少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

11 / 120
 気付いたら想定より亜贄萩斗さんの出番が増えて困惑している10話です。


10話 私の今までと、この力

 2027年6月中旬 14:00 第127鎮守府演習海域

 

 

 あれから数日。私は徹底的に卯月さんとてーとくにしごかれていた。理由はあのツインダガー、エーテル能力を使いこなすためである。

 

 「よっ、はっ、このっ!」

 「視えています。そこです」

 「うわっ!」

 「常に反撃を意識した立ち回りを。火力で押し切れると過信しないことです」

 「いってぇ……もう1回!」

 「えぇ、いいでしょう」

 「その前に、お客さん到着だ。ストップストップ」

 「卯月の姐さん」

 「卯月さん、ということは亜贄社長が到着しましたか。一旦ここまでにしましょう」

 「はーい」

 

 

 14:30 地下工廠

 

 

 一部関係者が地下の工廠に集まる。内容は、先日私が発現した能力について。強いエーテルに当たるという概念を知っていたということで、ハギトさんも呼ばれた次第だ。

 

 「久しぶりだね、江風君」

 「ハギトさんもお変わりなくっす」

 「なんか、フランクになってないかい?」

 「猫被ンの、それなりに辞めたんで」

 

 あの一件以来、心の中が軽くなったというか。力に、攻撃に全部載せてしまったので隠すもなにも面倒になっていた。それに伴い、一部呼び方を変えた人もいる。

 

 「で、てーとく。ハギトさんも来たわけだけど。何から話せばいいわけ?」

 「本来は秘すべき話ですが、あの力の根源には貴女の根からの葛藤があるようでした。差し支えなければ、その辺りから話して頂ければと」

 「本名バレもしたし、別にいーよ。んー、どっから話すかなぁ」

 

 私は立花蒼。生まれ持って、勘が鋭かった。特に危機に対して。自他問わずにだ。

 例えば、物が降ってくるだとか、この曲がり角で人にぶつかりそうだとか。そういうところから、この辺で喧嘩なり騒動なり起きそうだ、という予感まで様々だ。

 ただ、悲しいかな。これが原因でいつも「中途半端な関係者」「中途半端な部外者」ぐらいのポジションになってしまい、周囲から浮いてしまっていた。私は、そんな周囲もそんな位置に収まっている自分も大嫌いだった。

 

 この勘が役に立ったというか、代表的な出来事は主に4つだ。それ以外はまあ、なんとなく私が損を被って終わるような形ばかりだった。それでも、踏み込まなければ後悔するかもしれない。という強迫観念に勝てなくて踏み込んでしまう。そういう性分だったんだ。

 1つ目は中学1年の時。長距離バスで林間学校、ってまあよくある行事。バスに乗って出発する直前だった。猛烈に嫌な予感がした。『今』出発してはまずい。どうすればいいかわからず、アレがないかもしれないだのなんだの粘って粘って。バスの出発を10分ぐらい遅らせた。

 結果、移動中に前方で大規模な玉突き事故が発生。死傷者も多く出ていた。当時の新聞か何かに載っていたと思う。その時に理解したんだ。『遅らせなければあの中に私達のバスはいた』と。

 周囲の反応はさんざんで、お前のせいで渋滞に巻き込まれたじゃないか、と先公生徒まとめて大ブーイング。運転手のおっちゃんは私と同じ結論に至ったみたいで、唯一擁護してくれた。私がぐずっていなければ危なかった、と。理解は得られなかったけど。この運転手のおっちゃんとは今でも交流がある。このバス会社辞めて、都心で働いてるとか。

 

 2つ目は中学2年の時。帰宅中、嫌な予感がして横道の方を見たんだ。そこにはバンがゆっくり動いていて、その先には小学生の女の子がいた。直感で、スマホを110番に。靴と足の間にねじ込んで、走った。直後、女の子はバンに引きずり込まれた。

