動
心臓がバクバク動いている――――。
《……3……2………1……》
次の瞬間
《0!》
「全機突入!」
カウントダウンを終え合図を送り他の戦術機部隊を連れハイヴの中へと入る
その中は――――――まるで別世界であり至る所にBETAがうじゃうじゃと沢山いた
数は………約数百万
《おぉ……》
《何これ……》
《なんじゃあ!これは》
《こ、これが佐渡島ハイヴの中なのか……秘境ハンターとしての私はこれを求めていた!》
鬼頭が佐渡島ハイヴの中を直視し『秘境』と言葉が出て来た。
「鬼頭、確かにそれは言えるかもな。だがここは秘境ではない!」
《分かっています。我々はあくまでも異星起源種の殲滅のみ――――危険だと承知です》
なら良いが……彼奴は彼奴なりの解釈があるだろう。
《伊隅大尉が叩こうとしたハイヴの中……私達生きて帰れるんでしょうか…?》
『豊洲』が半泣きで私に問いをかける
「我々衛士は殲滅だけではなく生きて帰るのが任務だ。『豊洲』」
『豊洲』なら理解してる筈だ
《はい!》
「……宜しい――――総員砲撃開始!」
私は砲撃を命じて部下達が乗る機体は前へ出て突撃砲を構え120mm弾を放った
殲滅していく戦車級。だがまだまだ増え続ける
駒木が乗る94ブルGは120mm弾を一発、戦車級に放つ!
《く…残弾4――――》
次々と殲滅していくがまた増え、増えて増え続けていく
《大尉!この数、キリがありませんよ!》
「弱音を吐くな!早乙女。最後まで戦い続けるんだ!」
《了解!》
そう言いつつ、やがて後方支援していた機体が次々と脱落
「……このまま突っ込むぞ!」
そしてガイア中隊が全滅され、残ったのはムーア中隊とルウム中隊のみ
これ以上の戦闘は危険だと判断しカタリーナに回線を繋ごうとしたが
「ヴェアヴォルフ、応答せよ!ハイヴの中がBETAだらけだ。これ以上の戦闘は危険だと判断と見做す――――援護を!」
繋がらなかった
恐らく無視してるだろう――――自分だけ無傷で生きて帰るのか!?
最早、今度こそ詰んだ……そんな時だった。
《此方第666戦術機中隊、ムーア中隊援護します!》
「ッ!?」
機体はラーストチカ。左肩にあるエンブレムは――――
《666中隊だと!?》
《え…?》
《うお…》
《このエンブレムを見る限り、本物のようだ》
《…》
《佐渡島に……何故この戦域に?》
皆戸惑うだろうな。欧州戦線にいる筈の戦術機中隊が佐渡島の戦線に介入しているんだ
あり得ない……と思ったが。
数は12機か……それでも足りない
と思いきや今度はアリゲートルを編成した師団規模の戦術機部隊が突如ハイヴの中に入り攻撃を仕掛けた
《此方朝鮮人民軍第1022戦術機甲師団『ピョンヤン』だ。日本の衛士達、援護するぞ!かかれぇ!》
なんと朝鮮人民軍―――北朝鮮の戦術機部隊が私達の援護しに来たのだ
北朝鮮はベアトリクスが支配する独裁国家の一つであり本当に生きる資格がない外道だけ裁く国家としてイメージがあるが正直なところあまり良い印象ではない
だが、今は西と東は関係ない!互いに手を携える時だ!
「援護感謝する!動ける者は前へ出て駆逐しろ!そうでないものは退却せよ!」
ルウム中隊は戦線離脱。ハイヴから脱出した
そしてムーア中隊は今援護に来た第666戦術機中隊と北朝鮮の戦術機部隊と共闘!
一気に片付ける!
