6月上旬 第127鎮守府
あれから一ヶ月が経過した。表向きの騒動はあっさりと鳴りを潜め、八坂達は学生生活へと戻っていった。とはいえ、新年度最初の一ヶ月の間姿を消していたのだから生徒会業務がとてつもないことになっていたようだが。
八坂の学校には他にも変化があった。オークゥさんとフルさんがしれっと教師として着任したのだ。表では著名な数学者と文学者コンビが突然教師である。まあ騒ぎになったそうだ。なんでも、オークゥさんが望んだことらしい。やはり八坂炎雅さんが好みだからではないか、と鎮守府ではもっぱらの噂である。
その八坂炎雅もアーデムどころか中核のラスベガス本部の人員がまるっと溶けたアースガイドをなんとかまとめつつ学業にも戻ったそうだ。忙しいからか学業には手を抜いているからか、課題未提出としてオークゥさんやフルさんに捕まって2人ないし3人きりの補習授業とかを頻繁にやっているらしい。ギャルゲーか何かか。
アルは八坂のねじ込みで初等部に編入、友達もできて人間生活を謳歌しているらしい。時々八坂からアルが可愛いと惚気のようなものを聞かされる。
マザー・クラスタは地球を裏から支えるという方向に本格的に舵を取り、アラトロンさんが指揮を取っている。彼の牽引力なら大丈夫だろうし、今後も私たちもお世話になる予定だ。
ベトールさんは新しいフィルムの着想を得るまで、と130に残っている。具現武装やらなんやらで睦月さんを強化しつつ、睦月さんとも気が合うらしくなんかとんでもないことになりつつある。彼が鎮守府界隈にとって凄まじいことをするのはまた別の話だ。
ハギトさんは慈善事業の拡大、として寄付を幅広く行うようになった。ハギトさんなりの罪滅ぼしでもあり、東条の街の外の関係グループと手を結ぶ一手でもある。なお、母校である八坂達の学校にもポンポン寄付金を放り込んだ為、処理が大変で予算案がまとまらないと鷲宮が悲鳴を上げていた。
ファレグさんはオフィエルの再教育、と言う体で便利に彼を使っているらしい。オフィエルを殺したがっていた鎮守府の古参メンバーも死ぬほうがマシな目に遭って使い潰されるならそれでいい、との返答だった。ファレグさんは相変わらず守護輝士(ガーディアン)や八坂と戦いたがっているが断られ続けているため、127鎮守府で戦闘指導という名の鬱憤晴らしをよくやっている。127的にも受けがよく、特に羽黒の上達具合が恐ろしい。
アークスはアークスシップを地球からオラクル側に戻したまま維持している。現在は活発化した幻創種の対処の支援にたまに来てくれる程度だ。アークスとしての役割は大方終えた、という認識のようだ。
その上でテオドールさんから海への指導は継続していて、そこにマトイさんが関わることもあり海のテクニックの破壊力もますます上がっている。
守護輝士は色々と忙しくしているーーというか昔からあちこち忙しくしては厄介事を拾ってきて適切に対処するから自由遊撃隊なポジションに据えられたのだそうだーー様子だ。てーとくはまた煽ってファレグさんとやり合わせようと画策している。
茅野コウタさんや橘イツキさんらユーザーアークスもグリーン・タブレットの習熟が進み、本物のアークスに混じってオラクルで活躍したり幻創種を撃退したりとこなれてきている。本当にグリーン・タブレットの恩恵がとてつもない。
その上で現在のオラクルアークスもユーザーアークスをしっかりと認知した上で良き隣人、戦友として見ているという話だ。全てがそうではないのだろうが、アイドルのクーナさんの音頭の元に協調する流れが出来ている、という話だ。
101鎮守府は、事実上機能停止した。というのも、アースガイド出身の101の提督がアーデムの凶行に耐えられずメンタルを著しく病んだーーこれは他のアーデム崇拝者なアースガイドメンバーにも多々見られるーーことと、トップエースで艦娘のまとめ役であった阿賀野が生還こそしたがしばらくは再起不能状態になったーーあんなこともあって心身共に大ダメージなのだーーことの2点がある。今は残りのメンバーで立て直しを図っているが、前線に出て活躍出来るまでには時間がかかるだろう。
