トータルイクリプスサンダーボルト   作:マブラマ

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甲21号作戦終結後の話です!



第31話 But Beautiful

あきらSide

 

ボクの名前は伊隅あきら

佐渡島での戦いに参加しこの地にいた異星起源種共を所属していた部隊の衛士と共に立ち向かい自分が窮地に陥った時に帝国斯衛軍の衛士達に助けられ無事生き延びた日本帝国軍の女性衛士だ。

佐渡島での戦いの影響で疲労困憊になりつつ今日、日本武道館で行われる『佐渡島戦没者追悼式』に参加していた

慰霊式典なんて言っても…隊長やみんなの遺体はどこにもない

それどころか佐渡島は東欧州社会主義同盟に占領された。

風の噂では国連軍は最初からG弾を使うつもりだったらしい

そうだとしたらボク達は―――G弾を安全にハイヴまで運ぶ手伝いをさせられていたんだろうか?

……――――こんな考え…隊長達を辱めるだけだって分かってるのに…。

そう考えてるうちに追悼式典は終わり、武道館から出た直後、一人の女性の姿を見かける

此方に手を振っている

顔をよく見ると…まりかちゃんがいた

「…まりかちゃん」

「……あきらが無事に帰ってきてくれてよかった」

「……」

「あきら達のおかげで…日本は救われたんだよ…ありがとう」

……ボクは何もしていない

「……ボクたちのおかげ…?」

何もしていないんだ。

「ボクは―――何もしてないよ…」

何も…できなかったんだよ…

ボクは弱気な言葉を放った

そしてまりかちゃんが明後日の方向に振り向くと見慣れた女性の姿がいた

やよいちゃんだ。

「あ…やよい姉ちゃん」

「え…」

やよいちゃんはボクに声をかける

「あきら…お帰りなさい」

やよいちゃんは涙ぐんだ表情でボクを強く抱き締める

「無事に帰ってきてくれて…本当に嬉しいわ」

「…やよいちゃん」

温かい…やよいちゃんの胸を飛び込むと穏やかな気持ちになる

ボクの頬にそっと優しく触れ心配そうな顔を浮かべる

「…お父さんとお母さんは元気?」

「ええ、とっても。年明けにみんなに会えるのを…楽しみにしているって…」

ボクも会えるの楽しみだよ。やよいちゃん

まりかちゃんは突如、複雑な表情を浮かべる

「…父さん達のコンサート。私――――見に行けないと思う…」

「え?」

「甲21号作戦の影響で防衛ラインの再編が行われるから、近々、西への配属転換があるかもしれないって…」

………。

佐渡島は東欧州社会主義同盟に占領された

それだけは事実―――でもいつ日本本土に侵攻されるかは分からない

そう警戒している筈だ

やよいちゃんは残念そうな表情を浮かべる

「そう…仕方ないわね」

「正樹も九州戦線配備だって言ってたから、年明けは多分無理だと思う…」

「…残念ね」

まりかちゃんはみちるちゃんと連絡をしたのか問いかける

「…そう言えばやよい姉ちゃん、みちる姉ちゃんに連絡ついた?」

それを聞いたやよいちゃんは悲しげな目線をボク達に向けポツリと言った。

「……みちるは…来ないわ」

「あ…そうなんだ」

「久々に4人揃えばよかったんだけど、やっぱり国連軍じゃそうそう都合つかないよね」

みちるちゃん、忙しいんだね…4人揃って沢山話したかったな

「…まりか、あきら。貴女達に…見て欲しいものがあるの」

「え?」

「…何?」

やよいちゃんが手にしてるのは一通の手紙

「あ―――――もしかしてみちる姉ちゃんからの手紙?開けていいんだよね?」

「…ええ」

「……」

ボクとまりかちゃんはその手紙の内容を確認した

そこに書いてあるのはみちるちゃんからの手紙ではなく

「―――…!?」

「………これ…って…」

国連軍からの死亡告知書……その名前には

「死亡…通知―――死亡者姓名…伊隅―――みちる……!?」

みちるちゃんの死亡告知書だった

まりかちゃんは無論、これを受け入れられるはずがなく困惑した

「…な…なに…これ……」

当然ながらボクも疑った

みちるちゃんが、死んだ?

嘘だよ…嘘に決まってる

再度確認するが…

「死亡原因――――戦術機による訓練中の爆発事故…っ…!?」

…死亡日時、12月…25日…

「跳躍ユニットの爆発が増漕に誘導して遺体は残らなかったそうよ…」

「………うそ…嘘…!」

ボクは絶望に陥れたような顔で叫んだ

「―――ウソに…ウソに決まってるよ。こんなの………ッ!!…みちるちゃんが、みちるちゃんが…事故死だなんて…!!」

悔しい表情を浮かびつつボクは信じられない……みちるちゃんが死んだと受け入れず涙を流し咆哮した

「なんで…なんで。よりによって甲21号作戦の最中なんだよ…なんでボクみたいな半端な衛士が生き残って、みちるちゃんが―――――戦場ですらない場所で、死ななきゃならないんだよぉ……ッ!!」

そして目の中に絶望の色が虚ろい泣き叫んだ

「……うっ…うあっ…あ……うわあああああぁぁあぁあぁぁぁぁあぁ―――――――――ッ!!」

もうみちるちゃんはいないんだ………信じたくないけど…信じたくないけど…でも、悲しいよ

この時ボクは知らなかった。みちるちゃんが……本当に死んだ理由を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???Side

 

「………佐渡島は東欧州社会主義同盟に占領されたが、甲21号作戦自体は成功した」

黒髪の中年男がテログループの指導者、テオドール・エーベルバッハに報告する

「―――見解が異なるわね」

銀髪の中年女が疑わしい表情で言った。

「投入戦力の14%失い、虎の子の機動要塞は東欧州社会主義同盟率いるベアトリクスの指示で鹵獲。そして何より奪還すべき帝国領の喪失…これはまさに奇跡よ。だが、これらは全て彼女が招いたもの……責任は追及されて然るべきよ」

テオドールは不敵な笑みを浮かび語り始める

「ベアトリクス……久しい名前が出てきたな。だが大衆はそう取らないな。彼女の開発した新型OSは多くの将兵の命を救い、日本帝国は東西分断の危機を脱した。リユース・ベアトリクス・デバイス…いやRBDと呼ぶべきか…長過ぎる。あれは四肢を切断しないと動かせないらしい―――何やらこれから出てくる新しき戦術機に旧式の機体でも勝てる構造だ。私は死んでも乗りたくないな」

