少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 ひれ伏したまえ!懺悔の時間だ!
というわけでPSO2EP4のレイドボス1番手こと幻想戦艦大和戦です。


116話 幻創戦艦大和

 3月 30日 13:00 アークスシップ艦橋

 

 

 ルーファさんに連れられ、八坂とアルが艦橋にやってきた。

 

 「皆さんお帰りなさい!」

 「かんぜんしょーり!ぶい!」

 「……」

 「お姉ちゃん、大丈夫?」

 「八坂火継。傷心のところ悪いけど状況を確認してもらうよ。ルーファさん達もね」

 「……貴方は?」

 「私は江風。私達はアークスの協力者で、所属は127鎮守府。諸事情でお前さんのことは一方的に知っているよ」

 「電なのです」

 「加賀よ」

 「海風です」

 「そ、そうなんだ……」

 

 八坂はキャパオーバーといったところだろう。

 

 「現在、八坂達の拿捕に失敗した亜贄社長は次の一手を出そうとしている。エメラルド・タブレットを最大出力にすることで」

 「もうリベンジする気なのあの変態!?」 

 「色々と事情を鑑みると早い方がよいのです」

 「亜贄社長が全力で具現化する兵器とは何か。大和、戦艦大和だ」

 「戦艦……?」

 「あの、WW2の?」

 「そう。その上で『大和は最強だ』という強い思念でコーティングしたモノを。シエラ、日本列島から東、太平洋に超広域でエーテル反応を見て」

 「……ッ、超巨大反応……!映像、出ます!」

 

 映像に映し出されたのはまさに今、洋上に現出した幻創戦艦大和だった。

 

 「なんて大きさですか……!」

 「元ネタである戦艦大和と大きさは同じ。ただ、幻創種だからスペックや能力は元ネタのそれに留まらないし、現状存在しない大和が日本に近づいて人々が知ればパニックになりますね」

 「あの変態は何がしたいの?」

 「貴方への意趣返し。地球人は、ハギトさんは貴方に負けっぱなしじゃあないンだぞという意志表示。貴方が、アークスが止めるまでアレは止まらずに暴れるでしょう」

 「なら私が止めなきゃ!でも直接やり合うには場所が……」

 「A.I.Sを出します!ルーファさんが冷凍睡眠をしている間、A.I.Sも長時間活動できるように徹底改修されたんです!」

 「それなら行けるね!?ライル君!」

 「準備は出来ているよ姉さん」

 「オッケー、シエラちゃん!アフィン君や他にも動けるアークスに声をかけて!止めてくる!」

 「はい!」

 「トントン拍子で話が進むのね」

 「フットワークが軽いの真髄だね……」

 「本当に一人で何とかしようとするンじゃなくて、息をするように仲間の力を借りれるンだな」

 「私達の世界の守護輝士以上に頼りになるのかもしれないですね」

 

 そうして見ているうちに幻創戦艦大和への迎撃準備及び作戦が整えられた。第一フェーズとしてアークスの人型汎用兵器A.I.Sを用いて洋上で海面ごと大和を凍らせ、第二フェーズは歩兵戦力で突入し大和のエーテルの濃い場所ーー前面の砲塔二門らしいーーを破壊、撃破を狙うとのことである。私達の世界と同様だ。先日打ち合わせた通り、ライルはA.I.S担当でコハルは歩兵担当。ルーファさんとアフィンさんはA.I.S部隊の軸を担う。私達も歩兵部隊に志願し、編成された。

 

 「ねえ、私も何か……」

 「ヒツギさんはここで待機です。相手の狙いは貴方達でもあるんですから」

 「大人しく見ていなよ八坂火継。自分の所属していた、そして袂を分かったマザー・クラスタが本気を出すとどんなモノになるのか。そしてそれを迎撃するアークスってどれだけ力があるのか。ついでに、私達127の力もね」

 「……うん」

 「……一つだけ言っておくよ。よく聞け、アルを助けたいというお前の願いを叶えるのならば最善の選択をした。……ちゃんと鷲宮氷莉にも声をかけたし、やることはやり切ったと言っていいだろう。戦場慣れしてない人間が急にバケモノに襲われてその上で一切後悔しない正しい選択をするなんて無理な話だ。その中でいい選択をしたと私が……まあ、お前にとって私は誰だって話だろうけど、それでも保証するよ」

