少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 実質短編3本となります。


11話 それぞれの陣営で

 マザークラスタ・ディスカッション

 

 

 2027年6月中旬 SNS・MC

 

 

 『さて、何故外部に我々の存在を教えたのか教えてもらおうか、亜贄萩斗』

 『何を今更。江風君達がこのSNSを利用すること、それを鎮守府が把握することはマザーの了解も得ていただろう?つまり今更、さ。』

 『50%あそこまでバラす必要なくない?』

 『我々の仲間、江風君達の可能性を広げるためさ。それに、アースガイドと非友好的な横須賀系の鎮守府との関係強化も悪い選択じゃないだろう』

 『アースガイド系の鎮守府、増えてきているからね。地上勢力としては大して問題ないけれど』

 『それらからの防壁としての役割と、独自の研究をしている横須賀との技術連携を図る、といったところかのう』

 『そういうことさ!まあ、それとは別に表向きのYMTコーポレーションとしても新しい民間に向けた鎮守府広報で活躍するアプリ、という実績も欲しいところだからね』

 『Youの目的はそっちの方じゃないのかね?』

 『個人的な目標としてはそう、私が提携している鎮守府なんだ。大和を!武蔵を!大和型艦娘の配備を!してもらわいとねぇ!』

 『100%趣味じゃないの!!』

 『趣味と実益を兼ねていると言ってもらおうか!』

 『立花蒼達が心配だという事情は存在する。このまま協力体制を取っていってほしい』

 『マザーの許可も得られたことだし、この調子でやらせてもらうよ!』

 『……ぬぅ』

 

 亜贄萩斗の笑い声と男性の不満な声が電子空間に響いていた。

 

 

 How old are you ?

 

 

 2027年6月下旬非一般公開日12:30 第127鎮守府

 

 

 「皆さん、質問よろしいでしょうか!」

 「きゅー!」

 「元気だなァ……どうしたよ保科」

 

 主にイ級と交流のため、鎮守府に遊びに来ていた保科朱里が挙手をする。丁度休憩時間で、結構な数の艦娘、ついでにハギトさんも来ていた。……ハギトさんは何かと顔を出すようになっていた。

 

 「皆さん、おいくつから艦娘を始めたんですか?」

 「お前やっぱり艦娘になるつもりじゃ」

 「気になっただけです!」

 「きゅっきゅ!」

 「私も気になる、ってさ。答えてあげましょ。私は18、高校卒業からだから……ああもう4年になるのか。早いモノねぇ」

 「響だよ。私も暁と同じタイミングで艦娘になった同期だから、二人とも22歳ってことになるね」

 「半年遅れて私が22で艦娘になってだから……ああもう25歳でアラサーなの思い出しちゃったわ」

 「雷お姉ちゃん10歳差だったのです!?」

 「私、電、江風は中卒で半年前に艦娘になったばかりだから、15~16歳ね。高1相当になるわね」

 「加賀はもう誕生日過ぎて16なンだっけ」

 「えぇ」

 「私の1つ上の世代で大活躍してるんですね!」

 「将来性考えたら高卒はしろよ?マジでな?」

 

 本当にこの子は来年艦娘になっていそうで怖い。幸い、127鎮守府では建造は出来ないので建造ドックに走ることはないはずだが。

 

 「歳の話か?俺は高卒で5年目だから23だぜ」

 「私は天龍ちゃんと同じタイミングで、大卒だったから27になるわね」

 「ここの艦娘で一番年上じゃねぇか?龍田」

 「卯月ちゃん達が同期だったはずだけど、どうだったかしら」

 「アタシは25だぞ。短大卒からだから20からになるなっぴょん」

 「私、長月は高卒で23だ」

 「そして私菊月が大卒で27、龍田と同い年だ」

 「菊月さん27だったんですか……?」

 「長月さんと逆だと思ってた……」

 「言われてるぞ菊月」

 「睦月型は年齢関係なくお茶目でいいんだぞ?」

 「お前は度が過ぎてるっぴょん」

 「本来度が過ぎてる担当のうーちゃんがツッコミ担当だから引き受けてやっているんだぞ?」

 「余所の鎮守府のアラサー卯月に変身解くとこのキャラやってることが辛くなってきたってガチ相談されてんだからやめていいぞっぴょん」

 「というか、そんなプライベートのガチ相談される卯月のコネどうなってんのよ」

 「顔は広いんだよ、顔は……っぴょん」

 「うーちゃん出向く先で歩くお悩み相談室やるからな」

 「苦労人だよな。もう少し気を抜いても許されるんじゃないか?」

 「分かってるならお前らも少しはなんかしろよっぴょん」

 