と嬉々した笑みを浮かべるテオドールは銀髪の中年女に向け言い放つ

「……嬉しそうね?」

「そうでもないさ」

髭を生やした老年男性がポツリと言葉を放つ

「…欧州が第四計画に転べば、情勢は一変しかねんな。ふむ、戦後の絵図が崩れるか……」

「看過出来る話ではない。即時、手を打つべきね…」

「実力を行使せよ、と?」

「検討に値するわ」

テオドールは静かな怒りで語り続ける

「……あの女、ベアトリクスは以前に我々…当時の東ドイツ反体制派の作戦や計画を見破った。流石は人狼と言ったところか……。あの横浜の女狐同様、容易に狩れる獲物ではないな……」

黒髪の中年男はテオドールの言葉を聞き沈黙した

官僚風情の男がこう言い向ける

「少し泳がせてみてはどうでしょうか?00ユニットの試作生産やリィズシリーズが正式生産可能になった今、機動要塞の存在が大きい。あれは此方の戦術でも活用できる。あの女を自由にさせて、その上がりを―――」

銀髪の中年女が慌ただしい態度で反論する

「――悠長な事を。既にあの女に主導権を握られているのよ」

「彼女の知性は利用できる。―――本格的に邪魔になった時点で排除すればいいのでは?」

「あの女の影響力が強まっていくのを許せと?委員会がそれを許すと思って?」

「委員会には私が説明してもいい」

「そうやって自分を売り込むつもり?姑息だわ。貴方は昔からそう」

白衣を着てる男性が会話に割り込む

「00ユニットとリィズシリーズが完成したということは、異星起源種との対話準備ができたということだよね」

「……」

「そのような世迷言、まだ信じているのか?」

黒髪の中年男は疑わしき言葉を言い放つ

「生態不明、社会構造も不明。本当に言語を使用しているかさえも不明―――――そのような化け物と本気でコミュニケーションが取れる、と?」

官僚風情の男が反論する

白衣を着てる男性も反論し返す

「それは誰にも分からない。でも、ひとつだけいいかい?00ユニットを介して異星起源種と折衝する場合、当然ながら人類の代表はコーヅキが務めることになるよね」

香月女史が人類の代表となると断言した

「………」

「実に興味深いねぇ。――――人類に残るであろう変人と異星起源種の対話……そこで何が語られるのか……。ははっ、どんな結論が出てもおかしくはないよ。日に千人の処女を生贄に捧げることになったりね。ふふふ、これじゃまるで神話だ……」

「………」

「ああ―――ひょっとしたらコーヅキがBETAを組んで、我々を攻撃してくるかもしれないね」

「………」

銀髪の中年女は呆れ返った。

白衣を着てる男性は言い続ける

「まさか――とは言えないはずだよ。我々の中で誰がコーヅキを理解している?コーヅキは不可能を可能にしてきた。異星起源種との対話も成功させるかもしれない」

「…やはり消すしかないでしょう。―――仕込みの時間はどれだけ必要なの」

それらの会話を聞いたテオドールは冷静に話しかける

「証拠が残ってもいいなら3日。残さないなら3ヶ月は―――」

黒髪の中年男も焦りつつ言葉を放つ

「――いや、時間は必要ない。私が予備を仕込んである」

髭を生やした老年男性はこう言った

「…ほう。それは聞いてなかったな。我々に断りなしに仕掛けたのか?」

「あくまでも予備だ。使うつもりはなかった。だが、これ以上、あの女をのさばらせる訳にはいかない」

テオドールは冷静に言葉を放った

「……指向性タンパクか?」

「そうだ。あれは使い勝手がいい。誰が背後にいるか洗えんよ」

「……」

リィズシリーズとは文字通りテオドールの義妹、リィズ・ホーエンシュタインの遺伝子を利用したESP発現体

所謂クローン。戦闘マシーンでもある

どうやって彼女の遺伝子を残したのか不明だが一説によるとシュタージの作戦参謀だったハインツ・アクスマンにより彼女の遺伝子を入手したという

無論、こんなバカげた話は信じられないというのもあるが、真意は不明だ

彼は、テオドール・エーベルバッハという男はリィズの死を未だに引き摺っており過去の自分を追いかけている

リィズは当時どこにでもいる演劇が大好きな舞台女優志望の少女だった。しかしある日、両親と義兄であるテオドールと共に西側へ亡命しようとしたが失敗

その結果、両親は拷問死。テオドールは軍の道へ歩み、リィズはアクスマンによって滅茶苦茶にされ尊厳まで踏み躙り、処女を奪われてしまった。

そしてシュタージに強制的に入省する道しかなかった

最終的にリィズはシュタージの犬として数々の修羅場を乗り越え666中隊の長だったアイリスディーナやその他諸々の軍人達が反体制派と関わってる可能性があると見て彼女率いる中隊に潜入

最初はテオドール除きシュタージの犬ではないかと疑われたが徐々に警戒を緩められ見事に拘束

ここまではよかった…しかしテオドールが選んだのはアイリスディーナであり彼女が長年思い浮かべていた『義兄と一緒に幸せな生活を築きたい』というのは実現はできず、遂に……リィズは当時ベアトリクスの副官だった二コラの手で射殺した

彼女はアクスマンに籠絡された時点で手遅れだった。生きる価値がない外道に陥り無関係な人間を殺めてしまった事は事実であり彼女の事をどんなに擁護されようがされまいが本当に生きる価値がない外道と変わりはなかったのだ

リィズの死によってテオドールはベアトリクスに敗北し、その後キリスト教恭順派などのテロ組織を纏めたテログループのリーダーとして君臨した

銀髪の中年女性はGOサインを出した

「同意するわ。やってちょうだい」

「……賛成だ」

「仕方あるまい」

そしてテオドールも許諾

「……好きにしろ」

白衣を着てる男性もにやけた笑みでゆっくりと言葉を放つ

「彼女とBETAの交渉を見てみたいものだがね。でも君達の計画に反対しないよ」

「それでは―――香月夕呼、ベアトリクス・ブレーメを排除する」

テオドールは不敵な笑みでかつて可愛がった義妹の名前を口にした

「今度こそは我々が勝利を掴む時だ。私はまた君と出会えて嬉しいよ―――――――リィズ」

彼の前に現れたのはリィズの顔、姿見が瓜二つの少女だった

感情は……嬉々した笑みを浮かんでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠一Side

 

2001年12月28日

日本帝国軍練馬駐屯地

 

甲21号作戦…佐渡島奪還作戦終結してから3日が経ち、俺達は練馬駐屯地の第三会議室で国連軍A-01部隊の長だった伊隅みちる大尉、柏木晴子少尉の2名の処遇やテログループの対策を考えていた

臼杵咲良って少女は国連軍の横浜基地に戻り引き続きA-01部隊の衛士として活動している

後に駒木から聞いたが、臼杵は佐渡島でのBETA侵攻で唯一生存した民間人だった

俺が臼杵と直接であったのは一度きりだ

その後、音沙汰なしだ―――――――にしても、あの女が唯一生き残っただなんてこれは特異体質とか何かの能力じゃねえのか?

