トータルイクリプスサンダーボルト   作:マブラマ

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第6話 不埒な欺衛の衛士

帝都陥落から5日後

1998年8月20日

欺衛軍は日本帝国軍と連携する形で共闘することになったが、それは表向きだ

その裏は五摂家にいる誰かが権力を握ろうと試みてる奴等が少なからずいる

恭子は五摂家の人間であるが権力を握ろうとは毛頭思ってはいない

俺はというと東京に移設した欺衛軍本部の資料室で今までの戦闘データや過去の戦争、内乱等の書いてる本を読み漁っていた。

面倒だが、欺衛軍の衛士である限りやらねばならない

そして恭子の為にもだ

そんな中、恭子が資料室に入り俺に近づき少し笑みを浮かべる

「ふふ、勉強熱心ね」

「崇宰大尉…」

恭子は俺の隣に椅子に座る

「隣良いかしら?」

「お、おう、いいぜ」

俺は恭子の顔を少し伺う

ニコニコと笑ってる、何かいいことでもあったのか?

「唯依が喜んでいたわ、お友達を救ってくれて感謝します。そのおかげで山城上総少尉と深く親睦し接したそうよ」

「良かったですね、ところで聞きたい事ありますが宜しいでしょうか?」

俺は畏まって恭子に話しかける

「何かしら?」

「斑鳩少佐は試製98式……武御雷の開発の関与をなされてるのですか?」

「そうね……彼は欺衛軍の為国の為個の為に全力で尽くしたそうよ」

笑みを浮かべながら即答された

「大尉は斑鳩少佐とどのような関係を築いていらっしゃるのですか?」

いつもなら冷静を振る舞い毅然とした態度をとるのだが、斑鳩少佐の名を聞いてドキッと感じた

「な……!何を、何を言ってるのよ。私と斑鳩少佐はあ…あくまでも上官と部下の関係、です!」

動揺してるじゃないか

分かりやすいな……。

「そうだったのですね……」

斑鳩少佐はハッキリ言って気障な男だ。

だが、悪人ではない。

欺衛軍の女性衛士からラブレター送られるほどモテてるとか

少し羨ましいぜ……どの部分がモテ要素なんだ?

「ん、あの時の台詞」

「?」

「忘れたとは言わせないわよ、少し……」

俺の顔を見るなり何かを思い出したか頬を赤らめる恭子はもじもじとしていた。

帝都防衛戦で恭子は俺に他国の工作員と疑い俺が咄嗟に言った台詞だ

(……俺はアンタの約束を果たした!学徒兵も全員無事だ!生き残ったんだ!!)

あー、あの時の事か

「50点をあげるわ」

「何の点数ですか」

「私の好感度を上げ恋仲に発展する事が出来るのか?の点数よ」

恭子は俺の頭を優しく撫でる

俺は恭子を抱き締めようとするが、他の衛士が見られるからここは抑える

「移動しましょう」

「そうですね」

と俺と恭子は読んだ本を本棚に戻し資料室から出ようとするが恭子は1人の男にぶつかった

「きゃっ」

ドッと胸にきつくぶつかり鼻を抑える

「いたた……」

「あれ?なんだ崇宰じゃん」

馴れ馴れしい態度だな、この男は

見かけない顔だな……黒い軍服に着ているから一般衛士か。

「伊藤少尉……」

「大丈夫?」

知り合いか?

心根の優しい性格に見えるが……。

「よお、初めましてだな」

「貴方は豊臣少尉じゃないですか」

「俺の名前知ってたのか」

伊藤って言ってたな……。

少し探るか

「帝都防衛戦でお前は何処にいてたんだ?俺は新兵中心のファング中隊の次席指揮官務めてた」

「俺は、その時休暇でしたよ」

「休暇ねぇ……」

この男怪しいな

「豊臣少尉は崇宰恭子大尉と知り合いですか?」

「彼女の部下……と言った方が正しい、かな」

「へぇ、そうなんですね」

此奴、白々しい態度で振る舞ってやがる

さっき崇宰って呼び捨てしたよな……やはり旧知なのか?

黒い軍服を着た女性衛士が資料室に入り伊藤に近づいてきた

「誠、こんなところにいたんだ。探したわよ」

「あ、世界、ごめん…」

彼女いてたのか

「紹介するよ、俺の彼女の西園寺世界だ」

「西園寺世界少尉です、豊臣少尉のご活躍拝見しました」

”世界”という女性衛士は俺に向け敬礼する

恭子は”世界”に話しかける

「西園寺世界少尉、帝都防衛戦の時貴女は何処にいたの?」

「私は伊藤少尉と同様休暇取っていました」

「戦場でなくて助かったわね」

”世界”は戸惑うが恭子はニコッと笑みを浮かべる

「で、どこの所属だ?」

俺は問いかける

"世界”はこう言い返した

「ホーンド大隊です」

ホーンド大隊?

