トータルイクリプスサンダーボルト   作:マブラマ

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後編です
ある理由で鈴乃はケヤルガによってアトラスガンダムを受領します。



第9話 出雲奪還作戦 後編

鈴乃Side

私は大倉鈴乃

日本帝国軍佐渡基地司令部第三戦術予備部隊B中隊に属し中隊長を務め今は佐渡島同胞団の長を務めている衛士だ。

出雲奪還作戦で帝国軍、欺衛軍、佐渡島同胞団の三大勢力でBETA群と立ち向かい撃震に乗り駆逐していたが、要撃級にぶつかり両脚部分を損傷し大破

一時離脱を余儀なくしていた

出雲基地に帰投した私は管制ユニットから降りた直後、意識が失い倒れ医療室で衛生兵2人に手当てされ深い眠りに入り夢の中に浸っていった

夢の中に浸った後そこは、何もないただ白い空間が続くだけの世界だった。

声は果てしなく続く白の空間から響いてくる。

「はっ、ここは何処だ?それに私は……」

99式衛士強化装備を着たままだ

「鈴乃…」

聞き覚えがある女の声……まさか

「都……なの?」

何と死んだ筈の坂崎都が私の目の前に立っていた

「貴女は佐渡島でBETAと戦って死んだ筈じゃ…」

「肉体が死んでも魂だけは生き残る。鈴乃、お前に渡したいモノがある」

渡したいモノ……?

「渡したいモノって何?」

「本土の岩国基地で謎の戦術機が墜落した事……覚えているか?」

「ええ、覚えているわ。規格外の性能と未知の武装を搭載した謎の戦術機…この3機の事を”FG”、”PZ”、”A”の事ね」

都は険しい顔をして私の顔をじっと見る

「ああ、お前に言わなかったがその”A”は私が乗る予定だった。がそれを乗る以前に佐渡島で死んでしまった」

都がそう言うと、その場はいきなり宇宙になった。

そこにはいくつかの宇宙艦船、そして無数の戦術機のような人型機械がライフルを撃ち合い戦争をしていた。そして機械人形の持っている銃からは光の弾が発射され、それが当たると激しく爆発した。

「これは……宇宙戦争!?あ、この機体何処かで見たような気が」

「ケヤルガって胡散臭い回復術士が言ったが、あれはフルアーマーガンダム、サイコ・ザクという機体の名称だ」

ケヤルガ?回復術士?

何の事……なの?

「ごめんなさい、何言ってるか私には理解し難い」

「そうだろうな……私は最初信じなかったよ」

私の背後に本来は純粋で心優しい性格を持つ可愛らしいが人格が歪んでも破綻までは至らず本来の真っ当さも失っていない少年の姿があった

「こことは別の世界線、宇宙世紀と呼ばれる世界の戦争だ。こういったとある世界の光景は、異なる世界へと流出し、感性の高い人間の脳が受信して創作物として綴られることがある。因みに君の経験したBETA大戦もまた、別の世界では創作物と存在する」

「貴方は……?」

「自己紹介しよう、俺はケヤルガ。神であり回復術士さ」

「……?」

ケヤルガという少年は私の顔を見て凄味ある笑みを浮かんだ

「BETA。あれは異星より愛しき庭を食い荒らし滅ぼす害虫だ。滅びもまた一つの景色とはいえ、この害虫に滅ぼされるのは我慢ならない。故に手を打った」

「BETAという存在くらいは知ってる!貴様は何者だ?何の目的で私をここに呼び寄せた!?坂崎大尉を籠絡してまで…」

「落ち着け、鈴乃!これには訳があるんだ」

都は私を落ち着かせる

「…実はとある小物達に、BETAの侵攻を遅らせるべくとある奇跡を授けて君と坂崎大尉がいる世界へ送り出した。奴らが願った奇跡というのが、この宇宙世紀の兵器モビルスーツというものだ」

モビルスーツ……そう言えば豊臣から聞いた事ある

しかしどんな内容だったか忘れてしまった

ケヤルガは続けて私に向け言い放つ

「こんなものをそのまま送っても、燃料、エネルギー、整備のための資材などが調達出来る筈もない。どうにかその世界でも使えるよう、俺が手を加えて与えてやった。が、そのモビルスーツ。BETAとの戦いに有効だとみた」

