斯衛軍Side
2002年3月1日
日本帝国 帝都東京
それは……桜花作戦終結後の後処理が終わり、その帰り道だった
「カシュガルが陥落したものの他のハイヴはまだ健在だ。武御雷は高性能である故、00式強化装備着用しないと性能が発揮しない。既存の瑞鶴を改修しないといけないな…」
XFJ計画に関与した帝国斯衛軍女性衛士、篁唯依に信じられないことが起きる
奴等は音もなく物陰から…突然現れた
グサ!
グサ!
「う!」
唯依に背後からぶつかった
奴等は何もなかったように…人込みに消える
「(え…嘘…?)」
その時、唯依の背中は…とんでもないことになっていた
「(気配が全く感じなかった。まさかテログループの…)ぐは!」
そして、その傷はあまりに深かった。
「(ダメだ……動けない)」
篁唯依襲撃…そしてこれが帝国斯衛軍を巻き込む過去最悪のクーデターの引き金となる。
そんなことは全く知らない恭子は唯依達を驚かす為にスーパーで肉じゃがの材料を求め買い物していた
「唯依はいつも頑張っているから、私が作った肉じゃが食べたら喜ぶと思うわ」
呑気にルンルン気分と高揚感上げてるが、そんな中恭子の携帯電話が鳴り響いた。
「?」
何も知らない恭子は携帯電話を取り出し電話に出る
「はい」
その電話主は――――――斑鳩中佐だ。
《崇宰大尉、少しいいかな?》
「斑鳩中佐…私に電話かけたという事は何かあったのですか?」
《ああ、落ち着いて聞いて欲しい。篁中尉が何者かに襲撃された》
斑鳩中佐の言葉を聞いた途端、恭子の顔は凍り付いた
「え……?」
そのショックで手に持ってた買い物かごを床に落とした
《……動揺してるようだね》
「……誰ですか?篁中尉――――唯依を襲撃した犯人は」
《……今それを探してるところだよ。本部は荒れてるから暫く来ない方がいい》
「何故です?」
《君は二度も命取られそうになった。これ以上死なせる訳にはいかない》
斑鳩中佐はそう言うが、恭子は納得してなかった
「斯衛の上層部は!?唯依を襲った犯人の事は存じてるのですか!?」
恭子は声を荒げ言い放つ
その時、斑鳩中佐は理解出来ない事を言った
《篁中尉襲撃の件は上層部に伝わっている。情報省からの正式な情報だ。帝国斯衛軍は今、二つに分裂する寸前に至って獅子堂一派という連中が内戦を起こそうとしている。佐渡島同胞団を解散させようと目論み、佐渡島を消滅しようとしていた獅子堂財団の存在を憶えているか?》
恭子はそれを聞いて何となく察した
「獅子堂財団……憶えています。その連中が何か企んでいるのでしょうか?」
《まだ確定していないが、可能性は否定出来ない》
獅子堂財団はスペースコロニーの開発や戦術機の部品製造行っている人類史上最大最強の大企業。
その財団の長は獅子堂風音。そして彼女の義弟で帝国斯衛軍衛士である響鬼が関与している。
彼女の莫大な富や権力の影響の所為で同じ斯衛軍衛士の豊臣悠一の信頼度を最底辺まで落とした黒幕なのだ。とは言え、あれは彼が毎回軍規違反犯したから自業自得としか言えない。
その獅子堂財団は唯依襲撃を仕向けたのかが斑鳩中佐は疑念を抱いていた。
《獅子堂一派は獅子堂財団が操っていると思っていたが、その実態は極左過激派集団と変わりはない》
「極左……それってまさか」
《そのまさかだ。―――これは推測の一つだが今の日本…世界を快く思わない連中がいるという事だ》
「世界は―――未だにBETAの脅威です。沙霧尚哉大尉が起こしたクーデターを再現するとでも言うのですか!」
《いや、東ドイツのウルスラ革命の再現と言った方が正しいだろう。獅子堂一派の構成員は斯衛軍にいた人間が多い。が真実を確かめなければならない》
やはり獅子堂財団が裏で仕組んでいるのか?と恭子は疑った。
「それでどう確かめるのですか?」
《直接、彼女に聞くしかない》
「!」
《その情報だけで獅子堂財団と決めつける事は出来ない。だが今回の件を知らないかと聞いてもいいだろう》
「成る程、一旦相手のリアクションを見てみようと言うことですね」
その後、恭子は正式に獅子堂財団に質問状を出す
「能登少尉、これを出して来なさい」
「はい!」
疑われた時点で怒りを買うだろうが、"それはそれでいい。"と恭子は解釈した
翌日、獅子堂財団から帰って来た返事はこうだった。
「”心当たりはありませんがご要望があれば御社の総帥室でお話出来ます”と」
「なるほど…犯人かどうかは置いといて、折角だ。久々に彼女に挨拶でも行くか」
「そうですね、何の為に存在してるのか―――何を企んで何を作っているのか――――聞くにはいい機会かもしれません」
こうして斑鳩中佐と恭子は如月中尉を護衛係として同行し獅子堂財団の訪問を決めた
数十分後、獅子堂財団の本部に到着した
「スペースコロニーを作ろうが戦術機事業に力を入れるのは我々に口出しする義務はない。敵対組織ではないから口に気を付けた方がいいよ」
「勿論理解しております」
「そうですね…」
現時点で犯人である手掛かりはゼロ
まずは真っ当な態度で会話すべきだろう
会社の中に入ると獅子堂財団の総帥、風音が待ち構えていた
「早速御足労頂いて感謝しますわ。それとお久しぶりです斑鳩少佐…いや中佐になりましたね」
「国の一大事なのでね」
風音は凛々しい顔で斑鳩中佐にこう言った
「貴方から質問状来たって、直接連絡あったけど、まず何の質問かしら?」
心底舐め腐った態度だった。
「獅子堂総帥、誰に口聞いてるんですか?」
恭子は睨み付け風音に問いかけた
「あら失礼。立ち話も何でしょうしご案内しますわ」
風音は素直に自信の仕事場である”総帥室”まで案内した
ここまでは良いが、問題は中に入った時だ。
「斑鳩中佐に崇宰大尉、如月中尉も随分と暇ね」
「我々が暇そうに見えるのかな?今この状況で漸くオリジナルハイヴを攻略出来た。これは全人類かけての激戦だった――――それに比べて君達獅子堂財団は日本を。世界各国を援助したのか?」
斑鳩中佐の問いに対し風音は舐めた態度でこう吐き捨てた
「あら?私達が貴方方を援助したかしら?残念だけどそれは見当違いよ。次女の高嶺は去年までは斯衛軍の衛士だったけど私の計らいで戦術機部門の主任の肩書を与えた。三女の秋葉は衛士になるつもりはない。四女のナミは訓練衛士だったが問題行動が目立ちすぎて退学。帝国軍から一度召集令状届いたけど財団の力で徴兵拒否させたわ。五女の桜は来年15歳…でも、彼女の喋り方は誰にも理解出来ない。とどのつまり衛士にならないという事よ。これで理解したかしら?」
風音の発言を聞いた恭子は怒り爆発寸前
「(此奴等…我々帝国斯衛軍に舐めた態度取って……挙句の果てに徴兵拒否。ふざけているのか?)」
彼女は財団の長だ。敵に回したらどうなるか分からない。
「崇宰大尉、貴女は次期当主に?」
「……再来年に襲名する予定です」
一体何なんだ…どういう訳か理解できないと恭子は悟った。
「待て崇宰大尉、今日は話を聞きに来ている…」
「ッ……はい」
斑鳩中佐は冷静に奴等に質問を投げかけ
「…XFJ計画の関係者の一人で我々帝国斯衛軍の衛士、篁唯依中尉が刺された。完全にプロの仕業だよ。君を疑っている訳じゃないが、何か少しでも知っていることがあれば聞きたい」
そして斑鳩中佐が鋭い眼光を向ける。
「あの篁唯依が?彼女が刺されるなんて大変ね―――――答えは全く分からない。斯衛にいる一般武家に属してる人間が仕組んだと思うわ」
すると風音はニヤついた顔で答える
その時、如月中尉は風音の目の奥をじっと見ていた
「彼女が刺されたのはとても残念な事ね。これでXFJ計画はともかく瑞鶴の改良型の開発は大打撃受けるでしょうね――――彼女を敵意向いてる人間は日本だけでなく世界中にいるんだから」
風音の発言はまるで馬鹿にするようなものだった。
あの態度を見て恭子は怒りを露にしたが、真剣な眼差しで風音に怒鳴り付けた。
「貴様…こっちは大事な仲間を刺されてるのよ。知らないにしてもその態度はなんだ!!?」
「何?ちょっと刺されたくらいでギャーギャー騒いで―――――まるで子供ね。崇宰家当主に相応しくない」
風音は恭子に嘲り笑い醜悪な言葉を放った
「自分の故郷が失って…BETAが故郷を荒らされて…何とも思わないのか―――何とも思わないわ。貴方達がBETAをこの世から消そうと奮闘しているけど、地球上にいる人類が滅ぶのも時間の問題。無意味な行為よ。獅子堂財団の繁栄の為ならどんな手段も選ばない。何故なら私達やその同胞達は宇宙に移住する準備を備えてるから………」
その時、斑鳩中佐の表情が消えいきなりブチギレた。
「………何だ?その態度は。君はふざけているのか?」
それは静かな怒りだった。
風音の舐め腐った態度に我慢の限界が来てしまった。
如月中尉は風音の目を覗き、目が濁っているのを見逃さなかった。
「貴様の目は濁っている。何か知っているな」
すると風音の態度が変わった。
「ホント無茶苦茶ね。貴方達帝国斯衛軍は――――暴れられたら困るわね。私を殺して財団を潰す気?」
「何を言っている?殺す気などない」
「信用に値しないわね。そうやって懐に入って殺そうとする……危険分子だから始末するしかないわね」
すると風音は指パッチンし外に待機してる武装警備員数名が総帥室に入り恭子たちを囲い込んだ
そう此奴等は最初から話す気などなかったのだ。
その光景を見た如月中尉は般若みたいな顔で奴等を糾弾する
「恭子様の悪口言うの控えろ!!さっきから我々をコケにして……!」
その時、空気が一変した
「悪いけど正当防衛よ。財団の未来の為に舞台から退場しなさい」
なんと警備員全員が一気に拳銃を抜いた
「ッ!」
「!……」
「恭子様…くっ!」
恭子達に銃口が向く
次の瞬間
「(やらなければやられる!)」
如月中尉が日本刀を持ち握り閃光のように動いた
そして斑鳩中佐と恭子を押して、銃弾を躱させつつ…自分への銃弾を躱した
即座に如月中尉はソファーを蹴り上げる
「失礼します!」
蹴り上げたソファーが2人の弾除けになる
そして恭子や如月中尉が奴等の方を向いた瞬間、空気が歪むほどの殺気を放つ
「人の敷地に乗り込んで日本刀を振り回すとは狂気の沙汰よ。―――これは殺さないといけないわね。こっちは警備員12人よ。見えてないなら眼科に行く事を勧めるわ」
「…目を見れば分かる。貴様等は篁中尉を刺した事に関与している」
次の瞬間、如月中尉の咆哮が響き渡る
「よくも篁をやってくれたなぁああ!」
腹の底まで痺れ上がる程の気合。まさに怒髪天だった。
それを聞いた奴等が恭子達に銃弾を撃ち込む
「やかましいわぁぁああ!!」
「死ねゴラァァァアア!」
それより一瞬先に如月中尉が机を蹴り上げる
吹き飛んだ机が風音含む12人の視界を遮る
そして如月中尉はなんと12人の銃弾を同時に避けた。
次の瞬間、如月中尉が見せたのは――――落雷のような踏み込み
「貴様等、サイコロステーキになっとけぇぇええええ!!」
ズシャァッ!