中途半端に巻き込まれた50鎮守府、というか霞には事情を説明したが宇宙猫のような反応からのブチギレられた。訳が分からなさすぎるのと人類存続の危機ってどういうことだ、と。至ってまともな反応である。他の面子、というか清霜からはあの幻創戦艦大和をもう一度出して欲しいとキラキラした顔で詰められて反応に困っている。出したら大騒ぎになるしそもそもアレを出すためのエメラルド・タブレットは現在喪失中である。
「あああ、あぁ、あ”あ”あ”あ”……!!」
「まだ休んじゃだめですよ福山司令官。終わったらご・褒・美のお菓子用意していますから。ふふふ」
「うぅぅ……がんばりますよ、頑張りますよ!」
翻って私たちの鎮守府だが、まずてーとくがこの一月中今回の騒動で溜まりに溜まったデスクワークに忙殺されている。弥生の姐さんは面白がりつつ適切にサポートしているが量が量である。本棟に近づくたびにてーとくの呻き声が聞こえる仕様となっている。
「カメラ回します、3、2、1!」
「皆さんこんにちはー!太陽テレビの相馬灯莉でーす!今日も東京はエスカタワーに一番近い鎮守府、第127鎮守府に来ています!」
「今回も解説を務める興行部の朝潮です!」
「同じく、荒潮よ〜」
「きゅ〜きゅっきゅっきゅ〜!」
太陽テレビの放送は5月から本放送として週一での放送となり、朝潮と荒潮、そしてイがメイン解説役としてやるようになった。内容は私がやったときのような突っ込んだ内容だったり、番組宛てに寄せられた質問に答えたりしていくこと、それと演習風景の撮影が主だ。私も時たま出演者として出番がある。なお、かなり際どい質問を寄せてくる常連に夕立の姉貴の婚約者と大潮の父親がいる様子である。題材にちょうどいいので放置しているが。
ともちゃんとは個人的に更に親しくなり、休日等は一緒に出かけることもある。それでスキャンダル狙いの狼藉者をとっちめた数は数えたくない。小蝿かよ、と思わず吐き捨てたことは許してほしい。
『響だよ。防衛部に出撃要請、至急白峰に搭乗を』
『こちらマザー、転位座標はこちらで指定済みだ。安心すると良い。白峰には現場の状況データも送信済みだ』
救援を行うのは無事天龍の姐さん率いる防衛部にシフトした。遊撃部の出番も相変わらずあるが、白峰を転移できるようになったので無茶な駆けつけ方をしなくて良くなったのがとても大きい。
そして重要なのが、マザーが正式に127に合流したことだ。エーテル供給装置を情報室に設置する形で情報室を改造、メインオペレーター響の姐さんの生体ハイスペックコンピューターマザーという情報部コンビが爆誕した。これによって白峰を転移ーー別に艦娘部隊単位でも可能だーー出来るようになったし、活動の幅もぐっと広がった。
マザーは多くの力を失って療養中であり、要防衛対象でもあるので127の穴蔵こと情報室に療養の為の装置ごと籠もれるようにしたという経緯もある。だが人よりもそこらのコンピューターよりもはるかに優秀な演算能力や様々な異能は健在である為、このような状態になったという訳だ。
そして、それに伴ってなのか元から計画していたのか、響の姐さんがマザー・クラスタに所属することになった。しかもオフィエルを叩き出した結果空席になった水の使徒の座に就いて、だ。表で頑張る人々のために裏から支える、というのが響の姐さんの性分に合っていたから、というのが本人の弁だ。この交代劇はハギトさんやアラトロンさんに快く迎え入れられたことからスムーズに終わった。
これで「お前の鎮守府マザー・クラスタ鎮守府!」と指を刺されても何も言い返せない。というか胸を張ってそうだと答えるような状態になった。