 私が叫びつつ蹴り込んで女の子を奪取しようとしたけど失敗。私も連れ込まれて発車してしまった。そっからスマホの先の警察に聞こえるように、女の子を勇気づけるように誘拐犯共に喧嘩を売り続けた。まあ、ボコボコにされたよね。

 連中のアジトに到着した辺りで、私の反応を追ってた警察が間に合って、御用。その女の子の家族には感謝されて、家族にはぶん殴られて先公にはクラスの前で説教食らって。その子が無事だったから良かったけどさ。

 

 3つ目も中学2年の時。帰宅中、横断歩道を渡ってたら大荷物で動きの遅い姐さん……お婆さんがいたのさ。まだ信号は青だったけど、猛烈に嫌な予感がして。半分ひったくるようにその荷物持って急かして渡ったんだ。直後、私達の背後すれすれを猛スピードの車が通りすぎていった。急かしてなければお婆さんは轢かれていたよ。その後車は事故を起こしたらしくて、これもニュースになったかな。

 そのお婆さんの目的地までそのままついていって、私達は一件落着。それから訓練校に入るまでその一家には仲良くさせてもらってた。たまに元気にやってるよ、ってメールを送ったりはしてる。

 

 4つ目。卯月の姐さんは知ってるよね。中学3年の12月。お人好しなお嬢様とその取り巻きみたいなの2人の計3人がクラスにいて、私をなんだかんだで引っ張り出そうとしていて。善意なんだろうけど正直迷惑だった。その日も、そんな流れで連れ出され、何を血迷ったのか街の端、海沿いの散歩になった。

 そこで見つけたんだ。深海棲艦、今なら軽巡級ってわかるけど謎の化け物。多分深海棲艦ってことだけ分かって。あの時は、こんな会話してたっけ。

 

 「おい待てお前ら。海の方見ろ、なんかいる。ヤバい、あれはヤバい!」

 「立花何言ってんの?」

 「あれ、ホントになんかいる。近づいてみる?」

 「アレはどこかで見たような……」

 「見たような、じゃ、ねェよ!深海棲艦って奴だろアレ!」

 「でも、こんなとこに来たことなんてないじゃない!」

 「現にいるじゃねぇかよ!」

 

 深海棲艦がこちらに気づく。砲を向ける。そこは砂浜で、高く堤防があってその上に道路や町がある、そんな崖みたいな地形だった。

 

 「やば、お前ら、伏せろ!早く!」

 「何を言っていますの立花さっ!?」

 「いだっ!」

 「何すんの立花の癖にっ!?」

 

 爆音。堤防の一部が壊れて地響きがする。攻撃されたんだ、ってちゃんと理解したのは私だけだった。

 

 「何何何。今の何!?」

 「下の方で何か……様子を見ましょう?」

 「馬鹿、顔を出すな!攻撃されてンだよ!深海棲艦なんだ!狙われてんだよ、死にてぇのか!」

 「そんな言い方ないじゃない立花……きゃっ!?」

 

 再びの爆音。ひしゃげるガードレール。狙いをもっとちゃんとつけてきている。目の前には階段があって、そこを上ってこられたら……

 

 「お前ら、伏せて海から離れろ、死にたいなら知らねぇ。勝手に死ね」

 「立花さん貴女何をするつもりです?」

 「誰かが防がなきゃ、アイツが上がってくる……皆殺されるぞ!」

 

 そういいつつ、その先のイメージが勘で浮かんでしまって。そんなものは見たくないという衝動から浜に飛び降りた。

 

 「女の上半身に化け物の体……本当にこんな姿かよッ!」

 「!」

 

 深海棲艦の狙いが私に固定される。私は横っ飛びに飛んで避ける。私のいたところが砲撃で爆ぜる。

 

 「ッ!!くそっ、クソックソックソォッ!!」

 

 半狂乱になって叫びながら、左手に砂を掴んで、右手に小石を掴んで。深海棲艦に飛び掛かる。

 

 「目つぶし!で、モノ持ってなぐりゃいてぇ!このっ!!」

 「ギャッ!?」

 