「ぐぶぁあああ」
そして一瞬にして6人をコマ切れにした
怒りで力が増幅している
一瞬にも満たない時間
「!」
恭子は拳銃を持ち残り6人の頭を射抜いた。
「…よくもやってくれたわね…獅子堂財団を敵に回して、馬鹿な奴等…」
風音は醜悪な顔でこんなことを言い出した。
すると斑鳩中佐が奴に質問をする
「君は一体どういうつもりだ。何の為に篁中尉を刺した」
「そんなの知らないわ!私達に手を出したお前達は終わりよ!私の妹達が大義を持って乗り込んでくるわ!死ね崇宰恭子!お前だけは道連れにしてやる!」
風音は悪足掻きで警備員の一人が所持してた拳銃を拾い恭子に銃口を向ける
「獅子堂風音……貴様は最初から!」
「そうよ。佐渡島を消滅させようとしたのは財団の繁栄の為。言った筈よ――どんな手段も選ばない。と。お前は2年前に戦死してる筈………あの男が、豊臣悠一が邪魔したから計画が破綻になった!」
風音は醜悪な論理で恭子達に吐き捨てた
次の瞬間、恭子と如月中尉の怒りは爆発した
「………佐渡島消滅させようとしたのはそういう理由だったのか!ふざけるな!仮に消滅したら本土に移住した島民はどうなる!?故郷がなくなったと喚き泣いて深い悲しみに陥ってる筈だ!!」
「貴様は日本の恥だ――――この事は殿下に報告して財団を解体させる!」
「好きになさい。私を殺して財団を潰したら……スペースコロニー開発は永久凍結よ。そうなれば貴方達は終わりよ。人類全て救うには宇宙に移住させる術しかないのよ!」
恭子は風音に近付き拳銃で奴の額に銃口を向ける
風音も恭子に銃口向けてるが手が震えている。
「それがどうしたの?貴女の妹達だろうがなんだろうが掛かってきなさい」
「この分からず屋が!」
互いに銃弾放った。その銃弾に当たったのは………。
「ぐぶぇっ!」
風音だった。
彼女は即死―――動かなくなった。
「斑鳩中佐、彼女を射殺しました――――私はどんな制裁でも受ける覚悟はあります」
恭子はそう言うが、斑鳩中佐は冷静な笑みを浮かべこう言った
「――――よい。彼女は元々害悪の一つに過ぎない」
「では」
「不問だ。これで獅子堂財団は瓦解だよ。ただ義弟の響鬼少尉がどう反応するかだ」
斑鳩中佐はそう言ったが、獅子堂財団は解体……するまでには至らなかった。
風音が遺していったスペースコロニーの開発計画や戦術機産業は次女の高嶺が引き継ぐ事に……。
姉の死は即刻高嶺に伝えられた
「高嶺姉さん、風音姉さんが…護衛の警備員含めて全員死んだわ」
「姉さんが……死んだ?秋葉、それは本当なの?」
高嶺は姉の風音の死を受け入れられず困惑していた。
秋葉は顔色買えずにこう言った
「残念ながら本当よ―――――なんか篁唯依中尉が刺されたのを風音姉さんのせいにして総帥室で暴れたそうよ。崇宰恭子……彼奴はただの極悪人に過ぎない……」
「報復しないといけないわね……大義は我々獅子堂財団にあるわ」
これが獅子堂財団のやり方だった。
3時間後、風音の後を継いだ高嶺は会議室で今回の件を私設軍隊に属する隊員達に伝達した
「前任者である獅子堂風音総帥を殺したのは崇宰恭子だ。この者は獅子堂財団だけでなく獅子堂家の脅威の一つ―――即刻葬らなければならない。我々の未来の為に先ずは崇宰恭子を暗殺。次に如月佳織、斑鳩崇継…最後は征夷大将軍殿下を粛正だ」
そしてこれが日本全国を震撼させる斯衛クーデターの始まりだった。
帝国斯衛軍を激震させた篁唯依襲撃事件
完全に唯依の不意を突いた攻撃――まさにプロの殺し屋の仕事だった
道端で倒れた唯依は、通行人によって即座に近隣病院に担ぎ込まれた
「唯依!しっかりして!……誰が唯依をやったの!」
「唯依…嘘だぁ――嘘だぁああ!」
唯依の背中は斜めに深く切り裂かれておりまさに生きるか死ぬか…集中治療室で全く予断を許さない状況だ。
その犯人の最有力候補に上がったのが獅子堂財団
奴等は帝国斯衛軍を分裂させ、クーデターを起こそうと目論んでいる
獅子堂財団前総帥の獅子堂風音の死から2日が経ち、斑鳩家の武家屋敷で斑鳩中佐は恭子、如月中尉を呼び出し緊急の打ち合わせを開いた。
「獅子堂財団の連中、最後の最後まで自分らの関与を否定していましたね」
「そうだね。今回の一件で自分たちは被害者だと言い、一気に我々を襲い掛かるだろう」
「連中で間違いありませんが、証拠がなければ突然会社を襲ったと帝国斯衛軍が無法者扱いされてしまいます」
「ふむ、此方に大義があるという証拠を掴まねば孤立する―――いざという時に協力してくれる組織もなくなる」
「となると?」
斑鳩中佐は不敵な笑みでこう言った
「犯人である証拠を掴めるしかない。獅子堂財団はともかく獅子堂一派の連中の根城を入るんだ」
「……それは隠密任務ですか?誰が適任を」
その時、山城上総、石見安芸が現れた
「斑鳩中佐、崇宰大尉。その任務、わたくしにお任せを!」
「あたしは山城少尉から先ほど相談を受けておりました」
「成る程、隠密行動もできる山城少尉なら適任だ。獅子堂一派が犯人であるという証拠を掴めるか?」
「唯依の仇を討つなら何だってやります!」
斑鳩家の武家屋敷を出発しようとした上総がふと安芸に声をかける
「石見さん、貴女も同行するのよ」
「ええ!?何であたしが…」
安芸が文句言うと上総は鬼のような形相を浮かべた
「―――…状況を読みなさい。ほら行くわよ」
こうして上総と安芸の2人は獅子堂一派の情報や拠点を探る形で出発した。
帝都城に着いた2人は早速とある人物に接触する
「まさか君が直々来てくれるとは思わなかったよ。帝国斯衛軍の山城上総少尉」
「伍代さん、手間かけて申し訳ありませんわ。わたくしの親友が傷付けられて黙って見過ごせませんわ」
「君の御用命とあれば大歓迎だ」
それは裏の情報屋、伍代隼
「それで何が聞きたいんだ?大体想像つくと思うが…篁唯依を襲撃した犯人についてだろう?」
「!――――ええ、彼女が何者かによって襲撃された。犯人を探しているんですけど…犯人は獅子堂一派で間違いないと思っています。だが確証が掴めてませんわ」
「獅子堂一派…獅子堂財団が操ってる極左暴力集団だ。構成員は斯衛軍の衛士だけ――― 皇帝や将軍、五摂家に対する不敬罪を犯す輩、斯衛の神髄を理解出来てない堕落者ばかりだ」
「獅子堂財団が裏で操ってるのは分かりますわ。その実行犯を知りたい――何か手掛かりはありませんの?」
「この獅子堂一派が獅子堂財団のQTプロジェクトの一端を担っていると聞く。斯衛軍を二つに分裂しようとしているのも亡き獅子堂風音の為の野望だ」
上総は確信がついた。唯依を襲撃したのは獅子堂一派なのだと。
だが実行犯の名が分かっていない。
上総は伍代に奴等が唯依を襲った理由を問いかける
「では、何故唯依を襲ったんですの?理由を知りたいですわ」
それに対する伍代の答えは醜悪なモノだった
「篁唯依を襲撃したのは恐らく彼女が特定の衛士達を虐め、仲間だった人間が次々と離れた腹いせの私怨だ」
「唯依が……唯依はそんな事すると思って?」
伍代は続けて話す
「一部の衛士達からの証言だ。だがその証言は偽装だと思う。篁唯依が国連軍のユーコン基地に出向しXFJ計画の開発主任に成り上がったから羨ましく思った人は大半いただろうな」
と、彼は煙草を一服しながらこう言った。
無論、上総はその証言を信じていない
「そんな…あり得ませんわ!それが本当だったとしたら私は誰を信じれば……」
上総は悲しい表情でこう言った。
伍代は上総の顔を見ながら言い続ける
「……虐めの証拠はあるにはあるが、信憑性が低い。彼女は虐めなどやってないと叫ぶのは山城上総―――――それは君自身だ」
伍代は冷静に言ったが、上総は複雑な表情を浮かべる。
「………唯依は他者に虐めしていません」
「なら彼女を信じるべきだ。それが親友であろうと」
伍代は上総の目を見て嘘ではない事を確信する
そして奴等の居場所が書かれてるメモを渡す。
「奴等は2年前に廃止された帝国軍の檜町駐屯地にいる。日本政府が赤坂9丁目地区再開発地区計画を決定し、財務省が売却を公示したが奴等が不法占拠した所為で計画は一時的に中止してる」
「外道が………!救いようがない連中ですわね―――伍代さん、感謝しますわ」
「核心をつけずすまない。でも急いだほうがいい――――次のターゲットは崇宰恭子大尉だ」
「いえ、必ず恭子様を守って見せますわ」
そして情報屋の元を後にした上総が如月中尉に連絡を入れる
「如月中尉、遠田技研工業にアポは取れたりします?少し聞きたい事ができまして」
《分かった、能代社長は崇宰家先代当主は縁故がある。話くらいはできるだろう》
こうして上総は安芸を連れて能代社長の元へと向かった。
遠田技研工業を訪れると2人の男が上総と安芸を迎え入れる
「お待ちしておりました」
「貴方が山城財閥の一人娘、山城上総ですね」
「ええ、山城上総ですわ。帝国斯衛軍の衛士を務めてますわ」
「い、石見安芸です…」
そして応接室通された2人の元に能代社長が現れる
「君が山城上総か―――崇宰大尉からよく聞いてるよ」
