少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 フライング気味にメインステージ1-Xをやる回です。今回は赤城目線です。


110話 奪え、役割。掲げよ、誇り

 昨日 14:00 太平洋沖 赤城視点

 

 

 江風が姿見に飛び込んで消え、創造者(クリエイター)が創り出した敵も掃討した後。濁流さんとマザーが転移してきて姿見を調査していた。

 

 「……間違いないね、コレは異世界に繋がっているポータルの類だ。今は起動してないけどね」

 「この姿見の構成物質は地球に、私が識る物質に合致しない。エーテル製でもないな」

 「”スラング”。異世界に行く準備しようって話の最中に別の異世界に飛ばされるだなんて!」

 

 頭を掻きむしり叫ぶ濁流さん。

 

 「濁流さんはこの手のものに詳しいのですか?」

 「この世界はさ、結構異世界と繋がりやすいんだ。異世界に召喚されて勇者だの救国だのやらされましたーって拉致される話が多いんだよね。オラクル宇宙然りだ。

 私の『濁流としての役割』の一つとしてそういう拉致被害者を取り戻す為にあれこれしてたのさ。

 今回はポータルが残っているだけまだマシなほうかな。最悪の中の、って前提だけどね」

 

 そう言いながら解析を進めていく。急に再起動して巻き込まれないよう、私達は距離を取らされている。

 

 「これはしばらく起動しない……いや、なんらかのアクションが必要か……マザーちゃん、持って帰れると思う?」

 「ああ、この安定具合であれば可能だろう」

 「よし、白峰に積んで鎮守府に持ち帰るよ。解析はここでも出来るけど悪用されないように保管したておきたい」

 「江風は大丈夫なんですか?」

 「ごめん海風ちゃん。解析次第、としか言いようがないね。けど、どうにかはそうそうならないと思うよ。経験則だけどね」

 「問題は立花蒼が深入りしすぎないかどうかだな」

 「深入り、ですか」

 「事件につま先突っ込む程度ならそれだけで終わりだけど、ガッツリ主要人物にでもなれば……帰るどころじゃなくなる。『物語』が捕らえて離さない可能性だってある。そうなる前に回収したいところだね」

 

 今の江風の精神状態を思えばそれは危険すぎる。そして思ったことがあった。

 

 「濁流さん、一つ質問しても?」

 「なんだい赤城ちゃん」

 「その『役割』を奪うことは可能ですか?」

 「えっ。……いや、そうきたかぁ」

 

 彼女にとって予想外の質問だったようで、作業の手も止まっていた。

 

 「ケースバイケース。だけどケース次第じゃアリだ。それに『物語の役割』に捕らわれていないから思考誘導もされていないから自由にできるからね。

 ……ただ、出来たとしてやり遂げる覚悟と引く勇気は求められるよ。言ってしまえば、君達は『そんな寄り道をしている場合じゃない』んだからね」

 「それは承知しています」

 「んじゃ、解析気合い入れますか〜!」

 

 そしてその夜、大まかな解析は完了した。

 

 「とりあえず向こうの世界について。主要な『物語』は海の上。艦娘の代わりにKAN-SENってアンドロイドの類が戦力として配備されている世界。『物語の主人公』はそんなKAN-SENの勢力、「アズールレーン」の基地の一つのようだ。場所はこっちで言うハワイだね」

 「そこまで分かったらもう行けないんですか!?」

 「石川絵梨花。慌ててはいけない。かの世界の中身は観測できたが安定して移動が可能になったわけではない」

 「別の場所に飛ばされるなら御の字、全然違う時間軸……例えば年単位のズレとか。君達には別世界に飛ぶ可能性すらあるって言って分かるよね」

 「私のことですね」

 

 福山提督は時間を大きく飛び越えようとしてこの世界線に迷い込んだという話だった。確かにそんな二次災害が起きては困る。

 

 「徹夜させてくれたら明日のお昼ぐらいには時間軸も座標も行き来出る上で固定できると思うな……!」

 「済まないが今日は待機していて欲しい」

 「うぅ、分かったのです」

 

 逸る気持ちを抑えて待機することになった。

 

 

 20:00 第127鎮守府 瑞鳳、羽黒、赤城の部屋

 

 

 瑞鳳が話したいことがあると同期組を部屋に集めていた。

 