 

 私の正体についてはまだ明かさない。ややこしくなるだけである。

 

 「江風ちゃん、揚陸艇の準備が出来たそうなのです」

 「じゃあ行こうか。八坂火継、胸の内をさらけ出すことを躊躇うな。それは悪いことでも間違っていることでもない。今のお前の回りにいる人々は、そうしていいヒト達だ。それだけは覚えておいてくれよ」

 「……分かった」

 「シエラ、八坂を頼むよ。歩兵部隊の方はサポート甘くても私達がフォローアップするから八坂やアルに何かあったらそっちを優先して」

 「お任せください!ハイキャスト・シエラタイプを舐めないでくださいよ!」

 

 

 14:00 太平洋上空 アークス揚陸艇

 

 

 『ルーファ、出まぁす!』

 『ライル、出ます!』

 

 格納庫から次々とA.I.Sが出撃していく。現在揚陸艇は幻創戦艦大和からはるか上空、雲上に位置していた。

 

 「皆様方。くれぐれも」

 「分かってるよ。……トラ♪トラ♪起動」

 

 コハルが釘を差してきている通り、他のアークスもいる中で相手を褒めていては悪印象になりかねない。そもそもここには好印象を植え付けるために来たのだ。なので声に出さず裏でコソコソしている印象も与えないテレパシーアプリ、トラ♪トラ♪の出番である。ちなみにコハルにも対応端末は持たせている。

 

 (清霜ちゃんが撮った大和側からの戦闘映像は見ましたけど航空戦の様子は分かりにくかったのですよね。楽しみなのです)

 (正規空母としてハギト社長の零戦捌き、ずっと興味があったわ)

 (あ、大和から迎撃上がってきたよ)

 『敵性存在から新たな敵性存在が出現!』

 『眷属か!?』

 『ブリーフィングで出るかもって話あったよね?行くよっ!』

 『こちらも行きます。皆さん、第一目標は冷凍弾持ちを有効射程まで護衛することですからね!』

 『言われなくても……!』

 (ライルに言われなきゃパニックになったまま交戦してたよな今の)

 (もう少し時間をかければ信頼のおけるアークスを動員できたのですけれど)

 

 守護輝士(ガーディアン)及びその関係者以外は寄せ集めもいいところだったので、あまり期待はしていなかった。その上で守護輝士一人に負担がいくようであればそれはそれで問題視することになったのだが。

 

 『A.I.Sブラスター!喰らえっ!』

 (撃つの早っ)

 (ゲームとしてみたときから思ってたけど、隙だらけだよねあの必殺技)

 『くそっ、回り込まれ……うわああっ!』

 (あ、落とされた)

 

 A.I.Sブラスター。A.I.Sに搭載された手持ち砲で、A.I.Sの必殺技と言える武装である。非常に高火力で射線を薙ぎ払えるが取り回しが悪く、射撃体勢に入り、撃ち、通常体勢に戻るまでかなり隙が出来てしまうのがデメリットである。要は今のように撃ってる最中に狙われると簡単に落とされてしまう。A.I.Sは防御性能が皆無な攻撃能力に全力な性能の為、狙われるとあっさりなのだ。

 

 (零戦は射線上の3機が落とされて、反応出来た残りが集中砲火で撃ってるA.I.Sを返り討ちなのですね)

 (私の艦載機なら狙われた一機だけに被害を抑えられるわ)

 (赤城ちゃんや瑞鳳ちゃんなら?)

 (……撃墜もされないわ。ヲ級さんなら狙われた一機で回避しつつ反撃して終わりよ)

 (私達の世界のこの時点でのハギトさんに鎮守府が全面協力してなくてよかったよね……)

 (貴方達今はアークス側であることをお忘れではなくて?)

