2001年12月30日
日本帝国軍 練馬駐屯地
デスクワークでの作業を一段落した私は今後行われる作戦の計画書を纏め上げる為に中隊長執務室に向かっていた矢先、廊下で訓練兵達が話し合う姿を見かけ盗み聞きした
「近いうちに桜花作戦っていう、人類の一大反攻作戦が実施されるらしいぞ」
「俺達も駆り出されるのかなあ…何人が生きて帰って来られるんだろ」
「何よりもこれを提案したのは国連軍のお偉いさんらしいぜ」
「うあ…俺達はそのお偉いさんに扱き使われるのか」
恐らく香月副司令の事を指してるだろう。
誰にだって死にたくない。みんな同じだ。
仮に私達が桜花作戦に参加したらどこに配置されるだろうか?
攻めか?守りか?
攻めは白銀達と遭遇する可能性が高い
守りは……。
……やめよう。こんな事考えても答えが出ない
何処の戦線に赴かれるのか分からないのだから。
それよりテログループ率いるテオドール・エーベルバッハをどうやって倒すのか?だ。
恭子様は守りに入るのだろう。篁中尉も含めて
考えてる最中、駐屯地に潜り込んだ情報屋の伍代と遭遇する
「伍代、何か掴んだか?」
「ああ、横浜基地に潜入するのは容易ではなかったから情報入手するの大変だったよ」
伍代は笑みを浮かびながら私に封筒を渡した
「桜花作戦の作戦計画書だ。君らも参加するのだろ?帝国軍は守りに入るそうだ。白銀武やその他の衛士を守る役割だ」
「私達が白銀達を守る役割をさせると?」
「御名答だ」
やはり守りに入るのか――――白銀達のバックアップだという事か。
「それとこれは匿名の情報だけどユウヤ・ブリッジスは知ってるかい?」
「ユーコン基地で不知火弐型のテストパイロットしてた男だ。彼がどうかしたのか?」
と私は問いかけると、伍代は当然と振る舞う態度でこう言った。
「大倉の姐さんや豊臣少尉がユーコン基地から去った後、色々あって基地内は大騒ぎだ。紅の姉妹…いや三姉妹かな。その3人の中で2人死亡1人だけ生き残ったそうだ」
紅の姉妹―――クリスカ・ビャーチェノワ少尉とイーニァ・シェスチナ少尉の事を指してるな
ん?三姉妹と聞こえたが……。
「紅の三姉妹……2人だけじゃないのか?」
「…おっと、話が逸れてしまったようだ。ユウヤの消息についてだがジャール大隊のラトロワ中佐の上官の計らいで匿ってるそうだ。不知火弐型Phese3はボーニング社のとある技術者の陰謀で開発され、彼もその機体のテストパイロットになったのだが触れてはいけない機密情報を知ってしまい機体ごと強奪。その後はお察しの通りだ」
成る程、ブリッジス少尉はともかくビャーチェノワ少尉とシェスチナ少尉がお気の毒だ。
3人の内2人が死んだとなれば、彼女――――クリスカ・ビャーチェノワは既にこの世にはいない。
触れてはいけない機密情報が気になるが詮索しない方がいいだろう。
「ユウヤ・ブリッジスはラトロワ中佐の保護下にある。と……ではあのクーデターはアメリカの陰謀だとでも言うのか」
伍代はサラリとこう答えた
「半分正解で半分外れだ」
「どういう事だ?」
「アメリカ政府の陰謀論もそうだけど、この帝都クーデターは国連軍の副司令、香月夕呼女史が絡んでいるそうだ」
!!?
