少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 本編が1ヵ月飛んだ6月になったので、その間に起こった出来事を振り返っていくフェーズになります。


98話 睦月型如月ときさらぎ駅

 5月 ???

 

 

 この世ならざるところで怪異達が話をしていた。

 

 「へぇ、母多の奴から依頼?あの引き籠もりが?」

 「なんでも喰いでのある獲物らしいぞ」

 「ひぇっひぇっひぇっ……」

 「やるなら全力を持って臨め」

 「「ははぁーっ!!」」

 

 だが彼らは、そして依頼をした母多もまた見誤っていた。

 

 

 6月上旬 『組合』医療棟

 

 

 「ふむふむ、艦娘ちゃんとしてのコンディションは万全ね。霊力等にも乱れなし。素体(ベース)に戻ってくれる?」

 「はい。変身解除っと」

 「変身解除時に乱れなし、その他諸々も……うん、問題ないね。濁流さんのお墨付きを与えよう」

 「ありがとうございます」

 

 私は濁流さんにアーデムとの決戦以降、回復に努めていた体を検査してもらっていた。肉体的なところ以外、つまり異能的だとかそういう面での異常がないかの検査である。

 

 「以前との違いとしてはやっぱ神様が憑依してるから魂って器の容量が増してるねぇ。これは悪いことじゃないよ。普通はそんなトンデモに憑かれちゃ精神とか疲労でヤバいんだけど、キミは江風の魂が既に憑依しているような状態だったから余裕があったみたいだし、この期間の療養も効いたみたいだ」

 「確かに決戦直後は頭痛とかしてましたね」

 「他の艦娘ちゃんは怪我なしでも頭痛じゃ済まないと思うから、他の子がそういう事態になりそうになったら止めてね。何か質問はある?」

 「……『ゾーン』の有効時間が増えたりとかそういうボーナス付いてませンかね?」

 「この憑依で伸ばせる下地は大きく出来たし、グリーン・タブレットとかいうインチキチートアイテムの保護もあるから『ゾーン』時に余計な負荷は減るしノイズもかからないだろうから、結果的には増えるんじゃない?けど、負荷は相変わらず膨大だし慣れていくしかないねぇ。負荷を神様が引き受けてくれるなら話は別だけど」

 (我の権能とはまた違った領域。引き受けられんな)

 「……駄目ですって」

 「ま、『ゾーン』的なのをガンガン使いこなしたヒトの霊でも憑依しなきゃ無理でしょうね。つまるところ地道な努力あるのみ!頑張りな?」

 「……はい」

 「期待したい気持ちも早く伸ばしたい気持ちも分かるけどね。ヒトが早く大きくなりたい、つっても一日二日で筍みたいにガンガン背が伸びないのと同じよ」

 「ですよねェ……」

 「安倍晴明、いやアーデムにソレを創った神様。それだけ強大なのを相手にして力不足感じたんでしょ?気持ちはわかるけどこれは鍛錬の質と量、どちらもないとね。キミの質は十分すぎるぐらいだけどさ」

 

 それでももどかしい。

 

 「今後はそこを集中的に鍛えて行こうか。覚の姐さんばっか気張ってて私も暇してたからね」

 「助かります」

 「ま、私は旦那や子供優先するからそれなりに、だけどね!」

 「そっち優先してくれないと不安になりますよ」

 

 濁流さんは既婚者である。しかも大所帯だ。結婚に伴い実家である『組合』を出ているのだが、私の面倒事をこなすのにいいと実家である『組合』宗家に出向いてもらっている状態なのだ。

 

 「それと、だ。先月のきさらぎ駅の件、詳しく教えてもらえない?私あっちの管理者と話つけなきゃいけないからさ」

 「いいですけど……管理者なんていたンだ」

 「管理不行届ってことで詰めるつもりだよん。ってことでゲロっちまいな!」

 「はい。えっと、どこから話したらいいかな……」

 

 

 5月下旬 22:00 第127鎮守府

 

 

 「うーん、頭痛ぇ……」

 「うーちゃんもか?私もだ」

 「こっちもだ。なんなのさ」

 「どうしたンです?」

 

 卯月、長月、菊月の姐さん達が顔を突き合わせて悩んでいた。

 

