少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 前回登場したウェポノイドについての話と江風達が最終的に立ち向かう敵について少し触れていきます。


114話 こちらの戦力と未来の敵

 3月25日 15:00 惑星ナベリウス 遺跡エリア

 

 

 今日も今日とでてーとくの下で訓練を行っていた。その中で何かを思い出した海が声を上げる。

 

 「そういえば、福山提督」

 「なんでしょうか」

 「ルーファさんと一緒にいるチュロスタさん?あのヒトってなんなんですか?」

 「説明してなかったんですね……」

 

 てーとくが額に手をやりつつ溜め息を吐いた。

 

 「イレギュラーではありますが、彼女はウェポノイドという存在です」

 「ウェポノイド?」

 「PSO2をやっている時にチラッと聞いたような……聞いていないような……なのです」

 

 私たちには馴染みの薄い名称だった。

 

 「端的に言うと、アークスの用いる武器に意志を与え、その意志をいくつかの工程を挟んで具現化、アバター化した存在です。チュロスタさんはルーファさんの扱っている銃の意志、とでも言えばいいでしょうか」

 「そんなモンまであるンだアークス」

 「戦力不足の解消かしら?それとも虚空機関(ヴォイド)の玩具?」

 「半々といったところですね。元の研究機関は私やブルーノさんらの手で壊滅させたり自滅したりしましたし」

 「ブルーノさんって電を助けたときにいたヒトか」

 「ええ。情報部所属の彼にはウェポノイド関連の事件を追い続けてもらっています。彼の行動チームにもウェポノイドがいますね」

 

 ソードのウェポノイド、モアと創世器のウェポノイド、ジェネが該当するらしい。後者は本人も最近まで知らなかったらしい機密情報だそうだが。

 

 「話を戻すと、チュロスタさんはその開発機関の支部を襲撃した際に偶発的に生まれた存在です。アレは……」

 

 そうしててーとくはこの世界で起きた当時の事件を振り返り始めた。

 

 

 ルーサーが倒された後、アークス再編時 とあるアークスシップ 梓視点

 

 

 皆さんの世界でもやっていたことですが、私がアークスに正体を明かした上で協力をする際、シャオに最初に依頼されたことは虚空機関残党を始めとする人々に害をもたらす実験などを行っている連中などの排除でした。ウェポノイドに関連する研究も該当し、連中はエネミーのウェポノイド化など色々とやらかしていたんですよね。

 

 「指定された施設はここですか。指令内容は皆殺し、分かりやすくていいですね。……こちら福山、現着しました」

 

 味方の人的被害を減らすことと迅速な作戦遂行による敵の逃亡者を出さないことを目的として、私に単独先行で施設内部の人員を殲滅しろという指示が出ていました。

 

 「シャオによるハッキングが終わり次第突入をーー」

 「あーずっささん!」

 「!!?」

 

 私に声をかけたのはルーファさん。こっそりと後をつけられていることに気付かなかった私の落ち度でした。

 

 「さっき見かけたのでついて来ちゃいました!何してるんですか?」

 「……シャオに後ろ暗い任務を指示されているんです、貴方は何も見なかったことにして帰ってください」

 「えー。というか、なんで私には内緒なんですかー!」

 「貴方はアークスの英雄。人々の希望。悪人とはいえオラクルの人々に手をかける任務はさせられない。それが私とシャオの共通認識です」

 「そんなキレーなワケでもないのに。……悪人をやっつけるんですか?」

 「えぇ。虚空機関のようなモノで、皆殺しにします。誰一人として逃さずに」

 「私も行きます!」

 「話を聞いていましたか?」

 「そういうの押し付けてキレーなフリをするのって違うと思うから」

 「躊躇いなくヒトを殺せますか?」

 「クーナちゃんやハドレッド君みたいな子を苦しめているようなヒトをやるなら、出来るよ」

 

 その目に宿った意志は固く。口先で追い払えるとは思えませんでした。そして同時にシャオからハッキング完了と私が突入する出入り口以外を封鎖したとの連絡が入りました。

 