 ((あっはい))

 「いっでっ!くそぉ……!」

 「お疲れ様でしたわ」

 

 今回の作戦に投入されているA.I.Sは戦闘不能になった瞬間パイロットを揚陸艦に転移させる脱出装置付きなので、特に心配することがないとも言える。

 

 「なんかすごい動きの奴がいないか?」

 「アレは……ライルか?」

 

 他の歩兵部隊アークスが見つめる先では、突出しつつ風に吹かれた木の葉が舞うような挙動で狙いをつけさせないA.I.Sがいた。ライルの機体である。

 

 (私達の世界の大和の戦闘記録からしっかり訓練してたみたいだね)

 (あんなトンデモ機動で酔わないのです?)

 (A.I.Sではなく生身としてみたらジェットブーツの動きのアレンジよ。ちなみにライルは鎮守府で空母組総出で生身対艦載機の訓練で鍛えていたわ)

 (うっわスパルタァ)

 (そういえばジェットブーツってアークスの武器の中でも桁違いに酔いそうな動きするよね)

 『敵が釣られた!?』

 『見惚れてないで早く撃墜してもらえないかな!A.I.Sの限界が先に来てしまう!』

 『よっと……!フォロー入るぜ、ライル!』

 『アフィンさんありがとうございます!』

 (いくら撹乱できても後続が撹乱した相手を仕留めてくれなきゃどうしようもないンだよねめっちゃ分かる)

 (卯月さんぐらい時間稼ぎと割り切らないと維持キツイんだろうなーとは思ってましたけど)

 (江風はお姉ちゃん達がしっかりフォローするから安心していいんだよ!)

 (それにしても、流石守護輝士を最前線でフォローし続けてきたレンジャークラスなだけあって合わせるのが上手いわね、アフィンさん)

 (いつでも動けるようにしつつ落ち着いて狙って……参考になりそうなのです)

 

 こちらの世界では最前線への巻き込まれ具合が高かったアフィンさんは、前衛をフォローする後衛としての完成度が高かった。彼の援護があるなら前衛としても安心して立ち回れるというものだ。

 そうしてしばらく、前線から大和が見えるようになってきた。もう少し詰めると冷凍弾の射程に入る。

 

 『よーし、ここからは私が切り開くよ!チュロスタちゃんちょっとスペースを空けて着いてきてね!』

 『はーいマスター!』

 (冷凍弾はチュロスタが担当してるんだ)

 (あの挙動だもんね、潜り抜けて撃つ役は最適かな)

 

 そしてルーファ機が下降した直後。大和から大量の砲撃音と共に非常に濃い弾幕が上がってきた。

 

 『おわー!?』

 『マスター!』

 (対空火器の射程に入ったか)

 (大和としてイメージされる武装を再現した場合の状態って、味方の艦載機がいない上での全身ハリネズミにしての対空火器による面制圧ですもんね)

 (史実だと攻める方も面制圧な数で長時間攻撃し続けたからなんとかなったけれど。それに比べてA.I.Sは少数精鋭もいいところ。どう足掻くか見ものね)

 (まるでツングースカ様のようではありませんの……!)

 (コハルちゃん、戦艦に大きさが大きく劣る軽巡で同じようなの展開できるツングースカさんがどうかしてるんだよ)

 『俺たちも続くぞ……うわぁーっ!』

 『攻撃が途切れな……ああっ!?』

 (簡単に落とされないように立ち回れていた米軍航空隊ってやっぱ優秀だったンだねェ)

 (何度も再出撃した人もいたのです)

 (その人、俺は島でも攻撃しているのかって戦慄してた人よね)

 

 ダーカーのものに比べて精度、密度共に優秀な大和の弾幕に次々とアークスの駆るA.I.Sが叩き落されていく。

 

 (残った零戦も追い込みに来たね)

 (アレ?これ大和が勝つのでは?)

 『相棒!一気に攻めるしかねぇ!一気に突撃して気を引いて、チュロスタを突破させるぞ!行くぞライル!』

 『はい!』

 『アフィン君、ライル君……!聞いたねチュロスタちゃん、準備はいい!?』

 『いつでも行けるよマスター!』

 『『うおおおおお!!』』

 (おおー……)

 

 前衛の3機のA.I.Sが被弾しながらも突っ込み、弾幕をそれぞれに集中させる。そして空いた僅かな穴をチュロスタの駆るA.I.Sが突っ切り、一気に射程にまで入った。

 

 『ここまで来たら……っ!』

 (あの零戦、体当たりを仕掛ける気!?)