ケヤルガは指をパチンと鳴らしそれと同時に宇宙戦争の景色は消え、代わりに実物大の宇宙世紀の機動兵器が現れた。

私は衛士として幾つもの戦術機、武装を見てきたが、これほどに存在感のある、そして禍々しくも力を感じる兵器は見たことがなかった。これに比べたら、今まで使ってきた戦術機等玩具に過ぎない

「俺が選んだパラレル宇宙世紀の超高性能機モビルスーツ。これをBETA駆逐の雫として垂らすことに決めた」

私は絶句した

何が何だか信じられないくらいに

これは現実なの……?

「大倉鈴乃大尉、使い手として貴様が選ばれたんだ」

都…貴女は。

「さて、決めてもらおう。奇跡は望まねば与えてやれないんだ。大倉鈴乃。我が申し出を受け、これを手にするか否か? BETAを滅ぼす絶対の剣を掲げ振るい、熾烈なる試練への渦へ入るか?」

佐渡島を取り戻す為、都の仇を取る為なら私は逃げない

「受けるわ」

「即答するんだ」

正直言えば怖い。

この機体の禍々しさ。人の作ったものとは思えない畏れすら感じる。

だが、同時にこれこそあのBETAを滅ぼすに相応しい得物だと確信することが出来る。

迷う事はやめた

「動かすにはそれなりに時間がかかる。いや、起動にすら辿り着かないかもしれない。何のバックアップも出来ないその世界では、俺が手を加えようとも動かすだけでも相当の試練となる」

私は不可思議空間に聳え立つ、白と黒、黄色に塗装を施された機体を見上げて聞いた。

「これはアトラスガンダムだ…地上戦を特化した試作機体というべきかな」

ケヤルガは自慢げにべらべらと語った

「名前の由来は…」

「ギリシア神話に出てくる神の一人……そうでしょ?」

私は真顔でケヤルガに向け言い放った

「そうだ。君に使えるかは疑問だが」

「それで、何が言いたいんだ?」

ケヤルガに睨み付け疑問を抱く

「俺の与える奇跡は一人にひとつ。これは違えることの出来ない絶対の決まり。故に君に機体を授ける以上、君をニュータイプには出来ない」

ニュータイプ……?

よくわからないけど、能力の一種の事を指してるのか

「私はBETAを殲滅するだけで充分だ、他は何もいらない」

「まずは健康状態を回復させようか」

そう言ってケヤルガは私の胸に手を翳し「ヒール」と呟く

そして体が、体力とスタミナ、健康状態が回復していった

回復し終えた後、私の体は身軽く肩凝りがなくなった

「肩凝りが…ない。嘘、でしょ…」

「BETAに殺された仲間達の敵討ちをし復讐する……」

ケヤルガが回復術士であり神でもある。

認めるしかない……。

「信じるわ」

「信じて貰わなきゃ困るよ、それと元気になって良かった。改めて自己紹介しよう、俺はケヤルガ」

「助けてくれて感謝する、ケヤルガ」

「さっき言ったように、俺は君をニュータイプには出来ない。だが機体には君の声と想いを届きやすいようにしておいた。もし、このアトラスガンダムが君の想いに応えたなら、或いは君をニュータイプの高みへと引き上げてくれるかもしれない」

成る程、そういう事だったのね。

能力は要らないけど

「不確実極まりないな。それが貴様のやり方か?」

私は歴戦の衛士みたいに怒りの表情を表す

「俺はかつて一騎当千の勇者と謳われた。俺は神になる前、武器は持たされず、薬漬けにされたり、暴力の捌け口にされる等、奴隷の様な扱いをされていた。賢者の石により時間を巻き戻し、自分が受けた境遇への復讐を誓った」