俺はそんな事はありえないとバッサリ切り捨ててるがな。

――――――臼杵が生き延びるか生き延びないかは俺は知ったこっちゃねえ

ただ、一つ言えることはこの世界は『ベアトリクスが革命に勝利した世界線』

俺とダリルが知る『東ドイツ反体制派が革命に勝利した世界線』じゃねえ

異星起源種…BETAは今も健在だ

未だに世界中の軍隊が必死に戦っている………。

みんな、戦っているんだ。必死に――――。

そう深く考えながら居眠りしようとしたら、俺は鈴乃の怒声を浴びる

「豊臣少尉!聞いてるのか?」

「!」

「……疲れてるのは貴様だけじゃない。みんな疲れてるんだ。厳しいこと言うが、この調子ではテログループの壊滅という目標は達成できないかもしれないな」

分かってるけどよ。どうもこうも疲れが取れないんだ

「申し訳ありません大尉殿」

俺は鈴乃に謝罪する

「うむ、貴様は確かに強いし戦術機の腕は抜群だ。ただテログループの殲滅とBETA殲滅とは訳が違う」

鈴乃はきりっとした表情で俺に言った。

その目は―――闘志を燃やしている

「では一つ聞くぞ。テログループのリーダーであるテオドールが真正面から我々に立ち向かうと思うか?」

その問いをかけた鈴乃は俺に答えを求めている

俺が答えた言葉は…

「―――思いませんね」

「何故だ?」

「彼の戦術は普通の将校が考える作戦と違うからです。『味方を増やせないなら敵を減らす』という戦法で仕向けてくるかと」

俺の答えを聞いた鈴乃は真顔で言った。

「成る程…確かにあり得るな。彼の戦術の方法なら我々を潰す事は容易いだろう。正解というべきか」

どうやら鈴乃が求めた答えだったらしい

しかし、俺の答えを聞いた伊隅大尉が反論する

「豊臣、少し反論させて構わないか?」

「ん?あぁ、構いませんよ」

「では遠慮なく反論させて貰う―――――彼の事はともかく我々衛士が成すべきことはあくまでもBETAを殲滅するだけだ。感情論でテログループを潰そうとする直前に返り討ちに遭うかもしれんぞ」

「テログループの殲滅は後回しにして先にBETAをこの世から殲滅する事を優先すべきでは?と私は思うが」

伊隅大尉の言葉を聞いた鈴乃はこう言い返した

「伊隅大尉、確かに貴女の言う通りかもしれません。異星起源種はこの世から消滅すべき――――ですが、悠長に考えて行動したら連中は好き勝手暴れるだけです。これ以上奴等の好きにはさせません!」

「彼が何者かそれを分かってまでやると言うのか?大倉大尉」

伊隅大尉は強張った顔で言葉を放つ

早乙女が割り込み言葉を放った

「私もです!テオドール・エーベルバッハ率いるテログループはこの世から消え去るべきです!」

それに続いて駒木も同じ事を言った

「早乙女少尉の言う通り、これ以上放っておいたらBETAを消滅される前に我々が死ぬだけです!」

「駒木……貴様」

「伊隅大尉、貴女の部下の一人を殺めた事は謝罪します。許してくれとは言いません…ですが衛士としての誇りは捨ててはおらず死んでいった同胞達の想いを引き継いで戦う事が筋だと思います!これは私にとって…贖罪なんです」