666の機体12機のうち1機が閃光のようなスピードで突撃砲を放った
《サイコアリゲートル……ダリル・ローレンツか!》
悠一は戸惑いを見せずそう言い放った
ダリルとはユーコンの時何度も助けてくれたり悠一とレッドフラッグで模擬戦を繰り広げた衛士だ
彼の手脚は義手義足……これがリユース・ベアトリクス・デバイスの力、いや能力。
彼が駆けるサイコアリゲートルは軽々と光線級重光線級のレーザー攻撃や要塞級の『鞭』攻撃を躱しつつ連続砲撃!
そんな時だった。ハイヴの中に国連軍の不知火1機単体でBETAと戦闘中の94ブルGに飛び掛かる!
《!》
駒木は超反応で94ブルGの跳躍ユニットを噴出して不知火の攻撃を躱した
《何だ貴様は!?》
モニターの中に現れたのは3年前の佐渡島陥落で救助されたあの時の少女が成長した姿だった
《おかしいと思った。凄乃皇の自爆を阻止されるのは想定外だったわ》
《あ、貴女は……?!》
少女は憎しみを込めた顔で駒木を睨み付ける
《分かりますよね?かつて私は貴女に救われた……恩を仇で返すのは心苦しいですが、やむを得ない》
駒木は困惑し理解が追いついていない。
誰だこの少女は?
誰なんだ!?
《もう忘れたんですか?私は寂しいですよ》
誰なんだ?!!
《私は……………城ヶ崎賢志の妹だ!!》
BETAと対峙し戦ってる最中、城ヶ崎と名乗る少女は駒木が乗る94ブルGに襲い掛かる!
《あの時の少女……まさか衛士になっただなんて?!》
《…佐渡島陥落した後、身寄りの親戚は誰一人引き取って貰えず施設に入る寸前だった。その時、私を拾ってくれたのは城ヶ崎賢志―――私の兄、お兄ちゃんが私を拾ってくれたのよ。そこからは裏社会での抗争で大変だったけどお兄ちゃんが何とか私を守ってくれたの―――羅威刃という半グレ組織の長として香月副司令と接触して私は金で衛士の道を志した。勿論訓練は厳しかったけどお兄ちゃんのお陰で乗り越えることが出来た。ある抗争でお兄ちゃんが死んだ後、国連軍に入りA-01部隊のA小隊の隊員のポジションをやっと掴めた。お兄ちゃんの仇を打つ為にどんなことでも乗り越えた……駒木咲代子!お前を殺して私も死ぬ!お互い肉になろう!》
彼女は悪魔のような笑みを浮かべる
ある抗争―――京羅戦争の事を指してるのか。
私は直接関わりはなかったが、風の噂だと駒木が羅威刃のメンバーの一人を葬ったって逸話がある。
そうか……そう言う事か。
彼女は般若顔で駒木に怒りをぶつけた
《私はただ、普通の生活を送りたかった!BETAの所為で私の母親や祖父達は喪ったけど、それ以上に守りたかった人達は沢山いたの!》
駒木はかつて京極組と手を携え羅威刃と戦っていた
帝国軍総動員してまでもだ――――だが、彼女にとっては羅威刃は家族同然のような存在だった。
リーダーであった城ヶ崎は敵味方問わず無差別で無関係な人間まで殺したテロリストと同類の男だった。
しかし駒木は気付いていた。彼女は城ヶ崎賢志の『妹』ではなく『臼杵咲良』という名前だと言う事を!