 「……はぁ。言って聞くならそもそもシオンの縁者などしませんよね。分かりました。……シャオ、ルーファさんがここにいますので同行させます。弁明は後で。……突入します!行きますよ!」

 「はい!」

 

 

 唯一ロックされていない扉を蹴り飛ばし突入する。私の大剣は屋内という閉所では扱いづらいものではありますが――

 

 「はっ!」

 「な――」

 「なん――」

 「うわ、壁ごと斬り裂いてる」

 「て、敵襲!敵しゅ――」

 

 壁も設備もないものとして視界に映った職員を片っ端から斬り伏せていきました。ダークファルスとしての膂力があればこういうことが出来るので便利ですね。

 

 「あ、アークスの英雄!助けてくれ!」

 「駄目だよ」

 「あがっ――」

 (本当に殺しをやってのけますか。頼もしいやら今後のダーカー汚染が不安やら……複雑ですね)

 「梓さん!この先分かれ道みたいだけど、どうする?」

 「敵の所在と数はフォトンで分かりますね?私は大人数を制圧していきますから、ルーファさんは小部屋などの少数の制圧を。先程の突入口には情報部のアークスが到着したようですからそこから逃走されることは考えなくていいです」

 「分かった!」

 

 

 10分後 研究施設 深部エリア

 

 

 「なんっ――」

 「わ、我々はアークスの未来の為にやっているんだ――」

 「バケモノめ……!」

 「貴様らのあらゆる言葉に意味はない。アークスの為?人々の為?未来の為?戯れ言を。……さて、情報と生体反応を見るに後は最深部だけですか。ルーファさんが先に突入したようですが……」

 

 そうして最奥の部屋に侵入しようとした瞬間。

 

 「うわぁーっ!?」

 「ッ、ルーファさん!?」

 

 ルーファさんの悲鳴。慌てて突入すると、生き残った職員が何かの装置を彼女に向けて照射し、彼女は手にしていた武器、チュロスタで防いでいました。そして爆発が生じ、白煙が彼女を包みました。

 

 「ルーファさん!」

 「は、ハハ、これで無力化だ、今のうちに逃げ――があっ!?」

 「マスターを狙うなんて、許さないよ?」

 「な、んだと……!?」

 「え、え?」

 

 白煙の中から職員を撃ち抜いたのは皆さんが模擬戦をしたあのチュロスタさんでした。この瞬間、「ウェポノイドのチュロスタ」は生まれ、即座にマスターであるルーファさんに危害を加えようとした敵を撃った、ということになります。

 

 「馬鹿な、ウェポノイドには人に危害を加えない思考原理があっ!?」

 「そんな悪いことをしておいて、そういうのに頼るのってどうかなって思うけど。私はずっとマスターと一緒に戦ってきた。マスターの役に立ちたい、マスターが傷ついてほしくないって願いがある。なら、遠慮することなんてないよね?」

 「チュロスタちゃん、なの?」

 「うん!そうだよ、マスター!」

 

 職員への侮蔑を込めた冷徹な目から打って変わってマスターに向ける彼女の表情は甘いお菓子のように朗らかなもので、敵の排除中とは思えない程でした。

 

 「マスター、全員やっちゃっていいんだよね?」

 「……梓さん!」

 「全員殺すつもりでしたから構いませんよ」

 「だって!」

 「はーい、じゃあやっちゃうからね!それとその装置がマスターに危害を加えないようにっと!」

 「うわあああ――」

 

 あっという間に残りを殲滅し、チュロスタさんをウェポノイド化させた装置も破壊して。チュロスタさんによって掃討戦はあっさりと幕を引くことになりました。

 

 「マスター!これからよろしくね!」

 「うん!……チュロスタちゃんのチュロスタちゃんはもうチュロスタちゃんが扱っていく感じなのかな?」

 「あの、言い方」

 「あ、私戻れるよ!ほら!」

 