「斑鳩少佐の率いる大隊ね、斑鳩少佐の許可は貰ったの?」

恭子は"世界"に笑みを崩さずこう言った

「はい、少佐から許可を貰い伊藤少尉と温泉旅行に行きました」

恭子は"世界"が言った事を聞いて呆れ顔になる

そりゃそうだろ、帝都が危機に陥ってるときに温泉旅行か

呑気な奴等だな

「そう?斑鳩少佐と私は五摂家同士の仲よ。それ以上の関係は築いていない」

伊藤は空気読まず"世界"と会話し始める

「世界、今度の旅行、何処に行きたい?」

「誠が行きたい場所でいいわよ。私は誠の彼女だから」

「じゃあ、札幌は?」

「札幌?北海道ね。行きたい行きたい」

あー、クソ!

俺と恭子の前でイチャイチャして……少しムカつくぜ

俺も本当だったら恭子と一緒に旅行行きたいが、今はそれどころじゃないよな

「じゃあ、俺はそろそろ行くよ。またな崇宰」

「ええ、業務頑張るのよ」

恭子は伊藤に手を振り"世界"と一緒に歩き去る姿をじっと見ていた

俺の手を繋ぎ少し笑みを浮かべる

「豊臣、伊藤誠少尉の身辺調査は如月中尉に任せて探らせるわ。貴方も手伝って貰えないかしら?」

「……怪しいですよ、斑鳩少佐の率いる大隊に伊藤誠っていう名の衛士いたのですか?」

「……本人に聞いてみないと分からないわ」

恭子は俺の手を繋ぎつつ資料室から退室

退室した後、資料室に向かっている佳織に遭遇する

「恭子様、資料室に?」

「ええ、今出たところよ。如月中尉頼みたい事があるわ」

「恭子様の頼みなら何でも聞きます」

「実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恭子は執務室で俺と佳織含めて3人で伊藤の事やその彼女の事を話し出した

「……伊藤誠と西園寺世界の身辺調査お願いしたいけど良いかしら?」

佳織は勿論「了解しました」と一言を添って言い放つ

「斑鳩少佐をお呼びしましょうか?少佐なら何か存じてる筈です」

「俺も行くよ、お前だけでは何巻き込まれるか分からない」

面倒事は御免被る

「結構だ、私1人で十分だ」

「意地になるのは良くないぜ、それに伊藤は何やらかすか分からない」

佳織は俺の発言を聞いて歪んだ表情をする

恭子は真顔で俺にこう言った

「そこまで如月中尉の護衛したいなら一緒に行きなさい。宜しいですね?」

と畏まりつつ俺に佳織の護衛を命じた

「有難き御幸せです、崇宰大尉」

と俺は恭子に向け小さな笑みを浮かべながら敬礼する

「では行って参ります」

そして俺と佳織は執務室から退室し斑鳩少佐がいる大隊執務室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斑鳩少佐がいる大隊執務室に向かってる途中、栗色のストレートロングヘアを、運動の邪魔にならないようポニーテールに纏めている女性と遭遇する

軍服の色は黒

この女も一般衛士か

「如月中尉、今日もお疲れ様です」

と誇らしげな笑みを浮かべ俺と佳織に向け敬礼する

「ああ、加藤乙女少尉。貴様もご苦労様だ」

佳織は答礼する。

俺は”乙女”に話しかける

「よお、アンタも欺衛の衛士だったのか。少し聞きたい事あるが……構わないか?」

「ええ、どうぞ」

「伊藤誠、西園寺世界……この2人は斑鳩少佐の率いるホーンド大隊に配属してるのかもしくは帝都防衛戦で2人は本当に休暇取っていたのか。確かめたくて今斑鳩少佐のところへ向かってるところだ」