そんな事が……。

ケヤルガも私達より酷い扱いされてたのね

BETAに喰われるか慰み者にされるほど以上に

「俺の昔話を話そう。とある大きな村で育ち、子供の頃に両親を亡くして以来、遺されたリンゴ農園を一人で経営してきた」

ケヤルガは突如、自分の生い立ちや境遇を話し始めた

「一周目の世界の時に散々な仕打ちを受け、人間の醜いエゴを嫌という程思い知らされてきた事から、理性のタガが外れてしまうまでに人格が豹変し敵と見なした相手には一切の情け容赦をしない冷酷な人物となって、特に復讐の対象には死よりも残酷な仕打ちを与えようとする事さえあった。自らは正義感の強い紳士を気取りながらも「正義をふりかざす奴にロクなのはいない」と発言するなどの自己矛盾も…」

「待って、それは貴様がいた世界の話か?」

何を言うかと思ったら……一週目?

訳が分からない……。

「そうだよ、話を省略するが二週目の世界で漸く復讐を果たし生涯を全うした後は神に降臨した訳さ」

意味が分からない……が、ケヤルガも波乱万丈の人生を過ごしたんだな

「神になった後は私達がいる世界に別世界に存在する機体を送り込んでいると言いたいのか?」

「そうだ、強くなれるようにしてやる。俺の勇者の能力で」

「いや、要らない」

「そうか、まぁいいさ。俺は駒を配置するだけ。駒に意思がある以上、その結果はどう転がるかは誰にもわからない。故に強き意志ある君は、よりよき結果を引き寄せることこそを使命と心得ろ」

私は改めてその機体を見上げた。そう思ってみれば、神々しく見えるから不思議だ。

「アトラスガンダム………私達人類を救ってくれる神の器」

その機体は、役に立つかどうか試させて貰う

その高殿のような白い顔を虚空へと向けるだけだった

「都も転生するの?」

私は都に問いかけたが、都は私の顔を近づけ和やかな表情で笑みを浮かべた

「無用だ」

「え?」

「私は転生しない。死人はただこの先の世界の未来を傍観すべし……これが私の答えだ」

都は転生しないと答えた

「坂崎都に問いかけたが、頭が頑固で考えを曲げなかったんだ」

「頑固は余計だ。ケヤルガ!」

私は都の答えを聞いてこう思った。

私の犠牲は無駄じゃなかった、佐渡島で生き残った衛士達に未来を託す。と

「……都、必ず仇を取るから」

私は優しい笑みで都に言った

都も優しい笑みを浮かび「それでいい」と一言を添えた

「都!貴女と会えて本当に良かった……」

都は私を抱き締め和やかな笑みで涙を流す

「ああ、私もだ……」

泣き崩れた

「都、私…貴女がいなくなってずっと寂しかった……うぅ…うああああああああああん」

思い切り泣いて泣いて泣きまくった

感情を爆発するほど泣いた

その時だ、ケヤルガはCDプレーヤーを持ち出し私達の前に置いて電源を入れ曲を再生した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い夜を絞り尽くして

目が潰れるほどいつも泣いてばかり

そう神様をダムで洗いキスして

お祈りする娘のように

 

過ちだけこぼれ落ちてゆく

胸が割れそうなの

さっき泣いたばかり

でもね、愛して

でもね、出て行って

夜が明けても悪魔が笑う

 

夜明け前の一番暗い空

キッチンで踊るrhythm of blues

酷い夢から

目覚めた時いつも

恋は誰もいない

 

愛の証使い果たして

血が流れるほど今日も

歌うばかり

そう何もないのに

なぜか全てが

崩れてゆく予感がして

 

罪や嘘を犬が掻き集め

貪るほど増えて増えて

吠えるばかり

でも雨が降り続きこの街が

清められる

聖者のように

 

夜明け前の一番暗い空

ベッドで泣いてるBilly Holiday

死ぬ夢から

目覚めた時いつも

恋は誰もいない

 

恋は誰もいない

 

恋は誰もいない

 