 暁さんが呆れるレベルで顔が広いらしい卯月の姐さん。というか、結構年齢バラバラなんだなぁ。

 

 「おやつの卵ケーキです!ちなみに私と羽黒ちゃんは18の高卒組だからね!」

 「他のお菓子も持ってきましたよ」

 「……貴女達年上だったの?」

 「卵レパートリーが増えていくのです」

 「加賀ちゃん言ってくれるよね本当」

 「でも、同期とか艦娘になった時期で実年齢はあまり気にしない空気ありますよね」

 「そうでもしないと、連携に不備が出たり色々と苦労することになりましたからネ。年齢よりも艦娘歴、定着させるのに苦労しまシタ」

 「あ、金剛さんって横須賀の最古参さんなんですよね!」

 「そうデスヨ保科さん。開戦当時はその辺りの衝突も課題の一つデシタ。あぁ、私は大学2年で艦娘に目覚めたので足掛け11年。31になりマスネ」

 「一番年上さんだ……!」

 「当時、妹艦となる霧島が26の自衛官出身だったので姉と言いつつ保護者面で妹扱いしてきマシタネ。懐かしいモノデス」

 「あはは、今じゃいい経験ですよね金剛さん!」

 「……そうですね、横須賀憲兵隊の桐ケ谷サン?」

 

 当時の横須賀所属金剛型戦艦霧島。開戦2年後、『終の海』の件が終わって1年ぐらいだったか。過激派思想のテロによって殉職したと訓練校の歴史の授業で習った。それ以降、素体のプライバシーの隠蔽や対艦娘テロへの警戒を横須賀中心に強めている、とのことだ。当然、その警戒態勢は配下の127鎮守府も受け継いでいる。

 

 (割り切ってるのですかね。悼んでるというよりは呆れているような感じなのです)

 (やっぱり?なんか空気が違うよな、って勘が言ってた)

 

 電も何か違和感を覚えているようだった。とはいえ、下手につついて藪から蛇を出す必要もないだろう。置いておく。

 

 「横須賀と言えば、赤城さんはおいくつなんですか?」

 「彼女は18で艦娘になりましたから29デスネ」

 「29歳……!」

 「赤城オタが推しの情報で拗らせてる……」

 「何々?年齢談義してるの?私は26ー。20から艦娘初めて6年だねぇ」

 「秋雲の姐さん」

 「後年齢知りたい人とかいるー?秘書艦ポジだから一通り知ってるよん」

 「そうだ、司令官さん!福山司令官さんはおいくつなんですか?」

 「梓ァ?あの子は……一応20だね」

 「私より若いじゃないか!?」

 「ハギト社長っていくつなんでしたっけ」

 「21だよ」

 「21で社長も十分すぎるぐらい若くないのですか!?」

 「一応18から可能だからねぇ。それより、一応とはどういうことだい?」

 「んー、あー、あの子さあ。経歴が本人も忘れてるぐらい不明でね?正確な年齢がよくわかってないんだよ」

 「この時世で追えない年齢とはどういうことだい……?」

 「ま、とりあえず17からなっがい放浪期間挟んでたらしいから、大体20ぐらい……まあ10代じゃないでしょぐらいに落ち着いたのよ」

 「20であの貫禄……!福山司令官さんすごいです!」

 「保科はなんでも感動できる奴だなァ……」

 「あ、そうだ。イ級ちゃん、あなたはいくつなんですか?」

 「きゅー!」

 「冬を2回越した……2歳か3歳なんですね!」

 「誕生日とか歳の概念持ってる深海棲艦なんているか怪しいもんな……」

 

 そんなこんなで、謎が増えつつ皆の年齢が明らかになった昼下がりだった。

 

 

 動き出すのは悪意か、それとも

 

 

 2027年6月末 ???