遠田技研工業は武御雷を製造した会社であり、佐渡島同胞団のスポンサーの一つだ
上総は能代社長に問いかける
「差し支えなければ……獅子堂財団が遠田技研工業と敵視してる理由を知りたくて」
「その話か…何故その話を聞きたいんだ?」
「わたくしの親友の一人、篁唯依が背後から刺されました。我々は獅子堂財団の仕業と睨んでいますが証拠がありません。何でも良いので、奴等の情報が欲しいんです!」
「敵の敵は味方だ。話そう――――少し前、獅子堂財団から傘下につけという話が入ってた…それが敵視されたきっかけだ」
だが遠田技研工業は奴等の話を断固拒否したと言う
風音と直接会話し…それで終わりかと思われた。
それ以降、遠田技研工業の自動車ディーラー関東圏各店舗がに獅子堂一派の人間が現れ始めた
獅子堂一派の奴等は各店舗で嫌がらせをしたという
そして遂に…1人の男性店員がブチギレ、奴等を鉄拳制裁した
我慢の限界だったという
本来なら即解雇だ―――しかし、”正当防衛”に当たる為処分されなかった。
「奴等は相手に先に手を出させてから報復する。まるで戦国時代のやり方だよ」
「酷いですわね……」
「……武御雷を生み出してから2年、我々はあんな外道共相手に引く訳にはいかないのだ!!」
それは理不尽に社員を貶された男の怒りと決意の咆哮だった。
すると、能代社長に上総が思わぬ提案を持ちかける
「能代社長。わたくし達が獅子堂一派を潰すの手伝いましょうか?」
「ん?それは敵地に突っ込むと言うのか?」
「証拠がないなら接触した方が早いですわ。味方が増えないなら敵を減らせばいいです事よ」
「………そんな事お願いしていいのか?崇宰大尉が黙ってはいないぞ」
「ただ確証がない状態で敵の支部に乗り込んで暴れるのはリスクが高過ぎる。わたくしを遠田技研工業の社員ってことにして貰えません?」
そう言って上総は悪魔のような笑顔を見せた
当然、安芸は猛反発する
「山城さん!無茶苦茶だよ!第一あたし達、まだ未成年だよ」
それに対し上総は言い返した
「社員が無理なら非正規社員として振る舞えばいいですわ」
上総の言葉を聞いた安芸は呆れて何も言えなかった。
「情報に関して1つアイデアがありますのでそれだけ協力して貰えると助かります」
2002年3月5日――――獅子堂一派が占拠してる檜町駐屯地に一本の電話が入る
「何?話し合いがしたいやて?」
それは遠田技研工業からの会談依頼だった
「今田大尉、遠田さんが直接話をしたいと」
「何やて?能代社長、遂に折れよったか―――ええやろ、うちに招待してあげなさい。ただ2人まで伝えとき、その数なら現場で跳ね返っても死ぬだけやから…」
「しかし、今田大尉。彼奴等下につけてどうするんです…」
「あぁ、そんなん戦術機自主生産を撤退させて獅子堂財団が製造する予定の戦術機のOEM生産に決まっとるがな――――彼奴等、生産力だけはそこそこありよる―――まずは買収しときゃあウチらは最初は楽できるやろ」
「なるほどです…素晴らしいお考えで」
こうして遠田技研工業の訪問が決まった。
訪問する2人は上総と能代社長だった
安芸は直前までの付き添いだ
「山城家の名を汚したくないのでここは植田春香と名乗らせて貰いますわね」
「うむ、そうか」
上総は髪型をポニーテールにしてリクルートスーツ着用の変装で挑む
敵組織に社長含めたたった2人で行くなど本来自殺行為だ
「非正規社員として振る舞いますわ」
「(山城家を汚したくないという気持ちは理解できる―――彼女は人生を賭けていい女だ)」
加えて安芸は会談には入らないが重要な役割を任された
「石見さん、逃げる時。戦術機を完璧なタイミングで回しなさい…ミスしたら許しませんわよ?」
「は、はい!(いつもの山城さんじゃない…)」
「あと護身用の拳銃を」
上総は安芸に圧を掛ける
「(怖ぁぁあ。怖さだけで死ねそう)」
そしてここから獅子堂一派との直接交渉が始まる
檜町駐屯地の第三会議室には約20人ほど構成員がいた
「能代社長、御足労ありがとうございます」
「こちらこそ話し合いの機会を感謝する」
「私は自動車部門の植田と申します」
「あぁ、よろしくお願いします(こんな奴いたんか…)」
だが応接室に通された2人は…
「ほんま、はよ来てくれはったら誰も死なずに済んだのに」
「(今田…此奴、斯衛軍を滅茶苦茶にするつもりか)」
驚愕の光景を目にする
「うおっ…なんでこんなに」
「(この外道共が、最悪わたくし達を殺す気ですわね)」
なんと奴等は10人体制で打ち合わせに望んできたのだ
「おい、鍵閉めろ」
「はい」
「それで早速ですが能代社長、話ってなんですか?」
「君達に我が社が開発した武御雷3機を献上したい」
そして今田は高笑いと共に口を開いた
「ハッハッハ!そうですかそうですか。オタクもねぇキツかったでしょうから」
今田はそう言うと、上総は作り笑顔でこう言った。
「因みに今田さんは獅子堂財団の世界進出の一翼を担ってると聞きました。我々、その辺をお手伝いすればご協力にして頂けるんでしょうか」
「よう調べてはって、その通りです。一緒に大いなる夢見ましょう。まずはアメリカ軍が運用しているステルス戦術機、ラプターが欲しいなぁとは思てます」
「狙いはラプターのライセンス生産―――ですか?」
「まあ足掛かり的にロックウィード・マーディン社からいこかって風音前総帥が生前言ってましてね」
その会話は上総が能代社長の胸に仕込んだレコーダーで全て録音されていた
「(ロックウィード・マーディン社を足掛かりですって…)」
これこそが上総が企てた作戦だった。
「獅子堂一派とお話しして分かりました。命が何個あっても足りません。傘下に入れて貰ったら安心ですわ!今後もわたくし達が先頭に立ってやるので…!帝国斯衛軍を潰したら、その次もやらせて頂きますわ!」
上総が必死の形相で今田に訴える
「(ビビり腐って、アホや此奴。ほな斯衛軍全員死ぬまで捨て駒として使い切ったらええわ)」
山城上総一世一代の芝居…今田の警戒心が緩む
「つ、次は何処狙ってますの?」
「斯衛軍叩けば、あとは弱ってるとこばっかですから、まあ帝国軍か佐渡島同胞団かどっちかですわ」
「事の発端を作らないといけないと思いますけど、その後の事はどうお考えで?何でも手伝いますわ」
「(怖なってのうて…もうおかしなってるわ。こら使えるなあ)植田さん、小さい声で言うんでちょっと耳貸してください」
そういうと今田は上総の耳元に近づき小声で囁く
「ウチ…関連にヒットマン組織がありましてね。そいつらがまず相手偉いさんを狙うんですわ。そしたら相手が勝手に調べて『獅子堂財団や』いうて騒ぎ出します―――証拠はありませんからウチは大義を持って相手を潰してそこを潰す訳ですわ。そないしたら業界の評判も悪ならへんし。内部の下っ端達も自分らが正しいと思って一生懸命働きますから、まあ大昔からよくある偉大なる手法ですわ」
次の瞬間、上総が能代社長の方向を向く
「………能代社長、犯人は獅子堂財団の傘下である獅子堂一派ですわ。ヒットマン送り込むのが常套手段と言ってます。録音も出来てますわ」
「何ゆうとんじゃお前!お前等、此奴追い詰められて訳分からん事言うてるぞ」
そして上総が豹変しポニーテールを解く
「わたくしは帝国斯衛軍の山城上総少尉ですわ。よくも唯依をやってくれましたわね……」
その時、上総が見せたのは煮えたぎるような怒り
「や、山城上総……まさか山城財閥の!何でこんなところに!?たった2人で何ができるんじゃあ、ボケェ!蜂の巣にせえ!」
会議室内の構成員が一気に拳銃を抜こうとしたその時、駐屯地の敷地内で爆発音や銃撃音が鳴り響いた
「(来てくれましたわね…石見さん)」
駐屯地内に現れたのは白い瑞鶴2機だ
それに乗ってるのは安芸と志摩子
無論、奴等も黙って傍観する訳がなく迎撃し始める
《て、帝国斯衛軍の瑞鶴だ!》
《同じ瑞鶴なんだ。撃て!撃ち尽くせ!》
連中は元々斯衛の精鋭部隊の一員だが、京都防衛戦で戦い生き延びた2人の敵ではない
次の刹那、瑞鶴2機は奴等が乗ってる黒い瑞鶴4機を120mm弾を浴びせる
《ぐぼ!》
《がは!》
《ぶべ!》
《げぇ!》
4機共、木っ端微塵になった。
今田はこの場にいた10人を外に出させ指示する
「しゅ、襲撃だ!はよ外行かんかい!」
「りょ、了解です!」
外へ放り出した後、再度鍵を閉め今田は狼狽え、命乞いをする
「山城上総はん、我らと共に戦わないか?な?助けてくれへんか」
そう言うと上総は拳銃を構え今田に鋭い目線を向ける
「貴様黙れ、口からヘドロの匂いがしますわ。公害だから今すぐこの世から消えてください。斯衛の志を捨てた者には不要ですわ」
「クソがあああ、ふざけんなぁああ!」
上総は奴が撃鉄を引く前に一瞬で懐に飛び込む
「相手が女だからと言って甘く見過ぎです事」
ダァーン!
「ゴババアアアアア!」
そして上総は獅子堂一派のトップ、今田をこの世から消した
それと会議室の外にいた奴等からドアの鍵をぶち壊す
「何しとんじゃあゴラァ!」
ダァーン!