”乙女”は少し困惑した表情になる

「伊藤と西園寺?」

「何か心当たりはないか?」

と佳織は冷静沈着に言った。

「2人はあの時、休暇じゃなくて第1防衛ラインに配置しその守備隊にいてた筈よ」

嘘吐いたのか?何だか雲行きが怪しくなってきたな

シャレになってねぇぜ

「第1防衛ラインにいてたのか?」

佳織は真顔で言い放つ

「ええ、でも何でそんな事聞くのですか?」

"乙女”はぶっきら棒で厄介事は御免被ると雰囲気のオーラを出しつつ更に困惑する

「加藤乙女少尉、申し訳ないが同行して貰おうか?」

「え?」

「豊臣、手錠を」

俺は無言で手錠を出し”乙女”の両手首に掛ける

「ちょっとどういう事なんですか!?」

佳織は強引に”乙女”を斑鳩少佐がいる大隊執務室に連行した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斑鳩少佐がいる大隊執務室に到着した俺と佳織は”乙女”を連行し扉を叩く

「斑鳩少佐、少しお話があります。宜しいでしょうか?」

佳織は斑鳩少佐に呼び掛ける

斑鳩少佐は「入って構わないよ」と返答し、大隊執務室に入室する

「如月中尉が私の元へ来るとは珍しいね」

と気障な笑みを浮かべ冷静に振る舞う

「私に話とは何かな?」

佳織は本題に入る

「はい、斑鳩少佐の率いるホーンド大隊に伊藤誠、西園寺世界の2名が属してると聞きましたが」

「その2人は私の大隊にはいないよ」

「それは本当ですか?」

おいおい、斑鳩少佐の大隊にいないという事は、伊藤は最低な野郎だな

自分を偽ってたって事かよ

「彼は帝都防衛戦で第1防衛ラインに配置していたが、BETAが京都に迫ってくると悟り戦線放棄し脱走したらしい」

脱走兵だったのかよ!

俺は怒りを露にする

「脱走兵……では何故本部に?」

「伊藤家は政治家の家系で父親は最低な政治家として悪名高い人物だ。恐らくここに戻ってきたのは父親のおかげだという事だ」

斑鳩少佐はそれを知って黙ってたのかよ

何でそんな下種野郎を野放しにするんだ

「加藤少尉が伊藤少尉の事を一部ではありますが情報を引き出すことが出来ました。ほら加藤、斑鳩少佐に何か言う事があるだろ?」

「はい」

”乙女”は斑鳩少佐の目線を合わし真剣な表情で口を動かし声を上げる

「斑鳩少佐、私加藤乙女少尉は伊藤誠少尉がこれまでの嘘を塗り固めたことを全て話します」

斑鳩少佐は頷く

”乙女”の発言からによると伊藤は欺衛軍の業務を他人任せにし放棄した事や戦闘の時は常に戦線放棄し脱走した事、そして西園寺世界という彼女がいるにもかかわらず欺衛軍の女衛士や帝国軍の女衛士を口説いて浮気してると腐るほど出てくる悪行三昧が暴露をした

斑鳩少佐は頭を抱え悩み始めた

「驚愕と幻滅としか言いようがないね……」

「如何なさいますか?」

佳織は冷静に振る舞いながら言い放つ

「そうだね………業務放棄並びに戦線放棄し脱走した事は問答無用だ。如月中尉、私に一つ考えがある」

「考え…」

斑鳩少佐の言葉を聞いて体から寒気が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斑鳩少佐との話は終わり、大隊執務室から退室した俺と佳織は恭子がいる執務室に向かう

”乙女”の処遇だが暫くの間営倉に入れることになった

クビにはならないようだ

俺は不安募る

「如月中尉」

「何だ?」

「聞きづらい話なんだが…」

「?」

俺はジト目で佳織の顔をじっと見つつ話しかける

「男性経験は、ない……のか?」

その一言を聞いた佳織は頬を赤らめ照れ否定する

「ない!ある訳ないだろ。私は恭子様一筋だ」

「そうですか」

そう会話しているうちに恭子とバッタリ遭遇した

「あら?2人共、情報引き出せたの?」

恭子は掌を出し何か渡したがってる

佳織は調査報告書を恭子に渡す

斑鳩少佐が態々作成してくれたのだろう

「伊藤誠少尉ですが、完全にクロです。業務を他人に放り投げ放棄し戦闘時に戦線放棄し脱走した事も含めて不特定多数の女性を口説き身籠ったらしいです。警察に駆け込んだ女性はいましたがほとんどが泣き寝入りです」