「過ぎてしまった事を考えても仕方ない。これは最初から彼女が仕組んでいた陰謀だ。確証はないけど僕はそう思ってるつもりだ」
そう言うと煙草に火を点け吸い始めた
「………驚愕過ぎて何も言えないな」
言葉が出てこない……あのクーデターは駒木も参加していた。懲罰部隊送りになってもおかしくなかった。
恭子様や遠田技研工業の能代社長の計らいで懲罰部隊送りは免れたが、恭子様がいなかったら駒木は今頃塀の中で戦地を赴くまで待機し悲惨な戦いに参加させられ死ぬまで扱き使われただろう。
恭子様はテログループを壊滅させる為に模索している。まずは彼が潜伏している拠点は東ドイツ首都ベルリンだと判明したが具体的な場所がまだ分かっていない。
その時だった。伍代が意外な事を言い出した
「テオドール・エーベルバッハ率いるテログループだけど、横浜基地を襲撃する計画があったらしい。BETAでの横浜基地襲撃は彼にとっては予想外だったが…次のターゲットを考えてるそうだよ」
テオドール率いるテログループは横浜基地襲撃計画を実行しようと模索していた
「あの下衆が……やってる事がグレゴリーと同じだ」
「グレゴリーもシュミットの名を語って東ドイツを生贄に捧げようとしたのもあるけど、テオドールは”世界全体を一つにさせる”のが最終目的だ。簡単に言えば人類滅亡を望んでいる」
テロリストに成り下がった時点でテオドール・エーベルバッハという男は既に腐っていった
干からびた自分の体を水を飲むように
「――――唯一の救いはアイリスディーナ・ベルンハルトが生き延びた事だ。彼を止めるのは彼女しかいないよ」
「そう考えてもおかしくはないな。彼女は彼の事を同志として慕い愛していたからな」
先に桜花作戦を終わらせないとな……その後の事はゆっくりと考えればいい
「カシュガルに赴くのだろ?気を付けた方がいい。あそこは君らが見たことがない代物が大勢いるからね」
「忠告感謝する」
そして情報提供料を伍代に渡し「毎度あり」と一言を添えられ、伍代は立ち去って行った
急遽、第三会議室にムーア中隊の衛士含め伊隅大尉達を集いブリーフィングを始めた
「桜花作戦の内容だが、我々の役目は守りに入り後方支援に携わる事だ」
悠一は困惑していたが察したが、佐竹は納得いかない態度をとっている
「あの…守りに入るって白銀達を…」
「そうだ。何か不服でもあるのか?」
「ないと言いたいところですが、”大地”大尉達も参加するのですか?そんな事したら白銀少尉達がびっくりしますよ!」
此奴、何か勘違いしているようだから修正しておくか
「何を言ってるんだ貴様は…”大地”大尉達はテログループの情報収集という名目で佐渡島に行って貰う。死人が参加出来る訳ないだろう」
「す、すみません……」
「では、本題に入るぞ」
私は早速、今の現状を皆に報告する
「横浜基地もとい横浜ハイヴ跡地で反応路の停止に伴って、撤退を開始したBETA群は北西に向かって移動―――――これを帝都へ向かっていた増援部隊と仮説防衛ライン守備隊が追撃し、約8割を撃破。その後、BETA群は日本海に脱出。舞鶴基地所属の第8艦隊と同胞団艦隊が、照射危険地帯ギリギリまで追撃するも、1933にロスト。逃げた目標は甲20号目標に向かっていると思われる」
結局、逃げられたがこれは想定内だ。
「情報屋伍代が入手した資料によると、撃破にカウントされてるBETAの中には、移動中に活動停止した個体も多く含まれている」
それでも数万のBETAを撃破したんだ。光線級がいなかったとはいえ我々にとっては記録的な勝利だ
人類の滅亡を回避したんだ。それにしてもとんでもない事だな。
命懸けで情報を手に入れた伍代には感謝しないといけないな。
「今回の戦いで、三個連隊分の戦術機を喪失した」
この場にいる皆は何も言葉が出なかった。
佐渡島奪還作戦で大半が消耗したんだ。さらに防衛線を張ってまで死守するのはいいが、大丈夫なのだろうか?