《私の家族、私の幸せ、私より先へ―――私より上!》
臼杵の不知火は攻撃を緩めず駒木に向け120mmを放った
そして駒木はそれを躱し続ける
《!》
《お兄ちゃん達だけじゃなく高原さんまで殺したの!?》
臼杵は狂気を満ちた顔で躊躇なく駒木を撃ち放ったが、弾が切れ長刀に握り構え再度襲い掛かる
《分かってるのよ――――お前が、お前が……私の『家族』や親友を殺した!》
家族を喪った事は理解できる―――しかし城ヶ崎率いる羅威刃が崩壊されたのは自業自得だ
庇いきれない………奴等がしたことを考えれば当然の結果だった
駒木は二連装突撃砲を投げ捨て、光線級のレーザー照射によって消滅
そして長刀で光線級を袈裟斬りにしつつ臼杵機を斬りかかる
《――――――城ヶ崎の妹だと……!?貴様はそんな理由の為に衛士になったのか!!?》
《佐渡島は私の故郷よ。でも香月副司令が凄乃皇を自爆してまで佐渡島を消滅されるのは仕方ない事よ!》
なんと臼杵はヘラヘラと笑い声を上げ、佐渡島は自分の故郷だけど香月女史が島を犠牲にしてまで消滅させようとした事を正当化した
その一言で駒木は怒髪天状態で臼杵の発言を全否定した
《佐渡島を犠牲してまで消滅………ふざけるな!自分の故郷だったら自分で守るのは普通の人間だろうが!》
長刀で握り構え臼杵機が握り構えてる突撃砲を真っ二つにした。
《ぐ……!》
《みんなと明日生きたいのよ!出来ればずっと生きたい―――坂崎中隊長、大倉大尉、早乙女、沙霧大尉…他のみんなを心底愛してるのよ!私は戦友の未来の為なら死ねる!》
《全く…理解できない!愛する人などいないから守るものなどないからお前はクーデターに加担して国を逆らったんでしょ!私はいつ死んでもいい!明日になんの期待もしていないから…私は…私は!》
《違う!命は何にだって一つだ!どんな経緯あろうと彼は最初から利用する気だったのよ!貴様は自分の幸せを自分で掴め!彼みたいになるな!だからその命は貴様だ!彼じゃない!》
《ッ!》
その時、臼杵の脳裏に母親の言葉を過った
咲良、お母さんは戦地へ赴くことになったの。また咲良に会えるかな…
《うううううう…》
次の瞬間、94ブルGは臼杵機に斬りかかる…筈だった。
《……!》
《ここで貴様が死んだら、戦力がさらに不足する》
《う…あ》
《クーデターに参加した罪滅ぼしとしてこの戦域で戦っている。共闘しましょう――今は争ってる場合じゃない》
臼杵はその言葉を聞いて涙を流した
そして臼杵機は長刀を握り構えたままハイヴの中にいるBETA群と立ち向かって行った。
《………これが終わったら貴女の話、詳しく聞かせて貰えませんか?》
《ええ、良いけど―――国の意向を反したただの負け犬衛士の戯言よ》
時間は刻々と進み、我々ムーア中隊は少数ながら地下まで到達することが出来た
無論、666中隊や北朝鮮の戦術機部隊もだ。
これは奇跡としか言えない
奥へ進むと……反応炉が見えた!
《あれが、BETAの――》
悠一は呆然しつつ驚愕した。
ヴェアヴォルフは結局動いてなかったか―――何しに来たんだ彼女等は。
私は反応炉をどう対処するか、自分の頭で考え込んだ。
考える最中、数多のBETA群を全て殲滅したサイコアリゲートルに乗るダリル少尉は目を見開きこう呟いた
《頭脳級……あれがハイヴの中心――――》
そう私達はBETAのエネルギー生成、捕獲した炭素系生命の生命維持活動、上位存在との通信などを行う、いわば「現場指揮官(あるいはコンピュータ兼通信機)」のようなものであり、自己のハイヴに属するBETAが収集した情報を上位存在に報告、上位存在からの命令を自己のハイヴに属するBETAに伝達する役割を担っている属種を殲滅しようとしていた
これを破壊すればハイヴとしての機能はなくなる
「悠一、94フルアーマーの残弾はあるか?」
《ああ、まだ使ってないロケットランチャーがあるが》
「それで一発撃ち込め!」
《おいおい、冗談だろ?》
「冗談ではない」
早くしないと――――
《やってみる価値はあるが…》
悠一はそう言ってサイコアリゲートルに乗ってるダリル少尉の方へ向く
《ここで争ってる場合じゃないぜ。ダリル・ローレンツ――――やるべき事は分かってる筈だ》
《俺もお前と同じ考えだ》
「……」
みんな同じなんだ
大切な人を守る為に…友人、家族―――――それぞれの想いが私達の希望の光
目の前の現実を背けてはいけない―――そうでしょ?都。
次の瞬間
臼杵機が頭脳級に特攻を試みる
「!」
《私が突っ込めば奴等の動きは止められると思います!》
「何を考えてる!やめろ!死ぬ気か!?」
私は臼杵に向けて叫んだ
臼杵機は跳躍ユニットを噴出し最大全速で頭脳級に特攻した筈だった
《え?》
悠一は臼杵機を退き迷いもなくロケットランチャーを射出
《此奴を破壊すりゃ一石二鳥ってな!》
そしてダリル機は最短距離で閃光のようなスピードを駆け突撃砲6門を一斉発射
《終わらせる!全てを!乗り越えて見せる!》
さらに私は…レールガンを構え頭脳級に目掛けて放った!
