D4DJ〜Uniquee Mix!!〜   作:熊0803

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今回はオリキャラが沢山。

楽しんでいただけると嬉しいです。


Third Unique

 

 

 

 

 甲高いアラーム音が部屋に響く。

 

 

 

「んぐ……」

 

 頭の奥まで揺らすようなけたたましい音に、僕は目覚めた。

 

 夢の世界から引っ張りあげるにはてきめんなそれを、手で探って止める。

 

 ゆっくりとうつ伏せになっていた顔を上げ、瞼を上げた。

 

 瞬間、カーテン越しの陽光に目を焼かれる。

 

「ふぁ……」

 

 もう朝か……

 

 ホーム画面を緩慢に見下ろすと、表示されている時刻は7時を過ぎた頃だった。

 

「……なんでこんな姿勢?」

 

 いつも仰向けで寝るのに。

 

 ええと、昨晩は確か……勇気を振り絞って、明石に連絡をして。

 

「あー、途中で寝落ちしたのか」

 

 確かめるためにスマホのロックを解除すると、トーク画面が表示された。

 

「ぷっ、変なとこで止まってるわ」

 

 昨晩の僕は何を打とうとしたのか、よくわからない文字の羅列が並んでる。

 

 送られたなかったそのメッセージの代わりに、最後は明石の「おやすみ」の言葉があった。

 

「彩音ー? 起きたなら準備しなさーい」

「うーい」

 

 さて、本格的に起きるか。

 

 

 

 一念発起して布団から這い出る。

 

 洗面所に行って顔を洗い、寝癖を整えて、部屋に戻り美月高校の制服に袖を通す。

 

「今日は……これかな」

 

 クローゼットの中からパーカーを選定し、学校指定のシャツの上から羽織った。

 

 その上にブレザーを着て完了。手ぶらで一階に降りていく。

 

「はよー」

「おはよう。すぐできるからお皿出しちゃってー」

「ほいほい」

「はいは一回」

「だからほいって答えたのに……」

「同じよ」

「へーい」

 

 もう、と文句のように嘆息する母の背後に立ち、棚から食器を揃える。

 

「父さんは?」

「もう会社行ったわ」

「兄貴は」

「眠気覚ましに走ってくるって。おにぎり自分で握ってったみたいよ」

「相変わらずだね」

 

 精力的な家族に感心しつつ、テキパキと朝飯の準備を整える。

 

 ほどなくしてザ・日本食といったメニューがお盆の上に揃った。

 

「はいはい、テーブルに行った行った」

「はい二回言ってるじゃん」

「お母さんはいーの」

 

 なんだそりゃ。まあ見た目若いからそんなに違和感ないけど。

 

 しぶしぶ、ってほどでもない気分で食卓につき、いざ朝の栄養摂取。

 

「んー、やっぱ朝は米だなー」

「それ毎朝言ってるわね」

「腹持ちが違うんだよ、腹持ちが」

「居眠りしないようにしなさいよ」

「へい」

 

 僕は朝からちゃんと食うタイプだ。

 

 熱心に勉強に打ち込んでるわけじゃないけど、しっかり食わんと普通に集中力が切れる。

 

 そこらへん、明石はどうなんだろ? 

 

「んー……今度聞いてみよ」

「何が?」

「なんでもない」

 

 独り言はシャケと一緒に飲み込んどこう。

 

 

 

 

 15分くらいで食べ終わると、食器を片付けて自室に戻る。

 

 歯磨きを済ませ、今日の授業の教科書やノートがバッグに入ってることを確認。

 

 それからちょっと音楽を聴いて時間を潰し、ヘッドホンを首にかけて再び部屋を出た。

 

「んじゃ、いってきまーす」

「いってらっしゃーい。気をつけるのよー」

 

 扉越しにリビングから帰ってきた返事とテレビの音にはいはい、と小さく返事を呟く。

 

 玄関でローファーを履き、いざ登校というところで外から扉が開けられた。

 

「ん、彩音。もう学校行くのか?」

「ああ。兄貴は……朝から暑苦しいな」

「ひどいな弟よ」

 

 や、そんな汗だくで言われても。

 

 顔はイケメンなんだけどなぁ……なんか、雰囲気ってか顔ってか、もう存在が暑苦しい。

 

 そのくせ鈍いとこあるし。松山さん相変わらず苦労してそう。

 

「んじゃ、ちゃんとシャワー浴びなよ」

「おう、いってらっしゃい」

「んー」

 

 兄貴とすれ違うように家を出る。

 

 

 

 

 外は快晴だった。

 

 気持ち良い青空に白雲が点在し、風もそこそこ気持ちいい。

 

 ちょっと気分が良くなりつつ、スマホに繋げたヘッドホンを耳につけて歩き出した。

 

「〜♪」

 

 流れるメロディーに合わせて鼻歌を口ずさむのは、もはや完全に癖になっている。

 

 それ以外はぼんやりとした気持ちで、住宅街の景色とかすれ違う人とかを適当に眺める。

 

 あ、野良猫が生垣から出てきた。あのおっさんは焦ってる。あっちは集団登校の小学生か? 