これ以上戦ったとて増援は幾らでも来る
上総は能代社長と共に駐屯地の外へ出てその場に安芸がドンピシャで戦術機をつけていた
「山城さん!早く乗って!」
追手が来る前に猛ダッシュで駆け走る
上総は安芸機、能代社長は志摩子機に補助シートに乗って脱出した
こうして上総が獅子堂一派の根城に乗り込んだ目的を達成した
「…証拠を取りましたわ。あとは恭子様に渡すだけです」
「山城さん、マジで凄いよ…」
「山城上総、感服致したよ」
この時上総達は知らなかった…獅子堂財団の総帥だった風音の妹の一人、獅子堂高嶺が暗躍してると言う事を
上総は崇宰邸に赴き証拠となる音声を録音して持ち帰った
「恭子様、間違いありません。唯依をやったのは獅子堂財団ですわ」
「よくやったわ。山城少尉」
「死ぬかと思いました!怖かったです!」
「石見少尉もよく頑張った」
そして激怒した恭子からの命令が下される
「唯依を傷付けた獅子堂財団の奴等は絶対に許さない――まずは徹底的に奴等を調べ上げろ」
斯衛軍分裂されるのも時間の問題だ。恭子は早急に動き出す
「了解しました。帝国斯衛軍を敵に回したらどうなるかを……それを思い知らせます」
まず上総は篁唯依襲撃事件の犯人が獅子堂財団だと流布する。
「能登少尉、この文章。世話になってる関東各所に送付しろ」
「了解致しました!」
信頼を得て、このクーデターに大義を持たせる。それと同時に奴等の信用を失墜させる
それは時期に獅子堂財団の耳にも届く
「本当に酷い連中ね。帝国斯衛軍――――音声あるとか言ってるけど捏造に決まってるわ」
「ええ、情報操作も甚だしいわ」
奴等はまるで東ドイツの秘密警察、シュタージの長官だったエーリヒ・シュミットみたいな事を言い出した
「私達の同胞を殺した上に捏造までするとは、もう人間じゃないわ」
「仁義外れの極みね。もう襲撃しよう。私も高嶺姉さんの役に立ちたい」
「そうね…今田、死んでくれてありがとう。そしてさようなら」
そして獅子堂財団と帝国斯衛軍は完全に緊張状態になった
総帥室から退室しようとした高嶺と秋葉だったが、一人の男が入ってくる
帝国斯衛軍の獅子堂響鬼――――獅子堂家の義弟だ。
響鬼は納得いかない様子で高嶺を問いかける
「高嶺姉さん、篁唯依―――唯依を襲撃したって本当ですか?俺は納得できませんよ。唯依が何故……こんな酷い目に遭わなければいけないんだ!何とか言ってください!」
それに対し高嶺は冷徹な表情を浮かべる
「目障りだったのよ」
高嶺の発言は自己中心的であり私怨と言っても過言ではない
要するに高嶺は悔しかったのだ。XFJ計画の主任にまで出世した唯依を敵視し私怨していたのだ。
響鬼はそれを聞いて怒りを表す
「姉さんは……親の言いつけばかり聞いた愚弄者としか言えません!逆恨みもほどがあります!」
「逆恨み?違うわ響鬼。これは我々の願いよ――――そして風音姉さんが遺した遺志でもあるから」
「か、風音姉さんが?」
「ええ、貴方は普通の斯衛の衛士とは違い、いつも最新鋭機に乗ってカシュガルでBETAと戦えたのは誰のおかげなの?風音姉さんの恩を裏切るつもり?」
醜悪な笑みを浮かべる高嶺は響鬼を見下す
そして続けて言い放つ
「血の繋がりはないとはいえ、貴方は獅子堂家の一員よ。当然、このクーデターに参加するわよね?」
もう我慢の限界だった……響鬼は高嶺の顔を見て咆哮した
「帝国斯衛軍は征夷大将軍をお守りするための組織です!それを分裂してまでクーデター起こすなんて貴女は間違ってる!おかしいと思わないのですか!?」
だが高嶺は響鬼の発言を一蹴し下衆な笑みを浮かべる
「間違ってるのは響鬼――貴方の方よ。衛士界隈全体の為、平和を守らなければいけないわ」
「平和を守る……?」
響鬼は高嶺に冷徹な無線を向け問いかける
「……唯依は無事なんですか?」
「彼女は生きてるわよ。まぁ、暫くは動けないでしょうけど」
「そうですか……唯依は俺にとってかけがいのない愛しい女性だ。遠距離恋愛で長らく顔を見て話せなかったけど彼女が日本に戻ってきた事を知って俺は嬉しかった。嬉しかったんだ!何故なら俺は唯依の事が好きだから!!」
響鬼は唯依に対する愛情を高嶺に向け言い放った。
それを聞いた高嶺は表情を崩さずこう言った。
「篁唯依が好きだ――――と?響鬼、貴方変わったわね。風音姉さんと共鳴し佐渡島を消滅させようと声を上げた貴方が彼女に恋路を抱いてるの?そんな事一度も聞いてなかったわ。獅子堂家は衛士になって戦場へ行く事は猛反対している。その例外は響鬼――貴方だけよ。何故衛士になれたか理解出来てるの?」
「どういう意味ですか?」
「義理の弟だからよ。貴方は親に捨てられ孤児院で過ごし風音姉さんに拾われて今に至る。そんなに篁唯依の事が好きなら獅子堂家から追放するけどその覚悟はあるかしら?」
もう逃げられない。響鬼は高嶺にこう言い向ける
「風音姉さんには世話になりました。が、貴女は唯依だけなく篁家を敵視して私怨している。それだけは変わりありません」
響鬼の言葉を聞いた高嶺は冷静にこう言い返す
「そう…なら貴方は獅子堂家から追放するわ。今すぐ荷物を纏めて出ていきなさい。もうここは貴方の場所じゃないのよ」
「姉さん……」
響鬼は秋葉の顔を見て話す
「秋葉も高嶺姉さんがやろうとしてる事を反対しないのですか?」
秋葉は目を逸らす
「……」
彼女は高嶺の実妹―――反抗する筈がない
秋葉の態度を見た響鬼は冷めた表情を浮かびつつこう言った。
「……そうですか。失望しましたよ。秋葉はこんな馬鹿げたクーデターが正しいと思い込んでる。残念ですよ。貴女が衛士になれなかったのは家族の方針ではなく姉さん達の駒だ!」
「!―――響鬼、アンタ…言っていい事と悪い事あるわ。私だって好きで衛士にならなかった訳じゃない。ただ風音姉さんや高嶺姉さんに裏切りたくないからよ」
「とにかく、俺は唯依のところに行く。もう二度と獅子堂家と関わりたくない」
響鬼はこう吐き捨て、速やかに荷物を纏めて獅子堂家から去って行った。
この時点で響鬼は獅子堂性を名乗れなくなり、その後、唯依の母親に相談し篁性を名乗り”篁響鬼”という名前になった。
その頃、恭子達は獅子堂財団との戦闘を想定し準備を進めていた
「仙台でも獅子堂財団は幅を利かせている。仲良い所に奴等の事を聞いてみましょう」
「感謝します。恭子様」
恭子は各所に奴等についての情報を募った。
すると…和泉が有力な情報に繋いでくれた
「恭子様!先日檜町駐屯地で山城少尉をサポートしてくれた能代社長です!」
「成る程…彼等は詳しいかもしれないわ」
そう、遠田技研工業は獅子堂財団と絶賛競走中だ
それに関わらず、奴等は妨害行為を行っている。
上総は携帯電話で和泉から渡された能代社長の名刺に記載してある電話番号をかけ当人に連絡した
「能代社長、お陰様で帝国斯衛軍は獅子堂財団を完全瓦解する予定です」
《そうか。敵の敵は味方だ。でも気を付けたまえ。今田は高嶺に利用されただけだ。現総帥の高嶺を捕らえれば獅子堂財団は終わりだ》
「……もう少し調べる必要性がありますわね」
調査依頼を幹部連中に絞ることにより、情報屋の伍代は核心に辿り着いた
「獅子堂財団がクーデターを起こした元凶は獅子堂評議会だ」
「獅子堂評議会?」
「簡単に言えば長老会さ。長年、斯衛軍を怨んでたらしいけどその原因は未だに不明さ」
伍代はこう語り、言い続ける
「評議会の中には強力な派閥が二つ存在しているみたいだね」
「名前は分かりますの?」
「穏健派と強硬派だ。武力を頼らず対話で模索してるのが穏健派…それと逆に武力を頼り今の日本を破壊しようとしている強硬派。獅子堂一派は強硬派側で獅子堂高嶺の私設軍隊―――今、東海地方の前線は強硬派がメインで守備している。一ヶ月前、斯衛軍仙台司令部庁舎が潰された。近衛第4師団衛士全員で出雲奪還作戦の犠牲者追悼式の最中にだ」
「まさか…」
追悼式に襲撃……なんて下劣な。
これではBETAと変わらない
「そう、獅子堂評議会の強硬派単体で壊滅させたらしい」
奴等は少数で戦術機に乗ってまで襲撃した。
それは言葉にできないほど、一方的で凄惨な結末だったという
帝国斯衛軍は征夷大将軍を守るための軍隊―――一部の斯衛軍衛士が暴走している
上総はこれを早く終わらせないといけないと決意を固めた。
上総は早々と立ち去ろうとした瞬間、伍代に呼び止められる
「おっと待ちな。もう一つ情報を教えるよ。篁唯依を襲撃した犯人の正体が分かったよ」
「誰ですの!?」
「北朝鮮の国家保衛省工作員のリュとチョルソ。当然だけど両者偽名を名乗ってる」
「北朝鮮……まさか……!」
「これはベアトリクスが直々に命令されたのではなく彼らの独断行動。祖国に帰ったら即粛正されることは確実だ」
「……そう、情報提供感謝しますわ」
「2人はそう遠くは行ってない筈だ。急いだほうがいい」
伍代がそう言った後、上総は急いで恭子達のところへ帰った。
鈴乃Side
2002年3月6日
練馬駐屯地の第三会議室で中隊全員集い、緊急ブリーフィングを開いた。
《4日前、獅子堂財団前総帥の獅子堂風音は帝国斯衛軍の崇宰恭子が殺害。警視庁は崇宰邸に赴き家宅捜索に入りました。これを受け征夷大将軍殿下は『崇宰大尉は無実の民を殺めるお方ではない』と擁護しています》
臨時ニュースで恭子様が獅子堂財団総帥だった獅子堂風音の殺害容疑を掛けられた報道を視聴していた。
当然ながら、私含め中隊全員は驚愕し恭子様が殺人を犯していた事など信じていなかった。
《尚、崇宰恭子含め共犯と思われる如月佳織も捜索。現在見つかっておりません》
「……恭子が理由なくこんな事する筈がねえ――――これは冤罪だ」
悠一もこの報道を疑った。
フェイクニュースか………あの獅子堂財団の事だ。事前に裏で手回ししたのだろう。
「佐渡島を消滅させようと推奨したくらい影響力があったからな。次女の高嶺が引き継いでも何も変わらない」
風音がいなくなった今、高嶺、秋葉、ナミ、桜の4人だけだ
他の妹3人は獅子堂財団の経営業は引き継げない。
《現総帥の獅子堂高嶺は帝国斯衛軍に宣戦布告を出したようです。獅子堂財団は『コメントを差し控えたい』と発表しました》
「……今の状況下では我々はまだ動けない――――命令が下されるまで待機だ」
「………恭子を……。見捨てるって言うのか!?」
悠一は怒りを表しこう言い放つ
怒るのも無理はない。私だって恭子様は理由もなくこんな事しないと思ってる。
「だったら!救うべきだろ!お前だって分かってる筈だ!恭子は、どんな状況下であろうと屈せず清く正しく美しく礼儀正しい女性だって事を!」
彼の言う事は分かる。だが命令なし動いたら軍規違反だ。
「命令なしで勝手に動くのか?悠一、私だってつらい。何も出来ないままで恭子様を……」
「あ……(そうだよな。誰にだってつらい筈だ)」
中隊全員沈黙したその時、一人の男が第三会議室に入室した
獅子堂性を”捨てた”響鬼だ
「久しぶりだな。豊臣――――まだ衛士続けてるのか?恭子様から直々に”斯衛の心得”を教わったと聞いたが、暫く見ない間に帝国軍に鞍替えか。落ちぶれたもんだな」
「響鬼か……お前とはもう二度と関わらないと言った筈だ。今更のこのこ出てきやがって何の用だ?」
「確かにお前とは絶縁した――――が、状況が変わって来たんだ。高嶺姉さん…獅子堂高嶺が帝国斯衛軍に宣戦布告した」
「たった今、報道で見た。まさか…」
「そのまさかだよ。俺は獅子堂家から追放され唯依の苗字を借りてお前達のところに来た。協力してほしい!」
悠一に嫌がらせした男が私達の前に現れるとは…でも何故ここにいてると分かったんだ?
