あれ?予防接種に志望動機っているっけ?~勘違いから始めるVtuber生活~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第13話 ASMRってなぁに?(はじめてきいた……しゅごぃ)

「ASMRってなぁに?」

 

 私は聞いた。

 三波くんは答えた。

 

「ざっくり言うと脳みそ気持ちよくする音だよ」

「すごくいかがわしい感じするんだけど⁉」

 

 やっぱりコイツ、変態だぁ~~~~! 私はドン引きを隠さずに、離れる。

 でも三波くんは全然気づかずに、スマホをすいすい操作して、私にYUTUBEのお気に入りASMRを見せてくれた。

 

『お姉ちゃんが包み込んであげる♡トクトク心音で子守歌』

『おにいさまの耳はむはむして良い? ブラコン妹がお耳舐め』

『好き好きこれ好き♡♥健康器具オンでとろけるメイド』

 

「わぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!」  

「姫宮さん?」

 

 私は飛び上がって、首を傾げる三波くんから全力で離れる。

 壁に張り付いて、ギュっと目をつむって全力で顔を逸らす。

 

「やめて、このド変態!」

「今更何言ってるの? 俺変態だよ?」

「わっ、私にそれ見せてどうする気⁉ どうせまた私の羞恥顔見て、ニマニマする気なんでしょお! もうパターン分かってるんだから!」

  

 さらっと認めてるし、この人ぉ!

 でも、私はコイツに聞くしかない。

 だって私――――ASMR配信って何やるのか、分かんないんだもん。

 だから三波君に聞いたんだけど、なんか危ないものに思えてきた。

 

「わかったわかった。じゃあ、もう少しマイルドにするから」

 

 そんな風に思ってるのを察したのか……三波君は私の両耳にイヤホンをはめた。

いや、なんで、やめっ、ちょっとぉ⁉

 

 そうして――――強制ASMR体験が始まった。

 

「じゃがりこ」

「あっ、あっ、あっ、すごい。すごいしゃぐしゃぐ食べてる」

 

「みたらし団子」

「ヘ……ッ! ちょっ、こ、こんな音……えっうそ」

 

「ブラシ」

「ふぁっ! ヤッ⁉ え? え⁉ 耳入ッ~~~~~~!」

 

「オイルマッサージ」

「ぃや、やっ、ん⁉ お、おく、ふぁっ! やだ、だめだめだッ……め」

 

「甘噛み」

「はっ……あ……ふ、ぅあ」

 

 あむあむと可愛い声が遠ざかる。

 私が肩をひくつかせながら、ころんと倒れたから。

 

 三波君は素早くイヤホンを私の耳から抜き取るなり、純粋無垢に顔を輝かせた。

 

「すごいでしょ? これがASMR。俺が現代に生まれて良かった思える理由の一つさ。技術は偉大ハッキリわかんだね」

「ぅぅぅうるさぁぁ~~~~いぃぃぃぃ……」

 

 ホントッ、コイツ! マジコイツゥウウーーーーーッ!

 

 耳の中まだふわふわしてて……目がうるうるしてきて恥ずかしくて顔を伏せる。

 なんで三波君動じてないの?

 なんでそんなキラキラした顔のままなの?

 

 顔を上げて、ジトッと睨むと、三波くんの顔がぱぁっと華やぐ。

 ……もし彼が伽夜ちゃんだったら、間違いなく泣かすまでくすぐってた。

 

「まぁ、さっき聞かせたやつはパターンの例であって。大体はシチュエーションで甘々に囁いたりすることが多いかな」

「シチュエーション?」

 

「最初に見せたでしょ、おねえちゃんと妹のやつ。トクトク心音で子守……」

「やめてサムネタイトル音読しないで」

 

 分かったから、言わんとすることは分かったから。

 要は、【宵月レヴィア】が眷属のおねえちゃんになったり、妹になったり、そういうことね。……できるかな。

 

 姉ならできるかもしれないけど、妹の気持ちは分からないし……実の妹はアレ絶対に普通じゃないし参考にはならない。

 

「ねぇ、三波くん。例えばなんだけど……レヴィアちゃんの今夜のASMRって、どんなシチュエーションが良いと思う?」

 

 変態であれど、彼は【眷属】。

 やるからには見に来てくれたみんなに満足してもらいたいし……一応、一番身近なテスターではあるんだよね……。

 それに私よりもVtuber界隈に詳しいから、欲望オンリーじゃない的確な意見が貰えるかも!

 

 三波くんは「そうだなぁ」と空を仰いで、クリスマス前の子どもみたいな目で

 

「赤ちゃんレヴィアがあぅあぅキャッキャッてみんなの耳元ではしゃいで、『パパ!パーパ♡』って叫んで欲しいなぁ」

「やるわけないでしょバァーカ」

 

 ――あっ! 気付いた時=一息に言えてしまった時だった。 

 慌てて口を塞いだけど遅かった。三波くんは目を丸くしてじーーーっと私を見つめて聞いてくる。

 

「姫宮さん今なんて……」

「あ、赤ちゃんレヴィアは需要無いんじゃないかナァ‼ そ、それにASMRなのに叫んじゃ、リスナーの鼓膜無くなっちゃうヨォ‼」

 

 ここはどうにかして誤魔化すしかない! 

 お願い、気づかないで、バカでいて三波くーーーーん!

 

「レヴィアたんのパパになれるなら、鼓膜なんざないなったって何の支障もないじゃろがぁぁああああい!!!!!!!!!!!!!!」

「わーーーーーー今まで一番ビックリマーク多い~」

 

 ぁ、赤ちゃんレヴィアてそれ……ぇえ? 

 何が良いのか分からないけど、ちょっと考えてみることにする。たしかに今までの配信のコメントでも「パパになりたい」って見たような気がしたから……嫌だなぁ。

 一蹴するには、割と説得力ありそうなアイデアを私は心の内にメモしておいた。

 

「まぁ赤ちゃんになるのは、まだ先で良いかな~。俺的には凸待ちで人来るたびに一歳年を取る赤ちゃん配信をやってほし」

 

 そこまでだ馬鹿野郎と言わんばかりに、学校のチャイムが鳴った。

 それは私の心情とチャイムが完全一致した、数少ない一瞬でした。

 

「あ、もうこんな時間か。もどろっか姫宮さん」

「三波くんは先に行ってて。私、午後は妹と一緒に早退するんだ」

 

 私の通う高校は中高一貫で、伽夜ちゃんは中等部に在学している。きっと早退の諸々の手続きとかは、伽夜ちゃんがしてくれてるだろう。

 

「そっか。じゃあ、また明日。レヴィアたんのASMR、語り合おうぜ」

 

 私はこくっと深く頷いた。校舎にあっさり戻っていく背中を眺める。

 ――赤ちゃん凸待ちに、娘ASMRかぁ。 

 

「……有り、なのかな?」

 

 ちょっとやってみたいなと思った彼のアイデアを思い浮かべながら、私は校門へ向かう。伽夜ちゃんに今度、相談してみよう。

 

 今はとにかく――――眷属(みんな)に癒しを与えなきゃ。

 そうして私は伽夜ちゃんと一緒に事務所に向かう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――――ASMRのレクチャーを受けるために。

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