紅林も鬼頭も佐竹も同様の言葉を放つ

「俺もです!テオドール・エーベルバッハのクソ野郎を野放しする訳にはいきません!例え親しかった仲間が許してもお天道様が許す筈がありません!」

「俺もだ!伊隅大尉、テオドール・エーベルバッハを野放しにしろとそう言いたいのですか?」

「お、俺もです!彼がどんな境遇あろうとこんな事許す訳がない!」

この光景に伊隅大尉は驚愕した

「………」

「伊隅大尉…」

柏木は悲しげな顔を浮かぶ

「………私は死人だ。この世からいない存在となってしまったからな。私がもし生存しても豊臣、貴様はそれでもテオドール・エーベルバッハと戦うと選択するだろうな」

物分かりが良くて助かるぜ。伊隅大尉

みんな、テオドールの事は敵と認識している

ユーコンでテロ起こした張本人だ。こんな事許されるはずがねえ

伊隅大尉はGOサインを出した

「分かった。テログループの件は了承した――――私の処遇はどうなるんだ?大倉大尉」

伊隅大尉は鈴乃に自分の処遇はどうなるのか?を問いだす

「伊隅大尉達の処遇は…上層部から下された命令は特殊部隊の配属だ」

「特殊部隊?」

伊隅大尉は特殊部隊に属する衛士になったと鈴乃から告げられる

自分は中隊指揮官の指揮権を剥奪されるのかと考えていたが鈴乃から言われたのは予想外の命令文だった

「伊隅大尉、貴女がその特殊部隊の長に任命されたんだ」

「私が?何故…」

「駒木を倒した元国連軍の優秀な衛士だからだ。それだけだ」

鈴乃が言葉を締めた後、柏木が挙手する

「何だ?」

「私はどうなるのですか?」

「ああ、貴様も伊隅大尉と同じ部隊に配属されるだろう――――また一緒に戦えて嬉しいだろ?」

鈴乃は誇らしげな笑みを浮かんだ

しかし世間一般的に死んだ衛士が表に出たら白銀や生き残った衛士達はビックリする筈だ

当然、本名のまま活動する事は許される筈もなく鈴乃は伊隅大尉達に偽名を与えた

これも上層部からの命令の一つだ

「伊隅大尉、柏木少尉。死人となった御二方に新たな名前を与える」

「新たな名前?」

鈴乃は凄みある笑みを浮かび高らかにこう言い放った

「今日から貴女は『大地久美子』だ」

「は?」

「それが貴女の新しい名前です」

それを聞いた伊隅大尉は頭を悩ませるが…そこは冷静に対処した

「死人の衛士を活躍する方法は私達に偽名を名乗れと……成る程、同胞団の上層部も常識を逸脱した考えがお持ちのようだ。了解したよ」

それに対し柏木に与えられた偽名は

「今日から貴様は『麻里アンヌ』と名乗れ」

「マリアンヌ……ハイカラな名前ですね」

「気に入らないのか?」

そして柏木は了承の言葉を一言を添えた

「了解でーす」

こうして伊隅みちる、柏木晴子という国連軍の衛士は世間一般的に死んだ事になった。

そして俺達佐渡島同胞団の仲間入りになった。

会議は一段落した直後、多恵が遅れて会議室に入ってきた

「遅れて申し訳ありません!大倉大尉…ってあれ?」

「お前…築地か?」

「伊隅大尉もいたんですね」

「そうか…お前も死人の仲間入りになったんだな―――再会出来て嬉しいぞ」

感動の再会はいいが、鈴乃が少し怒ってるぞ

ヤバい…とばっちりが来る。

「はぁ…『豊洲』、貴様は衛士としての自覚はあるのか?」

「も、申し訳ありません!(ひぃ~、怖い…けど頑張らなきゃいけない!)」

「え?『豊洲』って…築地、お前の偽名なのか?!」

伊隅大尉は多恵の登場により困惑しつつ言葉を放つ

「はい、『豊洲多恵子』という名前で活動してます」

「下の名前は本名と全然変わらないが」

「ただ”子”って漢字を付け足しただけですよね。『大地』大尉」

伊隅大尉と柏木もそれをツッコむ

「うぅ…あんまりですぅ。でも気に入った名前なので何言われようと構いません」

おいおい、言ってくれるじゃねえか。

多恵も少しずつ強くなっている

このまま鍛えていれば俺よりもっと強くなるかもしれねえな

「会議はこれで終了だな。総員解…」

「待ってくれ大倉大尉」

会議を完全に終えようとした時、伊隅大尉が少し疑わしい表情を浮かび、鈴乃に問いかけた

「佐渡島はどうなったのですか?凄乃皇は?」

これを聞いた鈴乃は答えを出した

「佐渡島は東欧州社会主義同盟に占領され凄乃皇も鹵獲された」

「!(副司令が鹵獲させたくないと言ったのはその為だったのか!?)」

「香月女史がやろうとしたことは佐渡島住民にとっては外道な行いだ。幾ら優秀な科学者であろうと佐渡島の消滅は認められない」

「極道組織の天羽組が介入したのは佐渡島に住んでた人達の期待を裏切られたくないと香月副司令を止めたと。そう言いたいのですか」

「残念ながらそういう事になります。佐渡島奪還は佐渡島住民にとって…いやそこにいた衛士達にとっての悲願だったのです―――――――『大地』大尉」

あれは苦渋の決断だった

恭子がいなかったら佐渡島は消滅していた

佐渡島同胞団は既に解散していた筈だ

「BETAは?佐渡島ハイヴの地下から地中に潜り本土に迫って来る筈…」

「ニュースは見てなかったのか?『日本からBETAの脅威は去った』と。でもこの報道見ただけでは安堵出来る筈がない。もし本土にBETAが迫ったら先手を打つ…」

「………」

伊隅大尉は黙り込んだ

これには俺から言う言葉も何もなかった

鈴乃は伊隅大尉に一枚の書類と30枚の写真を見せる

「何だこれは?」

「佐渡島復興作業の様子と残存BETAを殲滅してる東欧州社会主義同盟の機体の写真です」

この写真を見て、伊隅大尉は絶句した

「ふむ、10%復興してるな………信じられない。柏…いや『麻里』少尉、これを見てどう思うんだ?」

そう言って伊隅大尉は柏木に写真を見せる

「えっと……正直絶句としか言えませんね」

と困惑しつつ作り笑顔で言葉を放った

そりゃそうだろうな……香月女史がそれをよしとしなかったんだから

というかまだ偽名に慣れてないのか

一日だけじゃ多恵くらいしかいない

彼奴は呑み込みが早い

「大倉大尉、これを私達に見せてどうしろとでも?佐渡島の復興が異常に早過ぎる…何か魔法でも使ってるのか?」

「伊…『大地』大尉、何か絡繰りがある筈ですよ」

「うーむ…」

伊隅大尉は写真30枚の中5枚だけ異変に気付いた

「大倉大尉、この銅像と壁画は貴様が知ってる衛士か?」

「え?」

鈴乃も写真を覗き見る

「嘘……み、や……こ……」

そう、この銅像と壁画に描かれてるのは3年前佐渡島の地で最後まで戦った坂崎都そのものだった。

彼女はベアトリクスによって英雄を仕立て上げられた

この地で最後まで戦い抜いた衛士だと。

「その様子だと知ってるみたいだな」

「……」

鈴乃は突然、涙を流した

「………やっと貴女の遺志を最後まで全うする事出来たわ。これで安心してゆっくり休める………そうでしょ?都」

鈴乃が涙を流してる姿を見た伊隅大尉は察していた

そして、鈴乃は……泣き始めた

「貴女が必死に、最後まで戦い抜いた…佐渡島は貴方に救われたのよ。でも、都がいなくなって、寂しい…もっと沢山話したかったしずっと一緒にいたかった。いっぱいいっぱい楽しいことをして貴女が笑ってる姿をもっと見たかった……」

鈴乃は悲しみを隠し切れなかった

伊隅大尉は悲しげな目で泣いてる鈴乃を見た

「……」

しかし、何も言えなかった。どう返したらいいか分からないのだ

しかし一人だけ違った。多恵がハンカチを取り出し鈴乃に渡したのだ

鈴乃はそれを受け取り涙を拭う

「……すまない。取り乱してしまったようだ」

「どう言ったらいいか正直私には分からない。ただこれだけは言える。坂崎都大尉は佐渡島の地で最後まで戦い抜いた佐渡島の英雄だ」

なんと伊隅大尉は都を『佐渡島の英雄』と評価した

これには驚いた俺達は伊隅大尉の事は『デキる女』と評価していった。

伊隅大尉が俺達の仲間にいてくれると頼もしいぜ

俺は期待感を高め、その後の事を考えつつ泣き止んだ鈴乃を見つめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白銀Side

 