「佐渡島は東欧州社会主義同盟の占領下だ。返還されるのは長くても22年。早ければ5年かかるだろう」
「……マジかよ。おい」
「22年、佐渡島はベアトリクスの手中にあるんですか。それはヤバ過ぎるでしょ…」
「紅林、BETAはいつ何処で現れるか分からん生き物だ。完全にいなくなるまでの期間と言っても過言ではない!」
「鬼頭さん……」
鬼頭は理解している。佐竹とは大違いだ。
「横浜基地襲撃の件もそうだが、知らないのも当然だ。私と豊臣少尉、早乙女少尉以外誰も知らないからな―――私達が地下で戦っている間、多摩川沿いに展開していた我が軍がBETAの後続を攻撃してくれたんだ」
「帝国軍が……ですか。大倉大尉」
駒木はポツリと呟く。
余程気にしていたのか……。
「そうだ。余談だが国防省から通達があって、支援砲撃の砲弾が底をついた直後、戦術機甲部隊が一気に突撃したんだ」
最後の方でBETAの流出量で尻窄みになっていたのは、死に物狂いで戦った者が町田からの後続を減らしてくれたんだ。
そうでなければ今頃、帝都は陥落しているだろう。
それだけの損害を負ってまで戦い続けた。――――恭子様がいなかったら…駒木が懲罰部隊入りになっていたら…ここにいる皆と出会う事はなかった。
「大倉大尉は横浜基地に行かれたんですよね。一応お聞きしたいことがあって…」
「何だ?」
「現状はどうなっているんですか?横浜基地の」
駒木は横浜基地の現状を聞き出した。
臼杵の事もあるが、まあ彼女を心配するのも当然だ。
「これも伍代から聞いた情報だが、横浜基地の襲撃での死者、行方不明合わせて約4700人。負傷者約2600人―――これはあくまでの現時点での数字――この横浜基地にいた人間の半分以上だ」
国連軍も必死だ。今頃藻掻き足掻いてまで戦い続けている。大騒ぎになってる筈だ。
「横浜基地で真面に動く戦術機は0に等しい。修理や補給は数ヶ月かかるだろう―――――つまり壊滅だ」
斯衛軍は健在だ。あれだけの戦闘で傷一つもないとは……。
だが、帝国軍も負けてはいない。悪足掻きしてまで戦うんだ。
無論、佐渡島同胞団の衛士達も。
「香月副司令は横浜基地の復旧を仕切ってる。物凄い勢いでな」
私がそう言うと皆は口籠り黙った。
「桜花作戦に参加する者いたら挙手してくれ。参加するしないかは個人の自由だ―――貴様達の判断に任せる」
参加するのは個人の自由だ。
国連軍が……香月副司令が絡んでる作戦だ。不参加の人間はいると思っていた。
しかし、私の予想が外れる展開になった。
悠一、早乙女、駒木、紅林、鬼頭――――"豊洲"も参加するんだな。
6人か……同胞団の衛士を補充しても一個中隊。カシュガルハイヴの内部に入れるか。
……無理だ。あの時は他の部隊や東欧州の衛士達、北朝鮮の戦術機部隊がいたから私達はハイヴを攻略出来た。
今回は佐渡島の時とは違う。一個中隊のみの出撃だ。
他国の戦術機部隊と遭遇して共闘出来ればいいのだが、そう簡単にはいかない。
「同胞団上層部の指示を待つまで待機ですか?」
早乙女は真剣な表情で言った。
「国連絡みの作戦だ。上層部も慎重に判断すると思う」
「そうですか……」
本来なら甲20号目標―――鉄原ハイヴを攻略する予定だったが急遽、甲1号目標であるカシュガル―――即ちオリジナルハイヴの攻略だ。
東欧州社会主義同盟は桜花作戦には参加せず欧州大陸奪還に専念。
我々に任された形となった。
私が深く悩み頭を抱えたその時だった。一人の兵士が慌てて第三会議室に入り報告した
「同胞団上層部からの通達です!」
「何だいきなり…」
「す、すみません!上層部からの通達で、ムーア中隊に属する衛士はタシュクルガン・タジク自治県の戦域に配置するとのことです」
タシュクルガン・タジク自治県……カシュガルハイヴの目と鼻の先にあるところだ。