 「あぁ、江風か。最近頭がぼーっとしたり痛んだりしてな」

 「うっすらと幻聴まで聞こえるんだ」

 「重大じゃないですか。医務室には?」

 「行ったが揃いも揃って異常なしだ。だからこそ悩ましい」

 「怪異的なもの?」

 「にしても影響を受けているのが旧130の面子だけっていうのも謎なんだよな」

 「ってことは、弥生の姐さんも?」

 「そうです」

 「うわっ!?」

 「すいません、気配が薄くて」

 「ドヤ顔で何いってんだっぴょん」

 

 影響があるのはこの4名らしい。

 

 「旧130っていうと夏菜さんと睦月さんは?」

 「異常なし、みたいです」

 「なんか不公平だよな」

 「うーん……」

 

 127及び旧130は霊的な、怪異的な防御として結界も張ってある。相当なものでなければ影響もないはずなのだが。

 

 「江風的にはどう思う?自慢の勘でさ」

 「自慢はしてませンからね!?……悩むほど異常があるならやっぱり何かあると思いますよ。『組合』に連絡とって診てもらいます?」

 「それが丸いか……うぐっ!?」

 「ぐあっ!」

 「う……」

 「あう……」

 「え、ちょっと皆さん!?」

 

 4人が一斉に苦しみだした。これは一刻を争う状況なのではないか。

 

 「ーーかなきゃ」

 「え?」

 「そうだ、いかなければ」

 「待っているんだ」

 「如月姉さんが、待っています」

 「如月って……」

 

 旧130の如月。上から下まで自由な睦月型のまとめ役で他の艦や他所の鎮守府との橋渡し役をしていたという睦月さんに次ぐ最古参の艦娘。旧130陥落の際に殺害され、彼女の遺体は利用されないために生前の夏菜さんと睦月さんが燃やしたという。そんな、『過去のヒト』だったはずだ。

 

 「姐さん、ちょっと、ってっ!」

 「邪魔するな、行かなきゃならないんだから」

 

 私の手を乱暴に振りほどいて茫洋とした様子で4人が足早に歩き出す。

 

 「ッチ、あそーとのオッサン、これは……!」

 (強いこの世ならざる力を感じるな)

 「この結界を抜けるかよ……!こちら江風!ってェ!?」

 

 通信を入れようとしたら卯月の姐さん達は猛ダッシュで走り始めた。結局、鎮守府全体に警告はしたものの姐さん達の捕縛は適わずどこかに行ってしまった。

 

 『響だよ。江風、情報室に来れるかい?』

 「江風、了解!」

 

 響の姐さんに呼び出され情報室に入る。マザーの参加に合わせてかなり未来的な様相になっている。

 

 「江風到着しました!」

 「江風には私達とオペレーターを担当して貰うよ。あそーと、君にも協力して貰うよ」

 「立花蒼に憑依している以上、厭とは言わせん」

 『牽制する必要はない。元よりそのつもりだ。武藤裕子に星の欠片よ』

 

 あそーとのオッサンはその気になればこうして私を介さなくても喋ることができる。その接続の甘さこそが憑依形式のメリットだという。

 なお、マザーはフルネームないし『駆逐艦◯◯』と正式名称で呼ぶのがデフォルトで、あそーとのオッサンは何もかも無視して本名を呼ぶ傾向がある。外部の人には聞こえないように立ち回ってもらっているから許容しているところだ。

 

 『こちら福山、状況は!?』

 「現在タクシーを捕まえて駅に向かっているようだ。発信機は外れていない様子だ。焦るな、福山梓」

 『……はい』

 

 てーとくにとって、特に卯月の姐さんは恋仲なのだから焦りも一際だろう。ちなみに発信機の類は鎮守府所属メンバーは標準装備である。

 

 「通信を鎮守府全域に。……して、どう見るあそーとよ」

 『十中八九、貴殿等が怪異と呼称するもの、その極めて大規模型と見るべきだろう。先程4人が動き出す前に『如月に呼ばれている』という旨のうわ言を吐いていた。過去に死亡したその者が怪異になったか怪異に利用されて釣り餌となるかしたのだろう』

 『如月ちゃんが!?』

 『利用したやつ、絶対に許さないにゃしい……!』

 「理解した。その怪異の居場所は駆逐艦卯月達が向かっている場所だな」

 『然り。いずれ反応が消えるだろう。そこがこの世とかの者共の居場所の連絡点よ』

 「響だよ。皆聞いたね、各員陸戦かつ対怪異形式の戦闘配備で出撃ドックに集合。卯月達の反応が消えたらその地点に転移させるからそのつもりで。あそーと、向こうへの移動方法は検討はつくかい?」

