あれ?予防接種に志望動機っているっけ?~勘違いから始めるVtuber生活~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第19話 先輩と後輩のてぇてぇ(現場ではおねショタです)

「これがブラシ。耳の周りをさわさわする感じ。やってみな?」

「は、はぃ……ぁ」

 

「綿棒はカリカリに、梵天はここでフワフワしてあげて。敏感なとこ(耳の中)だから、気を付けてね」

「は……ぁっ、ぃぃ」

 

「スポンジは雨の音を奏でる気持ちで。僕はちょっと耳の中に押し込んであげるんだー。ご主人様の反応、良いからさー」

「はぃ……ってる! はぃってます、ぉ・ぉ・ぉく!」

 

「あ、これが最後だね。オイルマッサージ。こぅ手に絡めて……あはっ、ぬとぬと」

 

 無邪気に笑いながら、リエル先輩は中指と人差し指をつけたりくっつけたりした。

 オイルの糸がツゥッ……て二本の指を繋げてる。

 やめてよぉ……胸の奥バクバクする。

 

「これ色々やり方あるんだよ? 耳の周りを撫でたり……耳を塞いでくぱくぱさせたり……耳の中触る時は、奥の白いのに触らないようにね。鼓膜の部分だから」

「っ! ~~~~~~~っっ‼‼」

「……今思ったんだけどさ、レヴィアちゃんって耳敏感?」

 

 今頃ぉ⁉⁉⁉

 50分間ちゃぶ台の上で肩を震わせて、ようやくリエル先輩は私の弱点を知った。

 私はため息をつきながら、体を起こした。

 

「そぅなんです。お母さん譲りで……音に敏感というより、耳自体が弱くて」

「あぁ、じゃあ普通に過ごす分には平気なんだぁ」

「そうです、だから耳たぶとか触られたらビクッてなっちゃって」

「あはっ、レヴィアちゃんの耳たぶって小っちゃいけど柔らかそうだよね~~。ふにふにしてそう」

 

 リエ……天海君。たぶん天然で言ったんだろうけど、それ危ないですよ。と思いつつも、私は合わせて「あはは」と笑う。ちょっと雑談して、落ち着いてきた。

 

良いタイミングだった……ホッと胸を撫で下ろした。

 ――のも束の間。

 

「それにしてもさー、堕天使にもお母さんっているんだねー? 僕、天使だから神様がご主人様だけどさー」

 

 ――――Oh,mygod.

 またやっちゃったよ。

 

 私はスタジオとガラスで隔たってる音響室をバッと振り返る。防音で聞こえないけど……伽夜ちゃんはニッコニコしながら、【せっ・て・い‼】と書かれたカンペをバンバン叩いていた。

 

「宵月家! 宵月家のお母さんである! 譲りっていうのは違くてその同じ体質ってだけ! 妾は堕天使ぞ⁉ 妾を創造したのはあくまで神である!」

「あーじゃあ僕と同じだねー。天使つながりの先輩後輩だーよろしくねー」

「ぅ、うむ! うむうむうむ!」

 

[ コメント ]

・THE茶番

・気にしなくて良いのに……

・耳が敏感! レヴィアたんは耳が・びん・かん!

・薄い本部隊、準備に取り掛かれ!

 

 なんか私、言う必要のない弱点(こと)話しちゃったのでは?

 でもとりあえず、なんだか終わりの空気が漂ってきた。

 

 ふぅ……あ、あぶなかった。改めて、私は胸を撫で下ろす。

 

 侮ってた訳じゃないけれど――――天海君はすごかった。そもそもボイチェン使わずに女の子の声してるの本当人体超越してるというか。

 キャラの入り込み方も尋常じゃなくて、精神というか魂から【旭日リエル】になってて…………すごくドキドキした。

 かわいくて、かわいすぎて、どうにかなっちゃいそうだった。

 

 いやほんとその前に終わることできてよか

 

「あ、最後の最後に、レヴィアちゃんにとっておき教えたげるよぉ。物使わなくて良いから、さっきよりは楽かもよ」

 言うが早いか、天海君――――リエル先輩はTシャツの襟を引っ張り降ろした。

 そうしてちらりと見えた肌色の部分に、おマイク様《KU100》の耳を押し当てた。

 目を見開く。

「はぃ、ギュウ~~~~~~……あはは、ほら聞こえる? 僕の心音。とくんとくんて。こうするとご主人様みーーんな喜んでくれるんだぁ」

 