そして今回成長を遂げたり特殊なことが増えたのはーー
「ファレグさんもう一戦お願いします!」
「ええ、喜んで。艦娘の力、もっともっと私に見せてください」
「うわー羽黒ちゃん元気だなぁ」
「もう勝てねェよ」
「江風は頑張ってください」
「うへェ」
まず羽黒だ。ただでさえ高かった向上心が阿賀野との戦いですこぶる刺激されたらしく、基礎を徹底しつつどんな戦況にも立ち向かえる重巡洋艦としてメキメキと実力をつけていっている。本人曰く目標は幻創種天使型になった阿賀野のような存在のソロ討伐が最低ラインだそうだ。もう出来る気がするが。
「呑気に話してるけどお前達の底上げも凄いよな」
「ヲさんに負けてられませんからね」
「夢が広がるエーテルるーん〜♪」
瑞鳳と赤城はグリーン・タブレットの補助もあり、かなり戦闘における自由度が増していた。コンピューターやゲーム機に外付けの高性能HDDを挿したようなモノである。
その中で瑞鳳は興行部にも活かせる艦載機の自由自在な飛ばし方をメインに狭い空間での曲芸能力を伸ばしていて、赤城は対照的に遠距離でもかなり精度の高い艦載機への管制能力を伸ばしている。
無論ヲの姐さんも二人ほどのやる気はないもののグリーン・タブレットを活かして能力を上げている。方向性としては暁の姐さんをメインに味方を守る直鞍機としての艦載機制御能力の向上に回しているらしい。
「電、ただいま戻りましたなのです!」
「おかえり電!」
「はわ〜、雷お姉ちゃん〜!」
電は『組合』の覚の姐さんに本格的に読心能力を用いた戦闘技術、及び対策への対策を学びに足繁く『組合』に通っている。読心において危惧すべき精神汚染こそグリーン・タブレットによる防御で補えるのも大きい。
それと、その辺りの交流で発覚したのだが安倍晴明の時代、京を追われた『組合』の祖となる人々を安倍晴明ことアーデム本人の追撃から守ってくれた存在がいて、彼らはいたく感謝していて崇めていることと、それがファレグの姐さんだったということが明らかになった。
発覚した際、濁流さんはリアクション芸人もかくやといったひっくり返り方を見せ、当時の一員であった覚の姐さんはうら若き乙女が如き黄色い声を上げて大興奮していたしファレグの姐さんに全面支援することを約束していた。電の特訓もその一端である。なお、ファレグの姐さんは「そういえばアーデムに追われている人々がいたな」ぐらいの認識であり、ここまで感謝されて困惑していた。
「こちら加賀。アークスシップに特訓に行ってくるわ」
「加賀ちゃん行ってらっしゃいなのです」
加賀はそんなみんなに触発され、師を探した。そして辿り着いたのがアークスの教導部次席であり、六芒均衡の四、ゼノさんだった。彼は狙撃能力に秀でた本職は狙撃レンジャーであり、自身が前線に出るハンター式の戦い方も熟知している。
というか彼の扱うガンスラッシュという武器種は狙撃性能に秀でていない近〜中距離武器であるのに恐ろしい程の精密射撃を軽々とこなすトンデモ狙撃手である。加賀にとっては前線で立ち回りつつ狙撃をしていく上でとても参考になる相手だった。
ゼノさん自身、今回の騒動で役割が回ってこなかったので不完全燃焼だったこと、他のアークスへの教導の参考ややる気上げに繋げられることなどから快諾してくれていた。そもそも気の良い御仁である。
教導を受ける面子にはマザーとの決戦で同行してくれたてーとくを慕うアークスのソキウスさん達もいて、彼らとの交流も盛んに行っているらしい。東条での戦いにも意欲的でいるらしく、頼もしい。
「あー、置いていかれてるなァ……!」
「江風さんが以前から先行しすぎていただけだからちょうどいいんじゃないですか?」
「荒潮、なんか、すごい言い返せないこと言ってくるなお前……」
「でも経歴を洗ってみたら荒潮が正論よね」