 

 

 とある深海棲艦の居城となっている島。そこで1人の姫級深海棲艦が吠えていた。

 

 「アァもう!一度潰してやったのに復活はするわあの手この手も通じないわ『連中』も役に立ちはしないわ!なんなのよ、127とかいう敗残兵は!!」

 「煩いぞ『統率者(コマンダー)』。どうせ敗残兵どものことだろうが」

 「そうよ『創造者(クリエイター)』!ああもうイライラするわ!!」

 「やるなら外でやれ。ここは私の家だ」

 「何よ艤装なしの引きこもりが!この私が使ってやっているのよ、感謝しなさい!」

 「……離島棲姫。貴様のこの居城は今後も我らが使っていく。それには同意しているだろう」

 「死ぬか居座らせるかの2択じゃないか!クソッ」

 「オーオーオーお前ら相変わらず仲悪いなハハハハハ!」

 「『放浪者(アウトロー)』、やっと帰ってきたのね。随分と遅かったじゃないの」

 「考え事してたんだよォ!ごちゃごちゃ言うんじゃねェよォ!」

 「……御託はいい。例のエーテルを敵艦隊にぶつけた結果を教えろ。その様子だと誰も拿捕してきていないようだが」

 「そうよ、『エーテルに過剰反応した獲物』を連れてきなさいって私言ったわよねぇ!?」

 「獲物、としか聞いてなかったからどれが獲物かわからなかったぜハハハ!」

 「このド低能が……!」

 「……期待するのが間違いだったということだ。それで、過剰反応した者はいたか。その中で生存者は」

 「タチバナアオイ!アイツ直撃食らってなんかすげェ力に目覚めてたぜハハハ!それと、他にも4匹ぐらい反応はしてたなァ!」

 「だったら狩って回収しなさいよ役に立たないわね!」

 「仕方ねェだろ、タチバナアオイの変わりようにびっくりしてたらアイツらの提督ってやつが来たんだからよォ!」

 「……『戦える基地司令、福山梓。その姿は大剣を操る謎の駆逐艦不知火。どこから湧いて出てきたのか不明。目的は我々の打破らしい』ぐらいしかわかっていないアレか」

 「な~にが『戦える基地司令』で『駆逐艦不知火』だよォ!アレはそんなモンじゃねェ、化け物だ!」

 「つまりコテンパンにされておめおめと逃げ帰ってきたの?世界に名を轟かせる『放浪者』様が?ふざけているの?」

 「……『連中』も把握できていない不確定要素が想定以上に厄介だった、という話だろう。詳細を聞かせろ」

 「アァ……アレはァ……」

 

 アウトローが主観と擬音ばかりの説明を長々と続けた後。

 

 「……話を整理する。まとまった艦隊にぶつけるはずだった例のエーテル。既に散開していていたため高濃度でぶつけることができたのは127の新人江風ことタチバナアオイのみ。余波の反応が見られたのは130の残党卯月と他3名、と」