伊隅大尉の死後、俺達が所属しているA-01部隊の長は速瀬中尉が引き継ぐことになった

速瀬中尉曰く『伊隅大尉いなくとも私達は伊隅ヴァルキリーズよ』と

純夏は今のところ安定している―――何もなかったようだ

佐渡島は東欧州社会主義同盟に占領されて凄乃皇も鹵獲された

凄乃皇を鹵獲しても東欧州の連中が扱えるわけがない。

00ユニットを運用するための機動要塞だからだ

……普通はそう思うが、夕呼先生も俺と同じことを思っていた

”あれを鹵獲しても誰も扱えるわけがないわ”

確かに言われてみればそうだ

そんな俺と夕呼先生は、極道組織の天羽組の事務所に訪れた

「夕呼先生、ここって」

「天羽組の事務所よ。立派な門してるわね」

まさか俺がヤクザの事務所に行くなんて思わなかった……怖いけど、夕呼先生なら何とかしてくれる

「アンタとあたしがここに呼び出されたのは佐渡島住民に対する謝罪よ」

「え?!俺は関係ない筈じゃ…」

「関係大アリよ。佐渡島を消滅するなと小峠って男が喚いてたくらいだから…」

「そんな理由で…」

複雑な表情を浮かぶ夕呼先生は俺と一緒に天羽組事務所の門に向かう

そこにいたのは組の下っ端構成員2人だ

「国連太平洋方面第11軍横浜基地副司令の香月夕呼よ。天羽組長と話がしたい。アポは取ってあるわ」

しかし下っ端構成員は怒声を上げる

「ああん!お前、佐渡島を消そうとした女か!」

「死にに来たんかコラァ!舐めてんのか!」

当然だけど中へ入ることなど出来る筈もない

そこへ現れたのは小峠だった

「うお…小峠の兄貴」

一切の会話もせず夕呼先生に接近した。

「親っさんから話は聞いている。中に入れ」

「ありがとう。気が利くわね」

そして俺と夕呼先生は事務所の門を潜り抜け中に入る

小峠の案内で組長室に辿り着いた

「中に親っさんがいる。アポは取ってあんだろ――とっとと入れ」

「白銀、ここから先はアンタは口出し禁止よ」

「あ、はい!(不安だな…)」

そして組長室へ入り出迎えたのは天羽組の組長だ

「ようこそ。御足労を掛けてすまない。どうぞソファーに座ってください」

「感謝するわ」

天羽組長の指示でソファーに座る

「話によっちゃあ生きて帰れねぇぜアンタ」

「お時間を頂き感謝します」

天羽組長がソファーに座ると夕呼先生に鋭い目線を向ける

「ああ、手始めにアンタは――――佐渡島を本当に取り戻そうとする気はあったのか?それを確かめたい」

「甲21号作戦の事を指してるのですか?」

夕呼先生は冷静な態度を取る

「ああ、その通りだ」

「それで”佐渡島を本当に取り戻そうとする気はあったのか?”とはどういう意味ですか」

天羽組長は厳格な表情を浮かべる

「あそこはな、アンタのとこいる臼杵っていう少女の故郷でな。3年前の佐渡島での戦いで死んだ坂崎都大尉の思い出の地だ。アンタがやってる実験は何なのかは詮索しねぇ―――だがな、佐渡島はウチのシマだ。シマ荒らしをする奴は仁義と任侠がない恥晒しの外道だ」

「実験?凄乃皇・弐型の機動実験の事かしら?あれは機密事項の情報の筈です。何故貴方方がそれを知って――」

「東欧州社会主義同盟のベアトリクス・ブレーメ総帥が教えてくれたのだよ。俺達天羽組にこれを知ったのは裏の情報屋だろう。アンタがどんなに上手に隠蔽しても俺達の目は誤魔化せない」

それで佐渡島は消滅を免れたのか……。

「……佐渡島に住んでた人達の期待を裏切ろうとしてしまい申し訳ありません(とりあえずこれでやり過ごせば)」

夕呼先生の謝罪の言葉に返って来たのは納得がいかないという天羽組長の顔だった。

「アンタ、何を言ってるんだ…佐渡島に住んでた人達全員謝罪するまで俺達は許すことはねぇ」

「お怒りは重々承知しております。ただ聞いて頂きたいのは、これは全人類を掛けた戦争なんです。凄乃皇・弐型を佐渡島ごと消滅させるのはBETAが日本本土に再侵攻を防ぐ為です!帝国軍は出来る限りの約束しました」

「ダメだねえ―――まずアンタは数多な衛士を犠牲にして佐渡島をアンタの実験道具として生贄にしようと目論んだ。腐ったもんだな国連軍も―――司令官は優秀…副司令はマッドサイエンティストか」

天羽組長の言葉を耳にした夕呼先生はキレる寸前だった

彼らの言ってることは理解出来ないまでもないけど、これは人類に対する戦争なんだ

でも天羽組長含めて小峠や坂崎都大尉の思い出を吹き飛ばしたら俺達は……?

「……そうね、あたしはマッドサイエンティストかもね」

開き直ったぞ!?どういうつもりなんですか。夕呼先生

開き直った夕呼先生は拳銃を取り出し蟀谷に銃口を当てる

それを見た髭が生えてる金髪モヒカンの男が狼狽の声を上げる

「そんなもん隠しとったんか!クソアマァアア!」

「野田、待てえ!大丈夫だ!」

すると俺達の目の前で

「あたしを殺すなら殺してみなさい。そうなれば日本はまたBETAに荒らされるオチよ――――あたしはこの命をかえても地球にいる人類を守ってやりたい。彼奴は…伊隅大尉達はあたしの命令を忠実に従っただけよ。ただそれだけの事なのよ…そこにいる白銀武もその一人よ」

その時、夕呼先生は拳銃のトリガーを引いた!……筈だった。

そして

「!」

「親っさん、止めてよかった……ですよね?」

小峠がギリギリのところで止めた。

ビックリした…全く夕呼先生は冷や冷やさせるんだから…。

すると険しかった天羽組長の口角が少し上がった。

「ああ、小峠。よく止めてくれた。香月副司令…アンタの覚悟はよくわかった。保身や命の惜しさじゃねえな―――人類の未来の為か?」

「はい」

「アンタの言う通り、BETAを全て葬らなければならない。だがな、佐渡島以前に国そのものを消滅させた方が最も罪が重いんだよ……ましてや我欲に塗れた生贄、報復は正義だ」

「全くその通りだと思ってます」

そうか、夕呼先生は自らの意思で戦争犯罪を犯してまで最後までやり遂げようとしたのか

非難轟々される覚悟はあったと思う

それは俺にはできない勇気ある行動

「一方で白銀がアンタの指示に従った事も理解できる。佐渡島が消滅すれば永遠に終わらない戦争になるだろう…そしてアンタ、自分がここで死ねばが地球にいる人類を救う人々達をアンタの遺志を継ぐ事になると思ったな?」

「はい、お見通しで…」

腹の底まで読んでる。

天羽組長は夕呼先生を試してたのか?