 左手の砂を目に投げつけて。そのまま押し倒して、殴る、殴る、殴る。怯んでいるようで、このまま何とかならないかと思ったら深海棲艦に突き飛ばされた。浜辺を転がる私。

 

 「い”っがっ!あっ!」

 「――!!」

 

 立ち上がろうとしたところに、砲を合わせてくる深海棲艦。これは死んだ、って勘が告げる。体勢を整えきれない。

 

 「ハーッハァー!!」

 

 そんな空気を、一発の強力な砲弾が切り裂いて、深海棲艦に炸裂した。その衝撃に、色が見えた気がした。灰色の絵を引き裂いてその中から色鮮やかな絵が出てきたような感覚。

 

 「な、にが……」

 「砲もねぇ艦娘のが面白そうだなァ!ならそっちを生かすよなァ!ハハハハハ!」

 

 狂ったように笑うソレが海から近づいてくる。異形の尻尾、黒いコートに貧弱な下着。不気味な格好と強い威圧と狂気を持ったソレが話しかけてくる。襲ってきていた深海棲艦は先の一撃で即死していた。

 

 「お前、何って艦だァ?」

 「は、は……?私は艦娘じゃねぇぞ……」

 「アァ?艦娘じゃなきゃなんだってんだよォ!」

 「人間だよ、艦娘じゃない人間」

 「ニンゲン……聞いたことあるようなないような。そういや陸にいるのってニンゲンだったか?ハハハ!」

 「なんだこいつ……」

 

 会話が通じてるのか通じていないのかよくわからない。何を面白がっているのかもわからない。こんな時に勘は役に立たない。

 

 「まァいいや。お前、なんで武装持ってねェんだ?あの足搔き方、面白かったぜェ?」

 「艦娘じゃねぇ人間に武装なんてあるかよ!」

 「じゃあなんで逃げなかったんだァ?上にいた3匹ぐらいの奴らみてーに」

 「……それは……」

 「だから気になって見てみたら取っ組み合い始めるしよォ、アイツは艦娘の包囲無理矢理抜けるからなんか面白いモノあるのかと思ったらそんなこともなかったからがっかりしてよォ!撃っちまった!ハハハ!」

 

 とんでもないことを言ってるのに反応する余裕はなくて。私の中にあったものをぶちまけた。

 

 「後悔、したくないんだ」

 「後悔ィ?」

 「あの時ああすればよかった。こうしておけばよかった。そういう後悔はしたくないんだ。やらないで後悔するよりやって後悔するほうがいい、って言うだろ」

 「アァ?」

 「だから、あそこで逃げて他の誰かが、街が、犠牲になる。もし、私が立ち向かっていればって後悔をしたくなかった。不思議だよな、命よりそんなものを大事にするなんて」

 「後悔……よくわかんねェ感情だなァ」

 「だから、体が動いていた。どうすればアレを倒せるかなんて知らない。わからない。私を殺してそのまま上陸して暴れるかもしれない。けど、それでも。戦った方がいいって思ったんだ」

 

 言葉にして心のぐちゃぐちゃが形になっていく。さっきのこいつが放った砲撃が切り裂いた色が、広がっていくのを感じる。

 