「何やらカシュガルに派遣している第九九九懲罰大隊がテログループの拠点と思える施設が発見したようです」
第九九九懲罰大隊って駒木が配属される予定だった戦術機大隊だ。
佐渡島での戦闘で全滅した筈………。
私は理解が追い付かず問い詰めようとしたが、恭子様と如月中尉が第三会議室に入った途端、一同揃って敬礼する
「敬礼!」と一言を添え恭子様の顔色を伺い、「直れ!」ともう一言を添える
その後「総員着席!」とさらに一言を添え、作戦会議が始まった。
側近らしき警護官がホワイトボードに作戦図を貼り、その場から立ち去る
恭子様は私達の前で高らかにこう言った。
その内容は常識を逸脱し理解できなかった。
「テログループのタシュクルガン基地。此処が我々の攻略地点の一つ…チボラシュカツヴァイ製造工場を隠し持つ敵の秘密基地です。ムーア中隊は修理と物資補給が完了したら直ちに出撃。高高度からBETAの支配地域不覚に侵攻して上空から空襲の後、戦術機部隊や戦車部隊で一気に制圧する作戦―――とどのつまりBETAを狩りながらテロリストの連中を葬る事よ」
チボラシュカツヴァイ……ウルスラ革命で活躍したかつてテオドール・エーベルバッハが乗っていた戦地改修型の機体だ。
奴等はテオドールのクローンを作るつもりか!?
その時だ。鬼頭が挙手し恭子様に問いかける
「発言の許可を」
「許可します。質問どうぞ」
「お言葉ですが、もし作戦行動中に国連軍の戦術機部隊と遭遇したらどうするんですか?」
鬼頭が言ってる事は御尤もだ。
それに対し恭子様はこう答えた
「作戦が長引かないように協力しながら最短で連中を葬る必要があるわ。これは戦術機部隊の奮闘次第よ」
「まあ、そうでしょうね」
………もし白銀達と遭遇したら、他の戦術機部隊と遭遇したら。
考えても答えは出ない。運次第という事か。
だが何か引っ掛かるな。カシュガルはBETAの支配区域だ。どうやって……?
気になるな。恭子様に問いかけるか
「恭子様、少し気になる点があります」
「?」
「タシュクルガン基地はテログループの拠点の一つ。元凶であるテオドールは東ドイツに潜伏している筈では。それに我々は桜花作戦に参加した同時にチボラシュカツヴァイ製造工場を制圧するんですか?衛士達の精神が保てないと思います」
私の言葉を聞いた恭子様は眉を顰める
「地下鉄サリン事件の元凶である宗教団体あったでしょ?その基地に残党が屯っているのよ」
宗教団体?!地下鉄サリン事件を起こした連中の名は言うまでもない。
「雄武同盟という組織で、4年前に一部の信仰者がテログループと合流しBETA支配区域であるカシュガルに赴いたのよ。テログループの支援によって残党は武装化。京都陥落前に基地を建設――――独自の生活圏を築き一個軍団並みの宗教テロ組織に変貌したのよ。無論、真面な信仰者はサリン撒き散らした教祖を擁護する連中のところについて行く訳がなく考えが剃り合わない人間はそれぞれの道へと歩き出し分裂して今に至る」
雄武……久々に聞いた名前だ。都曰く『二度と関わりたくない』と言った程のレベルだ――――名前聞いただけでヤバいと思われる。
「雄武は名前を変えて密かに活動している筈です。何故カシュガルに?」
「その人達は反教祖側の人間よ。私が言ってるのは教祖側の人間が築き上げた宗教テロ組織――――テロリストに成り下がった連中は未だに教祖である彼を崇拝してるでしょうね」
真面な人間ならテロ行為を加担してまで信仰してない。
大半の人が『見限って正解だった』と思っただろう。
「その組織を指導してるのは教祖側の人間だけど、彼はテオドールの傀儡に過ぎないわ。雄武同盟の目的は教祖が築き上げようとした理想の国「シャンバラ」を実現させる――――馬鹿げた話だけど彼等は国家転覆を目論んだ事は事実よ」
その雄武同盟の全貌を聞いた私は呆れて言葉が出なかった
………連中もBETAと同じ。外道極まりない!