 

 そういや明石ってもう起きて──

 

「なーにぼうっとしちゃってんのさ」

「うおっふ」

 

 背中にダイレクトアタック。変な声が漏れた。

 

 ヘッドホンを外しながら、隣に並んできた下手人の顔を見る。

 

「おはよ、彩音」

「おはよう通り魔」

「言い方酷くね?」

「じゃあど突き魔?」

「嫌な通り魔だな」

「最終形態、張り手魔」

「おい、一気にショボくなった気がするぞ。てかよくスラスラ出てくるな」

「ノリだよ、ノリ」

 

 なんなら脊髄反射で答えてる。

 

 そんな、普通の男子高校生っぽい馬鹿なやりとりをしたのは僕のクラスメートで学友。

 

 新星輝(にいぼしあきら)

 

 高身長、高スペック、高顔面偏差値と3K(?)揃った、どこぞの主人公みたいな男だ。

 

 幼少から天才ピアニスト少年として世界的に有名、かつ性格もいい。当然学校の人気者である。

 

「で、なんだか今日は機嫌良さそうじゃん? いいことあった?」

「そういうとこよ、お前」

「何が」

「なんでもない。機嫌良さそうに見える?」

「うん。モアイ像からシーサーくらいには見違えた」

「凄まじい例え方だな」

 

 そんなに僕の顔は無か。無なのか。

 

「んー、まあちょっとね」

「そっかー。ここ数日そんな感じだし……はっ、まさか彩音にも春が!」

「いつでも満開のやつが何を言うか」

 

 嫌味かこのやろう、と肘で脇腹を抉る。

 

 痛い痛い、と笑う顔さえも爽やかだった。やっぱり人間調整ミスってると思う。

 

「ほら、俺はあの方に心を捧げてるから。深窓の女神の敬虔な信者だから」

「朝から目がキラッキラだな。自分の名前に合わせてるのか?」

 

 金色に近い茶髪でその目だと、輝きすぎてちょっと鬱陶しい。

 

 何でも輝のやつは、小さい頃に参加したコンクールで見た女の子のピアニストに心酔してるらしい。

 

 完璧なんだけど、唯一この一点だけが残念極まりないんだよなぁ……

 

「で、結局どうなんだよ」

「んー、気が向いたらな」

「それじゃあ気が向くのを待ってるよ」

 

 でも、そうか。

 

 少し明石と連絡したくらいで、輝に言われるほど浮き足立ってるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱり、「特別」なんだろうな。

 

 

 

 

 輝と与太話をしているうちに、学校に着く。

 

 美月学校高等部。

 

 大学までのエスカレーターも存在する、私立学校。偏差値は割と普通くらい。

 

 創造性を育むってのがポリシーで、服装に関しての校則がわりかし緩め。

 

 僕や輝が、こんな格好で学校に通えてる理由でもある。

 

「うおっ」

「どした。って、聞くまでもないか」

「ああ、そのようだ」

 

 下駄箱から輝が取り出したるは、上履きでなく一通の便箋。

 

 可愛らしくハートのシールで封をされたそれは、どっからどう見てもラブ的なレター。

 

「リア充め」

「いてっ、今日はエルボーが冴えてるな」

「で、どうすんの」

「まあ、行くだけ行くよ。でも俺は」

「はいはい、女神様の敬虔な信徒ね」

「ちょーい、流すなよ」

 

 そりゃ毎朝のように聞いてるからね。

 

 さっさと靴を履き替えて歩き出すと、「待て待て」と輝が追いかけてくる。

 

 かかとを踏みつぶした上履きで駆けてきた輝が再び隣に並んだ。

 

「にしても、絶えないな。今月で何通目?」

「二通目。入学して数ヶ月しか経ってないのにな」

「それだけ女子から魅力的に見えるってことだろ」

「っ、まさか彩音がそんなこと言ってくれるなんて……っ!」

「まあ変態度でプラマイゼロだけど」

「上げて落とすんかーい!」

 

 ベシッ、と胸に突っ込み一発。

 

「いい力加減だ」

「ええ〜、褒めてくれるのそこなの?」

「まあね」

 

 がっくりと肩を落とす輝にちょっと笑いながら、到着した教室のドアを開けた。

 

「はよーっす」

「おはよう」

「あ、水瀬くんと新星くんだ」

「おはよー」

「水瀬、あの曲聞いたぞー」

「おー、良かったでしょ?」

「おう、マジでマジで」

「新星、今日も輝いてるな」

「はは、そうかな」

 

 クラスメイトと雑談しつつ、席に荷物を置く。

 

 ふう、と息をひとつ。ここまで来てようやく登校終了って感じだ。

 

「あの、水瀬くん」

 