 『らあああーっ!!』

 『マスター!』

 『撃っちゃえーっ!!』

 『発射ぁー!』

 

 冷凍弾持ちのチュロスタ機を脅威とみなし、体当たりを仕掛けた零戦にA.I.Sの大剣をぶつけるようにしてルーファ機が横から突撃、撃破。その後の大和からの弾幕を2機は躱して安全圏に退避していった。

 そして放たれた冷凍弾は大和に夾叉弾の形で海面に着弾。予定通り大和ごと周囲一帯を氷の絨毯に変えたのだった。

 

 「っぐ、落とされた……!」

 「お疲れライル。2桁はタゲ取り続けてただろ。やるじゃンかさ」

 「出来れば最後まで落とされたくなかったんだけど……!」

 「最後まで落ちなかったの相棒とチュロスタだけだったもんな」

 『シエラです!第二フェーズへ移行します!担当アークス各員はテレポーターへ!A.I.S担当アークスは再出撃し敵飛行機を近づけさせないでください!』

 「……よし、出番か」

 「あんなの見せられたらには頑張らないとなのです」

 「誉れよね。気分が高揚してきました」

 「チーム127、いつでもいけまーす!」

 「コハル、いつでも行けましてよ!」

 「後は頼んだよ……。僕達も準備が終わり次第出撃するよ」

 

 そして私達127組とコハルが先陣を切って出撃する。降り立ったのは凍った海面の先端である。大和まで数kmといったところか。

 

 「ンじゃ活躍してやりまーー」

 

 言い切る前に私達が降り立った地点の近辺を砲撃が轟音と共に抉った。

 

 「……足止めたら一発でやられるぞ動けェ!!」

 「足止めに幻創種出てきたのですー!」

 「あの距離で地表を狙えるの?近すぎないかしら?」

 「加賀ちゃん気にしてる場合じゃないよ!」

 「耳が……!やってくれますわねぇ……!」

 「あー轟音慣れしてないと音のダメージも……じゃねェ!動けコハルー!」

 『敵からの反応!着弾予測地点を表示します!回避してください!』

 「は?」

 「次弾装填はっやいのです」

 「具現武装は想像に限界はないというけれど……」

 「むしろ現物扱ってないほうが有利に働くことあるんだね」

 「言ってる場合か!!」

 

 物見遊山的な舐めた感覚は砲撃一つで完全に破壊された。モタモタしていると更にこの状態で上からは幻創種の零戦が襲ってくるのである。

 

 「砲兵は戦場の女神、とはよく言ったものね」

 「さながら人の身で神に立ち向かう……なのです」

 「敵に回すと厄介さがよく分かるね」

 「言ってる場合かよお前ら本当にさァ!!」

 「ぐう、私(わたくし)、貴方達地球人より耳がいいのですわ……!」

 「ええい!術具展開、範囲はコハルを基準に!ある程度遮音する術式出したからあとは頑張って耐えろ!」

 「あ、戦車だ」

 『砲撃、来ます!』

 「うおおおお!!」

 

 足止めに展開された幻創種は周囲のエーテルから生成されるため、貴重でもなんでもない。つまり敵の妨害に使いつつまとめて砲撃で撃ち抜いても問題なく、それに反抗心を持たれることもない。足止め戦力としては理想的である。

 

 (こういう用途でクソ強いのは味方にして知っているつもりだったけど……敵にして改めて思い知らされたって感じだ)

 

 これがハギトさんが直接操っているのならまだ彼の指揮能力に感心すればよいのだが、今相手にしているのは彼の能力を学習し自律しているエメラルド・タブレットである。

 

 (本当に味方にしてよかった……!)