 「なんの用かしら」

 「加賀ちゃん、昼間に赤城ちゃんが役割を奪ううんぬんって話をしたの覚えてる?」

 「えぇ。赤城、具体案はあるのかしら」

 「いえ、ないわ。そう出来たらいいなと思っただけよ」

 

 ほんの思いつきに過ぎない案だった。

 

 「それでもしやれるって場合、どうしたらこっちで引っ張れるか考えてみたの!」

 「それは?」

 「それは……挑発!」

 「「は?」」

 

 名案だとドヤ顔をしているがよくわからない。

 

 「詳しく話すのです」

 「難しい話じゃないよ?『物語の主要人物』に対して、江風ちゃんじゃなくて私達が相手だ!ってピキピキさせたら相手も江風ちゃんどころじゃなくなって『物語』の制御も奪えると思わない?」

 「確かに……?」

 「でも、余程挑発に弱いのでなければ『物語の役割』を飛ばして意識を向けきるのは厳しいのでは?」

 「というわけでこの台詞集でーす!」

 

 そう言って瑞鳳が取り出したのは台詞とシチュエーション、元ネタが記載された同人誌のような分厚い本だった。

 

 「なんなのですこれ」

 「夏菜さんが趣味で作った煽り台詞名鑑」

 「なにやってんですかあの人」

 「趣味で防衛機構にパンジャンドラム大量配置する人だよ?」

 「嫌な説得力」

 

 自由にも程がある自由人、が水野夏菜という130元提督の共通認識だった。彼女に惚れていた卯月さんはどれだけ振り回されてきたのだろうと思う一方で、そんな彼女の下で活動していた旧130の面々が自由すぎるボケ倒しになるのも必然と言えた。

 

 「いろんな小説とかゲームとかの煽り台詞とどんなシチュエーションで言ったかを纏めたモノなんだけど、これを参考に似合うやつをいくつか覚えておいてぶつけるとかどうかなって。

 皆に似合いそうなのはもうピックアップはしたけど他に気になるのがあったらそれもだね。例えば加賀ちゃんが突然流暢に含蓄多めの長台詞で挑発しても『キャラ作りしてる感』がすごいからもっとシンプルなのを、とかね」

 「頭にきました」

 「加賀ちゃんはどっちかというと切れる担当だもんね」

 「海風」

 「海風ちゃんはそのままでも良さそうなんだけどね……ナチュラル暴言が威力高いし」

 「えっ」

 「「えっ」」

 「……そんなに?」

 「そんなにだよ」

 

 そんなやりとりをしながらこの台詞は誰に、どんなシチュエーションで似合いそうという話を消灯時間までしていたのだった。

 

 

 13:10 第127鎮守府 停泊中の白峰

 

 

 解析が終わったとのことで、私達戦闘要員は白峰に集められていた。

 

 「こちら濁流。全員乗ったね?これからポータルを起動して、白峰ごと向こうの世界に突入させるよ。それで向こうなんだけど、江風ちゃんは勢力アズールレーンのハワイ基地に収容されたみたい。

 そして今、そのハワイ基地は襲撃を受けている。敵勢力は不明だそうだけど、まあこれが江風ちゃんが呼び寄せられた騒動だと見てよさそうだ。

 どう動くかは君達に任せる。けど、全部見捨てて放置で江風ちゃんの回収だけだと『物語』が再度江風ちゃんを引きずり込みに来るかもしれないことは留意しておいて」

 「ポータル、起動する!」

 「白峰発進!」

 

 そしてポータルをくぐり、異世界へと突入した。

 

 「こちら中村、各種センサー各種機能異常なし」

 「陽炎姉さん達の世界に行ったときと大差はありませんね。江風さんの反応を辿り進路をハワイ基地へ!通信はできるだけ傍受して全員に聞こえるように!」

 「了解!」

 

 その後拾えた通信内容は襲撃の混乱の中のものだった。ハワイ基地の状況は相当悪いらしい。その上で、指揮官を呼ぶ声が多く聞こえたものの返事はなかった。

 

 

 13:30 ハワイ基地東方近辺

 

 