恋は誰もいない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「切ないけど、良い曲ね」

「鈴乃、私の想いがお前を守って見せる」

都はそう言って目を瞑り私の唇を重ねる

涙を拭い、都の体は光に包み込まれる。

「何かあった時は私の名前を呼んでくれ。私はお前を憑りついてまで必ず守る…さよならは言わないさ」

光に包み込まれた都は別れの言葉を言わず消えていった

そして曲が流れ終え、ケヤルガも鈴乃の元へ去ろうとするが

「ケヤルガ、貴様の目的は何だ?」

ケヤルガは鈴乃の顔を見つつ小さな笑みでこう言い放つ

「俺は君を生き延びるために手伝ったまでだ。それ以上の事はしてはいない」

「……そう」

「では俺はそろそろ行くよ」

ケヤルガはそう言い残し、私の前から去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠一Side

 

「鈴乃、お前…その機体は」

《説明は後から話す。今は崇宰大尉の救助を最優先だ》

「了解した」

俺は2連ビームライフルで恭子に襲い掛かってる戦車級を殲滅

周囲を見渡し警戒しつつ無事恭子を救出

恭子が乗った武御雷は放棄するしかないな……。

俺は恭子をフルアーマーガンダムのコクピットに乗せ抱き抱えそのまま戦線から離脱したが、何というかコクピットに恭子を抱えたまま機体を動かしてるから操縦しづらい

そんな事言ってられねぇ!

とにかく戦線離脱する事だけ考えろ!

恭子はまだ起きていない。

欺衛軍の戦術機は……データリンクで位置確認するが第3大隊に属する機体の反応は……4機!

画面を表示し拡大させる

白い武御雷、アレに乗ってるのは上総、和泉、志摩子、安芸の4人に違いない

「ムーア2からハイドラ3!現在崇宰大尉を救助し戦線離脱してるところだ。今の現状は米子市街にいるBETA群はムーア1が対処している。黄色と白の2色を施されてる戦術機だ」

《ハイドラ3よりムーア2、何を言ってるか理解出来ませんが説明が無さ過ぎて意味が分かりませんわ》

「こっちもだ、崇宰大尉を此方に渡す」

《理解して欲しい訳でも、解決したい訳でも無さそうなので、わかりましたとだけ言っておきますわ》

おい、拒否するのかよ

五摂家に属する気高いお嬢様だぞ

「ホワイトファング隊は既に後退している。このままだと…」

《またBETAに再侵攻される。そんな事は分かっていますわ。貴方は貴方が今やるべきことをやってくださいな》

フッ、相変わらず気高く上品な山城家のお嬢様だな

少し惚れ直したぜ

「分かった、俺は崇宰大尉を連れて基地に帰投する。山城少尉、アンタは無茶しない程度にしとけよ」

《ふふ、その御言葉そのままそっくりお返ししますわ》

上総の表情は少し笑みを浮かべていた

《唯依は無事だって事は確かに把握しましたわ。では》

そう言いつつ上総は和泉、志摩子、安芸が乗る白い武御雷を率いる形で飛び去って行った

「恭子……」

俺は恭子の顔をじっと見た

この顔は歴戦の衛士ではなく、ただのか弱き乙女の女性の顔だ

泣いてるのか……?

怖かったんだろう、俺がいるからもう安全だ

「唯依……」

恭子は眠りに入りながら怯え恐怖を感じ唯依の名前を呟いた

助けを求めBETAに喰われる寸前で命乞いしてる夢を見ている

「いや…私を、触るな……汚い手で…私の体を、触らない…で…」

恭子はBETAに喰われそうだった

そして慰み者になる寸前だった

俺がもっと早く行ってれば……!

「クソ!」

俺は拳で機器を叩いた

叩いても何も起こるわけではない

「何をやってるんだ俺は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、俺は出雲基地に帰投し恭子を抱え医務室に向かおうとしたが恭子が目を開き俺に縋りつくように号泣した