 

 これが『分からせ』というやつなんだろうな、と思うのだった。

 

 

 10分後 幻創戦艦大和 甲板

 

 

 「よっし取り付いた!」

 「味方もだいぶ削られたのです」

 「意識は刈り取られているけど死者はいないのね」

 「示威行為ってやつかな」

 「……江風、この距離で砲撃って撃てますの?」

 「普通撃っても当たらないけど……いや待て、この規模の砲撃を撃つときは甲板から搭乗員退避させるンだ、衝撃で吹っ飛ンで死ぬから……」

 「ねえ、思いっきりこちらを狙っ」

 

 轟音と共に砲撃が加賀をぶち抜いた。衝撃が収まってから確認すると、加賀は大の字になって倒れていた。

 

 「加賀ァ!!」

 「大破ストッパーがなければ即死だったわ……その上でだけど威力は福山提督が訓練出力で放つ『スターゲイザー』と並ぶわ。それと戦闘不能よ、後は頼むわ」

 「大和型に並べる司令官さん流石って言うところなのです」

 「言ってる場合か?なァ、言ってる場合か!?」

 「さっきから攻撃はしてるけど砲塔硬いよぉ!」

 「本気出してくださる!?」

 「ちゃんと本気だよ!」

 

 戦闘艦のどこが一番硬いかといえば砲塔であり、大和型はその最たるものである。その常識が根底にあるので、エーテルが一番集中しているので破壊対象だと言われても『殴って壊せるものなのか?』と思ってしまい、それが幻創種である相手の耐性に影響しているようだった。

 

 「壊せれば……壊す……電、ウィークバレットを!コハル、全力でマーキング部分殴ってくれ!一番頼りになるのお前だ!海、コハルに補助テクニック!」

 「ここを狙うのです!『ウィークバレット』!」

 「強化の『シフタ』!追撃の『ザンバース』!コハルちゃんここでお願い!」

 「分かりましたわ!江風、貴方は!」

 「ターゲットを引いてやる!『ウォークライ』!偏向バーニア起動!捌き切ってやるよこんちくしょう!!」

 

 弱点ではない部位も強制的に弱点扱いにできる『ウィークバレット』、受けた者の攻撃力を増加させる『シフタ』、範囲内の味方の攻撃に合わせてその威力に依存した風属性の追撃を入れる『ザンバース』。全力でコハルの攻撃性能を底上げする作戦である。その上で砲塔はいくら想像は無限大といえど狙ってもいない方向を攻撃は出来ないようなので、私がターゲット取りスキル『ウォークライ』でコハルと反対側に陣取り注意を引く。この状況で出来るのはこれで精一杯だった。

 

 「空中戦が卯月の姐さんの専売特許だと思うなよ!……あれは」

 

 空中に飛び上がって気付く。ハギトさんに軍服を着せて全体の色味をエーテルイメージのカラーに調整したらこうなるであろう、という人型が手を後ろに組んで佇んでいたことに。位置は砲塔の真上の空中である。

 

 「……」

 「エメラルド・タブレットのアバターか!……!?」

 

 アバターがニヤリと笑ったかと思ったら身体から巨大なミサイルを8方向に出してきた。幻創種らしいトンチキ攻撃である。

 

 「この距離なら!主砲一番二番、コハルに向かうのを落とす!ンで『ウォークライ(オメーの相手はこの江風だって言ってンだろうが)』!!」

 

 ただでさえ巨大な砲塔による砲撃の衝撃を耐えるのに精一杯なのだ。こんな追撃などとても受けさせられない。

 

 「前に出て殴るしか能のない前衛だと思ってンじゃあねェぞ……!」

 

 そしてしばらく交戦を続け。

 

 「指定の砲塔、二門共に破壊完了ですわ!ほぉ~っほ!!……ぜぇぜぇ……」

 「お疲れ様なのですコハルちゃん」

 「江風もこれで大丈夫だよ!」

 「助、かる……!」

 

 エメラルド・タブレットのアバターもやられたというようモーションになっている。第二フェーズは完了したと思っていいだろう。そう思った直後。

 

 『エーテルの反応が変化……!?テレポーターを転送します!至急退避してください!』

 「「えっ」」

 「まだ動きますの!?」

 「元になった軍艦だって沈めるのに圧倒的な物量でもっても何時間とかかったのよ。不思議ではないわ。さっさと退くわよ」

 「加賀ちゃんもう大丈夫なのですか?」

 「しっかり休めたわ」

 「あの砲撃の衝撃の中で休めた……!?」

 「砲撃自体を空を跳ね回って避け続けていた赤い奴といい、アズサの部下ってどういう鍛え方をしているの……!?」

 「なんか他のアークスからビビられてないかな?」

 「当たり前ですわよ。いいから脱出しますわよ!」

 