それは私が知る必要がない。
「あ?自分は獅子堂家に捨てられたら俺達に協力だ?ふざけるのもいい加減にしろ!お前の顔見るだけで反吐が出るんだよ!」
悠一は腐った魚の目で響鬼に怒鳴り散らかす
「……あの時の事は本当にすまない。悪かった」
響鬼は悠一に謝罪し土下座した
「唯依の事ばかり考えて、前見えなかった。許さないとは分かってる。今回だけ俺と、いや俺達と協力してほしい!獅子堂財団をこのまま放って置くと日本は終わりだ。またBETAに蹂躙される…」
響鬼の謝罪に対し悠一は呆れるようにこう言った。
「―――――本当に自分が悪かったと自覚してんのか?嘘だったらぶん殴るぞ」
「本当だ!信じてくれ」
響鬼は情けない気持ちでいっぱいだろう。悠一をいじめた張本人で斯衛軍の居場所をなくさせた奴だ。
いずれ社会的制裁が下されると確信していたが、どうやら現実になった。
紅林はこの光景を見て困惑する
「え?どういう状況下全く掴めないのですが…」
「話せば長くなるぞ?」
私は悠一が衛士界隈の一部から嫌われてる理由を少し話そうとしたが響鬼が先に話しかけた
「事の発端は豊臣が頻繁的に軍規違反してたからだ」
「……それだけですか?」
紅林は困った顔でこう言うが…響鬼は即答する
「そうだ。彼奴は何回も注意喚起しても聞かなかったのでな。少し制裁したんだ。その後、風音姉さんから”やり過ぎだからそれ以上はやめなさい”と言われて……」
これは悠一が招いたミスの一つだ。自業自得だ
「悠一、どうする?此奴と一時手を組むか?」
私は悠一に問いかける。
それに対し悠一は真顔で言い放つ
「……事情は分かった。が今回だけお前と手を組むぜ。事が終わったら俺達に関わるな。例え篁中尉の”夫”になってもだ」
「分かってる。あと…」
「?」
「ありがとう……」
響鬼は悲しげな表情で悠一に感謝の言葉を添えた。
斯衛軍Side
その頃、獅子堂一派は遠田技研工業の本社の前でいきなり現れた
「こんにちはぁ」
「流石、遠田技研工業さん。立派な会社ですなぁ」
しかも若い男がたった2人でだ
それを見た警備員は不審者と見抜き奴等に話しかける
「何の用ですか?アポなしで来られると困りますよ」
「なんか用かとはよくぞ聞いてくれました」
そして次の瞬間
「お宅の社長の命、貰いに来ただけですわ」
奴等はサブマシンガンを出した
ガガガガガガッ
「ぶは!」
そして何の前触れも無しに撃って来た一瞬で警備員が蜂の巣にされた
偶然、会社に用事で来ていた黒服の斯衛軍衛士2人が拳銃を持ち応戦試みるが…
「ガアアアッ!?」
「ゴべェエエ!?」
斯衛軍衛士2人を含め後から駆け付けた警備員5人も容赦なく蜂の巣にされた
さらに奴等は狡猾だった
「!」
「見つけたぞ!崇宰ぁああ!」
「人生終了のお知らせや!」
恭子が警察に追われてるにも関わらず堂々と遠田技研工業本社に赴く時間帯を狙っていた
その隣にいる佳織も恭子の護衛として付き添いしている形で同行していた
そして…ガガガと射撃音が鳴り響く
「貰ったぁあああ!」
「恭子様!!」
恭子と佳織は駐留していた現金輸送車の後ろへ飛び込んだ
同時に佳織は拳銃を取り出す
「くっ…1発脇腹に当たってしまいました」
「如月中尉、大丈夫か!?」
「問題ありません。いけます!」
――――。
「あの女、斯衛の衛士やな……反応の良さが異常だった。視野が広い―――厄介そうや…」
「確かに正面から突っ込んだら危なそうやな―――――――――ほなこれ使おか…冥土の土産や」
次の瞬間、なんと奴等は現金輸送車の下から手榴弾を滑り込ませた
しかし佳織はその瞬間をしっかり見ていた
「!」
手榴弾を見たら普通は本能的に逃げる
「手榴弾か!」
「大丈夫です!死なせたりは絶対にしません」
だが佳織はベストの判断をする
「此方も冥土の土産を差し上げる!」
当たり前のようにそのまま拾って投げ返した
それは奴等の手前、空中で爆発した
ボガァァァァン
「ぐっ!?」
「うああぁっ!?」
状況判断に長ける佳織ならではの芸当だ
今なら煙で視界が切れている
「恭子様!今のうちにお逃げを!ここは私に任せてください!」
「―――すぐに応援を寄越す!」
奴等が狼狽した一瞬の隙を突いて佳織が恭子を避難させた
そして佳織が現金輸送車の影から飛び出す
「ここで一気に決める!」
しかし…返って来たのは銃弾の雨
ガガガガガガガガ
それを佳織は紙一重で躱した
男達は寸前で身を躱し軽傷で済んでいた
「クソが!怪我したやないか!」
「治療費払えや!短髪!!」
「斯衛の心得を捨てたか―――いきなり襲撃した貴様等の言葉を聞くに値しない!」
正面からじゃキツい、
次の瞬間、男達はサブマシンガンを佳織に向ける
「ここで仕舞いやぁ!」
「蜂の巣なれやぁああ!!」
「ぐぅううう!」
降り注ぐ弾丸をバックステップで躱しながら佳織は会社の中へと入っていった
佳織の逃亡に男達は目くじらを立てて後を追う
「待てやコラァ!」
「逃げんな!」
「(ここを乗り切るには…)」
次の瞬間、ズカズカと靴音が響きライアットシールドで拳銃を構えてる機動隊員数名が奴等を囲んだ
「そこまでだ!無駄な抵抗せず投降しろ」
機動隊員達が保持してる拳銃の銃口に奴等を向ける
「なんやて…」
迅速な対応。恭子が通報したのだろう。
無論、この報道を見た一部の警官や機動隊員等は信じていなかった。
その時だった。機動隊員達の拳銃を構え弾丸が放たれる
それはまさに閃光…一瞬で引き金を引いた
”恭子様を襲撃しておいて無事に帰れると思ったら大間違いだ”と佳織は口角を上げニヤリと笑った。
そして2人は死亡した。
予想だにしなかった獅子堂一派の急襲…恭子の対応で何とか事なきを得る事が出来た。
そして、その日の夕方――――恭子に予想外の報を届く
「え!…なに!?唯依が!?」
恭子は上総に連絡し急いで病院に向かった
「唯依!」
「唯依無事でしたのね」
「恭子様……それに上総も来てくれたのね」
なんと意識不明だった唯依が目を覚ました
「唯依……っ。よかった…よかった…」
「本当によかったですわ。唯依に何も返せず先に死なれたら、もう…」
「ありがとう。上総…恭子様、明日から退院して復帰します」
こうは言っているが、生きるか死ぬかだった―――――――唯依は当分動ける体じゃない。
その後恭子は今回の一件を唯依に告げた
「………そんなくだらない事の為に私を襲ったのか?獅子堂財団……絶対に許さない!」
「放っては置けないわね」
「わたくしも命かけて戦います」
恐らく今回の襲撃犯は2人とも獅子堂財団の犬。命を懸けた真の戦いは既に始まってる!
2002年3月7日
獅子堂財団総帥、獅子堂高嶺が帝国斯衛軍壊滅と征夷大将軍暗殺計画に向け本格的な準備を始める
「帝国斯衛軍打倒する前に征夷大将軍殿下を暗殺しなければならない。分かるわね?秋葉」
「うん、その為に高嶺姉さんについて来てるから。どんな事でもやるわ」
恐らく帝都が戦火に包まれるだろう
このクーデターは裏社会でも噂になっている
戦争で疲弊するであろう帝国斯衛軍を壊滅仕向けるなど奴等は吐いて捨てる程いる
高嶺が計画の内容を秋葉に打ち明けようとしたその時
「総帥!大変です。ニュースを見てください!」
「!」
社員が駆け付け、指示に従いテレビの電源を点ける
そこに映っていたものは……誤報を知らせる内容だった。
《昨日、5日前の報道で獅子堂財団前総帥の獅子堂風音は帝国斯衛軍の崇宰恭子が殺害と報じましたが、後に誤りだったと判明しました。視聴者の皆様に困惑させてしまった事をお詫び申し上げます》
女性アナウンサーはこう言ったが、高嶺は不思議なものを見せつけられたように茫然とした。
「こんなあっさりと……馬鹿な」
奴等は帝国斯衛軍を甘く見過ぎていた―――それを気付かず安易な考えでクーデターを成し遂げられると思い込み確信したのだ。
《速報が入りました。獅子堂財団総帥の獅子堂高嶺が警視庁の発表で指名手配するそうです》
「――――!!」
彼女は自暴自棄で企業のトップとしては相応しくない判断を取った
「帝都城ごと煌武院悠陽を始末しなさい!」
「宜しいのですか?そうなると貴女は日本にいられなくなります。獅子堂財団は……倒産になります」
「構わないわ!」
秋葉は自分の両頬を当てて困惑した
「高嶺姉さん!」
「一体、誰が私達の計画を外部に流出したの?」
社員は青ざめた顔を浮かべこう言った
「総帥……破産手続きしましょう。私設軍隊を解体させて真面な会社作りを……一からやり直しましょう」
そう言ったが、高嶺は耳貸さなかった。
「それだけは絶対にダメよ!」
「総帥!」
「私は獅子堂財団の獅子堂高嶺よ。風音姉さんの夢を託された選ばれし一人なのよ!姉さんの夢を実現するまで私は屈しないわ」
高嶺は社員を睨みつき社員の言葉を聞かない。
社員の言葉を聞いた秋葉は何かを諦めるように、ふふ、と笑い目が覚めた
秋葉の薄ら笑いを見た高嶺は静かな怒りを表す
「何笑ってるの?秋葉。倒産したら私達は路頭に迷う事になる――――それだけは避けなければならない」
「高嶺姉さん、もうやめよう。私達の負けよ――最初から無理だったのよ」
「スペースコロニーは――――QTプロジェクトはどうなるの!?」
「凍結確実だね。謝罪…ううん、降伏しよう!今なら間に合うよ」
秋葉は高嶺に帝国斯衛軍に謝罪・降伏するよう嘆願する。
高嶺は決断を下す
「………降伏、す………」
高嶺が降伏すると言いかけたその時、外から銃撃音が鳴り響く
「!」
社員は窓から覗くと……帝国軍の撃震12機と獅子堂財団の私設軍隊が所有する87式機械化歩兵装甲12機との戦闘している光景を見てしまった
無論、機械化歩兵装甲では戦術機に勝てる筈はなく一方的に制圧される。
高嶺は歯軋りしつつ怒りを堪える
「私達はまだ成し遂げてない目的があるのよ。87式機械化歩兵装甲を改修した強化外骨格―――QTアームズ。量産化は不透明だけどこの戦争を終わらせる鍵よ」
「え?戦術機じゃないの?!強化外骨格を製造するなんて…小型種しか掃討出来ないよ!」
秋葉はこれは流石に困惑しつつ驚愕した。
「飛べない強化外骨格作っても意味ないよ」
「飛べるように設計してある。それに飛行形態と多脚の走行形態の2形態を持つ機体なのよ?」
自慢げな笑みを浮かべる高嶺はノートパソコンを操作し秋葉に設計図を見せる
「よく見て。これが”QTアームズ”よ。本当はハーディマンを基に製造しようと目論んだけど、風音姉さんの悪評が世界中に広まって製造できなかったのよ」
「これ、本当に強化外骨格?!」
高嶺の目的はスペースコロニーを作るだけではなかった。
本来の目的は帝国斯衛軍を壊滅させ征夷大将軍殿下を暗殺した後、日本を乗っ取りつつ小型種しか掃討出来ない強化外骨格を大量生産しようとしていたのだ。
唯依の殺意は……あくまでも私怨によるもの。高嶺にとっては屈辱だった。
「篁唯依はまだ生きてる。ならば排除しなければ……風音姉さんの夢を実現するのは不可能……」
「風音姉さんが成し遂げたかった事をやるには篁唯依を粛正するの?」
秋葉は漸く現実を直視し高嶺に反抗する
「そんなの、そんなの間違ってるよ!高嶺姉さんはどうして篁唯依を怨んでるの?」
「秋葉!」
「生産性が伴ってない私怨だらけのクーデターを起こすなんておかしいよ!!」
「これは獅子堂財団の未来を…」
「違う!もういい加減気付いてよ!やっと響鬼の訴えを理解出来た――――もう姉さんたちの言いなりになるのは嫌だよ。だからもうやめよう」
秋葉は悲しげな表情を浮かび高嶺にそう訴えるが、その訴えは高嶺の耳に届かなかった。
「追い出したかつての義弟の言葉を誑かされたのね?」
「!――――」
「くだらない私怨の為にその機体を実戦投入するなんておかしいよ!!」
この発言を聞いた高嶺は激怒する
「……秋葉!貴女、それでも獅子堂家の一員なの!?」
奴は最後まで屈服する事はなかった
秋葉は高嶺に反抗しビンタ一発喰らわせようとしたその時、数十名の兵士達がズカズカと総帥室の中に入る
その兵士は………帝国軍だ
「日本帝国軍!?」
「ええっ!?」
兵士は単刀直入にこう言った
「獅子堂高嶺、国家反逆罪の容疑で拘束します」
兵士の言葉は嘘ではない。本気でやる気だ。と高嶺は冷静沈着で悟った
「………(嘘を突き通せない。最早ここまでか)」
突如、獅子堂家から追放された響鬼が高嶺の前に現れる
「姉さん……貴女の計画。風音姉さんが掲げた夢は破綻しました。罪を償って暫く反省してください」
「響鬼、貴女がどうしてここに?」
「斑鳩中佐の直々の命令出来ました」
「……分かったわ。降伏する」
こうして獅子堂高嶺がやろうとしたクーデターは失敗に終わり、後にこの斯衛クーデター未遂事件は『世界一ダサい革命』と揶揄された。
このクーデターの影響で獅子堂財団の株価は暴落。
QTプロジェクトは中止。スペースコロニー開発計画は遠田技研工業が引き継いだ。
そして数日後、獅子堂評議会の決定で高嶺は総帥を辞任。強硬派である高嶺派は解散し民事再生法により獅子堂財団は倒産。獅子堂家が仕切る家族経営での会社体制は崩壊。一家は離散となった。
秋葉やその妹達のその後については……?