 『ーー助けて!』

 『開闢の蔦よ!』

 「今のは……」

 「江風ちゃん、やったのです?」

 「おそらくは。ですが、敵勢力は依然として西側に展開。勢力名は「重桜」だそうですね」

 「これどう考えても真珠湾攻撃の再現だよね」

 「重桜というのは日本なのかな?」

 「つっても流石に宣戦布告なしで仕掛けるような戯けじゃなーー」

 『我ら「重桜」はこれより「レッドアクシズ」に参加し、全ての偽善者に天罰の鉄槌を下す!』

 「殴ってから言うんですかー!?」

 「何考えているの重桜の赤城とかいう奴」

 「テロしてから宣戦布告とか……赤城ちゃん?」

 「ふふ、うふふ……」

 

 色々と状況を把握しようと考えていたが、『突然襲撃するだけして被害を出してから偉そうに宣戦布告するこの世界の赤城』という存在に酷く腹が立った。一航戦を名乗っていたが誇りはないのか。

 

 「福山提督。敵司令塔は今の赤城ですよね?」

 「そうでしょうね」

 「なら、オープン回線を」

 「赤城さん……?」

 『何が、なぁにが強者だ!宣戦布告ナシで奇襲してふんぞり返ってるンじゃねェ!これから反撃して奇襲に頼らないと勝てない弱者だと証明してーー』

 「それはこちらでやります。江風、いえ迷い猫(ストレイ・キャット)は基地周辺の敵掃討を」

 『赤城!?いつの間に!?』

 

 同じく激昂していたらしい江風の言葉を遮る。

 

 「福山提督。増設バーニアによる奇襲による首狩り戦術を具申します。実行者は私です」

 「……本気のようですね。パール・ハーバー、一航戦の赤城と来れば随伴に加賀もいることでしょう。加賀さんも出撃を。先の通信で敵赤城の位置は特定できました」

 「赤城に振り回されるのは新鮮ね。了解よ」

 「2人がカタパルトから出撃次第、順次卯月と夕立さんも増設バーニアで出撃を。敵陣を撹乱してください。他の皆さんは白峰が敵部隊にぶつかり次第発艦を!」

 「了解!」

 

 白峰には甲板部に増設バーニアによるスクランブル用のカタパルトデッキが一つ備え付けられている。これで順番に出撃する形だ。

 

 「回線をオープンに継続!……こちら第127鎮守府、迷い猫の所属部隊です。これよりアズールレーン、貴方達を援護します!」

 「進路クリア!カタパルト射出準備完了!赤城さん、発進どうぞ!」

 「一航戦赤城、出ます!」

 

 訓練を積んでいなければ気をやっていたかもしれない衝撃を全身で受けながら飛び出した。

 

 

 ハワイ基地西方 重桜陣営拠点

 

 

 「……姿が違っても見れば分かる。アレが赤城。増設バーニアパージ!着水!」

 

 周囲の敵を置き去りにして「KAN-SENの赤城」と向き合う。黒髪の狐のような耳や尻尾をした黒と赤の着物の女性。私とはだいぶ趣が異なる。だが、私の赤城としての本能がこの相手は間違いなく赤城だと告げる。

 

 「何?単騎で……」

 「本作戦の大将、赤城とお見受けします」

 「……ええ、そうよ」

 「私は今基地で指揮を取っている代理指揮官の仲間、赤城です」

 「なんですって?」

 「詳細は後です。戦いには作法があると思いますが……何故宣戦布告より先に襲撃を行ったのですか?」

 「虫けらに気遣いが必要なのかしら?」

 「成程」

 

 昨日の瑞鳳発案のやり取りを思い出す。侮蔑と程度の低いものを見るような表情と声を心がけて言葉を紡ぐ。

 

 「どうやら重桜というのは卑賊(ひぞく)のようですね。そして卑賊には誇りもない、と。生きやすいものですね、羨ましいことです」

 「貴様……!」

 「私は赤城。127の赤城。そして誇り高き一航戦の赤城。貴方のような卑賊の存在を許しては一航戦の名に傷が付きます。ですからここで排除します。赤城艦載機隊、発艦!」

 「大口を叩いたことを後悔しなさい!霊(ゼロ)、行きなさい!」

 (式神タイプなんですね)

 

 相手からも艦載機が上がるが数が少ない。空爆に多くを費やしているのだろうという想定して突撃したのは正解だったようだ。そしてそんな残存兵力に負けるほど私だって弱くはない。

 

 「くっ……!」

 「足を止めるとは余裕ですね?その薄っぺらいプライドごと沈め」

 