「お前も大概だろ矢矧」
先述の通り海はテオドールさんやマトイさんにレクチャーを受けるといったように同期組がグングンと伸びていく中、私は治療に専念せざるをえなかった。理由は単純に艦娘として轟沈状態まで行った上に素体(ベース)も骨折込みの結構なダメージを受けていたからである。この重傷バージョンが秋雲の姐さんだと思えば要治療なのも当然と言える。アークスの治療技術によってこの一ヶ月で素体は完治はしたし轟沈状態も決して復帰不可能ではない為、回復しているのだが要静養とされたのだ。パパラッチを追いかけて叩きのめすぐらいの運動は許されていたが。
艦娘の轟沈状態は艦娘化が解けて入渠施設のような専用の場所で時間を掛けて回復させれば復帰できるが、基本的に轟沈が発生するのは海上であり、轟沈するような衝撃を受けた人は意識を喪失するのが大多数であり、敵もまだ健在の戦場であるため基本的に生還が絶望的なのだ。その点私は轟沈状態になってから更に負傷した後、神に攻撃されることなく戦闘が終息したため無事だったというわけである。
そして矢矧は正式に127に転属した。101の汚名返上とヒトとヒトでないものへの向き合い方を考え直したいから、と矢矧本人の希望である。阿賀野や101の提督のケアは能代や酒匂に任せるとのことである。
ちなみに、羽黒が阿賀野の仲間だったということでだいぶ矢矧への当たりが強い。暴言を吐くのではなく笑顔でしれっと毒を混ぜてくるタイプだ。矢矧の当面の目標は羽黒の好感度改善となっている。
「でもその代わりにって江風さん読書家もかくやって勢いで戦闘詳報読み込みまくってるじゃないですか」
「だって何もしないは、ないだろ……!」
私は暇つぶしを兼ねて横須賀から取り寄せた過去の様々な戦闘について読み込み、知識を蓄えていた。頭を働かせることについては制限されていなかったわけでもあるし。
「ま、やっと明日から激しい訓練して良いって言われたし頑張るよ」
「程々にしてくれないと後輩としてプレッシャーなんですけど?」
「お前朝潮の前じゃなきゃズケズケ言ってくれるよな」
「先輩だからって遠慮されてると溝が出来るからありがたく思っておきなさいな。……私達の鎮守府がそうだったから」
まあ、矢矧の言う通りその方が付き合いやすいのだが。
(ならば何より始めるか?立花蒼)
(きひひっ、あそーとのオッサンは八坂火継との演習が見たいンだろ?)
(然り。立花蒼よ、八坂火継ともっと綿密に交流を行うが良い)
「脳内の連中うるせェ!」
「色々大変そうですねえ……」
「可哀想な人を見る目で見るな荒潮ォ!!」
「実際凄まじいことになっているわよね、江風」
一番特殊なのはアーデムにより召喚された神が私に憑いていることである。この状態ならば依代の精神性に侵されることも最低限に済むとのことである。なお、憑かれたタイミングはあの聖域で神が消える直前のアレである。悪質が過ぎる。
アーデムの精神から解放された神はかなり今の未来へ進もうと努力する人々に好意的であり、特に八坂火継のファンボーイと化していた。あの戦いで一番の光を見せつけたのが彼女だからさもありなん。
そして神への呼称で一悶着あった。下手に神様と、創造神と呼ぶと変に影響が出る可能性があると別の呼び方、特に神の神性と関係のないものを所望された。そこで悪ノリしたのが江風の魂である。
ーー我が創造の失敗は、新たなる創造で取り戻す。とか言ってたし?そこの頭文字を取ってー、「わ」が「そ」うぞうの「し」っぱいは、「あ」らたなる「そ」うぞうで「と」りもどす。だからわそしあそと?わそしがいい?あそと、いやあそーとなンかどう?きひひっ!
ーー神をお菓子詰め合わせみたいな呼び方とかダイナミック不敬にも程があるだろうがァ!!
ーーならばあそーとでいこう。
ーーいいのかよ!!!なンかもっと考えてよ!!?