 もう自分の武器として握れないのだろうか、と思ったルーファさんに対して慌てたようにチュロスタさんは武器だけの状態に戻りました。

 

 「わわ!……えへへ、なら、今後とも末永くよろしくねっ!」

 「うん!」

 「話をまだ終わらせないで頂けますか……?」

 「あっはい」

 

 その後すり合わせた結果、チュロスタさんは本来のウェポノイドが生成される過程を飛ばしてアバター化したことが判明しました。

 本来、ウェポノイドは武器をまずチップという装着したアークスが強化、能力を活用できる媒体にデータ化し纏め、その上でその力をアバター化することで生まれます。職員の言っていたウェポノイドはヒトを害さない、という倫理機構はこの段階で付与されます。ですがその段階を飛ばしたチュロスタさんにはその倫理機構が与えられないまま彼女を扱っているルーファさんへの想い一本でアバター化しました。結果、敵であればヒトでも気にせず殺せる存在になったというわけです。

 

 「とんでもないイレギュラーですが……戦闘経験、センスなどはルーファさんのチュロスタさんの扱いに準拠しているから即戦力でルーファさんに合わせられる。これはかなり有用ですね」

 「頼りにさせてもらうよ、チュロスタちゃん!」

 「はーいマスター!」

 「……とりあえずですがチュロスタさん」

 「……」

 「その露骨なマスター贔屓の反応をやめて取り繕ってください。巡り巡って貴方のマスターに害をなしますからね」

 「……はーい」

 「ルーファさんも甘やかしすぎないように」

 「はぁーい」

 

 それから深く付き合わなければ「普通のウェポノイド」として思われるような役作りをさせて今に至ります。ルーファさんが冷凍睡眠している間はスイーツ店で働いたりして社会経験を積ませたり、まあ色々です。

 

 

 現在 惑星ナベリウス 遺跡エリア

 

 

 「――こんなところですね」

 「つまり私達イレギュラー艦娘みたいなモンってことか」

 「ええ。その認識で間違いありません。その上で他のウェポノイドの皆さんは特定のマスターを持っているわけではないこと、人殺しに常人以上の忌避感を覚えていることが違いとしてあることだけ覚えてくだされば問題ありません」

 「イレギュラー艦娘としては親近感覚えちゃいますね」

 「その割には昨日私達と一切話をしなかったけれどあのウェポノイド」

 「年単位越しのマスターなんですからそこは仕方ないのです」

 「電が言うと説得力があるわね」

 「ライルにコハルといい……なんだかんだでこっちにもこっち特有の戦力はいるって感じなンだね」

 「ええ。それでもあちらの世界に比べると圧倒的に数が劣りますが……そこはあちらの世界で得た情報や経験を活かして補う形になっています」

 「そしてそのさらなるサポートとして私たち、なのですね」

 「えぇ。頼りにさせてもらいますよ」

 「「勿論!」」

 「……ああ、それと」

 

 何かを思い出したのかてーとくが切り出した。

 

 「皆さんの訓練の方向性なのですが……フォトンを扱わない方向でも鍛えて欲しいのです」

 「扱わない?」

 「フォトンの感性を鍛えるんじゃないんですか?」

 「具体的にはフォトンの感性は鍛えた上で、逆にフォトンで動きを読まれないようにしてほしいんです」

 「それこそルーファさんが『フォトンが教えてくれる』とか言っていたけれど。そういうものへの対策ということかしら」

 「はい。フォトンに体の動きを乗せていくことはスムーズで強力な動きを再現ないし実現することに繋がります。ですがそれはフォトンを読める者にとって動き始める前の予備動作以前の段階でその後の動きまで開示するということと同義です。誰にも対応できない速度、というのはこの場合難しいと言えます」

 「動く前から対応できるならそうですよね」

 「フォトンを活用した動きはダーカーやその影響下にある相手には極めて有効ですが、対策できる相手には相性が悪い。かといってアークスはフォトン以外の動作は厳しい。そういった状況下において皆さんが頼りです。緊急性は今のところ低いですが心に留めておいてください」