恭子は黙々と調査報告書に目を通す

それを見た途端、恭子は怒りを通り越して呆れてしまった

「こんな下種な男とは思わなかったわ!到底許せないわね……斑鳩少佐から何か言われなかった?」

俺は唾を飲み込み真剣に口を開き声を出す

「ああ、少佐からは『崇宰大尉が囮になり彼に制裁を加えてほしい。無論、シチュエーションは既に考えている』と…作戦立案書だ」

俺は斑鳩少佐から渡された作戦立案書を恭子に差し出す

「!……これは」

中身を見た恭子は驚愕しつつ呆れ顔になった

内容見りゃ無理はない

「それにしてもとんでもねぇ野郎だな、伊藤は」

「伊藤の父親は妻以外他の女性と付き合い子供を身籠ったらしいです。これは日本の政治家としての行動とは思えません」

と佳織は伊藤の事だけでなく父親まで糾弾し口を開き声を上げる

親も親だな……。

「一度目は子供を認知する形で許しを得ましたが、今度はそうはいきません」

認知すると言っても嘘にしか聞こえない

彼奴は淫乱男だ

問いかける佳織に俺と恭子は勿論頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3日後、伊藤が欺衛軍を除隊すると聞いた

俺は化けの皮を剥がすことにした

「今日の朝礼で豊臣少尉から話がある」

恭子は真剣な眼差しで唯依や上総、志摩子、和泉等の衛士達の前で元気よく声を上げる

「今回、この場を借りて話したいのは伊藤誠少尉についてです」

そう切り出すと列の中にいる伊藤の顔が歪むのが見えた

疚しい事隠してるだろう

そこから奴の悪行の暴露大会が始まった

「見ての通り、奴は欺衛軍の女性衛士だけでなく帝国軍の女性衛士まで手を出し孕ませやり終えたらすぐ捨てたのです」

勿論、斑鳩少佐から許可を得て佳織が纏めた証拠資料でその場にいる衛士達を見せた

「いや、これは……」

これを聞いた唯依と上総等の他の衛士達は怒りで真っ赤だ

「伊藤少尉、貴様…豊臣少尉が言った事は事実だな?」

「ええ、けどみんな俺に付き合ってくれたんだから今更別れたいって言うとは思えませんよ」

しかし、こんな事をしているだけあって伊藤は図太かった

伊藤誠最低な下種野郎だな

吊し上げの場に立っても微塵も動じない

「貴女、自分が何したか分かってるの!?」

「和泉やめて…」

「女を弄ぶような奴だったなんて……最低極まりないわ!」

「は?騙される女どもが悪いんだろ?どうして俺を接触する前に裏を取らなかったんだ」

なんと和泉からの責めの言葉を嘲りながらこう返す始末だ

怒りのあまりに襲い掛かる和泉

「くっ……許せない!」

「身の程知らずのバカ女が……」

伊藤は和泉の喉の急所に突きを打ち込んだ

此奴は素人じゃない

伊藤を制圧すべく俺は奴の肩を抑える

「何やってんだ!」

「俺は古武術の有段者だ。腕っぷしの強い君には勝てないよ」

奴が俺の手にそっと置いた、次の瞬間

突然、地面が消えたような感覚

「あ…」

「フハハハハ!俺に楯突くなよ!」

直後、体が浮き視界がぐるり180度回転した

「俺は政治家の息子なんだ、お前なんかすぐ消せるんだ」

「があ!」

奴に投げられた事に気が付いたのは後頭部に強い衝撃を受けた後だった

慌てて立ち上がると今度は蹴りが一気に4発飛んできた

間違いなく鍛え上げられた武道家の蹴り……!

「何でこんな事するんだ?」

「今の世の中、真面目に女と付き合っても馬鹿を見るだけ、俺は俺なりに複数の女性を抱き子供を産ませた。それが何悪いんだ?俺の子供が沢山産んで幸せだと思わないのが愚かなんだ!」

成る程、奴は不特定多数の女性を子供を産ませ、自分だけの王国を築こうとしてた訳か

欺衛軍にいる女性は品性があって上品なお嬢様ばかりだろう

あの下種野郎が目付けられたのも無理はない

だが、付き合った女性はどれだけ辛い思いをしたか、女は弄ぶだけの道具か。

「ふざけんじゃねぇ!欺衛軍の女衛士はお前の欲求不満を解消する性処理の道具じゃない!それを意図も簡単に裏切る最低な淫乱野郎は俺が完膚なきぶちのめす!」

俺の言葉を聞いた伊藤は嘲りの表情のまま次々と拳を繰り出してくる

「何を怒っているんだよ、より楽で頭のいい方法を選んだだけだろう!」

確かに此奴の攻撃は速い、だが

早いだけに綿飴みたいに軽い!