というわけであそーと、しかもオッサン付けで呼ぶ羽目になった。酒の入っていた長月の姐さんと菊月の姐さんに大爆笑された。アーデムが聞いたら憤死するのではないだろうか。ちなみにファレグの姐さんもしばらく絶句していた。マザーからは生暖かい目で見られた。江風の魂も今まで以上にしゃしゃり出るようになってきたし、脳内がやかましくて敵わないのが現状である。
(だがこうして居候している身だ。役には立とう)
「実際ありがたいけどね……」
地球が生まれてからの地球意思であるあそーとのオッサンはあらゆる過去に地球に来訪、ないし発生した怪異やなんやらについて知見がある。その影響でそれらを見ても私の精神汚染はかなり抑えられるというメリットがある。これは東条の母多神相手でも役に立つだろう。
なお、与えられるそういった知識や感覚には制限がかけられていて、私が成長して耐えられるようになったら順次解放していくとのことだ。気配りのきく神である。
「それとあそーとのおじさまから聞いた艦娘と深海棲艦のルーツ。今は大本営で止めているそうだけど大混乱待ったなしよ」
「軽い気持ちで受けた艦娘が神話生物絡みだったのはショックが大きかったわね……」
大小問わない感情や死や厄災といった穢。そういうものが凝り固まって怪異は生まれる。そして全てが水に溶けて海に流れ、深海に溜まっていく以上深海でもそれは発生する。要はタチの悪いマリンスノーだ。
クラーケンのような伝説の海の大怪物や深海棲艦登場初期に現れた、終の海の原因となった大怪異もそうして海底、それも亜空間の先に積もり積もった残滓が形を得て海上に進出したのが原因だった。
そんな亜空間に人が存在する前、別の宇宙より地球に来訪した種族の遺跡が存在する。彼らは地球を出ていったり残りも滅んだりしたそうだが、その大きな墓場は健在だそうで、怪異としては大変魅力的な餌場であるそうだ。そんな墓場の遺跡の前には守護者が配置されていて、終わりなき怪異との防衛戦に勤しんでいるという。
そんな守護者が驚いたのがたった数十年で数多の地上人類の死と多くの感情が海に流れ込んできた事象だった。二度の世界大戦である。その中でやりきれないと判断したのか、何かヒントを得たのか強大な怪異として形取る前に海上へ投げ戻すことを思いついたそうだ。
その死と想いの残滓のプラスな軽い部分はそれだけでは実体化せず、依代を持って艦娘になった。負の部分はそれだけで具現化して深海棲艦となった。それが、始まり。
だから深海棲艦との戦いはこれまでの人類の業の精算とも言えるしその墓場の守護者のせいとも言える。
……という事実を冷静に受け止められる人間はそう多くなく。暴動が起きないように大本営で情報を堰き止めているがどうなるかは想像がつかないし、その件の墓場も海流だか亜空間の流れだかで常に移動し、こちらからのアクセスが絶望的という実情もある。知りたい事実から知ってどうすればいいんだという事実になってしまった。
あそーとのオッサン曰くアークスの技術なら適切なタイミングさえ掴めれば乗り込むことも可能だそうだが、そんな神話生物だのトンデモ怪異だののごった煮空間に耐えきれるヒトがそれほど多いとは思えないし、地球での役割を終えたと思っているアークスにそれらを要求する手札が存在しない。
つまりは考えることができてもどうしようもないのが現状である。それもあって、本件は保留という形になっている。もしその墓場の守護者と対話ができるのであれば、してみたいというのが本音ではあるが。
「正直殴り込みが出来てもそのメンバーからは除外して欲しいわぁ」
「あそーとのおじさまの見解は?」
「いずれ乗り越えてみせろ、人類。だってさ」
「大変な宿題ね……」
「まあ、まずは出来ることでやらなければいけないことからやるさ。差し当たって東条の件にケリをつける」
「そこは全面的に協力するわ。罪のない人まで犠牲になるのは私は許せないから」
「頼んだよ」
出来ることから一つ一つ、片付けていこう。