 テレポーターで揚陸艇に戻ると、ライル達が出撃準備に走り回っていた。A.I.S部隊は私達が大和に乗り込んだ辺りで零戦が追撃を諦め消滅したため先に撤退していたのだ。

 

 『幻創戦艦、動きます!』

 

 シエラの声と同時に大和が動き出した。縫い付けられていた氷を盛大に破壊し、空中に『浮上した』。

 

 「なんだよ……あの船、飛べたのか……!?」

 「私達が必死になって破壊した意味なかったの……?」

 「シエラ!目の前の光景で凡夫共の士気が崩れていますわよ!フォローなさい!」

 『皆さんの貢献は無駄ではありません。まず、現在も幻創戦艦はこの場で戦うことを選んでいます。市街地に乗り込む最悪の可能性は避けられました!次に幻創戦艦のエーテル組成が大きく変化しています!解析の結果、先程までの強靭な防御力や直鞍の幻創種の生成能力などを機動性などに割り振り直しているようです!皆さんが砲塔を破壊してくれたおかげです!というわけで、第三フェーズに移行します!内容は至ってシンプル、破壊可能になった幻創戦艦大和をA.I.Sで撃沈します!これが最後の戦いです!』

 「聞いたねぇ皆!行くよぉー!」

 「皆相棒に続け!もうひと踏ん張りだ!」

 「A.I.Sの再出撃準備、各機完了しているよ!」

 

 再びA.I.S達が揚陸艇から降下していく。そうして幻創戦艦大和側面にA.I.S各機が近づいたところで、ハギトさんの声――ハギトさんではなくエメラルド・タブレットの声だろう――が響き渡った。

 

 『ひれ伏したまえ!懺悔の時間だ!』

 『え?』

 『なんだ!?急上昇して……』

 『うわぁーっ!?』

 『急上昇しつつすり抜けるんだ!』

 

 船底部に凄まじい太さと射程のレーザーを放射状に8基展開し、それを横回転させつつ降下し全てを巻き込み磨り潰すという動きを幻創戦艦大和が繰り出してきた。この攻撃を知っているライルとその言葉に反応できた少数以外が一気に叩き落された。

 

 『さ、再出撃はすぐに出来ます!』

 「なんだよ、アレ……!」

 「ダーカーでもないのにこんなに脅威なものがいるの、この惑星……!」

 (めっちゃ地球が過大評価されてる気がする)

 (まあそれがハギトさんの狙いなのです)

 (ところでアレ避けられる?私は無理だわ)

 (レーザーが細くて旋回速度が遅いなら……でも太いし速いしなぁ)

 (ゾーン使えば行けるとは思うけど……)

 

 最早避ける攻撃ではなく、何かしらの防御で耐える攻撃のような気がしている。だが攻撃偏重のA.I.Sにそんなものはないため、かなり絶望的な攻撃となっていた。

 

 『甲板に取り付いた!シエラちゃん、今なら砲塔壊せるんだよね!?』

 『はい!砲塔を破壊しダメージを与えつつ、露出したコアを破壊してください!』

 『それじゃこの厄介な一番大きなやつを……ひょ』

 

 二番砲塔を破壊しようと斬りかかったルーファ機にその上にポン付けされた副砲ーー規格が巡洋艦砲であるーーが照準された。

 『にぎゃああああ!?』

 (二番砲塔の上に副砲あったなそういえば)

 『大丈夫か相棒!』

 『緊急修理作動っと!大きな砲塔だったら一発で落ちてたよぉ……!』

 『大和は甲板全身砲塔だらけだから足を止めないで!』

 『マスターをやった砲塔は許さないから!』

 『チュロスタちゃん私まだ落とされてないよぉ!』

 (すげぇ、守護輝士ですら危うくかァ)

 (これはもう一矢報いたに判定していいのでは?)

 「が、守護輝士が……」

 「ま、まだよ!まだ落とされたわけじゃないわ!」

 (やはり精神的な主柱なのね。動揺が広がっているわ)

 

 幻創戦艦大和の脅威さとアークスの面々にとっての守護輝士というポジションへの信頼、信仰が見えた。

 

 (けどこれだと守護輝士がピンチになれば士気が瓦解しちまうってコトじゃンかさ)

 (それはよくないのです)

 (同じ戦場に立っている相手にはライルやアフィンさんが声を届けているからマシだけれど)

 (よく考えなくても、一般アークスがまるっとアテにならないどころかこの様子だと大変なことになるよね?)

