あれ?予防接種に志望動機っているっけ?~勘違いから始めるVtuber生活~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

5 / 47
第5話 身バレこわいよぉ!(クラスメイトが私を推してました)

 バイトやめてきた。

 というより「やめさせられた」って言った方が近い。

 

『いいねいいねぇ! お姉ちゃんやっぱ最高だねぇ! 

 もう収益化の条件クリアしちゃったよ⁉ すごいよぉ! 

 これからも一緒に配信頑張ろうね、お姉ちゃん! あ、ちなみにバイト先に辞表出しといたから、もう行かなくてよいよ』

 

 これが、妹が起こしにやってくる微笑ましい日常シーンのセリフである。

 ぅぅうう、朝から胃が縮んだよぉお。

 

 珍しく伽夜(かや)ちゃんに起こされた私は、学校に行く前にバイト先のコンビニに行って確認してきた。

 マジだった。

 

「怖い……もう怖い……伽夜ちゃんが怖い」

 

 私の筆跡そっくりの辞表を見た時の寒気は、未だに収まらない。

 春のお日様はぽかぽか温かいのに、胸の中は冷え冷えだった。

 冷え冷えな原因は分かってる。

 

 朝日に照らされた通学路からスマホに視線を落とす。

 そして【宵月レヴィア】のYUTUBEチャンネルを見る。

 

 わぁ~~、4桁超えてりゅ~~~~~。

 

 色々悟った私の顔をパァ~~とお日様が照らす。

 そして笑顔のまま、私はガクンと膝から崩れ落ちた。

 

「どう、しよ……どうしよどうしよどうしよどうしよぉ~~~~⁉」

 

 不安に叩き伏せられた私は、ひしっと電柱にすがりつく。

 ――――バレてたらどうしよう⁉

 

 昨日、配信が終わった後ふと考えちゃったんだ。

 ……もしクラスの誰かがあの配信を見ていたら? って。 

 

 そんなのあるわけないじゃーんと思って寝ました。

 起きたらチャンネル登録者1万人超えてました。

 

「お願ぃ、嘘だと言って……」

 

 もう一度、【宵月レヴィア】のチャンネルを見る。数字は変わらなかった。

 

「あぅぅ……こ、こんなことならボイチェンすれば良かった……いや、日頃からボイトレしていれば……」

 

 どれだけ後悔しても、もう遅い。

 クラスに友達はいないけど、それでも何度か声は交わしたことはある。

 

 例えば……宿題写さしてと頼まれた時とか、放課後の掃除を頼まれた時とか、クラス委員の雑用を頼まれた時とか。

 

 あれ、なんでだろ。なんか無性に悲しく……と、とにかく!

 当然だけど、私の声と宵月レヴィアの声に違いは無い。

 クラスで【Vtuber界隈】に詳しい人はいないと思うけど、でもチャンネル登録者が増えれば、認知度が増えれば、それだけバレる確率高くなるわけで!

 

「……いや、よく考えてみて」

 私は努めて冷静さを取り戻しながら、校門をくぐる。

 

 クラスの誰かにバレると言ってもさ、この世界にはすごいエンターテイナーはたくさんいるわけで。

 クラスで話題になるレベルなんて、登録者ウン十万超えのトップVtuber位にならないと。

 

 つまり……そこまで気にしなくても、良いかも。

 

「うんそうだ絶対そうだ! そうだよ、私が思う程、みんな私なんかに興味ないよ! アハハッ、胸が軽くなってきた!」

 

 気付かない内に自意識過剰になってたよ。

 はーぁ、杞憂杞憂♡ 

 私は胸を撫で下ろしながら、教室の戸をサラッと開けた。

 

 

「好きなVtuber? 【宵月レヴィア】かな。

昨日、初配信したばっかの子なんだけどさ……切り抜きあるよ。見る?」

 

 

 クラスの中心(イケメン)がおもっきり布教してた。

 

 

「三波くぅーん‼ ちょっと私と一緒に来てほしぃィィィなぁァァあああ‼⁉」

 

 談笑中、否、布教中の彼の袖を引っ張って、私は彼を教室から引きずり出した。

 ホームルーム開始を告げるチャイムが後ろから聞こえてきた。

 そうして教室とは反対側の校舎、その裏の日陰まで来た時に、彼――三波恭介君が声を掛けてくれた。

 

「あの~もうそろそろ良いんじゃない?」

「え……っ⁉」

 

 だから今気付いた。

 袖をつまんでるだけと思っていた私の手は……三波君の手を握ってた。

 

「ひゃあ⁉ ご、ごごごめんなさいっ!」

 

 私はパッと彼の手を離すと、慌てて頭を下げた。

 彼は後ろ手で頭を掻きながら、首を傾げた。

 

「いいって謝んなくて。で、俺を連れ出したのはなんで?」

 

 …………………………まずい。

 私は頭を下げて顔が見えないことを良いことに、たらたらと汗を垂らす。

 どうしようどうしようどうしよう何か言わなきゃ、でも何言ったらいいの⁉ 

 

「え、はっ、その、あの……あ、の」

 う~~うるさいよ心臓ぉ! 前髪をササッと降ろして、赤くなった顔を隠す。

 なんで! 

 よりによってなんで……三波くんが【レヴィア】を知ってるの⁉

 

 彼の名は三波恭平。学校を代表するイケメン君だ。

 スポーツ万能・成績優秀で『フィクションご出身です』と言われても納得しちゃうくらいの美男子。

 

 そんな人が、彼が、どうして。

 そうこう考えてる内にどんどん辺りに静寂が包んで――――サァァァァッとどこからか風が吹いた。

 日陰に咲いた桜の花びらが、私と彼の間に舞い込む。

 

「もしかしてさ姫宮さん――――好きなの?」

「……ひぃえ⁉」

 

 バクンッ‼ と心臓がひと際強く胸を叩いた。

 ぼわって顔が熱くて熱くてアダメだ訳分かんなくなってきた! 

 

「そ、そんな! ちが……っ! 私なんかが三波君と」

「宵月レヴィア、好きなの?」

「だなんて………………エ?」

 

 桜の花びらを押しのけて、ぐいっと一歩踏み込んだ彼の顔。

 その切れ長クールな瞳の中にある輝きは――伽夜ちゃんと同じだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。