「私…BETAに喰われそうになって…それで……それで私は…うぅ、うぅ…うあああああああああん」

俺は恭子が号泣してる姿を見て悲しい表情になった

「すまない、本当にすまない……俺はアンタを……」

「うぅ…ぐすん……」

情緒不安定だ

恭子は暫くの間、戦場から離れさせた方が良さそうだ

BETAに喰われそうになったことがトラウマになって真面に戦える状態ではない

あんな恭子見た事はない……強気で口だけは達者だが何事もなく平然と気高く振舞い美しい女性だが、今の恭子は衛士ではない。か弱き1人の女性だ。

「豊臣、少し構わないか?」

鈴乃が俺に話しかけてきた

「ああ、崇宰大尉を医務室に入れて休ませてから話さないか?」

「私も同行する」

「すまないな、お前まで迷惑かけちまって」

鈴乃、お前は恭子のことを配慮しているんだな

姉弟の契りを交わしてよかったと思うぜ

人の死を重く受け止め悲しさと辛さを感じる

「いいのよ、私は貴方の姉みたいな関係だから」

「……とにかく医務室に行くぞ」

俺と鈴乃は恭子を抱えながら医務室に向かった

恭子はまだ涙を流している

廊下へ歩き、そこで唯依と遭遇し恭子に話しかける

「恭子様……」

恭子は一言も喋らず返事はしない

「退いてくれ、今はお前に構ってる暇はないんだ」

唯依はぐったりとしている恭子に話し続ける

「唯依は、恭子様の進言通り生き延びました。今はごゆるりとお休みになられてください」

唯依はそう言って、歩き去った

今は構ってる暇はない

早く恭子を医務室に連れて行かなきゃいけない

そう思いながら10分後、医務室に到着し中へと入り鈴乃は軍医から事情と経緯を全て話して恭子を医療用ベッドに寝かせ強化装備を着用したまま布団を被せる

俺はパイプ椅子に座り恭子の様子を見る

鈴乃が難しい表情をしつつ俺に話しかける

「豊臣、貴方はガンダムに乗ってる事は既に分かってるつもりよ」

「ああ、フルアーマーガンダムの事だろ」

都は最初から知っていて俺には何も言わなかった

だが無駄死ではない

生かしたんだ

「で、何で鈴乃はアトラスガンダムに乗ってたんだ?」

俺は鈴乃に問いかけると鈴乃はこう答えた

「神様からモビルスーツを授けられ、BETAと戦うためにこの世界で生き残る事を決意したの」

神様?まさかケヤルガの事か

「おい、それってケヤルガの事言ってるのか!?」

「……深い眠りに浸って夢の中で都と会ったわ」

嘘を吐いてるようには見えない

「貴方も会った事あるの?」

「ああ、俺はこの世界に送られてきた転生者だ。まさか鈴乃がアトラスガンダムに乗るとはな。驚いたぜ」

正直驚いた

強化装備でアトラスガンダムに乗って戦場を駆けたんだ

鈴乃は「ふふ」と一言で添いながら笑みを浮かべ話し続ける

「次の戦闘では99式気密装甲兜を被って戦闘に挑むわ」

99式気密装甲兜?

ヘルメットの一種か

「ヘルメットに被って戦闘挑んでるのは俺も同じだぜ」

「私達の世界では99式気密装甲兜という簡易ヘルメットを被るのよ。別世界にあるヘルメットとは違う」

成る程な

俺は鈴乃に向け優しい笑みを浮かべる

「あとで説明するわ。ニュータイプという能力を加えられそうになったが私は断ったわ。そんな能力がなくてもBETAと戦えるだけで充分よ……ってね」

彼奴、鈴乃をニュータイプ能力を付けようとしたのか!?

「同じ人類同士、仲良く戦おうぜ」

「ええ、佐渡島を取り戻しましょう!」

俺は鈴乃と握手した

しただけならいいが、鈴乃が転んでしまい互いの唇を重ね合ってしまう

なんと、俺の手がしっかり鈴乃の敏感な膨らみを掴んでいた。

胸の部分に!拙いぞ……なんか、ここって敏感過ぎる反応を示している! 