「その我欲なき行動を評価する。手打ちの条件を出そう――――まずは詫び料、3億とXM3搭載の戦術機を世界各国の軍隊に配備させる事だ」

「うぅ!さんお…」

天羽組長はなんと夕呼先生に詫び料3億の支払いと俺が開発したOSのXM3を搭載した戦術機を世界各国の軍隊を配備させる事と言った。

XM3を世界各国の軍隊にある戦術機を搭載すれば、BETA大戦は早期終結出来る

「そして佐渡島に関して国連軍関係者は永久に立ち入りを禁止。ただ、横浜基地には用があれば…ウチのモンが出入りしますがね」

「わ、わかったわ……前向きに検討しておくわ」

完全な不平等条約だった…しかし夕呼先生は迷うことなく条件を呑んだ。

「アンタの覚悟と信念は確かに受け取った……御苦労だった…」

「光栄です……では失礼します」

そして夕呼先生と俺は天羽組を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、横浜基地に戻った俺と夕呼先生は冥夜や委員長達等をブリーフィングルームに集めた

「甲21号作戦は我々の勝利よ。でも気を抜かないで頂戴。ここからが本番よ」

皆、静寂

速瀬中尉と宗像中尉は強張った表情を浮かんでいる

臼杵もそうだ。他の者も

「凄乃皇は東欧州社会主義同盟の連中に鹵獲されちゃったけど、支障はないわ。もう一機、事前に用意してあるし、それに奪還するつもりは毛頭ないわ。下された任務を集中しなさい」

単身、天羽組へ乗り込んだ夕呼先生の方針に異を唱える者はいなかった。

そして、夕呼先生は最後にこう言ったという

「A-01部隊は次の作戦に移行する」

「!」

「…いよいよね」

「甲20号目標……朝鮮半島南部に位置する韓国の鉄原ハイヴよ!地球にいる人類の全存在をかけて徹底的に叩き潰す!」

ここを潰せば、オリジナルハイヴを攻略する道は近くなる

本気でやらなきゃダメだ

俺が……人類を、守って見せる!

そして純夏も、守ってやる――――俺はそう決意した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベアトリクスSide

 

我が東欧州社会主義同盟は甲21号作戦終結後に佐渡島を占領

これにより佐渡島東欧州社会主義政府が設立

無論、行政主席は日本人―――――でも私の傀儡よ。

日本と協力し復興作業に取り掛かるが、まだ10%しか復興出来ていない

完全復興するまでの期間は不透明……佐渡島ハイヴ跡地に新佐渡基地を建設

これもまだ完成に至ってない

市街地は優秀な建築家や工事業者のおかげなのか少しずつ復興してる。

私は『視察』と称して黒色のウェットスーツを着用しハンググライダーで国中平野上空を飛行していた

所謂スカイスポーツだ。

これが、佐渡島の……BETAの死骸を綺麗さっぱり片付ければいい街並みに変貌するわね

そんな時だった―――随伴してたかつて私が使用した紅いアリゲートルに乗ってる二コラが注意喚起される

《ブレーメ総帥、単独での飛行は危険です。ただでさえ日本政府から許可を得るの苦労したのですよ》

「心配は無用よ。国の重要施設や周辺は飛行してないから大丈夫よ」

もう二コラったら心配してるのは分かるけど、そんな間抜けな事はしないわよ?

《『カール・マルクス』にお戻りを》

「嫌よ。もっと楽しませて頂戴」

《………》

辺りを見渡す限り、緑一つも残っていない

BETAの影響だからか――――これは自然に木や草を生える事は永遠にないわね

生えられないなら……人工で植えつくしかない――――か。

「何もないわね。緑も木も自然も何もかも全部なくなってる」

私の言葉を聞いた二コラは複雑な表情を浮かぶ

荒らされた山や大地を眺めるのを楽しんでる途中、次の瞬間…警報音が鳴り響きファルカから通信が来る

《大隊長!大佐渡山地からBETA反応が!》

《何!?馬鹿な!あり得ない!まだBETAが残存してるというのか!》

騒がしいわね………何やらBETAがどうのこうの言ってるけど。

《数は?》

《少なくとも大隊規模かと…》

私は2人の無線通信での会話を介入する

「何があった?」

《ブレーメ総帥、佐渡島に残存してるBETAが…どうすればいいのでしょうか?》

あら、まだ残ってたのね?

佐渡島復興の邪魔される訳にはいかないので私は新佐渡基地に戻って早急に対応する事にした

「(ビッグガンは固定荷電粒子砲……持ち出しは不可能。北の軍隊は既に撤退済み―――――ならばこれを賭けるしか…)第666戦術機中隊を出撃させろ。私は新佐渡基地に向かう」

《了解です!全てはブレーメ総帥の為に》

そう言ってファルカは通信を切った

私は不敵な笑みを浮かび新佐渡基地に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、新佐渡基地の仮設指揮所でヴェアヴォルフ大隊の衛士達を集い、佐渡島に蔓延る残存BETAの対処する口実で作戦会議を開いた

「佐渡島を我が軍門に下ったとはいえ、油断禁物よ。恐らくハイヴ跡地の地下の奥深くで潜んでた可能性は高い。ファルカ」

「は―――。此方に」

ファルカは書類と1本のビデオテープを私に渡す

書類を見通す私はロザリンデにビデオテープを渡し、ビデオテープレコーダーに入れ、再生させた

そこに映ってたのは紛れもなく異星起源種―――――BETAの姿だった。

種類は…要塞級はいないわね。戦車級と兵士級だけ。

少な過ぎる――――本当に大隊規模の数なの?

「ファルカ」

「はい!」

「本当に大隊規模の数のBETAがいたのか?何か引っかかるわ」

「と申しますと…」

ハイヴは確かに砕けた―――それ故に反応炉はもう殲滅した筈……。

仮設指揮所の外に鹵獲した凄乃皇があり、今技術スタッフがそれを分析している

まさか、BETAの目的は凄乃皇?