 『間を置かず到着できるのであれば連絡点の残滓があるだろう。それを利用すれば抉じ開けられよう。福山梓、貴殿の力を持ってすればな』

 『アークスの技術のことですか?それとも……』

 『貴殿の人でないモノとしての力で抉じ開ければ問題なかろう』

 「力技にも程がある」

 『単純故に最短最適でもあるのだ、立花蒼よ』

 『異空間への残滓からの抉じ開けならば……参考にできるヒトがいました。貴方のやり方を借りますよ、ハドレッド……!』

 

 ハドレッド。確かルーサー麾下の『虚空機関(ヴォイド)』によって生み出された人造龍で、アイドルにして裏の顔は暗殺者の六芒均衡の零であるクーナさんと一緒に育てられた存在。クーナさんの実質弟と言っていいだろう。てーとくの先輩、エドガーさんと並ぶてーとくの心に強く焼き付いたヒトだ。

 そのハドレッドのやり方を真似るということは空間を引き裂いて対象のいる空間に侵入するかなりバイオレンスなやり方になるということだ。技術的かつ相当な力技をやることになる。

 

 『怪異が死亡した如月を利用したとして、他ではなく如月を選んだ理由について心当たりがあるものはいないか』

 『如月……怪異……あっ』

 『どうした、石川絵梨花よ』

 「電?」

 

 電は元々サブカル趣味なこともあり、覚の姐さんに色々と怪異関連の知識を聞いてスポンジのように吸収していた。

 

 『『きさらぎ駅』、という伝承、いや異空間があるのです!』

 「随分とそのままだな!?」

 『だからこそかもしれないのです。こういうのって名前の繋がりが大事なのです』

 「駆逐艦電、きさらぎ駅とはどういった怪異だ?」

 『人側としてはネットに相談として書き込まれた都市伝説なのです。はすみ、という人が通勤の私鉄に乗っていたら中々次の駅につかず、20分以上して見知らぬトンネルを抜けたらようやく見知らぬ駅に着いた。引き寄せられるように降り立ってみたら駅名はひらがなできさらぎ。前後駅の名前はひらがなで『やみ』と『かたす』。周囲には民家等のない草原と山しか見えない状態でした』

 『電、他の乗客は?』

 『雷お姉ちゃん、それが不気味なほど皆寝ていて起きていたのははすみだけだったのです。そして駅の周囲には電話ボックスもタクシーもない、本当に何もない状態でした。

 はすみは線路沿いに歩いて離脱を図りますが、その中で遠方から太鼓や鈴の音が聞こえてきました。逃げるようにはすみは移動しますが、音はどんどん近づいてきて。線路の上は危険だから歩いてはいけない、という声に反応したらそれは片足だけの男性でそれも消えて。

 なんとか電車に乗っているときに通ったトンネルに辿り着いて、そのトンネルの名前は伊佐貫。通り抜けると人がいて、近くの駅まで車で送り届けてくれるということで承諾。乗りますがどんどん車は山の方へ。乗せた人間も意味不明なことを呟き始め……』

 「始め?」

 『ここではすみの携帯の電源が切れかかり、以後消息不明になりました』

 『『……』』

 『完全にホラーに負けるタイプのフィルムじゃないKA!電ガール、妖怪側の見解はどうだい?』

 

 救われないオチに皆して絶句する中、ベトールさんがそのものズバリ、と切って話を進めてくれた。

 

 「響だよ。今卯月達が私鉄に乗った。きさらぎ駅である線は濃さそうだ」

 『……続けるのです。きさらぎ駅はこの世とあの世の狭間の異空間に実在する。たまに先のはすみのような紛れ込んでしまう人を連れ去るための怪異達の拠点。

 本来ならそのまま帰れるようにと気を配る怪異もいたそうで、人間側にも帰還できたという話が派生でいくつかあるぐらいだったのですが、ここ最近は人を害したがる怪異勢力に乗っ取られつつあるとのことです』

 「つまり敵はそいつら……!」

 「その中に強力な一個体が居て犯行を行ったかきさらぎ駅という『場』を利用して複数の怪異による犯行かは未だ不明だが……おそらくそのトンネルを抜けた先は冥界。手遅れとなるだろうな」