「あ…豊臣、そこはやめて………ひゃうっ!」

なんか柔らかくて温かい触感を揉み始めた

鈴乃の胸って改めて思ったが温かくて柔らかいんだな。

まるでファム・ティ・ランみたいに包容力の塊で優しく包み込むようにだ

急いで立ち上がろうとした俺は、またしても滑って鈴乃に被さるように倒れた。

「ひゃあん!豊臣、崇宰大尉の前で……」

「す、すまない!」

まぁ、やっちまったもんは仕方ないよな

「でも嬉しいわ」

「え?」

「ふふ、とぼけても分かってるのよ」

と鈴乃は頬を赤らめながら悪戯っぽく笑みを浮かべた

「恭子の寝顔、可愛いな。鈴乃もそう思うだろ」

「ええ、そうね……」

2000年5月26日

出雲奪還作戦(本土奪還作戦)は終結した

崇宰恭子率いる斯衛第3斯衛大隊が展開するもBETAの侵攻から唯依達を逃すために殿を務めたが豊臣悠一が乗るフルアーマーガンダムの介入により命を奪われずに済んだ

だが、その代償は大きく確認出来るだけで武御雷を10機喪失し恭子自身の精神が崩壊寸前に陥り戦線から退いてしまった。

日本帝国軍、帝国欺衛軍、佐渡島同胞団の3つの勢力により中国地方に蔓延んだBETA群は更に後退させアトラスガンダムという機体を手に入れそれを乗りこなした大倉鈴乃は五摂家の一員である崇宰恭子を救助したという理由で豊臣悠一と共に征夷大将軍から勲一等旭日桐花大綬章を授与した

2人は『崇宰家の守護神』と称えられていった

そして崇宰恭子という崇宰家次期当主、欺衛軍の女傑衛士は一時的に戦線から退き療養生活を余儀なくされた。

いつか崇宰恭子が戦線に戻ってくる日が来ることを常に願って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良平Side

東欧州社会主義同盟戦術機母艦『ヴィリー・シュトフ』の食堂内にあるテレビで日本の本土がBETAの脅威を去る寸前までに至ったという報道が流れた

俺はファム、アネットと共に食事をとりながらテレビを見ている

《……明星作戦から1年経った今、日本はBETAに対し本土奪還を掲げ防衛戦を敷いています。これについてどう思いますか?》

ニュースキャスターの隣に座ってるとあるジャーナリストが淡々と語った

《日本がBETAの脅威を去った原因はやはり帝国軍の総力を挙げてまで押し寄せる形で地道に駆逐してるのがポイントに当たりますね》

《欺衛軍も総力挙げて連携を崩さずにBETA群と戦っていましたね。東ドイツの国家人民軍とシュタージ武装警察軍と大違いですね》

《はい、東ドイツの国家人民軍とシュタージ武装警察軍は上手く連携保ってはいなかったのが仇となり国土を奪われたのも理由の一つに挙げられます》

「日本は大丈夫かしら?」

ファムは心配そうな表情だ

彼奴がいる、このまま引き下がるような奴ではない

上手く殲滅出来ただろうな

「大丈夫ですよ、ファム中尉。日本はBETAの脅威が去る寸前……この機会を狙って次は佐渡島を叩きに行くと思います」

佐渡島は帝国領土だ。

俺とファム、アネットだけでなくベアトリクスやその部下達が安易に踏み入れるところではない

ベアトリクスが日本政府に脅し文句をつけてまで強行で佐渡島に入らない限りは

「それに日本は国連軍が駐留しています。アメリカ軍もそうですが2年前の佐渡島防衛戦はアメリカ軍は動かなかったみたいですよ」

「酷い話ね……佐渡島にいてた人達はもう」

「何十人何百人何千人……いや何万人の犠牲が生み出されています」

何のための安保条約だ

自分は関係ないから自分だけで解決しろってか

「ファム姉、確かあそこってインペリアルガードの連中もいてたんだよね」

アネットは戸惑いファムはアネットの顔を見て頷く

そう言えば崇宰大尉はどうなったんだろう?

無事生き延びたのか……いやそんな筈はないか。

「ダリル君、もうそろそろ慣れたかしら?」

「ファム姉って呼んで」

「え?」

何を言ってるんだ?

「恥ずかしがらなくてもいいのよ」

ここでは拙いな

「別の場所に移動しませんか?」

俺は場所を移そうとしたが……。

「ダーメ、呼んでくれるまで動かないわ」

と笑顔を添えて言われた

困ったな……。

抵抗あるけど呼ぶしかない

「ファム、姉……」

「はい♪やっと呼んでくれたわね」

……ファムの笑顔、いつも見てると癒される気分だ

それだけじゃなく楽しく感じる

「じゃあ、別の場所に行きましょう」

食事を終え立ち上がりファムは俺の手を握り引っ張る形で食堂から出た途端、艦内放送から音楽が流れてきた

オールディーズ…いやポップスか?

