あれ?予防接種に志望動機っているっけ?~勘違いから始めるVtuber生活~ 作:ビーサイド・D・アンビシャス
「紗夜ぴぃよぉぉぉぉーーーーーー!!!!!」
「日〇タックルんびゃ⁉」
コンビニに着いて早々、褐色ギャルのタックルが腹に突き刺さる。
バイト先の元後輩:日和ちゃんは私のお腹に顔をぐりぐり埋めて喜んでた。
「紗夜ぴだぁ……マジよりのマジで紗夜ぴだぁぁぁ……っ!」
「あたっ、当たってるよ日和ちゃん! お腹に、息! くすぐったぃよぉお」
「辞めたって聞いた時はガチぴえん超えてぱおんだったよぉ、ほんとにうちもう寂しくてぇえええええ紗夜ぴよぉ……」
「ぐっ、りぐり……やめっ、てぇ……っ!」
「ぴよぴよぉおーーーーー!!」
駄目だ聞いてない、このひよこギャル!
くすぐったさで体よじれちゃうけど、ひとまず日和ちゃんの気がすむまでお腹ぐりぐりされる。
『ロー〇ンのダークエルフ』と称されるほどの美貌を、赤く腫らしながら、日和ちゃんはこれまで何があったかを語ってくれた。
「紗夜ぴが辞めた二、三日は普通だったの。でも四日目……一昨日から急にうちら従業員全員に『パパ』呼びするよう言ってきて……斎藤さんにもだよ⁉」
さ、斎藤さんにも⁉
定年退職後も奉仕の心でバイトと
それだけでも、私の心の
「最初の内はうちもみんなも面白半分だったし、普通に笑いながら合わせてたんだけどさ…………
年頃の少女二人から、目のハイライトが消えていく。
成人男性なら腰から崩れ落ちる位の、冷気のこもった視線で私達は話し続ける。
「え? お客さんの……前?」
「お店が混んでバックヤードにヘルプ呼ぶ時にも『パパ来てください』。
クレーマーから店長出せって言われた時にも、『パパ出てください』。
店長と話しに来た本社の人との電話応対でも……『パパは今不在です』……て」
「もう良い、日和ちゃん。もう、良いよ」
言わなくても、良いよ。
とんだ羞恥プレイに晒されてきた日和ちゃんを抱きしめる。
そしたら「紗夜ぴよぉお」とぴよぴよ泣き始めた。
「うち初めて見たぁ!
長蛇の列が一斉にギョッとしたのも、怒り心頭だったクレーマーがスッ……て後ずさりしたのも、本社の人の『あぁ、わかるわかる』って顔もぉ!」
「ん? なんか最後だけ違くない?」
なんで本社の人、理解示してるの? それって店長の同類では?
増長の原因を垣間見た気がするけど、とにかく今は原因療法だ。
根本的解決を試みよう。
「ごめんね紗夜ぴ……嫌だよね。だって紗夜ぴが辞めたの、店長のパパ呼びが嫌だったからでしょ? なのにこんな……」
んーーーーーーーーそれは理由じゃないというか何というか。
ほとんど伽夜ちゃんのせいというか。
「うち知らなかった……パパじゃないおっさんをパパって呼ぶキツさを、恥ずさを。そうとも知らずにうち、紗夜ぴのこと爆笑してた……『パパてw』みたいな」
いやーーーーーーー正しい反応だと思うよ?
むしろ爆笑してくれてた方が楽というか。
「ただでさえ休みの日に、元職場のことで……ごめん」
止まんないなぁ、日和ちゃん。
というか、むしろ……。
しょんぼりと俯くひよこギャルの頬っぺたを両手で挟んで持ち上げる。「ぴよ」と呻く彼女の目をまっすぐに見つめて。
「――――私を頼ってくれてありがとう」
「……紗夜ぴ、なんか変わった?」
日和ちゃんは目をぱちくりさせて、不思議そうに聞いてきた。
その問いに、私は逆に面食らってしまう。
そうかな? 私、なにか変わったかな?
私はこれまでの五日間の出来事を振り返る。
Vtuberデビューしてからの五日間――――笑っちゃうくらい濃い時間を思い出した。
もちろん、すべての出来事を日和ちゃんには言えないけれど。
それでも溢れる思い出を端的に、一言に固めて……口にする
「2000人の前で赤ちゃんプレイしたら、そりゃ変わるよ
(そうだね。ちょっとは変われたかも)」
「 エ? 」
石化した褐色ギャルを前にして、私は笑顔で悟った。
「え、ま、にせ二千人? あか、赤ちゃん?」
「店長ってバックヤードにいる?」
「いや紗夜ぴ、エ待って、それマ? マなの?」
「あっ、裏口から入るね。お客さんに見られるのもなんだし」
「ん? ん? そもそもどういう意味? どういうこと? ねぇ、ちょっと紗夜ぴ」
「安心して、私が店長に話つけるから。それじゃ」
「ちょっ、まてよぉ⁉ 紗夜ぴぃよぉぉぉぉーーーーーー!!!!!」
ぴよぴよした絶叫を、後ろ手に閉めたドアで遮る。
――――勘の良いひよこは