 「直で食らったからか知らねェけど見たこともねェ刃物で殴り掛かってきた時はびっくりしたぜェ!」

 「……卯月に反応があったことは想定内だ。だからこそ卯月を『獲物』として回収することを望んだ作戦だったのだが」

 「タチバナアオイって方が反応してるじゃない!どういうことよ!」

 「……それ以上に適性があったか、直にぶつけられたことによる異常かどちらもか。エーテルに強い反応を示すものは通常とは異なる力を発揮する。我々のようにだ、統率者」

 「『エーテルに目覚めた』ってわけ?『連中』とアンタの合作のエーテルで?」

 「……そういうことになる。それで、その後エーテルに目覚め暴走したタチバナアオイに気圧されている間に囲い込ませる予定だった連中を蹴散らし福山梓が現れた、と」

 「アイツ、ル級とヲ級の首をぱぱっと折って殺しちまったぜ!?駆逐艦とかそういうモノじゃねェんだよ!」

 「喋れるだけの知性しかないとはいえ、そうも簡単にやられるだなんて、使えない奴ら!」

 「……あるいは福山梓という者もエーテルに目覚めているのかもしれない。身体強化に特化している、というのであれば理解はまだできる。納得は正直できないが」

 「本能が言うんだよ。少なくとも今は無理だ、楽しむも何もない、逃げるしかないってよォ!こんなの初めてで落ち着くまで時間かかったんだよなァ」

 「……放浪者級の戦闘狂を本能で怯えさせる……駄目だな、実態が掴めない。情報が足りない。カラクリでもありそうだが掴めないことには迂闊に手を出せない」

 「あのクソ雑魚イ級も失敗したみたいだし、どうすんのよ!」

 「……戦闘領域外に観測部隊を配置したはずだがそれも潰されたようだからな。手強いだろう」

 「ならもっと戦力ぶつけて情報とやらを取ってやればいいのね?『連中』もテロだか手回しだか失敗してるみたいだし大々的にやるべきよ」

 「……127の位置は東京湾。あの横須賀の目の前を通る。ジャミングでカバーできる範囲には限界がある。その上でお前が『統率』できる戦力の最大が、イ級の件だったはずだ」

 「ならそれ以上の捨て駒を用意すればいいんでしょう?いるじゃない。都合のいい邪魔だった奴が」

 「……『北の姫』の残りを投入するか」

 「アイツに雑魚は統率させる!私は大規模に観測部隊を統率する!どちらにもジャミングを持たせる!これで大々的にやれるわよ!」

 「……『連中』の仕掛けへは警戒が強すぎる。それが最適解か」

 「そこまで気にしなきゃいけないワケ?その127の連中ってのは」

 「……離島棲姫。あの中の卯月達130の残党は『連中』の関与のある程度を知っているはずだ。それに実験対象として有用な『異常適正組(イレギュラー)』も多く所属している。タチバナアオイというのが代表格と言える。それに卯月もだ。無視は出来ん」

 「フン、だったらさっさとここを出て行って総力戦で終わらせちゃえばいいのに。怖がってるの?」

 「お前、死にたいようね!!」

 「……統率者。離島棲姫の言う通りだろう、我々は死を恐れている。だが勢力の拡大、力の拡大のためには挑まねばならない。だからこそ策を弄している」

 「チッ!!」

 「ハハハハハ!ビビりなの認めやがったかよォ!」

 (……組む相手を間違えたかもしれないが、引けん。私は、私の『力』の行きつく先を見るまでは引けないのだ……!)

 「……ホント、出ていけばいいのに」

 

 歪な繋がりの中、彼女らは次の作戦の準備に取り掛かる。再び悪意を127鎮守府にぶつけるために。

 

 (……やっとこの機会が来たか。やはり、『そう収束する』のだな。梓、お前の雇い主とやらの演算は間違っていなかったようだぞ)

 「どうしたんだよタの姐さん?」

 「いや、なんでもない。ただ、ハちゃん。我々が動かされるらしいぞ。因縁の127にな」

 「イの奴をやった奴ら……許せねぇ!なぁ姐さん!」

 (……計画通りであれば、イちゃんは無事なはずだ。そしてルちゃん達も。そうでなければ、許さないぞ。梓)

 「姐さん?」

 「いや、無事に生きよう。我々は勝つ。勝って生き延びよう」

 「そうだな!当然だぜ!これ以上先に逝った姫様達を悲しませないために!」

 「……ああ。姫様。どうか我々の行く先を見届けてください。『タノシイウミ』を。諦めてなんかいませんからね」

 

 動かされる『北の姫』の勢力の生き残り、タ級達も覚悟を決めるのであった。




 この世界の艦娘訓練校は、中高大の在学中の12月から通うことができ、4月の時期に配属という流れになります。受験シーズンを訓練校で過ごすような形です。雷のような半年ずれた6-9月で訓練校、10月配属の人もいます。俗に冬組、夏組と呼ばれます。

 『統率者(コマンダー)』 多くのカテゴリCやDを主体とした深海棲艦を従えて意のままに動かすことのできる姫級深海棲艦。非常に口が荒い。艦種は戦艦。アウトローが言っていた雇い主はコイツ。
 『創造者(クリエイター)』 エーテル絡みの能力を持つ姫級深海棲艦。江風が直に食らったアレの制作に関わっている。少し間をおいて喋る癖がある。艦種は重巡。
 離島棲姫 艤装を持たない代わりに謎の島を所有しているイレギュラー染みた深海棲艦。本人の戦闘能力は高めだが、統率者や創造者、その配下たちが押し寄せてくる中では島に居座ることを許すことしか出来なかった。当然、非協力的である。
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