 127に転属する際に加賀とやりあったように私自身が棒立ちになる醜態を晒す気はない。その辺りの意識の割き方は直鞍が得意なヲさんといういい見本がいる。自身も動き回る司令塔かつ駆逐艦である暁さんの直鞍をやる関係上、空母として艦載機制御だけに意識を割いていられないのだ。

 もっとも、当初は意識を割いた上でも軽くあしらわれてしまう程に実力差があったが今はいくらかマシになっている。そしてヲさん以上の深海棲艦空母には遭遇していないレベルで上澄みなのである。

 

 「よく動く!だけど……加賀!」

 「姉さまをやらせるものか!うおおおっ!!」

 「艦載機を力に変換して獣になった……!?」

 『心配ないわ』

 

 私達の世界では見たことのない戦術を重桜の加賀が使い始めた。だがその直後。

 

 「増設バーニアパージ、その勢いのまま『カミカゼアロウ』」

 「があああっ!?」

 

 自分自身を矢にして突撃するPA(フォトンアーツ)を使い加賀が重桜の加賀が変身した獣に文字通り『突き刺さった』。

 

 「ぶっつけ本番だったけれど……上々ね」

 「こ、の……!」

 「加賀!」

 「余所見とは余裕ですね」

 「ッ!」

 

 負けじとこちらも一気呵成に攻めていく。

 

 「艦載機の力を変換して大きな獣になる、面白い能力だけれど私には勝てないわ。だって私は弓兵(アーチャー)、獣は狩られる側で弓兵は狩人だもの」

 「言わせておけば……!」

 「貴方達、楽に死なせてあげませんわ……!」

 「御生憎様。貴方達程度に殺される程ヤワではありませんので」

 

 挑発に挑発を重ね、ヒートアップさせる。それこそ全体指揮が出来ない程に。

 

 『こちら迷い猫!基地に張り付いてた敵部隊は掃討した!ヨークタウン隊、そちらはどうか!』

 『こちらも押し返している!』

 「……ッ!」

 「主力にして指揮者が役割を放棄した以上、当然ですね。そして対応された奇襲部隊ほど脆いものはありません」

 「これでよく強者ぶれたわね。雑魚のくせに」

 「貴様ら……!……加賀、ここは撤退よ」

 「姉さま!?」

 「目的は既に果たしたわ」

 「くっ……全艦隊、撤退!」

 「重桜の赤城。貴方の首は私が獲ります」

 「覚えておくわよ、貴方!127の赤城!」

 

 そうして重桜艦隊は撤退していった。アズールレーン側は江風の指示により追撃はせず、偵察機を飛ばす程度に留めて被害状況の確認と負傷者の手当てに努めることになった。

 

 

 16:00 ハワイ基地指揮官室跡

 

 

 「……ふぅ、ようやく一段落ってとこか。死んだ指揮官の奴元々機能不全一歩手前にしてやがってよォ……」

 「お疲れ様です江風。落ち着きましたか?」

 「まだ皆気落ちしているよ。物理的なダメージの方は応急修理妖精を鎮守府からめちゃくちゃ応援に出してもらったから早く復帰できそうだけど」

 「貴方自身のことを聞いているんですけど」

 「……自意識的には落ち着いているよ。助けてって声にも応えられたし。……やっぱそういう『役割』をこなしているのが一番収まりがいいのかなァ」

 「助けを求めていたのは今も貴方にくっついているその方ですか?」

 「……」

 「カッシン?こいつ敵じゃないから。聞こえた声はカッシンので間違いなかったみたい。どういう原理だとかは濁流さんに投げるけど」

 

 カッシンと呼ばれたKAN-SENは江風に背中から抱きついている。

 

 「怒らないでやってくれよ。日々酷使されてメンタルギリギリだったところに目の前で指揮官がやられてあわや自分達も……なンて状況だったンだから。ショックにもなるよ」

 「とやかく言うつもりはありませんよ。ただ、動きにくくないですか?というのと最低限引き継ぎをしてカッシンさんと早く休んではいかがですか?」

 「別にこれぐらい。それと誰に引き継ぎをーー」

 「弥生現着しました。江風、引き継ぎ資料を出して」

 「あっはい」

 

 ぱぱっと弥生さんが資料を回収して読み込む。先程江風が愚痴っていた通りに資料は少なかった。

 