 「お前にその気があったのかよくわかんないけどさ。ありがとう。助けてくれて」

 「ありがとう……?聞いたことのねェ言葉……」

 「感謝って奴だよ。お前に私は助けられた。お前の攻撃で、世界が明るく見える。何かが、壊れた気がする」

 「壊れて感謝?」

 「ぐちゃぐちゃでべっとりしていて固まっていた私の世界が、壊れた。私にもよくわからないけどさ」

 「よくわかんねェけど、お前」

 「ん?」

 「艦娘、やれよ」

 「艦娘を?」

 「艦娘ならどんどんぶっ放せるんだぜェ!それが楽しいんだ!でも、それだけじゃ足りねぇんだ。なんか、他の『面白いモノ』を知りてェんだ。お前、それを見せてくれよ」

 「艦娘になれば、それができるって?」

 「知らねェけど戦えるのは艦娘なんだろ!?なら艦娘やればいいんじゃねェのかよ!?どうやってニンゲンが艦娘になるのか知らねェけど!」

 「知らないのに気楽に言うなお前……」

 「でよ、お前、艦種はなんってーんだ?」

 「艦娘じゃねぇから艦種もクソもねぇよ。……立花蒼。苗字、所属っていうのか?それが立花で名前が蒼だ」

 「タチバナアオイ、タチバナアオイ!覚えたぜ!ハハハハハ!」

 「お前はなんていうんだよ」

 「名前なんてねェ!けど、艦娘はレ級って呼んでた!そのうち、『アウトロー』って呼ぶようになってた!多分それが名前だ!『レ級のアウトロー』!!」

 「レ級のアウトロー……」

 「じゃ、お前、面白くなれよ!今回はちょっとは面白かったゼ!ハハハハハ!!」

 

 言うだけ言って去っていくアウトロー。遠くに艦娘が見えて、アウトローを追いかけようとして、振り払われていた。

 

 「アイツ、強いんだ……」

 

 そうして惚けていると、振り払われた艦娘が私に気づいて寄ってきた。

 

 「貴女大丈夫!?今、深海棲艦がこっちに……って軽巡の死体もある!?どういうこと!?」

 

 そんなこんなでその艦娘達の鎮守府に連れていかれて、事情を説明して聞いて。アウトローはネームド、つまり特に強い個体って言われてる奴で、どこの集団にも属さずあちらこちらを自由気ままに放浪する。だから、『放浪者(アウトロー)』なのだと。非常に強く、抵抗する艦娘をことごとく返り討ちにするが、戦闘不能になると興味を失いトドメは刺さない奇妙な奴だそうだ。戦いにのみ面白さを見出しているのか。

 

 状況は、他の深海棲艦部隊を相手にしていたら、一隻の軽巡が強行突破して陸に向かって。なぜかやってきたアウトローがそれを追いかけて。目の前の残り集団に手間取りつつ、なんとか陸に来たら満足げなアウトローが去るところだった、とのことだった。

 このことは一般に知られたら大騒ぎになるので、すぐに艦娘が来て深海棲艦をやっつけた、ということにしてほしいと言われて。まあそれは承諾して。その時に、鎮守府の人に頼んだんだ。私を艦娘にしてほしいって。

 結果、建造で江風の適性を得て、そのまま訓練校に行けることになって。あれこれの処理のために一回帰ることになって。その時、朝に来ていたダイレクトメールを思い出したんだ。

 

 『君には力がある』

 

 それはMCへの勧誘の話で艦娘の適性の話じゃないと分かったのは訓練校に行く流れで完全に決まってからだった。その後は、訓練校に入って電達と出会って。同じMCに誘われたけどなんか艦娘になっちまった組でつるんで。その後、この鎮守府に配属されたんだ。

 

 「――っとまあ、そんなとこっすね」

 「艦娘界隈じゃ結構な騒ぎになってな。防衛線を突破されて上陸を許した挙句アウトローまで突っ込んだ!ってな。しかも現地住民巻き込んでだ。よく死者出なかったな、ってのとその民間人黙っててくれてよかったな、って話してたもんだよ」

 「それで卯月の姐さんも知ってた、っと。そういう意味じゃここで話しても大丈夫でしたよね?」

 「一般にばらしてないから平気平気」

 「私は一応一般なんだけどね!?」

 「亜贄社長~ここまで聞いて部外者もないでしょ?逃 が さ な い ぜ」

 「坂田君と言ったね、君怖いよ!?」

 

 そういえばハギトさんいるんだった。軍属じゃねぇンだよこの人。

 

 「……江風さんの根源にあるものはわかりました。あのアウトローとの因縁も。あそこで殺していたら少し後味が悪かったですね」

 「普通に殺せたンすかてーとく」

 「ええ、まあ」

 

 アウトローを確実に殺せたと言うてーとく。怖い。

 

 「後悔したくない。嫌な勘を突破したい。その為の力を、アウトローに示された。もとより、そういう力を。自分の意思でどうにかできた、と思える力が欲しかった。そういうところでしょうか」