「これで終わりだ」
…反応炉―――――――頭脳級を私達含めて666中隊と北朝鮮の戦術機部隊によって完全に破壊された
2001年12月25日―――甲21号作戦…佐渡島奪還作戦は終結した
帝国本土からのBETA一掃という作戦目標は叶えられたが、それは作戦に参加した国連軍、帝国軍、佐渡島同胞団の多くの将兵の生命の代償を払ったのものだった
そして――――A-01部隊(伊隅ヴァルキリーズ)の部隊長、伊隅みちる大尉とその隊員の柏木晴子の2名は世間一般では死んだ事になり、真実を知るのは私と駒木、早乙女、悠一、佐竹、鬼頭、紅林。国連軍では香月女史だけとなった。
消滅を免れた佐渡島は東欧州社会主義同盟が占領し、佐渡島同胞団の将校の一部や派遣された日本のとび職人と建築家の主導により復興作業を始めた
ベアトリクス曰く北朝鮮の人間は一人も関わっていないとの事だが、信用していいものだろうか?
復興作業は私達の仕事ではない。建築家やとび職人に任せよう
作戦を終え、地獄の戦場へ生き延びた私達は日本本土に帰っていった
あの時、駒木が救助した臼杵も含めて……。
悠一Side
2001年12月26日
俺達は帰ってた。あの戦場を生き延び、練馬駐屯地へ――――。
帰ってきて直ぐに帝国軍制服に着替えた後、第三会議室に招集される。
そこには恭子の姿があった。
「みんな、この困難な任務を達成し無事生き延びた。私は最後まで戦ったみんなを誇りに思う」
そう言い恭子は俺と鈴乃、早乙女、駒木、紅林、鬼頭、佐竹、根岸、多恵に向け話を切り出す。
「一方で国連軍の伊隅大尉、柏木少尉の2名は世間一般では戦死扱いとなった」
オルタネイティヴ計画に関わった衛士の処遇は当然の結果だな
表向きは軍事訓練中の死亡と言う事になったらしい
……だから世間一般的には死んだことになったのか。
でも、伊隅大尉達これからどうすんだ?
