悠一Side
2002年9月4日 イギリス・ロンドン 国連軍施設 到着ロビー
ロンドンの空港は、霧の朝でも忙しない。
俺たちは、ドーバー基地から移動してきて、到着ロビーで待機していた。
サンダーボルト作戦の最終調整。
ベルリンへの出撃が、刻一刻と近づいている。
「――あれか」
俺は、到着ゲートの方を指さした。
羽田から直行便で飛んできた便の乗客たちが、次々と出てくる。
その中に、懐かしい――いや、予想外の顔が二つ。
伊隅みちる(偽名:大地久美子)と柏木晴子(偽名:麻里アンヌ)。元国連軍A-01部隊のヴァルキリーズ。
伊隅大尉は、明るめの栗色~茶色のショート~ミディアムショートボブ。 襟足すっきり、前髪は自然に流した斜め前髪。 柔らかく中性的寄りの顔立ちで、儚さと落ち着きを併せ持つ表情。 微笑むと優しいが、目つきは鋭いギャップ。 細身で小柄寄り、静かな存在感。
晴子は、青~青緑寄りの落ち着いたブルーのセミロング。 肩にかかる長さで、訓練時はまとめているはず。 前髪控えめで、目元がはっきり。 規律的で理知的な雰囲気、感情をあまり表に出さない顔立ち。
二人は、偽名で旅券を作り、民間便でここまで来たらしい。
「豊臣少尉、久しぶりだな」
伊隅大尉が、静かに微笑んで近づいてきた。
「伊隅大尉……いや、“大地”大尉か」
俺は、軽く敬礼した。
晴子は、無言で頷くだけ。
鈴乃が、静かに二人を迎えた。
「……よく来てくれたわ。ヴァルキリーズの力、必要よ」
恭子が、微笑みながら言った。
「これで、戦力はさらに強化されたわね」
その横には、築地多恵(偽名:豊洲多恵子)。 黒~濃い茶色のロング~セミロングをサイドポニーテールにまとめ、落ち着いた静かな雰囲気。 派手さはないが、整ったシンプルな美しさ。 巨乳のシルエットが、軍服の上からでも分かる。
彼女は、すでに俺たちと行動を共にしていた。
「“豊洲”も、よろしく頼む」
伊隅大尉が、優しく言った。
多恵は、静かに頷いた。
「ええ……皆で、勝ちましょう」
ロビーの喧騒の中で、俺たちは再び集まった。
ヴァルキリーズの精鋭たち。 伊隅みちる、柏木晴子、築地多恵。
偽名で潜入し、俺たちと合流。
テオドール・エーベルバッハを止めるために。
「これで、全員揃ったな」
俺は、皆を見回した。
鈴乃、恭子、佐竹、佐古、浪岡、桃花、そして元国連軍女性衛士3人。
「ベルリンへ。サンダーボルト作戦、開始だ」
伊隅大尉が、静かに微笑んだ。
「ああ……行こう」
ロンドンの霧が、少しずつ晴れ始めていた。
俺たちは、空港を後にした。
新たな仲間と共に。
ヴァルキリーズの力と共に。
この戦いを、終わらせるために。
豊臣悠一として。
皆の傍らで。
絶対に、勝つ。
国連大西洋方面第1軍ドーバー基地群 会議室
会議室の空気は重く張り詰めていた。
長テーブルの向こう側に、キルケ・シュタインホフ少佐が座り、俺たちを迎え入れている。
その隣には、バルク大佐の姿も。 そして、俺たちの前に立っているのは――偽名でやってきたヴァルキリーズの面々。
伊隅みちる大尉(今は大地久美子)、柏木晴子(麻里アンヌ)、築地多恵(豊洲多恵子)。
キルケが静かに立ち上がり、微笑みを浮かべた。
「ようこそドーバー基地へ。歓迎致しますわ――元国連軍A-01部隊――伊隅ヴァルキリーズの隊長、伊隅みちる大尉」
伊隅大尉は穏やかな笑みを返しながら、軽く首を振った。
「その名は甲21号作戦終わった後捨てたよ。フッケバインのキルケ・シュタインホフ少佐。――世間一般的に伊隅みちるとしての私は戦死したんだ」
晴子がくすっと笑って続けた。
「あはは、私も含めてますよ」
多恵は少し目を潤ませて、ぽつりと呟いた。
「うぅ~、茜ちゃん…会いたいけど会えない…!」
鈴乃が冷たい視線を多恵に向け、静かに言った。
「いい加減理解しろ。“豊洲”少尉」
多恵は肩をすくめて小さくなった。
キルケは皆のやり取りを眺め、静かに笑った。
「偽名で来てくれて、ありがとう。――これで、作戦の成功率が上がるわね」
伊隅大尉は俺たち一人一人に視線を向け、優しく言った。
「豊臣少尉、大倉大尉、崇宰大尉……皆、無事でよかった」
俺は軽く頭を下げた。
「ああ……お前たちもな」
恭子が静かに微笑んだ。
「ヴァルキリーズの力、頼もしいわ」
鈴乃が腕を組んで頷いた。
「……これで、テオドールに勝てる」
会議室の空気が、少しだけ和らいだ。
ヴァルキリーズの再来。
偽名で潜入し、俺たちと合流。
サンダーボルト作戦――ベルリンへの大規模侵攻。
テオドール・エーベルバッハを止めるために。
俺は皆を見回した。
鈴乃、恭子、伊隅大尉、晴子、多恵。
そして、佐竹たち同胞団の面々も、別の部屋で待機している。
「よし……全員揃ったな」
キルケが静かに言った。
「作戦の最終ブリーフィングを始めるわ。――ベルリンへ、突入よ」
俺は拳を握りしめた。
来いよ、テオドール。
この戦いですべてを決着つける。
ドーバーの会議室で、運命の歯車が大きく回り始めた。
俺は静かに息を吐いた。
絶対に勝つ。 ――――皆と共に。