電波ソング……この世界に電波ソングとか流れてくるのか?

いや何かが違う……この声何処かで聞いたことある

誰なんだ……ん?こ、これはキャラソンだ!

何でキャラソンが流れてるんだ?

曲は…高木美祐の『WOO YEAH! 』……!

WUG!のキャラソン………。

この世界に存在しない筈の曲が何で流れてるんだ?

1人の茶髪サイドテールの女性が俺に話しかけた

「私がリクエストしたのよ、ダリル・ローレンツ少尉」

お前が流したのか?

ん?あの女、何処かで見たぞ

「良いノリの曲ね、踊りたくなるぐらいにね」

「そうだな…で?何故キャラソンを流したのです、ディーゲルマン中尉」

あ、思い出したぞ。此奴は確かベアトリクスの部下の一人だ

「昨年、カムチャッカ州アレウト地区の一角でふらふらと歩いてる日本人男性がいてね、その男は転生してきたんだ。訳が分からない言動言ってたけど、一つの鞄を渡されたのよ」

俺と彼奴の他に転生した人間がいたんだ

奇妙過ぎる……。

「その中に入ってたのはポータブルCDプレイヤーとその数十枚の曲が入ってるCDだった。パッケージがある奴は僅かな枚数よ」

成る程、つまり1人の転生者がカタリーナにポータブルCDプレイヤーとその数十枚の曲が入ってるCDを託したって訳か

何のために渡したんだ?

「自分は長くないから、その人は私に渡した後、意識が失いそのまま亡くなったわ」

そうだったのか……。

ファムとアネットは悲しげな表情をしてる

御気の毒に……。

「アニソン、好きなんですか?」

俺はカタリーナに問いかけ、優しい笑みを浮かびこう言い返された

「好きよ、この曲を歌ってる歌手……声優さんだっけ?一度会ってみたいけど無理よね」

「似たような女性はいると思いますよ」

「それ本人じゃないじゃん」

そうだけど……まぁ愛されてる声優さんだって事は確かだ

「明るくて楽しそうに笑いや感動を包んでる歌ね、ファム大尉、ホーゼンフェルト中尉もそう思わない?」

カタリーナはファム、アネットに向け優しい笑みを浮かび言い放つ

「そうね、何だか楽しそうで明るい曲ね」

「あたしもファム姉と同じだよ」

曲が明るい……明るく楽しく生きたい!

ファムとアネットはそう思ってる筈だ

「でも彼奴は違うと思うよ。インペリアルガードにいるジャズを好んでる衛士、何様のつもりなのよ……あたしの事脳筋って言ったのよ。ダリルは彼奴を倒したいと強くなりたい為に戦ってるよね?」

彼奴か……確かにあり得るな

「こんなキャピキャピした曲調、俺には理解できないぜ」「アニソンだ?おいおい、そんなの聴いてるだなんてお前は本当に音楽の趣向は平凡だな。正直ガッカリだぜ」とか言いそうだ

いや絶対に言うぞ、これは

「ああ、彼奴は俺の腐れ縁だ。出来ればの話だけどリユース・サイコ・デバイスみたいなシステムやOSがあったら戦局が変わるかもしれない」

「……四肢切断しないと動かせないシステムの事ね。ブレーメ総帥から全部聞いたわ」

カタリーナは真剣な表情になり俺の顔を見て話し続ける

「将来的にBETAに手足喰われ戦線復帰が厳しい衛士をサポートするシステムを開発するらしい。まだ決定事項じゃないけど障害を持った人間が戦術機に乗れる絶好の機会よ。国連の制裁加えられる覚悟がある奴だけ進めてるわ。勿論極秘裏でよ……」

