あれ?予防接種に志望動機っているっけ?~勘違いから始めるVtuber生活~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第45話 でこ助女子は知りたがり☆(ノリに付いていけないよぉ)

カチューシャでおでこを出したクラスの女子が声を掛けてきた。

 

「姫宮さぁ~~ん、はよーす」

「あっ……ぉ……ぉはょぅ」

 

 しおしおと、声を小さくする。 

 せっかく……せっかく話し掛けてくれたのに! すごく嬉しいのに!

 私は唇を手の甲に付けて、口元を見られないようにする。

 

「ねねっ、今朝のトレンド見た~? 宵月レヴィアってVtuberなんだけどぉ」

 

 そう言って、おでこ女子はしれっと空いた席に座った。私の真ん前の席だった。

 ……無言でぷるぷると首を横に振る。

 

「赤ちゃんプレイしたりリスナー絞めて食べたり、マジキチで超笑えるんだー!」

 

 うぐぅっ‼

 マジキチというワードに胸が抉れられる。

 辛い……否定できないのが一番辛い。

 

 でも私は何とか表情筋を酷使して、無言の微笑みを返す。

 すると向こうもニコっと微笑んで、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 鋭い指摘(ナイフ)を投げてきた。

 そうして、おでこ女子――――杏里さんはじっとりと私を見上げてた。

 

「ねぇ、さっきからなんで喋ってくれないのかなぁ?」

 

 そんなの決まってる…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう、杏里さんがにこやかに話し掛けてくれた、その時から。

 私の体は隅々まで、じろじろとクラスメイトの視線に晒されていた。

 

「ぁ……ぅ、ぇと。そ……の……」

 視線がくすぐったくて何回も身をよじる。

 どんどん頬が火照っていく。

 どぅしよ……こ、こんなに見られたこと今まで一度だって……っ!

 

 そうして、もじもじしていたら、杏里さんがため息をついた。

 

「そっか……お話、してくれないのか……」

 

 しょんぼりした様子で杏里さんが、ガタリと椅子から立ち上がる。

 ――――ごめん、杏里さん。

 この状況で一声でも出そうものなら……私は……っ!

 杏里さんの落ち込んだ様子に、胸がちくちく痛んで。

 

「ふっ、なんて顔してるのよ姫宮さんってば」

 杏里さん……。

 私は席を立って遠ざかる杏里さんの背中をしみじみと眺める。

 

「気にしないで、敗者はただ去るのみよ。

 固く閉ざされた乙女の扉を開けなかった敗者は……ね」

 杏里さん……?

 その、芝居がかった大仰な身振り手振りはなぁに? 

 

「けれど。これだけは言わせて」

 あ、杏里さん?

 唐突に踵を返して、杏里さんが急接近。

 杏里さんの指が私の顎をくいっと持ち上げて……って、へ?

 杏里さんの顔が目の前いっぱいに近づいて。

 

「愛してる」

 ――――春風。

 もしくは桜の花びらを運ぶそよ風みたいな、美声が、私の耳に吹きかけられた。

 

「……ふぇっ⁉」

 とくんと心臓が跳ねた途端、血の気が巡って、一気に私の顔がカァッと熱くなる。

 

 なにが。急に。どうして。杏里さん。愛してるって。 

 疑問がどんどん湧くのに、口はぱくぱくするばかりで、言葉にしてくれない。

 

 杏里さんは動揺する私を見下ろして、フッと軽やかに微笑んだ。

 

「うらぁっっっっしゃぁああああーーーーーーーい‼ 『ふぇ』いただきましたぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 そして運動部もびっくりの強烈ガッツポーズを取って、周りの机と椅子を倒した。 

 えーーーーーー? あんまりな豹変ぶりに、火照りがどんどん収まっていく。 

 

 けれど周りはそんな様子はなく、むしろ同じテンションで。

 

「さすが、声楽部の宝〇ぁ‼」

「校内一の美声はだてじゃねぇぜぇ!」

「杏里ちゃんすごーい‼ ずっとその声だったら良いのに!」

「ほんとなんでイケヴォ出した直後に、そんな女捨てたような奇声出せるんだぁ‼」

「耳が孕んだあと腐る!」

「そこに痺れる憧れるぅ‼」

 

 いやいやいや付いていけない付いていけない。なにこのテンション⁉

 クラスの盛り上がり様についていけない。なのに、その盛り上がりの中心人物に――私は指を差された。

 

「ふふふふっ、不詳この杏里! ちょいちょいシチュボとか声の仕事やらしてもらっている身! 一回聞けば、だいたい誰がどんな声か分かるのよ!」

 

「えっ、そうだったの⁉」

 杏里さん、声の仕事してたの⁉ え、え、それってすごいよね⁉

 きらきらと目を輝かせていたら、杏里さんは得意げに胸を張る。

 

「いやね最近、姫宮さん変わったなーとは思ってたのよ。でもまさかこんなことしてたなんてね~~?」

 

 ビクンッ!

 自分の状況を思い出して、私はだらだらと冷や汗を流す。 

 

「ナッ、ナンノコトダカ……」

「ここまできたらもぉ~間違いないよ!」

 

 もぉ~水臭いなぁ言ってよね、みたいな口調で、杏里さんは私に身を寄せてきた。

 ――――――――――――あっ

 

「姫宮さん! あなたレヴィア」 

 

 

          「 お前を殺す 」

 

 

 ポンっと、背後から伸びた手が杏里さんの肩に乗った。

 瞬間、杏里さんのウキウキした笑顔が……沈んだ。

 

 ドズンっと片手で膝を着かされた杏里さんがギチチと背後を振り返る。

 

「さぁーーおーーとーーめぇぇぇぇええええ‼‼」

「さんを付けろよ、デコ助女子ぃいいいいい‼‼」

 

 溶岩の如き怒声と春嵐の如き威勢が衝突した。

 

 もー寝たいなと思った。

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