あの自爆装置はG弾20発分の威力がある。

安易に使えない………解体するしかないわね

「二コラ、こっちに来なさい」

「は!」

私の言葉通り、二コラは私の傍に近寄る

難しい表情を浮かんだ私は苦渋の選択を迫っていた

どうするか…?アレをアイルランドに持ち帰れば、戦争を終結させる鍵となる。

―――――数分が経ち、漸く決断した。

「二コラ、鹵獲した機動要塞―――――凄乃皇はこの場で解体する」

「え?!折角手に入れた貴重な機体を解体するのですか!?」

「あんなデカブツはBETAの標的となりやすい。爆破解体するにはこの佐渡島を放棄しなければならない―――――何の為に占領したのか分からないわ」

私が悩み始めた時…

「第666戦術機中隊、大佐渡山地に到着。作戦を実行してください」

CPの一人が第666戦術機中隊が大佐渡山地に到着したと告げる

早く終わらせて欲しいわね……。

「急がせろ。復興に支障がきたす」

「は!第666戦術機中隊、BETAの数を全て殲滅してください」

戦車級と兵士級だけだから楽勝………。

「念の為にサイコアリゲートルを出撃させろ」

「既に出撃済みです」

「あ、そうだったわね(666の機体として登録してあるんだったわ)」

そう安堵した私は早急に終わると確信した

「この調子なら早く終われるわね。あとは頼む」

私は二コラと共に仮設指揮所から出て行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良平Side

 

俺はベアトリクスの命令で第666中隊と共に佐渡島に蔓延る残存BETAを討伐しに行った

だが、想定済みだ

頭脳級を倒したとはいえ、戦車級や兵士級などの小型種はまだ残ってる可能性はある

四肢切断しないと動かせないこのサイコアリゲートルならどんなBETAだって倒せることが出来る

俺はそれを巧みに操縦する

《ダリル君、あと少しよ。頑張ってね》

「了解!これで最後かッ!」

突撃砲6門一斉発射しつつ全て撃破

まだ残存のBETAはいないか辺りを確認しつつ、いないと確認したらこれで任務完了だ

全て殲滅した―――のか。

《みんなお疲れ様。よく頑張ったわね――――ダリル君》

「いえ、自分は任務を遂行しただけです…」

《総員撤収。新佐渡基地に帰投するわよ》

任務を完了したとファムの判断で俺達が駐留してる新佐渡基地に帰投した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰投後、仮設格納庫に衛士強化装備に身を包んだファムがラーストチカの管制ユニットから降り、姿を現した

そしてサイコアリゲートルの管制ユニットの中にいる俺を抱える

「アネットちゃんも手伝って」

「分かった」

アネットも俺を抱える

「いつもすまないな」

「いいのよ。困った時は助け合うのが筋よね?アネットちゃん」

とファムはクスッと笑みを浮かべる

「そうだね。うん――――あたし、ファム姉がいたからここまで来れたと思う。だって、あたしがファム姉みたいに」

アネットが言おうとした時、ファムはそれを止めた

「そんな事ないわよ。アネットちゃん――――貴女はよく頑張ってる」

ファムはアネットを褒めた

「そうかな……」

アネットは視線をシルヴィアの方に向ける

「何かしら?」

「え?いや、うん…」

「冷やかし?」

「違うわよ」

アネットはシルヴィアを茶化す

アネットの行動をシルヴィアは少し不機嫌な態度を取る

「あ、そう」

仲が良い事は良い事だ。

俺は少し笑みを浮かびつつ、ファムとアネット、シルヴィアの3人で食堂に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《佐渡島東欧州社会主義政府は日本政府に佐渡島復興支援金を要請し、日本国の総理大臣は出来る限りの対応はしていくとの事です》

食堂内に流れるラジオ放送

俺は佐渡島が無事なら住んでた人達が無事帰れたらそれでいいと思う

「どうしたの?早く食わないと昼食時間終わってしまうわよ」

「ん?ああ、少し考え事してただけだよ」

佐渡島本土復帰するのはそう長くはないだろう。

あそこは元々日本帝国の領土だ

香月女史を擁護した日本政府は東欧州社会主義同盟に逆鱗を触れ、佐渡島を占領されるきっかけとなったんだ

G弾を使わせたくない香月女史はG弾20発分の自爆装置を起動させ消滅させようと試みた

この時点で矛盾してる……彼女が正しい選択したかしてないのか俺には分からない

そんな事はさて置き、俺は何も考えずテーブルに乗ってる缶詰を開ける

「ッ!―――待って!それを開けるのは」

ファムは缶詰を開けるのを止めようとするが遅かった

「う!」

缶詰の中身の臭いが食堂内に充満しその場にいる衛士達は悶絶する

「うぅ!くさ!」

「ごぉええええええ!」

「な、何だこの臭いは!?」

俺とファムは思わず息を止めた

「うぅ!――――ダリル君…ごめん…」

俺は缶詰のパッケージを確認する

そこに書いてあるのは

「シュールストレミング!?(道理で臭かった訳だ…)」

ファムは限界を達し、リバースした

「ごめんなさ……ぶぅえええええええ!!」

リバースした後、そのまま気絶する

そんな事は露知らず、遅れてきたアネットとシルヴィアが食堂に入る

「ごめんごめん。着替えるのが時間かかって…う!ちょ、ちょっと何なの?この臭い」

「う!……ダリル、アンタ缶詰の中身見てなかったの?」

アネットもシュールストレミングの強烈な臭いで悶絶する

シルヴィアは自分の鼻を摘み臭いを入らないようにした

「見てなかったけど…」

「馬鹿!それ世界一臭い缶詰なのよ!!食料補給が手違いあった可能性高いわ」

痛覚に訴えてくるほどの臭い――――――これは……

一度開けた缶詰を捨てるなんて勿体無い。

息を止めて襲い掛かる臭気を耐えながらシュールストレミングを食する

「!」

口の中から臭いが襲い掛かる

「く、臭い!!」

臭いを耐えながら缶詰の中身がなくなるまで食い尽くす

「くさ!ぐ…!」

拙い…リバースしそうだ

しかし、ここで食べきれず残すなんてできない

俺はシュールストレミングを全部口の中に放り込む

「ぐざ!うぅ!」

口の中に入れる途端、強烈な臭いが……!

味わって食べてから数分後、俺は食べきった

「はぁ…はぁ…食べ切ったぞ…!」

「良かったわね…これは臭いがキツくて掃除が大変そうだわ」

BETA大戦真っただ中、物資が欠乏する中でやむを得ないところだ

でも何故シュールストレミングがあったんだ?