秋葉は帝国軍に自主志願。訓練学校に入学し現在、正規衛士を目指して通っている。
残りの2人はそれぞれ別の道へと辿って行った。
財団は倒産したが、唯依を襲撃した犯人がまだ逃走中だ。
帝国軍は警察と協力し唯依を襲撃した奴等を追っている。
獅子堂財団倒産から3日後、唯依を襲撃した犯人を遂に見つけた
奴等は新潟港で日本を脱出し南沙諸島に臨時政府を置いてる北朝鮮に亡命しようと目論んでいた。
奴等に立ち向かったのは………入院してる筈の唯依だ!
「見つけたぞ……よくも私を傷付けたな。観念しろ!」
「嘘だろ…生きてやがったのか!?」
「!」
その正体は、北朝鮮の国家保衛省に属する人間…要するに工作員。コードネーム…リュとチョルソだ。
2人については上総から情報提供を得ていた。唯依はまだ入院しているにもかかわらず病院から脱走し奴等を追いかけていたのだ
リュは醜悪な笑みを浮かび、唯依に銃口を向ける
「篁!お前は調子に乗り過ぎだったんだよ。恨みはないが敬愛なるベアトリクス同志の為に死ね!」
「!」
まだ怪我が治っておらず包帯をしてる唯依には奴等を制圧するのは難しい
奴等は北朝鮮工作員として相当な覚悟を持ってくるだろう
リュは弾丸を放とうとした次の瞬間、不知火2機が奴等の前に立ち塞がる。
唯依は2機の左肩部にある紋章を見ると、佐渡島同胞団の紋章。
悠一の94フルアーマーと鈴乃の94サブレッグだ。
《動くな!抵抗するとお前等全員ミートソースにする》
「94フルアーマーに94サブレッグ…豊臣少尉、それに大倉大尉も来てくれたのか!?」
《獅子堂財団は既に倒産し首謀者の高嶺は塀の中だ。篁中尉、怪我してまで奴等を…》
唯依は刺した奴等を許せなかった。引き下がれない。
だが、彼女は奴等との戦闘するのは厳しい。悠一と鈴乃は機体から降りて拳銃で奴等に銃口を向ける
「唯依、正直アンタの事は凄腕の衛士と評価してる。まだ死ぬには早いぜ」
「……豊臣……(そうか。貴様は私を助けようと)」
「俺も一応斯衛の衛士だぜ?今は帝国軍にいてるが、お前等みたいにそんな卑怯な真似するなんて斯衛の恥なんだよ!」
悠一はこの生きるか死ぬかの相手に対し高らかに言い放つ
だが奴等の目は死んでいない
「ぐぬぬ……!」
「クソが…ブチ殺したる」
「正々堂々、二人掛かりでかかって来い!」
「馬鹿め。正々堂々だと。千載一遇のチャンス逃して」
「地獄で後悔させてやる…」
次の瞬間、悠一は無言で発砲
狙いはチョルソだ。
奴はスペツナズナイフで悠一を襲い掛かろうとしたが、銃弾が当たり抵抗する術なく港から海に落ちそのまま死んだ。
チョルソの死を見たリュが背を向けて逃げようとする
「逃がすか!」
鈴乃はリュの両足に目掛け発砲し、奴は崩れ倒れる
「ぐあっ」
唯依は奴の頭を踏みつける
「がぁっ!」
「貴様、ベアトリクスの命令で動いてないだろ。言い訳は無用だ」
「そ、それがどうしたってんだ!」
奴は唯依の顔を見て睨み最後の抵抗をするが、鈴乃に背中を踏みつけられ……
「地獄で後悔するのは貴様の方だったな」
「ひぃ…!」
「もう二度と生まれ変わるなよ」
鈴乃は拳銃でリュの背中目掛けて弾丸を放ち完膚なきまでに穴だらけとなり奴は即死した。
こうして鈴乃は唯依を助けた形で襲撃犯から落とし前を取った
「背中からの射撃法はベアトリクスの戦法を参照にしただけだ」
「おぉ、そうなのかよ」
「大倉大尉、助かりました。感謝します」
斯衛クーデターは終結した
後に唯依の虐め疑惑は特定の衛士を虐めた事については本人は事実無根だと否定したが、本当の真実はどうなのか当事者しか知らない。
まだ続くであろうBETA大戦…その後、唯依は瑞鶴の改良型”翔鶴”の開発を貢献したおかげで大尉に昇格した事はそれは別の話である。
2002年3月11日
獅子堂響鬼改め篁響鬼は、斯衛軍上層部の命令で韓国に赴き鉄原ハイヴの攻略作戦参加する事になった
その前に彼は練馬駐屯地で悠一達に”最後の挨拶”として別れの言葉を言った
「……豊臣、上層部の命令で俺は韓国に行く事になった。鉄原ハイヴ攻略作戦に参加するんだ。だからお前とはもう二度と話せないかもな」
「………響鬼、俺は」
「もう過ぎた事だ。お前は過去に囚われ過ぎだ。いい加減前を向け」
「……」
「お前がしでかした事は忘れないし、二度と関わりたくない!」
「……その言葉、そっくりそのまま返してやる。確かに俺は軍規違反を何回も犯してきた。が俺は、信頼できる恋人やパートナー、俺の仲間たちが支えてるからな」
悠一は響鬼に向け自慢げに笑みを浮かべる。
「………恭子様が好きなんだろ?」
「ああ」
「なら彼女を大事にするんだ。俺が言いたい事はそれだけだ」
「分かってる」
「……俺の事は死んだと思い込んでくれ。また唯依と遠距離恋愛になるな」
そして悠一は響鬼に別れの言葉を告げる
「あばよ。俺の憎き衛士」
響鬼は無言で立ち去り、韓国に赴いて行った。
悠一Side
響鬼が韓国に赴いてから4日……俺は練馬駐屯地でいつもの日常を過ごしていたが、突如、能代社長がムーア中隊の衛士達の前に現れ、俺達に光州作戦戦没者式典に招待した。
式典の日程が遅れた理由は桜花作戦後の後処理が追われていたからだ。
式典の会場は……日本武道館だ。
慰霊式典とは言え、散って行った衛士達の遺体はどこにもない。
「……」
俺はただ無言……黙り込む。
ヤベ…眠たくなりそうだ。
「悠一、ここで寝るな。この式典の参列は名誉な事だ。終わるまで我慢しろ」
鈴乃に注意された。当たり前だが…。
厚生労働省の先導により皇帝陛下と征夷大将軍がご臨席し、参列者は礼をした。
司会を務めるまりもは式典を進行し国歌斉唱と一言を添える。
どうやら帝国軍に復帰したらしい
復帰した時期は桜花作戦終結後。居づらくなったという理由じゃない。
日本国歌”君が代”が流れ俺達含め参列者は斉唱する。
斉唱を終え、まりもはご着席願いますと一言を添えた。
帝国軍の兵士達がキッチリと整列し敬礼。壇上に7人のうち1人の帝国軍将校は演壇に立ち整列してる兵士達に向け演説し始めた
「我々、日本帝国軍は先の桜花作戦からの復興を図ると同時に対テロ戦争という非常に困難な戦いへの対応も迫られている!5ヶ月前のユーコンテロ事件でテロリストの卑劣な襲撃により、残念ながら既に多くの国連軍衛士がその貴重な命を奪われた!苦楽を共にした我々の戦友!部下!信頼していた上官!大義の為に散った衛士達の御霊を弔う為に!本日ここに、戦没者式典を執り行うものである!」
儀仗兵はピカピカで常に綺麗な軍服を着用している。
光州作戦は簡単に言えば国連軍と大東亜連合軍の朝鮮半島撤退支援を目的とした作戦だ
1997年12月末で北朝鮮――朝鮮民主主義人民共和国の首都平壌はBETA侵攻によって陥落し翌年1月、南朝鮮―――韓国の首都ソウルが陥落。そして光州の悲劇と呼ばれる彩峰中将事件が発生。
彼の判断で避難民救助を優先した結果、戦線が崩壊し指揮系統の混乱を招いた。
戦死者は民間人含めて130万人を生んだ。作戦終了後、国連は戦犯として彩峰中将の身柄引き渡しを要求するが、前の内閣総理大臣、榊是親の尽力により『日本国内で厳正な処罰を下す』という口実で国連を納得させる。しかし彩峰中将の罪状が”敵前逃亡”とされた事が後の12.5事件―帝都クーデターへと繋がる渦根を残す事になった。
式典の末席に能代社長が座っている。恭子の人脈も流石だな。
御剣財閥や山城財閥もそうだが、戦術機関連の会社の執行役員や幹部、社長と繋がってるのも納得できる
とは言え、式典の参列は名誉な事だ。俺達は誇り高き衛士として参列出来たんだ。
日本政府の大臣クラスも出席してるようだが、非公開になってる。理由はテロ対策だ。
………帝都クーデターで榊前総理大臣が暗殺されたのをきっかけに公式行事への要人参加は原則非公開となったらしい。
だが、100%とは言い切れない。
「彩峰中将閣下は我が帝国軍にとって誇りある軍人の一人であり軍神と呼べるほど讃えている!そして朝鮮半島南部をBETAの脅威から消えた暁には光州で戦没者慰霊碑を建てる!我々は改めて戦地を赴き散って行った衛士の責務を果たし合おう!人類救済を全うする事を!その為なら!我々は惜しみなく命を捧げるという事を!その誓いを胸に!帝国の未来の為に!名誉の戦死を遂げた我等が友に!ここに謹んで哀悼の意を表する!!日本帝国軍軍人魂よ!永遠なれ!!」
鈴乃Side
戦没者式典が無事終了し、私達は別行動をとる事になった。
悠一は能代社長の誘いで遠田技研工業の戦術機工場へ赴いた。
「うーん!」
「久々の休暇です!飲みましょう!!駒木中尉」
「程ほどにね」
私と駒木、早乙女、紅林、佐竹が練馬駐屯地に帰ってPXで酒飲みながら話そうとしていたその時
「衛士らしい顔になって来たね。大倉………」
私が振り返ると、そこに帝国軍簡易ジャケットを纏った3人が現れた。
「貴様は………?」
一人目はお調子者の性格を持つ金髪の青年男性。二人目は黒髪で右側の前髪の一部が銀髪の青年男性。三人目は銀髪のベリーショートヘアで首元が見えるほど身体に蜘蛛のように見えるタトゥーを喉元まで入れた女性だ。
私はその女性の顔を見てふと驚いた
「(その首元まで見えるタトゥー…見覚えがある)木元桃花……まさか木元か?」
戦時が続き、この戦争が長引く中で日本人がタトゥー入れてる人間は珍しい
「その様子だと元気にしてるようだね」
「ああ、木元はどうなんだ?カシュガルハイヴの近くで戦闘してたんだろ?」
「そりゃあもう色々と大変でさ、BETA群が大量に出てきて大騒ぎで仲間たちも次々と亡くなったよ」
「そうか…それは残念だったな」
「俺達の事忘れて貰っちゃあ困りますよ」
「駒木から話聞かせて貰ったよ。佐古と浪岡だな」
佐古大和
浪岡常吉
木元桃花
恐らくだが第九九九懲罰大隊の生き残り
……上層部からこの中隊に補充してきたのか?