「……作戦開始はいつですか?」
「桜花作戦発動と同時に作戦開始よ」
同時進行か。これなら納得できる。
サンダーボルト作戦目標
①タシュクルガン基地内にあるチボラシュカツヴァイ製造工場の破壊
②雄武同盟の壊滅
③テログループリーダー、テオドール・エーベルバッハの殺害
④テログループの壊滅
の4つだ。
テオドールがタシュクルガンに潜伏してる可能性は低い。彼は用心深い。
事前に準備する必要がある。逃げられるリスクは極めて高いが、優先すべきなのは雄武の連中を一人残らず葬る事だ。
……このサンダーボルト作戦は桜花作戦と同時進行で任務遂行する事となる。
2001年12月31日
昨日のブリーフィングに恭子様はテログループの拠点の一つであるタシュクルガン基地を制圧する任務を私達に下した。
桜花作戦と同時進行か……もしテログループの連中が他の部隊の邪魔をするとならば放っておけないな
朝4時に練馬駐屯地を出発したムーア中隊は移動用車に乗車、舞鶴港へ到着。
そこで戦術機の点検を再度行い、万全なものとする。
(テログループのタシュクルガン基地。此処が我々の攻略地点の一つ…チボラシュカツヴァイ製造工場を隠し持つ敵の秘密基地です。ムーア中隊は修理と物資補給が完了したら直ちに出撃。高高度からBETAの支配地域不覚に侵攻して上空から空襲の後、戦術機部隊や戦車部隊で一気に制圧する作戦―――とどのつまりBETAを狩りながらテロリストの連中を葬る事よ)
(作戦が長引かないように協力しながら最短で連中を葬る必要があるわ。これは戦術機部隊の奮闘次第よ)
(地下鉄サリン事件の元凶である宗教団体あったでしょ?その基地に残党が屯っているのよ)
(雄武同盟という組織で、4年前に一部の信仰者がテログループと合流しBETA支配区域であるカシュガルに赴いたのよ。テログループの支援によって残党は武装化。京都陥落前に基地を建設――――独自の生活圏を築き一個軍団並みの宗教テロ組織に変貌したのよ。無論、真面な信仰者はサリン撒き散らした教祖を擁護する連中のところについて行く訳がなく考えが剃り合わない人間はそれぞれの道へと歩き出し分裂して今に至る)
戦術機空母『司馬』へ乗り込み、中国大陸へ向かう中で恭子様の説明を思い出し、海を眺めながら作戦の成功を祈る。
佐渡島奪還作戦での出来事――――今思い出すだけでもゾクッとしてしまう。凄乃皇…なんて凄い機体だ。ラザフォードフィールドなんてものを開発してしまう。
アメリカの科学力は伊達じゃないな。
空母内では私含めて悠一、早乙女、駒木、紅林、鬼頭、佐竹、”豊洲”が集って結束している。
横を見ると、早乙女まどか――彼女が何やら考え事をしているのか、水平線の彼方を見つめていた。
その顔は、かつて鉄火場で共に戦った武闘派極道達や都、草野、村田を想う人が見せるであろう表情をしていた―――。
私は早乙女の隣へ歩み寄る。
暫く海を眺めていたが、先に口を開いたのは、早乙女だった。
「どうしたのですか?大倉大尉」
「ん?最近、貴様と話す機会が少なくて話しかけただけだ」
「……それで話って何でしょうか?」
「早乙女、この際だからハッキリ言うぞ。家族の事だけじゃなく小峠達が心配か?」
私は彼女が今想っている存在について訊ねる。
「大尉こそ小峠さんの事心配しているんですよね?」
「彼奴なら大丈夫だろう。私が心配する必要性は全くない」
彼とは佐渡島防衛戦直前に衛士辞めてしまったからな…都の葬式に参列した以降、音沙汰なかった。
私は話を変えて表情を柔らかくし、香月副司令が試験運用した凄乃皇への期待を示す。