 『そうなのです。だから、駅から移動する前に助けないと……!』

 「なればこそ。即介入が重要となるわけだ。任せるぞ、福山梓」

 『……えぇ』

 『今回は俺もついていくZE!フィルムの参考になるかもしれないしそもそもパニックホラーは俺の領分だからNE!』

 『頼りにさせていただきますよ、ベトールさん……!』

 『今回は睦月も出撃するにゃしい!うーちゃんはともかく他の仲間まで……許せないにゃしい!』

 

 そしてしばらくの後、卯月の姐さん達の反応が消えた。おそらくそこが、連絡点。

 

 

 23:00 きさらぎ駅 卯月視点

 

 

 「……あれ?ここどこだ?」

 「頭痛も治まったか……?」

 「きさらぎ駅……?」

 「……!」

 「どうした、弥生」

 「如月姉さんと昔、睦月型の名前と同じ駅はどこにあるんだろう、と探して遊んだことがあって。……如月は駅名に、ないはず」

 「「!」」

 

 頭痛がしたと思ったら夢の中に落ちたような感覚になり、気付いたら旧130の睦月型面子で揃って謎の廃駅のようなところに来ていた。しかも存在しない駅に。

 

 「それにここ、見渡す限り枯れ草しか生えていない荒れ地ばかりで建物一つ無いぞ!」

 「エスカ端末も圏外だ。なんなのさ」

 「さっきぼんやりしている間に電車がトンネルをくぐるのを見た気がする。そっちに向かってみるか?」

 「待てうーちゃん」

 「なんだよ長月」

 「この手ので迂闊に移動するのはフラグだ!下手にここから動かない方がいいはずだ」

 「それに、私達が意識を失う前、覚えていないか?確か江風と話をしていたはず」

 「ああ……なら」

 「あいつなら即座に対策しているはずだ。私も待機に一票だ」

 「菊月……分かったよ、様子見だ」

 「皆、あれ!」

 

 弥生が指さしたのは駅の天井部。そこにはーー

 

 「ッ、如月姉!?」

 「皆……来ちゃったのね……」

 

 鳥籠のような檻に閉じ込められた如月がいた。間違いない、『私達の如月』だ。

 

 「何がどうなって……いや、今すぐ開ける!」

 「来ちゃ駄目!」

 「な……」

 

 近づこうとするのを拒絶される。

 

 「私は釣り餌なの。こうやって束縛されて、私と同じ名前のこの駅に人を誘き寄せるための……」

 「だったら尚更!」

 「私に近づいたら人を襲う怪物達が気付いちゃう!なんとか、逃げて……」

 「そんなこと……!」

 「あ、あのう」

 

 そうやり取りをしていると男が声をかけてきた。駅員の様な出で立ちで顔に生気がない、ヒトでない気配。その顔には怯えが色濃く出ていた。

 

 「き、如月さんのご知り合いですか?」

 「お前は誰だ」

 「ひいっ!?」

 

 砲を向けると分かりやすく恐怖し取り乱す。

 

 「わ、私はこのきさらぎ駅の駅員です!そちらの皆さんは如月さんのご友人……第130鎮守府関連の方でいらっしゃいますか……?」

 

 恐る恐る、といった雰囲気で問う駅員。

 

 「そうだ。私は長月。こっちは菊月、弥生、お前に銃口を向けているのが卯月だ。現在は127鎮守府に所属してーー」

 「ひゃっひゃひゃひゃ127ぁ!?」

 

 127という単語にとびきり驚く駅員。

 

 「あの、ここは此岸と彼岸の境にある異空間で、正規の手段を取らないと此岸には帰れないんですが……現在は正規の手段を皆々様が止めている状態でして……と、とにかく!この場から下手に行動を起こさないことを推奨します!皆々様の数はとても多く、皆様の数では危険かと!それとあちらのトンネルは冥界に繋がっていますのでくれぐれも通らないようにお願いします!」

 「お、おう」

 「で、で、では、わ、私はこれで!死に、死にたくないーーー!!」

 「……なんだったんだ今の」

 

 言うだけ言ってもんどり打ちながら駅員はトンネルの方へ逃げ去ってしまった。

 