 「てーとく、多分それであってる。……覚えでもあるの?」

 「そんなところです。私の話はまたいずれ。亜贄社長。この想いにエーテルが応え、かの力が目覚めた……という認識でいいのでしょうか」

 「エーテルは願いを、妄想を形にする力がある。願いを現実に伝えると言ってもいい。そのエーテルに目覚める才能がある人を、マザー……MCの代表は見出してMCに誘うのさ。私もそうして誘われた一人だよ」

 「あの暴走ともいえる力と意思の奔流は、その才のある方々に共通していますか?」

 「強く願いを想うときにエーテルが形となって応えるとはいえ、戦闘記録にあるような暴走はしないよ。恐らく、アウトローという個体の持っていたエーテルの塊……そもそもそんなものが存在するはずもないんだけど。これの仕業だろうね」

 「やはりアレが……」

 「エーテルの才能がある人はエーテルに敏感だ。だから、エーテルを大量に吐き出しているエスカタワーに近づくと当てられるわけだ。とはいえ、エスカタワーのエーテル排出口に立ったところであんなふうにはならないよ。既に情報粒子、という形になっているからね」

 「形になる?」

 「情報を、データを送受信するための物質として既に具現化していると言っていい。純粋なエネルギーという形をしていないんだ。加工品と言ってもいいかもしれない。とはいえ、加工したてで敏感な人には反応しやすい、といったところさ。すぐに慣れる程度だけどね」

 「成程、そうでなければエスカタワーの維持関係者は全員エーテルに目覚めていなければおかしいですものね。展望台に上った人たちも残らずそうなってしまうはず」

 「でもそうはならない。既に純粋なエーテルじゃなくなってるからね。ただ、アウトローの持っていたエーテルの塊は『純粋なエーテル』だった。あんなモノ、地球上に普通に存在するなんて聞いたこともないよ」

 「逆に言えば、人工に抽出したモノ、と言えるわけですね」

 「おそらくはね。そして、そんなモノを直に浴びたらどうなるかなんて前例がないわけだけど、エーテルへの感覚がより一層強まる、適応するようになるというのかな?そういう効果だったようだね」

 「私はそれを直撃していたからエーテルを形にする力に目覚めた、ってことっすか?」

 「マザーに誘われた時点で目覚めつつあったんだ。そこに君の今まで溜ってきた感情や願いが基盤になって、大量の純粋なエーテルという燃料がズドン、だ。エーテルへの目覚めが強制的に段階を飛ばして進んだとしてもおかしくはないね」

 「急激な体の反応、そして願いへの反応。だからこそ意思が暴走してあのようになっていた、ということですね」

 「そう。そして、江風君。君のツインダガーのような、エーテルの力を形にする力。それを僕たちMCは『具現武装』と呼んでいるよ。別に武装に限ったわけじゃないけど、強い思いは凶器足りえるのか、そういう形になりやすいんだ」

 「亜贄社長。貴方も具現武装が使える、と?」

 「『エメラルド・タブレット』……これが私の具現武装さ」

 

 ハギトさんの手に翡翠色に光る手のひらサイズのタブレット端末が出現した。強いエーテルを感じる。

 

 「このエメラルド・タブレットを端末として色々と形に出力するすることができる。それが僕の能力さ」

 「ソフト会社の社長、らしいっぴょん」

 「だろう?まあ、業務に関わることはないんだけどね」

 「そりゃ、そうだろうなぁ」

 

 端末を消滅させたハギトさんが続ける。

 

 「出すも消すも自由自在。ただ、これはエーテルを扱う力そのものだ。具現武装が壊れたら、どうなるかわかったものじゃない。使うなら大事にすることだね」

 「ある意味心の具象化のようなものでしょう。であれば相応にリスクがあると思ってよさそうですね。試しに叩き割らなくて正解でした」

 「福山提督はいちいち発想がおっかないねぇ!?」

 