「佐渡島で確認した凄乃皇が通常兵器として運用されたら…私達の負担は軽くなると思う」
「それは何故です?」
「誰だって家族には戦ってほしくない。……お前が戦う理由は本土に残ってる家族や友人、小峠達の為だろ?」
「そう言われるとそうですね……少し矛盾してますよね」
眉を八の字にし、考えるように上を向く。
暫く待って、答えが出なかったことを見兼ねたのか私が口を開く。
「早乙女、ひとつだけ言わせて貰うが、”戦う理由”が必ずしもある訳じゃない。それでも、何か理由が無ければ戦うこと自体に疑問を持ってしまうんだ」
早乙女が私の方を向き、話を真剣に聞いている。
これはアドバイスではなく、自論なのかもしれない。
それでも、言いたかった。”誰でも持てる戦う理由”を―――――。
「だから生き残る為に戦うしかない。テログループの連中を全員屠るまでは」
「勿論です大尉。テオドール・エーベルバッハを地獄の果てまで送りましょう!」
「ああ、奴等を葬る事が我々佐渡島同胞団の目標の一つだ」
二人は拳を合わせる。悠一達もその頃、生き残ることを約束していた。
それぞれの覚悟が決まる中、空母は中国大陸へと向かった。
2002年1月1日―――遂に桜花作戦が発動した。
中国大陸から少し離れた沖では、佐渡島同胞団の戦術機母艦と戦術機揚陸艦。帝国本土防衛軍の戦車揚陸艦、帝国海軍の戦術機搭載可能潜水艦『資朝』が作戦決行までの時間の準備を進めていた。
少数だが、戦術機母艦『司馬』でも先行部隊であるムーア中隊が戦術機を起動し、準備は万全を期している。
《大倉大尉、機体点検は終わったか?》
「既に終えています。クローディア艦長」
クローディア艦長に私の機体―――94サブレッグの点検を終えた事を知らせる。
94サブレッグに乗り込みながら、私は悠一達の安否と、”指導者”と語るテオドール・エーベルバッハについて考えていた。
「(テオドールがタシュクルガンにいる可能性は低い。悠一や早乙女、駒木…他の衛士達の事も気掛かりだが、感情を流したら早死になる)」
そう思いを巡らせていると、強化装備の無線へ現状報告としてオペレーターの音声が流れる。
《第671降下部隊がタシュクルガンに上陸開始!!戦術機部隊は直ちに出撃せよ!繰り返す、戦術機部隊は直ちに出撃せよ!》
先に出撃した降下部隊はタシュクルガンに到着
大型輸送機ムリーヤ4機が低空飛行している。光線級にやられたくないからな……。
再編されたリーア中隊の戦術機も『資朝』艦内に待機してる。
《重金属雲濃度良好!資朝、浮上開始。リーア中隊出撃準備!》
私は操縦桿に力を込め、深く息を吸い込み緊張を解す。佐渡島で散っていった戦友を思い出す。
「――…聞いたな!ムーア中隊……全機、出撃ィィィッッ!!!」
戦術機母艦『司馬』からスラスターの炎を青白く燃やし勢いよく出撃した機体は、かつては青く美しいはずだった海上を滑るように促進していく
タシュクルガン基地に向かって、飛行していった。
どうもお久しぶりです。
5ヶ月待たせてしまい申し訳ありません
今回の話は時系列的に言うと桜花作戦開始前ですね。
時間掛かった……時間掛かり過ぎです
マブラヴ:ディメンションズ、ハーフアニバーサリー迎えましたね。楽しいイベントが満載でいっぱいです(笑)
次回はタシュクルガン基地襲撃する話です。桜花作戦と同時進行ですよ!
勿論、BETAも出ます!
この作品を…トータルイクリプスサンダーボルトや他の作品、Pixivで投稿した作品を読んで頂けた全ての方々に感謝しつつ、今回はここで筆を置かせて頂きます
ではまた