 後ろからの声に振り替える。

 

 そこでは男にしてはやや髪が長めのやつが曖昧に笑っていた。

 

「ミナ、おはよ」

「おはよう。今日もいい天気だね」

「だな。今日はメガネを猫に破壊されなかったか?」

「いや、いつもされてないから……」

 

 だよな、と答えるとミナも苦笑いする。

 

 基好(もとよし)みなも。クラスメートで普段からよくつるんでいる。

 

 普段は物静かなやつだけど、見かけによらず運動が得意だったりする学友だ。

 

 ちなみに眼鏡を取るとすごいらしい。何がかは知らないけど。

 

「おはよっすミナ。今日も眼鏡してるね!」

「いや新星くん、眼鏡してるって何よ」

「それはほら、今日も眼鏡が凄みを放ってるね、的な?」

「僕の眼鏡はスパイ仕様か何かなのかな?」

 

 あと、結構いいツッコミをする。

 

「それより聞いてくれよミナ、なんか彩音がいいことあったんだってさ」

「え、そうなの? それは良かったね」

「なのに教えてくれないんだぞ? 薄情じゃないか?」

「うーん、人に話すのは恥ずかしいことってあるしね」

「それってやっぱり、恋愛系?」

「揃ってこっちを見ないで」

 

 輝は鬱陶しいからそのキラキラを納めてくれ。ミナも眼鏡を光らせてるんじゃない。

 

「えっ、水瀬くんが恋愛!?」

「あの『一年B組のモアイ像』こと水瀬が恋愛?」

「何それ、気になるんですけどー」

「ちょっと待てクラスメート一同、そのあだ名はなんだ」

 

 そんなに僕をモアイ像にしたいのか? 表情筋が神秘の石像レベルなのか? 

 

 あはは、と軽く笑うクラスメート達を恨めしげに見ていると、輝が自分の顔を指差した。

 

「ちなみに命名したの、俺な」

「ようし輝、そこを動くな。ちょっと教科書をテープでまとめて補強するから」

「鈍器にするつもりか!?」

 

 一発KOしてやるこのエセ王子め。

 

 いざバックの中身を取り出そうというその瞬間、ガラリと扉を開ける音がした。

 

 普通に開けるよりも大きいその音に、僕も他の教室内の面々もそちらを見る。

 

 

 

 

 そこにいたのは、一言で言うとイケメン。

 

 片膝を若干立て、扉に伸ばした右腕をかけながら、なぜか絵画のように体を横向きにしている。

 

 そして、閉じていた目を見開くと、無駄にいい横顔で一言。

 

「ふっ……私が登校した」

 

 甘いマスクから放たれたそのセリフに、僕達は──

 

「あ、残念な人が来た」

「残念イケメン代表が来た」

「よっ、千条! 今日も残念さが引き立ってるな!」

「酷くないかな!?」

 

 一瞬でイケメンはどこかへと消えた。

 

 全身でオーバーリアクションをするも、皆おかしそうに笑っている。

 

 その生暖かい反応にがっくりと肩も頭も落とし、彼は僕達のところへとやってきた。

 

「何故だ……何故いつもこのような反応をされるのだ。私は完璧だというのに」

「そういう残念なところだと思うよ」

「いじられキャラの宿命を背負ってるからじゃね?」

「あ、あはは……」

「君達までもっ!」

 

 オーマイガー! などと頭を振り上げる。相変わらず面白いやつだ。

 

 千条光(せんじょうみつる)。見ての通りの輝とは別ベクトルの残念イケメン。

 

 中性的に整った顔立ちと、身長の割にすらりとしたシルエットだけを見れば優良物件。

 

 その実、自信過剰と芸人のごときオーバーリアクションを兼ね備えたギャグキャラのような男だ。

 

 ナルシスト残念芸人イケメンとか、僕の友達の中でも群を抜いてキャラが濃い。

 

「まあ、元気出せって。お前は十分魅力的だ」

「ほ、本当かい輝?」

「ああ、僕もそう思う」

「そう、だね。クラスのみんな、千条くんのこと好いてると思うよ」

「ふっ! やはり私は完璧で素晴らしい──」

「「「ネタキャラとして」」」

「上げて落とすな貴様らァっ!」

 

 そういう煽りやすいとこが一番の原因だと思う。

 

 とまあ、学友達は普通な僕に比べて、なんとも個性派なわけだ。

 

「なあ、あの顔何考えてると思う?」

「自分は普通だな、とかじゃない? いつも通り」

「ふっ、自覚がないとは甚だ悲しいやつだな」

 

 普段からこの四人でつるんでいるけど、僕だけ没個性だよなぁ。

 

 なんて、そんなわりと失礼なことを学友達に思いながらもHR開始まで雑談する。

 

 

 

 

 

 

 

 さて。今日も一日頑張ろう。

 

 

 

 

 





次回はこの四人組から始まります。

読んでいただき、ありがとうございます。
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