 「「了解」」

 

 おそらく明言は出来ないのだろうが、いずれそういう相手と交戦するということだろう。であればーー

 

 「じゃあ艦娘としての能力、妖精さんとの連携がより必要になるってわけだね」

 「ええ。昨日ルーファさん相手でもそれによって押し込んでいけたのでしたね。その方向を強化していく形でお願いします」

 「それじゃあ打倒ルーファさん!」

 「海。……てーとく、それでいいの?」

 「まあ、いいです」

 「いいのね」

 「早速ご指導よろしくなのです!」

 「ええ」

 

 ということでこちらの世界にいる間の訓練方針が決まった。なんでも、フォトンとエーテルは似て異なるものなのでフォトンを活用しないのであれば具現武装も先の話的にアリなのだそうだ。端的に具現武装抜きだと手札が足りなくなる加賀はホッとしていた。

 また一から十までフォトンを使わないのではなく、フォトンを使ったり使わないでいたりとフェイントがてら使い分けるのも有効だと言う話だった。

 そういう戦術が有効な辺り、『敵』はフォトンの扱いに余程長けていてとてもフォトン感知に全幅の信頼を寄せているのだろう。同じくフォトンを扱う前提のアークス達はそんな『敵』を相手にして大丈夫なのだろうか。

 

 

 19:00 惑星ナベリウス 遺跡エリア

 

 

 「今日の訓練はここまでにしておきましょう」

 「んーっ、普段使わない筋肉使った気分なのです……!」

 「フォトンで楽していたところを使ったものね」

 「そういえば福山提督、いったい誰を想定してこんな訓練をすることにしたんですか?」

 「おい海、それは明かせないって話じゃーー」

 「皆さんが知る分には問題ないでしょう」

 「えっ」

 「何故なら現時点では干渉可能な領域に存在しない敵であり、皆さんに課した対策以外意味を成さないからです。……その敵性存在の名前は『フォトナー』。【深遠なる闇】の核になった存在」

 「「……!」」

 

 フォトナー。マザーが探してた生みの親ですべての元凶。

 

 「あれ?でもフォトナーは【深遠なる闇】の核になったんじゃなくて何かに押し付けて滅んだんじゃないんですか?」

 「ええ。その押し付けられた存在がフォトナーを名乗っているだけで、滅んだ種族フォトナーとはまた少し違う存在ですね」

 「押し付けられた存在って……マザーの後継機で『完成したシオン模倣機』……」

 「そういうことです」

 「フォトン感知能力に尖ってるらしいことにも納得ね」

 「そっちの極致なのです」

 

 フォトンの扱いにもっとも適性があると思われる惑星シオンと同格、と思えば納得である。

 

 「シオン模倣機が単独で殴り込んでくるってことかしら?」

 「ほぼそうですね。僅かなネームドの従者と大量のダーカー代わりの眷属を率いて襲ってきます。その従者などについては、すみません言えません……」

 「そこはいいですけどなんで襲ってくるんですか?」

 「フォトンに関わるものを全て滅ぼすため、だと私の知る範囲では言っていましたね。【深遠なる闇】の延長だと思っていいでしょう」

 「ダーカーでいいじゃないそれなら」

 「ダーカーだと力不足だと思ったンじゃない?」

 「その真意までは分かりませんが、眷属もダーカー以上の強敵です。……ダーカー以上にフォトンに特化しています」

 「だから非フォトンでメタ張ろうってことだね」

 「ええ」

 

 てーとくが深刻に強敵だと言うのならば本当に強敵なのだろう。

 

 「ま、目的ができていいね」

 「なのです!」

 「流石にやる気が向上します」

 「私たちに任せてください!」

 「ええ、期待していますよ」

 

 だからといってビビるのではなく、やる気を出すのが私達127鎮守府である。

 

 「未来で首を洗って待っていろよ、フォトナー……!」

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