「はい!佐古大和です!!」
「浪岡常吉と申します。以後お見知りおきを」
私は木元が何故衛士になったか問いだした
「木元、お前はアイドル辞めたとまでは知ってたが、最近何しているんだ?どういった経緯で衛士になったのか聞きたいものだな」
私の問いに対し木元は困惑の表情を浮かべる
「まあまあ、質問責めはやめようよ。ゆっくり一から話すからさ」
木元は笑みを浮かべながら今までの経緯を語りだす
木元桃花という女性は訓練学校時代の同期の一人であり、卒業後、衛士の道に入らず大阪の地元アイドルグループのメンバーの一人になって帝国軍の宣伝塔として活動していた。
だが彼女はそれを嫌気を指しグループから脱退。事実上引退状態となる。
その後、シンガソングライターに転向し音楽活動するが、娯楽が限られてる状況下だからか表舞台ではなくストリートミュージシャンとして場所を転々しながらギターで演奏しながら歌っていたが、帝国軍憲兵に見つかるが、厳重注意で済ませ難を逃れた。その後、自らの意思で蜘蛛のタトゥーを喉元まで入れ両手首と足首にも刻まれた。憲兵に厳重注意されたのも関わらず同じことを繰り返し場所を転々した。
北海道の旭川市郊外で音楽活動していた中で12.5事件――帝都クーデターがきっかけで帝国軍に志願。駒木が配属される筈だった第九九九懲罰大隊に配属され甲21号作戦や桜花作戦に参加し無事生還した。
何故懲罰大隊に配属されたのかは一部の将校が半グレと勘違いしていたと言う。
その後、佐渡島同胞団に加入し現在に至る。
「―――殿下の演説聞いてなかったら志願してないよ」
木元は駒木の顔を伺い軽いノリでこう言った
「アンタ、確かクーデターに参加した衛士の一人だろ?」
駒木は木元の言葉を聞いて苦い表情を浮かべる
私は木元を制止しようとするが、駒木は真顔で言い返す
「ええ、そうですが……」
「やっぱりな。罪悪感をいつまでも抱いてると幸せになれないよ」
「……」
「ま、仲良くやろうな。――――飲みに行くんだろ?私達も混ぜて構わないか?」
木元は小さな笑みを浮かべこう言った。
それに対する言葉はこう言い放った
「ああ、構わないぞ。人数が多い方が楽しく飲めるからな」
木元、佐古、浪岡を加え、駐屯地へ帰る前に居酒屋に寄り道した
「大倉大尉!御馳走になります!!」
「基地で飲むんだぞ?」
「それは分かってます!でも嬉しいですよ。駒木さんと一緒に戦えるなんて夢みたいです」
ま、偶にはこういうのも、いいよな。
佐古の教育係は駒木に任せるとするか。
悠一Side
俺は能代社長の誘いで遠田技研工業の戦術機工場へと赴いていた
中に入ろうとしたその時、佐渡島で任務遂行している筈の伊隅大尉と晴子が俺の目の前に現れた
「―――!伊隅大尉、任務遂行してる筈じゃ」
「ああ、5日前に終えたよ」
確か佐渡島の偵察任務だったよな……予定より早く終えたって言うのか?
「その様子じゃ、”信じられない”と思ってるのだな。色々あって切り上げただけだ」
何があったのかは察しておくぜ
色々なトラブルに巻き込まれたんだろう
晴子は笑みを浮かびながら軽い口調でこう言った。
「いや~、面倒事に巻き込まれてさ。大変だったよ~」
「柏木……んん、麻里少尉、余計な事を言うなよ」
「はーい」
………あとで鈴乃に報告しておくか。
戦術機工場前で話しているその時、能代社長が現れた
「よく来てくれた。3人共」
伊隅大尉は能代社長にお辞儀する
「お初にお目にかかります。遠田技研工業社長、能代博之」
「君が国連軍の伊隅みちる大尉か。初めまして」
「……私は死人です。その名前はとっくに捨てました。ですから今の名前は”大地久美子”です」
「成る程、甲21号作戦で君は戦死した。と」
「はい」
「話の続きは中に入ってから聞こう」
そして俺と伊隅大尉、晴子は能代社長と共に戦術機工場の敷地内に入る。
中に入ると、36機の武御雷が並べていた。斯衛軍が運用してるモノじゃない。帝国陸軍カラーだ。
「00R………!?」
「武御雷か……」
「こ、これって帝国斯衛軍が運用してる機体ですよね。確か…少数しか生産してないから帝国軍は導入を断念した筈……」
晴子の疑問に対し、能代社長は冷静沈着でこう答えた
「確かにその通りだ。この機体は”世界最高傑作の戦術機”としての評価を受けている。だからこそ増やさねばいけない」
「………」
「黙るのも無理はない。帝国軍の注文で我が社が製造した」
能代社長はこう言うが、伊隅大尉は納得してなかった
「能代社長、武御雷は少数しか生産されてない戦術機。一度導入を断念した帝国軍が再導入をするとでも言うのですか?」
「ああ、君には理解し難い事だがこれは事実だよ」
ん?この工場、警備員や護衛一人もいないぞ
どうなってやがる?
「能代博之社長…護衛はどうした?」
「必要ない。警備や身の回りの事は信頼できる社員達がやってくれる」
成る程、天下の遠田技研工業の社長は人嫌いか。
俺を呼んだのは社長の自慢話を聞かせる為か?
「あはは、能代社長も案外暇つぶしする事あるんですね」
晴子は笑いながらこう言った。
「……生憎と私は暇ではない」
と能代社長は言い返した。
「だろうな。裏でコソコソと糸を引くのにお忙しいそうだ。アンタは恭子と一部の帝国軍や斯衛軍を自由に動かせる力を使って、”サンダーボルト作戦を計画し俺達を欧州へと送り込もうとしている―――テログループのリーダー、テオドール・エーベルバッハ討伐する為に94サブレッグ等の戦術機を投入してな!安全圏で戦争ってチェス盤を眺めるのはいい気分かよ!?俺達は遠田の駒じゃねえぞ!」
「やれやれ。まだゲームは始まったばかりだと言うのに」
………?
そうだ、俺達は遠田の駒じゃない以前に政府の犬でもない。
この男、何企んでやがる!?
「ついてこい」
何かムカつくな……!
「やい!おっさん!詫びはねえのか!?桜花作戦で大勢の衛士が死んだんだぞ!!」
俺の怒りの言葉を聞いた能代社長は真顔でこう言った。
「テログループの行動とBETAというイレギュラーを予見しておけば良かったと言うのか?私は御覧の通り、ただの実業家だ。衛士みたいに戦術機は乗れないよ」
「……チッ」
俺は舌打ちし睨み付けるがそんなことしても無意味だ。
戦術機工場の中に入り、階段で地下を降りつつ俺と伊隅大尉、晴子の3人は複雑な表情を浮かび能代社長について行く。
奥へ進むと……そこは博物館だった
「蔵書に化石標本、クラシックな車まで……」
「まるで博物館ですね。大尉」
「関係者しか入れない地下博物館ってか。お宝集めがアンタの趣味か?」
「そうだ…もっと集めておけば良かったと後悔してる。BETA大戦が長期化の影響で世界中から多くの美術館や博物館が失われたからな」
そうかい、いい道楽だ。過去の遺物に囲まれて暮らすのが年寄りにはお似合いだぜ
博物館の奥に入ると、そこには俄か信じ難い光景があった
「私は決めた。人類は愚かであり儚い希望を託す様な存在ではない。希望の灯を守るには……人類が平伏す巨人族の絶大なる力が必要なのだ」
俺達が見たのは………F-4ファントムをベースにした機体、スーパーファントムが製造している極秘地下無人工場だった。
俺達は驚愕し、製造過程を見学する
さらに奥へ進むと、完成したスーパーファントムが300機ずらっと並んでいた。
「F-4SP スーパーファントム。ボーニング社が開発した第2.5世代機だ。そして我が社のライセンス生産で”撃震弐型”として製造している」
「撃震弐型……」
「第3世代機に迫る対BETA機動砲撃戦と格闘戦能力が実現。脚部に約10%延伸に伴い推進剤容量も増加。素材の変更によって各間接の強度向上が図られ、長刀などによる高機動密集近接格闘戦の対応が可能になった。ユウヤ・ブリッジスや篁唯依などの衛士の戦闘データをフィードバックさせ、高い凡庸性も実現させた。それだけじゃない……中身も全て不知火と同等になる初めての戦術機だ」
撃震弐型……そう言われてみればそう感じる。
俺は感動し歓喜した
「凄ぇじゃねえか!クソおっさん!!そうだよ!俺達衛士が腹の底から求めてんのはこういう戦術機だぜ!撃震や瑞鶴みてぇな棺桶を大量に揃えたって貴重な衛士を無駄死にさせるだけだ!意味ねえんだよ!チクショウ!!フルアーマーガンダムや94フルアーマーで戦ったから良く分かるぜ!俺達に必要なのは一騎当千の戦術機だ!!」
「次世代戦術機はこれだけじゃない。見たいか?豊臣悠一少尉」
能代社長がそう言われたら嬉しさと感動が隠し切れない。そして俺は伊隅大尉や晴子を置いてけぼりにして猪突猛進で無人工場の中へ走る
「おい!おい!おい!マジかよ!最高じゃねぇか!!」
無我夢中にただただ走る
「おおい!!どっちだ?おっさん!無人工場じゃ聞く相手もいねえ!こっちか!?ああクソ!勝手に行くからセキュリティー切っとけよ!いやっほ~~~っ!!」
「やれやれ。猪突猛進…父親にそっくりだ」
走っていく中、色んな戦術機が見え次々と鑑賞した。
吹雪改
翔鶴
武御雷(国連軍仕様)
月虹
その数はなんと4機合わせて120機!
「ハハッ!凄ぇぞ!!世界の最先端がここに集まってる!!戦術機の未来がここにあるんだ!うおおお!!」
勝てる!勝てるぞ!この軍団があれば俺達はどんな敵だって絶対に勝てる!もう二度と負けやしない!!