 それは、冷静に見たら、ただ美少年がマネキンの頭を抱きしめてるだけだった。

 

 でも今、天海君は【旭日リエル】に……天使になりきっている。

 そのフィルターを通して目にする光景は――――癒し。

 美少女の天使が母性に目覚め、人の子を抱きしめて、慈しみ愛おしく思うような。

 そんな聖性を目の前で繰り広げられて―――――プツン、と途切れた。

 

「じゃあ、はい、レヴィアちゃんもやってみなよ。えっとね、鎖骨と胸の根本くらいにマイクを押し当てたら聞こえるかも」

「……わかりました」

 

 え、と先輩が声をこぼした。

 私がブレザーを脱いだから。

 ワイシャツのボタンを、外したから。

 

「ぬ、脱がなくても良いんだよ? レヴィアちゃ」

「胸が邪魔で当てられないんですよ」

「ち、ちかっ……近いよレヴィアちゃん、なんで」

「――――先輩がイケないんですよ」

 

 シャツの上から自分のを持ち上げて……胸の付け根――谷の奥底にマイクを押し当てる。マイクを抱えるリエル先輩を抱っこするように、ダミーヘッドを二人で挟み込むように密着する。

 

「先輩が、かわいい過ぎるから…………っあ、きこぇる。先輩の音、とくとくって……ぁれ? ちょっと……はやぃですね?」

「ぅあ……だ、だって」

「だって? なに? ねぇ……わたしの音、聞こえる?」

 

 ギュゥっと、更にマイクを押し付ける。

 向かい合ったリエル先輩にくっついていく。

 すごぃ……近い、近いよこれ。

 先輩、耳まで真っ赤。目、すごく開いてる。髪、良い匂い……。唇、すごい柔らかそぅ。ぁ、うるうるしてる、目……うるうるしてる……っ!

 

「かぁ、いい。リエル先輩、かわぃいです、よ」

「ゃっ」

 

 愛おしさがささやきに溶ける。

 イヤホンの繋がりが、すごくすごく深くなっていく。きゅっ、とリエル先輩の手に力がこもる。

 

「手……握ってくれた……うれしぃ、うれしぃいです」

「ちがっ、ちがぅぅ……置き場所っ、無いからっ、仕方なくっ、てぇ」

 

 しっかり手の平を合わせて、指を絡めて。

 なのに先輩は否定しながら、潤んだ目を背ける。

 意味ないのに。お互いの息が、当たってるのに。

 やばいどうしようとまんないドキドキとまんない。

 

「ど、しよぅ……せんぱっ、わたしの音……すごぃ。ねぇ? きこぇる? ね……きぃて、先輩」

「しらないしらないしらない! やっぱりレヴィアちゃん今日発情しt」

 

 爪をたてた……先輩の手の甲に。

 先輩はびくっと肩を震わせた。

 

 同じことしか言わない口を、閉じさせる。

 だまってて。静かにして。耳を澄まして。

 きいて。

 

 沈黙が温く包み込んでくる。

 

 トットットットッ――――――

 トクットクットクットクッ――――――

 

 二人の心音が、一つに重なってる。

 手も重ねて、吐いた息が混じり合って。

 

「れ、レヴィアちゃ……息、荒い……」

「だ、だって、すごぃドキドキし、て……ぁ」

 

 目からどんどん涙が膨らんでいく。

 鼓動が、感情が盛り上がりすぎて、零れそう。

 零れて――――突き動かされる。

 

「せん、ぱ……っ」

「へ、ぇ⁉ ちょっ、だめ、それはまずい! まずいって。やっ! た、助けてぇええええええーーーーー‼」

 

 

       「離れろ! おねショタ警察だ‼」

       「容疑者確保ォォォオーーーーー‼」

 

 

 バァン! と配信部屋の扉が蹴り破られる。

 そうして音響室から飛び込んできた宇喜多さんと伽夜ちゃんが、私と天海君を引き剥がした。

 

 

[ コメント ]

・てぇてぇ……とてつもなくてぇてぇ

・先輩後輩百合は激しこ

・拙者、立場逆転大好き侍!

・リエル受けなんかいwww

・リエルの方が先輩なの草しかない

・頭ピンクなレヴィアたんすこ

・てか、締めの挨拶無くない?

・急に真っ暗

・あれ? 配信終わってる?

・エラー?

・あっ(察し)

・何も映ってないんだけど

・まってwww まさかのBAN?

・エッチなのはいけないと思います!

 

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