実際、オルタネイティヴ計画に関わっている衛士達はその情報漏れを防ぐ為に敢えて機密情報扱いとなる。
納得いかないものではあるが、それが軍隊だ。
恭子は顔色を変えず話し続ける
「……人類は僅かではあるが勝利に近付いていることは確かよ。貴方達の奮戦に期待してる」
恭子の言葉にこの場にいる全員が「はい!!」と一言を添えつつ応える
2時間後、第三会議室を後にした俺と鈴乃は地下格納庫でモスボール保管してる今は忘れ去られた謎の戦術機2機―――――フルアーマーガンダムとアトラスガンダムを懐かしそうな笑みを浮かべて眺めていた
「フルアーマーガンダムとアトラスガンダムか……今となっては懐かしい代物の機体になっちまったな」
「ええ……あの頃はよく暴れたわね。そう言えばこの機体は別世界のモノだったわね」
「ああ……すげぇ爽快感を味わった。またいつか乗りたいと思ってるが。俺はこの世界に転生してから4年だ。今更感があるよな」
「あれが94フルアーマーと94サブレッグの原点ね」
俺は懐かしさを浸っていた
再びガンダムに乗ろうかな?と
いや、ガンダムに頼るのはやめよう
2ヶ月前は一時的に乗れないと思ったが、国連軍の連中を除いて戦術機だけで佐渡島ハイヴを攻略できたんだ
これが決め手となり俺はガンダムには乗らないと強く決意した
あの作戦でガンダムを投入したら凄乃皇・弐型は要らねぇだろ………。
だがその影響で戦術機級BETAが現れたのも事実だ。
今後は苦しい戦いを強いられるのだろう。
「そうね。この2機は永久に保管しよう」
「ああ、鈴乃」
「?」
どう言えばいいか……
俺は小さな笑みを浮かべる
「俺はお前の事愛してるからな。頼りになる中隊指揮官だと思うぜ」
と俺は言った後、鈴乃は優しい笑みを浮かべる
「ありがとう。悠一…私も悠一の事、頼りにしてるわ」
この戦いが終わったら俺と恭子、鈴乃の3人で暮らそう。
そう思った時だった
次の瞬間、早乙女が血相な顔をして俺達に近付いた
「大倉大尉、大変です!PXで半グレ衛士同士で揉め合いが!」
「何だと…」
鈴乃は俺の頬にキスした後、「先に行ってくる」と言葉を添えた
そして般若顔で早乙女と共にPXへ走り向かった
「舐めた真似を……此奴等全員懲らしめてやる!早乙女!」
「は、はい!!」
俺達の戦いはまだ終わっていない
BETAが人類の脅威である限り、戦いが終わる事なんて絶対にない。
これにて甲21号作戦……佐渡島奪還作戦は完結です。
マブラヴアニメ第二期、既に始まりましたが甲21号作戦でまさかの戦車部隊が投入
これって原作でも描写したのかな?詳しい人いればコメントください。
駒木さん、やっぱそうなるよね…第九九九懲罰大隊の衛士として佐渡島の戦線を赴くとは(-_-;)
一番気になるのがアニメオリジナルキャラの臼杵咲良
本編での描写を見ると純粋な少女として描かれてますが、この作品では本編とは異なる描写してます。(悪魔のような笑みを浮かべる、狂気を満ちた顔、ヘラヘラと笑い声を上げる等)
本編では双方どうなるんでしょうか?駒木さんは死なせないで欲しいですね。
咲良は……アニメ系YouTuberのせーやさんが言ってましたが、多分死にます。
仮に生き延びたら、まだアニメでは描かれてない横浜基地防衛戦や桜花作戦の展開は少し変わるかと(-_-;)
まだ分かりませんよ。
何で臼杵咲良が駒木と対峙し戦ったのかと言うと、これはですね。Pixivで投稿した『マブラヴオルタネイティヴ 京極の魔女』や番外編の『臼杵咲良伝説』を見ないと分からないと思います。
当作品での臼杵咲良は巨大半グレ組織のリーダーだった城ヶ崎の腹違いの妹という設定です。つまり城ヶ崎の父親が咲良の父親です
簡単に言えば『浮気相手の女性の間に生まれた少女』です。
バグ大本編でも最低な父親として強調されてますからね(-_-;)母親に暴力振るうわ子供に飯を与えないわ挙句の果てに子供を捨てる最低な父親です。
当然ですがマブラヴアニメ本編での咲良は普通の幸せな生活を暮らしていたと思いますね
城ヶ崎とは真逆ですね……(-_-;)
次回は横浜基地防衛戦なんですが…どうしようかな
これって国連軍ばかりですよね……帝国軍側での戦いではないので残念ながら割愛する可能性は高いと思ってください
大倉中隊長と早乙女少尉のほのぼのとした話書こうかな
第二期終わった後、第三期の発表とかないのかな?
この作品を…トータルイクリプスサンダーボルトや他の作品、Pixivで投稿した作品を読んで頂けた全ての方々に感謝しつつ、今回はここで筆を置かせて頂きます
ではまた