「!」

「ぐげぇあっ!」

伊藤はモロに拳を受け奴の背骨がいった

「アンタが今まで付き合った女性達はアンタの為だと思って誠心誠意で真剣に思い愛し続けた!」

俺は伊藤の顎に拳を当て粉砕する

「ごはぁっ!」

「そんな善意に唾吐き付けやがって!欺衛軍や五摂家の女性を舐めるの大概にしやがれ!」

俺は伊藤に向け拳で豪快にフルスイングした

「ぐぎゃああ」

それから伊藤が完全に伸びた事で俺は唯依、上総、志摩子に止められ

「豊臣少尉、やめてください!」

「落ち着いてくださいまし!もうそれ以上は拙いですわ!」

そのまま恭子がいる執務室へと引っ張られた

通報で駆け付けた警官達も唯依がやってくれた

「つまり彼の行動は正当防衛だと?」

「はい、本人は古武術の達人だと言っておりましたので」

伊藤を殴った事を庇ってくれたのは本当に助かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の伊藤も政治家である父親が釈放金を出し解放され、カムチャッカ半島に飛び逃げ。相変わらず女性を弄んでいたが……

「なあ、男に相手にされてないんだって、折角俺が付き合おうとしようと思ったのにッ、勝手なことばっか言いやがって」

「や、やめて…ください!嫌あああ、誰か助けて!!」

しかし……伊藤の背後から女の手が肩を抑える

「貴様……!」

「え?」

「私の恋仲に何をしているんだ!?」

奴は馬鹿だった

イングヒルトって女性を籠絡しようと試みたがヴェアヴォルフ大隊の大隊長の怒りを買ってしまい東欧州社会主義同盟総帥のベアトリクスに目付けられた

風の噂じゃベアトリクスは直々に伊藤をヘリに乗り込ませその高さで蹴り落とした後……。

「貴様は生きる価値がない外道で女の敵だ!」

「ぎゃあああああああああああ」

BETAに喰われてしまったって話だ

当然ながら死体は上がっていない

それが本当だとしても俺達には関係ない

これは佳織から後に聞いた話だが、西園寺世界は伊藤がいなくなったと知り半狂乱状態に陥り、拳銃自殺

加藤乙女は伊藤の件で責任取る形で衛士をやめ、その後オーストラリアに移住し静かに過ごしている

伊藤の父親は政治家生命を絶たれ失脚、その後自宅で首吊り自殺を遂げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1998年8月31日

恭子は伊藤の件を含めてそれを蔑ろにする事はなかった

「あんな問題起こしたら、私の面子が汚れてしまうわ」

怒りを通り越した呆れ顔だ

あの淫乱男を殴った事は後悔していない

「斑鳩少佐が処理してくれたけど、貴方は暫く反省する形で帝国軍の衛士として佐渡基地に左遷を命じる」

左遷か……幾ら伊藤が女性に対し酷く扱われたことを知って怒りを露にしてまで殴った事は良しとしないんだな。

「佐渡島…ですか」

「そう、自然と触れ合って佐渡基地にいるみんなと仲良くしなさい。司令官に連絡済みよ」

「え?欺衛軍の衛士が帝国軍の基地に行って宜しいのですか?」

何が何だか分からない

左遷って言われたら誰だって戸惑うだろうよ

「良いも悪いもこれは上層部の決定よ」

マジかよ、おい……。

フルアーマーガンダムはどうなるんだ?

「俺の機体も佐渡島に……」

「没収します、佐渡基地には撃震しか配備されていない。戦術機乗る機会が増えるきっかけになるわよ?」

成る程、要するに衛士の気持ちを考えて慣れ合いか。

面白い……なら付き合ってやるぜ

「とにかくよ、明日早朝に佐渡島に行きなさい」

俺は恭子に向け誇らしげな笑みを浮かべ敬礼する

「了解しました、豊臣悠一少尉これより帝国軍佐渡基地に行って参ります!」




今回は『School Days』の主人公、伊藤誠とその作品の登場人物の西園寺世界、加藤乙女をゲスト出演させました
原作での誠はかなり女たらしで優柔不断なんですが、やっぱりこのまま出すと面白みがないので古武術の有段者という設定付け加えました
世界の他に言葉や七海、刹那等のキャラを出そうかなと考えましたが却下しました
理由は
言葉:虚弱体質
七海:如月中尉と被る(?)
刹那:背が小さ過ぎるので論外
です。
次回はいよいよ明星作戦です!
佐渡島での左遷から本部に帰ってきた悠一はB中隊の中隊長だった大倉鈴乃を長にし佐渡島奪還を悲願とした組織、佐渡島同胞団を結成
欺衛軍や帝国軍への貢献度を誇示するため、過酷な作戦に戦術機とモビルスーツを編成した部隊を派遣する
その作戦の結果はどうなるのか?生き残ることが出来るか?
次回のお楽しみに

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