あれ?予防接種に志望動機っているっけ?~勘違いから始めるVtuber生活~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第22話 私と彼のクラスカースト(オープンな変態ってなんで人気なの?)

 教室に入った。

「はよ~」

「はよ~す」

「すけまんまよむ~」

 独特の挨拶を交わす……人の横をすり抜ける。

 そこには、全てが出来上がった空気に満ちていた。

 男子女子問わず、何人かで一塊になった、空気の集合体。私という影はその空気の隙間を縫って、自分の席に辿り着き――――眠る。

 

『最低でもクラスメイトと談笑くらいはしたら?』

 今朝の妹の言葉がよみがえった。

 私は思った。

 

 帰りたい。

 なんでだろう、すんごぃ帰りたい。 

 

 腕の隙間からちらりとクラスの様子を見る。あぁ、なんだろうこの感覚。全てが完璧な世界の中で、自分だけが不必要な異分子の如く。

 

 どうしてだろう、普段こんなこと思わないのに。昨日と何も変わらない光景の筈なのにどうして今日はこんなに心追い詰められるんだろう。

 

『友達と何話したとか、そんな簡単なことでも良いんだから』

 伽夜ちゃんうるさい。さっきからイマジナリー妹が、もう、すごいうるさい。

 

 胸がざわざわする原因、ぜったいこれだ。無理して話そうって考えるから、こんな気持ちになるんだ……ん? 

 空気がうねる。

 視線《かぜ》が教室のドアに集まって――――三波くんに吸い寄せられた。

 

「おっ、おはよう、三波くん。」

「はよす、南天さん。教えてくれたアイブロウ使ってみたよ」

 

「M字なんだけどwww やば、ホント三波って意味フwww」

「〇さんリスペクト。今度貸すよ、浜見さん。200巻の重みで笑い死ぬよ」

 

「なぁ、三波ぃ。放課後、歌いにいかねー?」

「すまん宮崎、明後日ならいける。二人でラ〇ドの『おっぱい』熱唱しようか」 

 

「三波、明日は頼むぞ」

「任せとけ、明日のライブ絶対成功させるぞ。アイドル部は廃部になんかさせない」

「うちバスケ部なんだが」

 

 今更だけど三波くんって―――――すごい人だなぁ。

 さっきまでグループ毎に分かたれていた空気が、三波くんを中心に繋がっていく。そう彼は紛うことなき『クラスの中心』なんだ。

 

 ……お〇っこ我慢スマブラを作業用BGMにしてるのに。

 あれ、なに? 思い出したらだんだん……腹立ってきた。

 

 私は寝たふりをやめて、じぃっと三波くんの周りにいるみんなに訴えかける。 

 騙されないで、みんな! その人、初対面の女子に寝言聞かせる奴だよ! 熱烈に女子にお〇っこ我慢する声聞かせる奴だよ! ASMR聞かせてトロトロになっても真顔で話し続ける変態(やつ)だよ⁉

 

 でも誰も私の眼力の訴えを聞いてない。当たり前だね…………ん? 

 それには、今、ふとして気付いた。

 三波くんの周りには人だかりができる。

 これも昨日から何も変わらない光景の一つ。そしてみんなの中心にいる彼は――――無表情だった。

 

「あ……っ」

 

 三波くんは鉄面皮だ。誰もそこを気にする人はいない。

 だって、彼の笑った顔を知ってる―――――わたし。

 

 気付いた瞬間、胸がざわつく。

 え?え?え? なに、これ……⁉  

 視線はみんなに囲まれた無表情の彼を見てしまう。

 

「 なに見てるの? 」

 

 横合いから飛んできた声に、スンッと凍り付いた。

 ふるふると、強くて冷たい語気が流れてくる方へ振り返る。

 そこにはクラスメイトの――――早乙女咲良《さおとめさくら》さんが立っていた。

 早乙女さんは私の視線を追うと、すぐ三波くんに気付いた。

 そして、鼻で笑って一言。

 

「姫宮さん……もう少し相手考えたら?」

「アッ、ハイ、ソウデスネ」

 

 早乙女さんはしばらく私を睨んでから、可愛い巻き髪を翻して席に座った。

 

 ……伽夜ちゃん、私話したよ。

 クラスメイトと……話せたよ。

 心の内で任務達成の報を入れて、私は滑らかに睡眠態勢(偽)に入った。

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