隅っこまで走った後、汗がだらだらと流し疲れた
伊隅大尉達が俺のあとを追いかけるように走っていた
「はぁ…はぁ…工場の隅々まで走るとはとんでもない体力だな」
「ちょ…先々行かないでよ…」
「わりぃわりぃ」
能代社長は電動カートで俺達のもとへ辿り着いた
「若いな……隅っこまで走っていくとはな」
電動カートを降り、身嗜みを整える
「能代社長、コイツらはまだ一つも使えないんだろ?」
「ああ、まだ実戦投入は至っていない。予定ではまだ5、6年先だ…帝国軍上層部や帝国斯衛軍の共和派はまだ悪循環なところを抜け切れておらずテオドール・エーベルバッハという脅威に何の対応もできていない。BETAを甘く見た自分たちの無能さを認めずキリスト教恭順派のテロを前にまた同じ過ちを犯そうとしている。ここを失えば、我々の未来が変わってしまう」
伊隅大尉は能代社長にこう言った
「その為に我々が奴を食い止めろと?そう仰いたいのですね」
「可能性があるならば……BETA共々消えて欲しいぐらいだよ。月虹の製造を征夷大将軍殿下に報告した。最初は”対人戦を考慮するなど言語道断”と一蹴されたが私はこう言い返したよ。”BETA大戦の真っただ中、どんな状況下であっても対人戦を考慮しなければならない時がある。テログループの首領であるテオドール・エーベルバッハを討伐しないと人類はBETAに負けてしまう末路を辿っていく”とな」
征夷大将軍殿下に言われても能代社長は退けなかった。
ダリルはともかくテオドール・エーベルバッハとの因縁がここまで深くなるとはね…全く恐れ入った。
奴等が仕出かした事は絶対に許せない!
「豊臣、築地…いや”豊洲”の事頼んだぞ。そして人類の未来を守ってくれ!」
「”大地”大尉……ああ、勿論だ!任せてくれ。俺達が求めた未来を必ず守ってやる!」
伊隅大尉の言葉を聞いて俺は目の前にある不知火弐型(Phese2)を見つめ闘志を燃やした。
登場人物紹介5
佐竹博文
日本帝国軍佐渡島同胞団ムーア中隊の整備班長
以前は坂崎都大尉率いる中隊の衛士だったが、多々なる病気が原因で佐渡島赴任前に半ば強制的にクビにされ、整備兵に転職し佐渡島同胞団加入後、大倉鈴乃大尉率いる中隊の整備班長として務めている。
衛士時代に搭乗していた機体は撃震。
鬼頭丈二
日本帝国軍佐渡島同胞団ムーア中隊の元衛士
階級は少尉(最終階級)
コールサインはムーア5
搭乗機体は撃震→不知火
鈴乃率いる中隊に桜花作戦終結後までいたが、その後は衛士を引退。
"オーガヘッドフーズ”という食品会社を設立し、色んな寄食を巡る為旅へ行く日々が増えたが、最近戦術機産業に参入し部品生産している。
早乙女まどか
日本帝国軍佐渡島同胞団ムーア中隊の衛士
階級は少尉
コールサインはムーア7
搭乗機体は撃震→撃震(早乙女まどか専用機)
佐渡島防衛戦でA中隊の衛士としてBETA群と奮闘していたが、機体トラブルで墜落し極道組織の天羽組に拾われ脱出。その後、帝国軍上層部の判断でMIA認定され戦死扱いになり一時的に天羽組に匿ったが3年後で帝国軍に復帰(恭子が帝国軍上層部に殴りこんだ結果、こうなった形で)佐渡島同胞団に加入した。
駒木咲代子
日本帝国軍佐渡島同胞団ムーア中隊の衛士
階級は中尉
コールサインはムーア3
搭乗機体は撃震→不知火→94ブルG
佐渡島防衛戦ではA中隊に属しBETA群と奮闘していたが、中隊の長だった都の”最後の命令”を従い(当初は命令を背いていたが後にその言葉の意味を理解するようになる)佐渡島を脱出。その後は12.5事件の首謀者である沙霧大尉と出会い、彼の腹心となる。
上官である沙霧が抱く憂国の想いに共感するだけでなく、沙霧が過去を悔やみ、死に場所を探し求めている危うさをも感じ取っており、戦場で肩を並べるうち沙霧に対して上官や同志として以上の感情を抱くようになる。
12.5事件では厚木基地から空挺強襲を行う沙霧大尉ら本隊の動向を隠すため、地上追撃を演じる陽動部隊の指揮官として箱根で伊隅戦乙女中隊と対峙、”不知火”同士が争う混戦の中で伊隅大尉の”不知火”に敗北するが、本隊が空挺強襲するための時間稼ぎを成功させた。その後は帝国軍の懲罰部隊に配属される筈だったが恭子の裏工作と遠田技研工業の社長である能代博之の計らいにより佐渡島同胞団に加入し甲21号作戦に参加し鈴乃率いるムーア中隊の隊員と共に無事生還した。
佐古大和
日本帝国軍佐渡島同胞団ムーア中隊の補充衛士
階級は少尉
元々は極道組織京極組の構成員だが、12.5事件後に徴兵され駒木が配属される筈だった第九九九懲罰大隊の衛士として甲21号作戦に参加し死の8分を乗り越え生き延びた
桜花作戦では再編された第九九九懲罰大隊のメンバーになりカシュガルハイヴの近くでBETA群の猛攻を受けるものの無事生還。
その後、佐渡島同胞団に加入し鈴乃率いるムーア中隊に配属された。
モデルは漫画系YouTubeチャンネル『ヒューマンバグ大学』の動画に登場するキャラクターである佐古大和
浪岡常吉
日本帝国軍佐渡島同胞団ムーア中隊の補充衛士
階級は少尉
元々は極道組織京極組の構成員だが、12.5事件後に徴兵され駒木が配属される筈だった第九九九懲罰大隊の衛士として甲21号作戦、桜花作戦に参加し死の8分を乗り越え生き延びた
その後、佐渡島同胞団に加入し鈴乃率いるムーア中隊に配属された。
モデルは漫画系YouTubeチャンネル『ヒューマンバグ大学』の動画に登場するキャラクターである浪岡常吉
木元桃花
日本帝国軍佐渡島同胞団ムーア中隊の補充衛士
階級は中尉。鈴乃の訓練学校時代の同期
訓練学校卒業後、衛士にならず大阪で地元アイドルグループのメンバーとして活躍し帝国軍の宣伝塔となったがそれを嫌気を指しアイドルを辞め、グループから脱退。それ以降、蜘蛛のタトゥーを喉元まで入れて両手首と足首にも刻まれた。
12.5事件がきっかけに帝国軍に志願し、駒木が配属される筈だった第九九九懲罰大隊の衛士として甲21号作戦、桜花作戦に参加し死の8分を乗り越え生き延びた(何故懲罰大隊に配属されたのかは一部の将校が木元の容姿を見て”前科ある女半グレ”と勘違いしていた)
その後、佐渡島同胞団に加入し鈴乃率いるムーア中隊に配属された。
モデルは元NMB48メンバーでシンガソングライターの木下百花
築地多恵
日本帝国軍佐渡島同胞団ムーア中隊の衛士
階級は少尉
コールサインはムーア6
搭乗機体は不知火
元々は国連軍のA-01第9中隊の衛士で涼宮茜と柏木晴子の同期。横浜事件(XM3トライアル演習中のBETA襲撃事件)で戦死した筈だったが…偶然、横浜基地でキリスト教恭順派に加担してる将校の粛正しに行ってる極道組織の天羽組に属する武闘派、小峠に救助される。
その後、国連軍から戦死扱いになり佐渡島同胞団に参加。”豊洲多恵子”と名乗る。
伊隅みちる
元国連軍特殊任務部隊A-01第9中隊(通称「伊隅戦乙女中隊(イスミ・ヴァルキリーズ)」)の中隊長
階級は大尉
完璧主義的な堅苦しい印象とは裏腹に面倒見がよく、とても部下思いな人物である。伊隅四姉妹の次女で、長女・やよいは日本帝国内務省に在籍しており、三女・まりかと四女・あきらの2人は帝国陸軍の衛士。四姉妹の全員が同じ幼馴染の前島正樹に好意を寄せている。
甲21号作戦において、回収不可能となった凄乃皇弐型を手動で爆破させようとしたが、”最上”に乗り込んだ天羽組の小峠や東欧州社会主義同盟総帥のベアトリクスによって阻止され、鈴乃に自らの死亡診断書の作成を依頼し、死を偽装する道を選んだ。
その様子を見ていた鈴乃から「貴女が死んだ事になれば二度と部下達の顔見れなくなりますよ」と止められるが、逆に自分が消えて情報を漏らさない限り衛士達が死ぬ事も無く、衛士達の幸せの為に死ねるなら本望とした。これによりみちるは世間一般では死んだ事になり、真実を知るのは鈴乃、駒木、早乙女、悠一、佐竹、鬼頭、紅林。国連軍では香月女史だけとなった。
その後、佐渡島同胞団に参加し”大地久美子”と名乗り特殊部隊『ネオヴァルキリーズ』の長に任命された。
柏木晴子
元国連軍特殊任務部隊A-01第9中隊の衛士。
みちる同様、死を偽装する道を選び世間一般では死んだ事になりその後、佐渡島同胞団に参加し"麻里アンヌ"と名乗り特殊部隊『ネオヴァルキリーズ』に属した。
能代博之
遠田技研工業第5代目代表取締役社長。
恭子や崇継と協力してサンダーボルト作戦を計画。94サブレッグ製造などの支援を行っている。
モデルは本田技研工業元社長の吉野浩行
獅子堂響鬼
日本帝国斯衛軍の衛士で獅子堂家の義弟。
悠一とはライバル関係で極度に仲が悪い。
唯依と遠距離恋愛をしている。
斯衛クーデターがきっかけで獅子堂家と縁切りし唯依の義弟になる。
…長らく登場人物紹介してませんでしたね。一気に纏めて書いたら混乱するので紹介キャラを絞りました
今回の話は斯衛クーデター(別名:獅子堂革命)―――簡単に言えば獅子堂財団という企業の幹部やや一部の斯衛軍衛士が起こした謀反です。
理由なんかありません。唯依に一方的な私怨を抱いてるだけで大義なんか全くありません
怨まれるって怖いですね(-_-;)
余談ですが獅子堂財団はテログループと繋がってます(という設定です)
話の最後に不知火弐型(Phese2)出てきましたが、あれはレプリカです。ユウヤが乗ってた不知火弐型(Phese3)1号機は横浜基地にあります。とどのつまり国連軍が保管してるという事です。2号機はユーコン基地に厳重に管理しています。
さて、ここからどうしようかな?この先の展開は……。
余談ですが、F-15SE サイレントイーグルの日本帝国仕様である月虹は本来なら最終的に征夷大将軍である悠陽によって「BETA殲滅もままならない状況下で対人戦を考慮するなど言語道断」という理由で一蹴され正式な採用は見送りとなりますが、本作品は「BETA殲滅もままならない状況下であっても対人戦を考慮しなければならない」と能代社長の進言で採用を決定し製造開始しました。
この作品を…トータルイクリプスサンダーボルトや他の作品、Pixivで投稿した作品を読んで頂けた全ての方々に感謝しつつ、今回はここで筆を置かせて頂きます
ではまた