 「被害復旧優先でこの内容は私好みに調整していい?」

 「いいですけど、鎮守府の方は?」

 「いいなら下がって。まだ怒ってないです」

 「言うこと聞かないと怒るンじゃないですか!」

 「それとダウンズって子が目を覚ました。行ってあげて」

 「……!」

 「分かりました。行こう、カッシン」

 「うん」

 

 2人がいなくなるのを確認してから弥生さんが大きく息を吸い込んで叫んだ。

 

 「殉職した指揮官の仕事が駄目すぎる!!」

 「あ、やっぱりですか」

 「だからこそ弄りがいがあって楽しめそう。秘書艦やっていたあの子の前では言えなかったけど」

 「私達、亡くなった指揮官さんには全く感情ありませんからね」

 

 そして死んだからといって優しく扱う慈悲の心も127にはないといっていい。

 

 「江風も言っていましたが、127での業務との兼ね合いは大丈夫なんですか?」

 「私は一日二日開けた程度で困る鎮守府運営はしていないから」

 「流石筆頭秘書艦……」

 「それにあくまでも数日後に到着するって話の新しい指揮官が来るまでの繋ぎ。そこまで忙しくならない」

 「そういえば元々来る予定でしたね」

 

 エンタープライズさん曰く期待していい人材だそうだ。

 

 「もし新指揮官に才能がなければ乗っ取るけど」

 「大胆ですね」

 「その方が手間がかからないから」

 「それもそうですね」

 「それより、敵集団の赤城へのヘイトコントロールは大丈夫だった?」

 「ええ。少なくとも江風ではなく私に対して敵愾心を持ったようでした」

 「加賀、入るわ。……あら、江風はいないのね」

 「医務室に向かったわ」

 「加賀も活躍したみたいね」

 「ええ。……赤城」

 「はい?……ああ」

 

 加賀が手を上げて目配せをする。応えてハイタッチをする。

 

 「うまくやり込めてとても気分が高揚しています」

 「瑞鳳発案の挑発が本当に上手く嵌まったわ」

 「私はあの獣にぶち当てて撤退させられたからもう満足よ」

 「正直に言えば私ももう十分ですけど……宣言した手前あの赤城は狩らないと口だけになってしまいますね」

 「夏菜のネタを拾ったって聞いたけど、上手くいったみたいなら良かった」

 「私、上手くやれていましたか?」

 「そこは発案者の瑞鳳達に戦闘記録見せてジャッジしてもらうところね。でも、あちらの赤城が本気で殺気を向けていたようだし作戦としては成功じゃないかしら?」

 

 そう、アレは全て作戦の一環だった。私が因縁をつけられそうなので買って出ただけで、誰でもよかったのだ。『江風を主眼に置かないようにすること』が出来るのであれば。

 

 「後は江風が本能的に巻き込まれに行かないかね」

 「そこなんですよね」

 「それなんだけど」

 「弥生さん?」

 「梓をうーちゃんで繋ぎ止めたように、『このヒトの所に帰りたい』って思えるヒトが出来ればなんとかなると思う」

 「福山提督の根本はそこですものね」

 「だけど江風は……拾ってきたヒトを信頼出来る他の人がいるなら任せていく傾向があるのよね」

 「あぁ……」

 

 具体的に例を挙げるならアウトロー、ココ、八重さん。アウトローはハナさんが軸になっているしココは鎮守府全体が軸になっているところがある。八重さんはそこに茅野コウタさんを追加した感じだ。

 いずれにせよ、『江風だけに依存する』という状況ではない。まるで江風の『役割』はそういうところまでの誘導であると言わんばかりである。

 

 「江風の地元の死神の朱音に期待したけれど江風は両親に依存先をシフトさせていた。惜しかったのに」

 「列挙すると中々やっているわねアイツ」

 「依存先が一つではないのは良いことだとは思うんですけどね……最悪な事例がその上で失ってヒトを辞めるに至った福山提督の事例ですし」

 「それもそう」

 「その事例が江風が自分を依存先に固定させない原因の一端かしら。一人だけ何かあった時の覚悟を決めているというのは頭に来ますけど」

 「そういう意味でも、さっきのカッシンって子が他の誰でもない江風を選んでくれればいいのだけど。……ということで協力してもらえる?」

 「「え?」」

 

 そうして江風本人だけが知らない江風の精神状態改造計画が始まるのだった。

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