 下手したら試しで私の心なり才能なりが割られていた可能性があったらしい。

 

 「それと、この能力の派生だ。こう、ね」

 

 ハギトさんが変身する。白を基調に青の文様が入った衣装。

 

 「これはMCの中枢メンバーの制服のようなモノさ。金の使徒、亜贄萩斗ってね。これは自分の服としてエーテルを展開しているわけだ。多少の身体能力の向上、耐久性の向上が見込めるのさ」

 「全身に力が纏わりついているようですね。被覆されていない頭部などの耐久性も上がっていそうですね」

 「福山提督に殴られたらそれでも大ダメージだからね!?試さないでくれたまえよ!?」

 「梓はそこまでゴリラじゃないさ……ないよな?」

 「止めなければ、試していました」

 「怖いんだよ全く!?……さて、江風君。君もコツを掴めば同じようにできるはずだよ。別に衣装を変えなくてもいい。体に纏えるようになれば、君の戦いの役に立つだろう」

 

 そういわれて、なんとなく思い描く。私のなってみたい姿。こうだったらいいな、という姿。

 

 「『艤装展開』からの、……『具現武装』!」

 「!」

 「呑み込みが早いね!?」

 「改二衣装か、成程な」

 

 卯月の姐さんのいう通り、艦娘江風の改二衣装を基調として、腕や足に防具を付けるイメージで。マントで衝撃を抑えられるようなイメージで。ちょこまかとした動きに邪魔な発動機はあるけどない、そんなイメージで。

 

 「……発動機ないけど、水の上に浮ける」

 「やってみてくれ、ということは言ったけどここまで出来るとはね。驚いたよ」

 「被弾面積が減る、となれば近接格闘戦もやりやすいでしょうね。マントは防具としての役割を持たせましたか」

 「脛や腕といったとこは防具でガードか。実戦的な衣装じゃねぇか?」

 

 てーとくや卯月の姐さんが言う通りのコンセプトだ。後はこれで動ければ、そして安定して出せればいいのだろう。

 

 「ハギトさん、質問なのです」

 「電君、どうしたのかい?」

 「私達も、同じように出来るってことですか?」

 「電君、加賀君も江風君同様マザーに見いだされた存在だから可能性はあるよ。純粋なエーテルの余波を受けたわけだから、切欠次第で具現化まで至ってもおかしくはないだろうね」

 「しつもーん、MCじゃねぇアタシとかどうなんだっぴょん?」

 「あの時違和感を感じていた卯月君にも才能はあるんじゃないのかな?後は雷君も少し反応していたから、可能性はあるだろうね」

 「瑞鳳達はどうなんでしょうか!」

 「特に何も感じなかったってことは、可能性は低いんじゃないかな?ないとは言い切れないけどね」

 「可愛い足の艦載機をポンポン出す夢が……!」

 「瑞鳳ちゃんそんなこと考えてたの……」

 

 瑞鳳と羽黒の漫才は置いておいて、あの時いた他のメンバーにも可能性はあるらしい。

 

 「ただ、強い願いが、想いが形になる。戦いの中に身を置く君たちの切欠が安全なものとは思いにくいね。何かあったら即動けるように、気を付けるといいよ。福山提督」

 「そうですね。そういうときほど、暴走しやすいものです。じっくりと、されど警戒はしておきましょう」

 

 そんな空気の中でいくつかの質疑応答と、今後の私の強化プランの話になって、お開きになった。

 

 「……そういや、アウトローも結局爆心地にいたようなモンだけど、アイツはどうなんだろう」

 「……深海棲艦が具現武装に目覚めた話は聞いたことがないからわからないねぇ」

 「次は拿捕でも狙うとしましょう」

 

 頑張れ?アウトロー。




 ハギト「ところで、江風君。君の地元、事件起き過ぎじゃないかな?」
 江風「バスの運転手のおっちゃんも言ってたんですけど、とりわけ治安の悪い地域だって言ってました」
 卯月「大事故に誘拐にクソ事故とポンポン起きる普通の街があってたまるかっぴょん」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。