俺は急いで食堂から立ち去ろうとしたが、カタリーナが食堂に入ってきた。

「やほー♪腹が減っては戦が出来ぬってね~♪―――――う!この臭いは…!」

察したかカタリーナはシュールストレミングの空き缶を手にする

「シュールストレミング!?何でここにあるのよ!」

「アンタ達の手違いだったんじゃないかしら?」

シルヴィアは指摘する

カタリーナはシルヴィアに疑わしい視線を向ける

「何だって?私はそんな事しないわよ」

辺りを見渡すとシュールストレミングの臭いで気絶してる衛士達が倒れていた

「ぐぬぬ…(補給ルートに手違いがあったと言うの!?いやそんな事はない)」

焦りだしたカタリーナは食料保管庫へ向かおうとするがシルヴィアに止められる

「待ちなさい」

「何よ。こんな臭いところいられないわ」

「信用できないのよ。私も行くわ」

なんとシルヴィアはカタリーナと共に食料保管庫へ行こうとした

「確認しに行くだけだから」

とカタリーナは一言を添える

「あっそう?ダリル、アンタはファムとアネットを中隊長執務室まで連れて行きなさい」

「わ、わかった」

俺を気絶したファムを抱え込みアネットと共に中隊長執務室に連れて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠一Side

 

俺と鈴乃は恭子から呼び出しがあった為、斯衛軍本部で恭子率いる大隊の執務室にて話し合いをした

「豊臣少尉、甲21号作戦は成功を収めたもののその代償として佐渡島は東欧州社会主義同盟率いるベアトリクスに支配された。香月副司令の視点から言えば一応成功と言えるけど、貴重な戦力である機動要塞、凄乃皇・弐型が鹵獲されたから一部は失敗と捉えてるわね」

恭子の言う通りだ。

香月女史はハナッから佐渡島を無事奪還する事は毛頭なかった―――故郷を帰りたい人達に対する裏切りとなるからだ。

もし佐渡島が消滅したら、その衝撃波で新潟の一部は災害に遭い水没したのも否定できない。

そうなると佐渡島住民は絶望し怒り狂い永遠に終わらないデモ活動する事はあっただろう

「…香月副司令は『凄乃皇を鹵獲しても真面に扱える人間はいない』と公言してたからすぐ廃棄処分されるでしょうね」

00ユニット専用機だから真面に扱える人間はいない。それは確かに言える

不穏な空気が流れる中、鈴乃は目を光らせ、決死の表情を浮かべつつ言葉を放つ

「恭子様、話とは一体?」

恭子は真面目な真面目な表情でこう言った

「豊臣悠一少尉を原隊復帰する」

恭子は俺を斯衛軍に原隊復帰すると言った。

ん?原隊復帰だと!?

「え?すまんがもう一回言ってくれないか?俺、頭が混乱しててよぉ」

「…貴方は斯衛軍に原隊復帰すると言ったのよ」

恭子の目を覗くと、濁っていない

つまり本当だって言うのかよ

「あー、つまりアレか?武御雷に乗れるって訳なのか?」

「そういう事になるわね――――で、フルアーマーにしろと言いたいんでしょ?貴方の考えは私にはお見通しです」

グウウウ……流石崇宰家次期当主、全てお見通しって訳かよ

「それと同時に大倉大尉、貴女は我が斯衛軍に移籍よ」

これを聞いた鈴乃は困惑した

「え!?私が、ですか?」

「ええ、貴女には困らせてしまったのは従順承知してる。帝国軍の上層部に話はついている」

鈴乃も斯衛軍に入るって言うのか?

………帝国軍の上層部から冷遇されたのもあるが、幾ら何でも無茶苦茶過ぎる

「私は帝国軍の衛士です!勝手な真似されては」

「事が終わったら帝国軍に戻すわ。一時的な処理よ―――――何より帝国軍の上層部にいる人達は最近良識ある人間が増えて来たけど外道たる人間は少なからずいる。それを一掃しなければならない」

そうか…それで鈴乃を斯衛軍に…。

上層部の中に鈴乃や早乙女を冷遇した将校がいる。

それなら納得出来るな

「で、鈴乃を斯衛軍に移籍する理由は分かったけどよ。俺達は何すればいいんだ?」

俺がそう言うと、恭子は真顔でこう言った。

「横浜基地の警備任務よ」

「!」

「恭子様、あそこは国連軍の施設です!私達を疎遠させようとした連中ですよ。何よりも香月副司令の…」

「分かっている。でもね、これは上からの命令なの。理解して頂戴――――いいわね?」

恭子がそう言うと鈴乃は心で歯軋りするがそれを表に見せずに了承の言葉を添えた

「承服……しました(出来ませんとは言えない……これが斯衛軍…威圧が凄過ぎる)」

こうして俺と鈴乃は斯衛軍の衛士として横浜基地の警備任務を励むことになった

そして、横浜基地に不穏な空気が感じる…この胸騒ぎが現実にならなければいいが

この時の俺はそう思っていた

再び地獄を味わうまでは……。

 

 

 

 

 

 

 

The end of Part 3

 




今回はマブラヴSF本編シナリオと『マブラヴオルタネイティヴクロニクルズ ~継承~』を参考にして書きました。
マブラヴアニメ第二期が終わって早速情報が入りましたね
月刊MRという雑誌なんですが、創刊号はアニメオリジナルの臼杵咲良の事を特集し何やら彼女の事を解剖する内容なんですよ。
純粋な心があれば彼女…臼杵咲良の事が好きになる人はもしかすると増えるんじゃないかな?と思います。
純粋な心ですよ。
で、その表紙には臼杵咲良と02式吹雪改。
02式というなら、もうこの時点で臼杵咲良は第三期以降にも生存は確定したと同じなんです
まさか生き延びるとは全然思わなかったです。正直死ぬと思い込んでました。
佐渡島に住んでた唯一の少女が一体何をやらせるつもりなのか?
という訳でインペリアルアーミー編はこれで終了です!
1年…1年の月日が経ちやっと完結出来ました
第4部はテログループ編です
時系列は横浜基地防衛戦ですが、タケルちゃん絡みの話は申し訳ありませんが全部カットされる可能性がありますのでそこはご了承ください
臼杵、どうしようかな……多分出しません
というかマブラヴアニメ第三期あるのかな……この終わり方だと『俺達の戦いはこれからだ』エンドになりかねないし(-_-;)
裏話は活動報告で言いますね!
この作品を…トータルイクリプスサンダーボルトや他の作品、Pixivで投稿した作品を読んで頂けた全ての方々に感謝しつつ、今回はここで筆を置かせて頂きます
ではまた
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