そう言えば、元々は衛士を目指していたが、総合技術演習中に起こった事故で両足の切断を余儀なくされるほどの重傷を負ってしまった元衛士がいたな

顔は思い出したが名前が思い出せない……。

少し探るか

「ディーゲルマン中尉、一つ聞きたいことありますが宜しいでしょうか?」

「いいわよ、何?」

「元々は衛士を目指していたが、総合技術演習中に起こった事故で両足の切断を余儀なくされるほどの重傷を負ってしまった日本の元衛士がいるのですが、その人も乗れる適正とかはありますか?」

「乗れる適正ね……」

カタリーナは思い出したかのようにその元衛士の名を口にし俺に言い放った

「涼宮遥……彼女の事言ってるよね?」

涼宮遥……恐らくその女性だ

俺の直感が当たってたな

「ダリル少尉は何で彼女の事を知ってるの?」

………。

「やめときなさい、彼女を攫って実験台にさせるつもり?」

「いえ、そんな事は思ってません」

俺はそんな事はしない……仮に攫ったとしたら彼女の意思を踏み躙るようなものだ

カタリーナは俺の顔をじっと見たまま手を握る

「え?」

「ファム大尉、ダリル少尉を借りて良いかしら?」

黒い手袋だが少し肌の感触がある

アイドルみたいな細身の体型でよく戦術機に乗れたものだ

「ええ、じゃあダリル君また後でね」

ファムはアネットを連れ歩き去っていった

それを見守った俺はカタリーナについて行くことにする

「ついてきて」

とカタリーナは自分の部屋に行き廊下へ歩く

10分後、部屋に辿り着き中へと入る

その部屋の中は……。

「な、何だこれは?」

壁中に貼られてるポスターが何枚かある

プロパガンダポスターではない事は確かだ

あの7人の女性、この色分け何処かで見たぞ

「WUG!って良いわね…明るく楽しく笑って私を癒してくれるのよ」

声優ユニットだからな……カタリーナはWUG!にドハマりしたのか

シュタージの一衛士だったアンタがアイドルにハマるなんて……。

カタリーナのその表情はまさに子供染みた満面の笑みを浮かべている

「アンタがいた世界ってBETAがいない世界……そうでしょ?ダリル・ローレンツ…いや徳川良平」

!俺の本名何で知ってるんだ?

誰にも教えていない筈だ

「何で知ってるの?って言おうとしてるけど、我々の監視網は他の国とは規模が違うの。教えてようが教えなかろうが一つの証拠を押さえればアンタの本当の名前は分かる訳よ」

「何が言いたいのですか?」

「パンツのタグに名前書いてあったからよ」

タグか……。

「だからといってアンタを粛清するって事はないから安心しなさい」

と小さい笑みを浮かび俺の肩をそっと触れる

「17年前は不必要な粛清を行っていたのは事実だし覆せないわ。だから諸悪の根源であるかつてのシュタージ長官エーリヒ・シュミット…いやソ連のグレゴリー・アンドロポフを粛清しブレーメ総帥が君臨したの。ブレーメ総帥は世の中に蔓延る本当の生きる価値がない外道を葬ってる。今もそうよ」

拷問ソムリエ………ベアトリクスは優しさを捨ててまで無慈悲に外道を葬っているのか

確かに法の穴に抜ける奴は世界中に沢山いる

世の中を良くしているつもりでこんな事を……?

いや、今は考えるな。俺はここでやり遂げなければいけない事がある

それは第666戦術機中隊の長を務めてるファムとその副官アネットを守り抜くことだ

その笑顔を守りたいと誓ったんだ

「自分は何かをやらなければいけない事があります」

「何かしら?遠慮せず言って」

「仲間を守りたい。自分の我欲を満たす奴等は真の害悪だと思います!」

優しい笑みを浮かんでいるカタリーナは俺にハグした。

一瞬だったが躊躇いもなかった

「アンタならファム中尉を守れるわ、頑張りなさい」

と優しい笑みを浮かびながら言い放った

そして俺の額にキスする

「!」

「じゃあね、何かあったら私に頼りなさい」

「……はい!」

俺はカタリーナの部屋から出て手を振りファムがいる部屋に行った。




次回は出雲奪還作戦終結後の話になります
疲労満杯しつつ精神的に不安定になった恭子は暫くの間休息する事になった
果たしてどうなるのかは……次回のお楽しみに!
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