 

 危惧を覚えた、その矢先。

 

 『こちらエドガー!A.I.S増援部隊到着だ!』

 ((!))

 『エドガーさん!?』

 『ルーファちゃんとその仲間が強いからって全部アテにするんじゃない!皆で戦うんだ!各機出撃!行くぞ!!』

 『『おおおお!』』

 

 二隻目の揚陸艇が接近してきて、そこからエドガーさん率いるA.I.Sの増援部隊が出撃した。士気が高い。

 

 『敵の戦い方は確認したな!足を止めずに戦い、お互いフォローしあって戦うんだ!』

 『『了解!』』

 『敵の注意が完全に逸れたらブラスターを叩き込んでやれ!だがまだ敵の攻撃手段があるかもしれない、警戒は怠るな!』

 『エドガーさん……』

 『ルーファちゃん、皆、遅くなってすまない!もう君達だけに背負わせたりはしない。我々は一人で戦ったりはしない、だ!』

 『頼もしいですね……姉さん、聞こえたね!?』

 『うん!よろしくお願いしまっす!』

 『あぁ!』

 (あのヒトがてーとくのターニングポイントになったエドガーさんか)

 (あっという間に士気を立て直したのです)

 (アレが福山提督が気に入っていた先輩アークスなのね)

 (ルーファさんまで戦い方がのびのびとしてる気がする)

 (お姉様が気に入る方ですもの。そうでなくては困りますわ)

 

 出力の低いアークスでも一定以上の火力増強が見込めるA.I.Sだが、逆に突出した戦闘能力を持つアークスが乗っても火力的な恩恵は小さい。ことこの状況下ではA.I.Sで十全に戦えるヒトが一人増えるより多くの士気を鼓舞で底上げする方が効果は大きかった。

 

 『エドガーさん、狙われています!はああっ!』

 『何っ……すまないライル、助かった!』

 『頭を優先的に潰すという思考回路があるみたいですが、僕がフォローしますから指揮に集中してください!』

 『頼んだぞ!』

 『そっちに意識を割いた今!ブラスター発射ぁ!』

 (全部わかってる遊撃がいるってすごい構築しやすいンだなァ)

 (ライルは攻撃支援タゲ取りと一通り出来ますものね)

 (それと、指揮者による引き上げが必要だったとは言え一般アークスへの評価の更新も必要ね)

 (アテに出来ると言うより、頼りになるぐらいになってるよね。フォトンもエーテルと同じで意志を力に変えるから士気とかテンションや勢いって大事なんだね)

 (私達の役割は、この世界のアークス達をこういう状況に押し上げて総合力の強化になるようにするのもあるってコトかな)

 (四人ぽっちが頑張って突出するより効果大っぽいのです)

 (厄介な敵の将はこちらで引き受けて……エドガーさんのフォローアップでもすればいいのかしら)

 (私達自身がこっちのヒト達に受け入れてもらわないとかなぁ……)

 (それこそエドガー様を頼ればいいですわよ)

 ((それもそうか))

 

 私達の課題の一つが見えた気がした。そうしている中で戦況は有利に傾き、幻創戦艦大和の保有エーテル値も下がり……

 

 『この大和が……敗北する、だと!?』

 『敵幻創種、消滅を確認!作戦完了です!』

 (おぉ……やったんだ)

 (最初はどうなるかと思ったどころか大和が勝つんじゃないかなとか思ったのですけどね)

 (いかに私達が普段高い士気と崩れない頭に助けられていたかがよく分かったわ)

 (いい経験になったね)

 (貴方達の失言が少なかったことにはホッとしましたわ)

 (え、私達失言あったの!?)

 (海上戦の際に呑気に好き放題言っていたこともうお忘れでして!?)

 (そこも含めて頑張らねェとなァ……さて)

 (江風?)

 (ハギトさんの回収、行ってくるよ)

 

 今回の戦いにキッチリとケリをつけよう。

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