 「とりあえず長月の案が正しいらしいらしい、です?」

 「こんな異空間にも127の悪名は轟いている、ってところか?」

 「そしてなんかの拍子に存在がバレると大量の怪異が襲ってくる、と」

 「皆結構冷静なのね……?」

 「まあ、それは……」

 

 如月姉さんに127に転属してからのこれまでのことをざっくりと話す。夏菜姉や睦月がどうなったか、仇は大方駆逐したことなどを含めて。

 

 「そんなことになっていたの……それにしても、うーちゃんに恋人が。感慨深いわね」

 「今そこ重要かぁ!?」

 「130組としてはかなり感慨深いからな」

 「まったくだ」

 「です」

 「えー……」

 

 アタシと睦月の諍いが130の騒動の起点の多くだったとはいえそこまでだろうか。

 

 「それよりも!如月姉を助けたら敵が一気に動く、って認識で良いんだな」

 「……ええ」

 「どうする?助けが来るまで大人しく待つか暴動を起こすか」

 「「暴動を起こす」」

 「えっ!?」

 「どうせ梓達が外部に着いてるだろうからな」

 「怪異を活発に動かして反応を大きくした方が介入も楽だろう」

 「私と如月姉さんは安全な場所に退避……どこが安全なんだろう」

 「よっし、じゃあ檻を破壊するっぴょん!」

 「まっーー」

 

 如月姉の静止を振り切り接近して接射で檻の鍵を破壊する。そして如月姉を引っ張り出した瞬間地響きが始まった。

 

 「おい、あれを見ろ」

 「皆さん準備がよろしいようで、だな」

 「如月姉さんこっちに」

 「じゃあ、夕立に倣って素敵なパーティーと行こうかぁ!」

 「何で皆冷静なの!?」

 

 地平線を埋めるように怪異の群が押し寄せてくる。軽く3桁台はいるといったところか。人型の怪異は割合少なく、昔の絵巻物に出てくるような異形の怪異が種々様々に我先にと向かって来るのが見える。

 

 「じゃあアタシがまずはーー」

 「ーーを……!」

 

 アタシが飛び出す前にピシッと何かにヒビが入る音と微かな声がした。

 

 「こちらのほうが早かったな」

 「期待を裏切らないな皆」

 「ーーこの境界を、破る!オオオオオアアアアア!!!」

 

 大きなガラスが派手に割れるような音と共に梓が空間を大きく引き裂いて現れた。

 

 「卯月!皆さん!よし、総員突入!」

 「「了解!」」

 

 何人も通れるような規模になった裂け目から鎮守府の面々がフル武装で次々に侵入してきた。

 

 「皆さん、無事ですか!?」

 「交戦ちょっと前、ってところだな。あっちの軍勢、全部敵だ」

 「如月ちゃん!」

 「睦月ちゃん!……よね?」

 「どこからどうみても睦月にゃしい」

 「様子のおかしい装備満載で空飛ぶ睦月がいるか馬鹿」

 

 ベトールと盛り上がって作っていた武装を全部装備してドヤ顔をしている睦月。主砲がガトリングガンの様相を呈している他、手持ちのアンカーはエーテルによるビーム刃を纏った上に意味の分からない長さまで伸びる。左肩には高出力のエーテルによるビーム砲、右肩には追尾性能の高いミサイルランチャーを装備。両足の魚雷は追尾性能こそ低いが空陸海問わず使える最大火力爆破武器となっている。

 これらが睦月自身のエーテルが尽きるまで弾切れすることなくばら撒ける上に、周囲の空間に漂うエーテルも吸収できるという手のつけられなさである。仮にエーテルのないオラクルなどの異空間に出ても10分は余裕を持って大暴れできるし例えエーテル切れになったところで130でリスポーンすればいいだけという理不尽である。

 これを拠点防衛用と普段は割り切っている梓の胆力もあるが、下手に世間にお披露目したら余計な騒ぎになること請け合いである事情もある。表に出せるかこんなもの。ちなみに私はこの状態の睦月を『馬鹿の完全武装(フール・フルアームズ)』と呼んでいる。その強さは試し撃ちという名の演習相手に駆り出されていたのでよく分かっている。

 

 「弥生ちゃん、状況は?」

 「状況はーー」




 きさらぎ駅の怪異達が如月の霊を使って生者に語りかけさせた結果、卯月達4名がピンポイントで釣り出された形になります。
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