少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 加賀編後編です。


17話 これが、これからの私達

 滞在6日目 11:00 第127鎮守府

 

 

 『さあさあ!これから演習を始めるよ!内容は我ら127鎮守府の加賀と、81鎮守府から来た赤城!ちょっと特殊だけど―、空母対空母の一騎打ち!実況はこの秋雲さんとー!』

 『解説の響だよ。2人には複雑な因縁があるからね。そのぶつかり合いも含めて見ていってもらうよ』

 

 一般公開日というのもあり、お祭りイベントとして2人の決闘が盛り上げられていた。鎮守府が許可したテレビ関係者も入ってきている。

 

 「加賀、今までの訓練、しっかり出して来るがいい!」

 「はい、長門姉さん」

 

 加賀はいつの間にか、佐世保の長門さんを長門姉さんと呼ぶようになっていた。なんでも、元々空母加賀は長門型戦艦の後継艦として設計され、流れに流れて空母になった経緯がある。つまり、妹も同然だ、とのこと。多分長門さんの方が妹分が欲しかっただけ、とは金剛さんの言である。

 

 「作戦も練ってあります。姉さんの、赤城さんの戦い方は『優等生』であることもこの数日で確認できています。ならば、負けるつもりはありません」

 「その意気だ!さあ、行ってこい!」

 

 加賀が先に演習海域に出ていく。

 

 「赤城ちゃん!ファイトだよ!」

 「赤城ちゃんの強さ、私達がちゃんと見てきましたから!頑張ってください!」

 「瑞鳳も羽黒もありがとうございます。全力で、当たらせてもらいますね」

 「コンディションも大丈夫そうね。これなら……」

 

 大鳳さんも安心した言葉を発しようとしたとき、ソレは訪れた。

 

 「――美穂!」

 「!?……お母さま」

 「えっ」

 「ここで大変なことになるって聞いて駆け付けたのよ!どうなっているの!?」

 「なに、この人」

 「赤城ちゃんのお母さん……?」

 「なんで、ここに」

 「親切な人が教えてくれたんだから!美穂が出し物にされるって!だからこんな野蛮な職業はやめなさいって――」

 「確保」

 「不法侵入で拘束する。抵抗すれば発砲も辞さないぜ、アンタ」

 「な、私は美穂が……」

 「その妹はどうでもいいってか?大したお母さまだなぁ、オイ」

 「オトウサマ、の方は拘束完了だっぴょん。家族だから顔パスとか許すほどセキュリティガバくねぇってんだよっぴょん」

 「うーちゃん崩れてる崩れてる」

 

 赤城の母親だ、という女をてーとく、坂田さん、卯月の姐さん達が武装して取り囲んだ。

 

 「そもそも、歓迎されてないの見ればわかるだろ、自分の娘だろ?」

 「はあ。親亡き子としては親の存在が羨ましくありましたが……失望に変わりますね」

 「ってわけで憲兵室に連行だ。逃げたら撃つぜ?」

 「そんな、美穂!あなたから何か!美穂!!」

 「どこまで追ってくるの……お母さま……」

 「美ッ!?」

 

 ズドン、とてーとくが発砲する。当たりはしないが掠るポイントへ。そして、認識阻害の眼鏡を外す。

 

 「抵抗するな、と言ったはず。次は当てる」

 「ひっ!?」

 「赤城さん、お手数をおかけしました。……『二度と』貴方達を追わせません」

 「え、福山提督……?」

 「連れていってください」

 「「了解」」

 

 坂田さん達憲兵隊が連行していく。てーとくは眼鏡を付けなおして殺気を抑えていた。

 

 「はあ。貴方の目に触れさせるつもりはなかったのですが。無遠慮な者は想定の外を行くものですね。次回があれば、活かしましょう。申し訳ありません、赤城さん」

 「いえ、あの、えっと」

 「本来貴方と大鳳さんがこの鎮守府に来ていることは機密であり、実家であれど伝えられないものでした。貴方も、別に連絡は取っていませんでしたね?」

 「はい……」

 「つまり情報を流した何者か。アレは親切な人、と言っていましたが。それによる情報漏洩、敵対行為とみて良いでしょう」

 「てーとく、あのオバさんどうすんのさ」

 「折角ですから2人の戦いを見ていただきましょう。憲兵隊の留置所で。その後、然るべき処理をさせていただきます。赤城さん、貴方が解放を望めばそれなりの処罰の上で解放しますし、二度と顔も見たくないのであれば、そのように処理をさせていただきます。どうしましょうか?」

 「えっと、保留でいいでしょうか」

 「構いません。加賀さんとの戦いで想いをぶつけるだけぶつけて。その後に考えて頂いても結構です。別に急ぎませんので」

 「ありがとう、ございます」

 「貴方にも悔いなく全力で戦って欲しい、という願いの為です。お気になさらず」

 

 予想通りの展開だったのかな、と少し思ったのだが、本気で悔しそうにしているてーとくを見るとここまで突っ込んでくるのは想定外だったようだ。そして、本気のぶつかり合いを望んでいる1人のようだった。

 

 「では、空母赤城。参ります」

 「「頑張れ!」」

 

 友人の声援を受けて赤城も演習海域へ向かう。

 

 

 11:30 演習海域

 

 

 『さーて、所定の位置に着いたねー?言いたいことがあったら今のうちに言うんだよー!』

 

 

 秋雲さんの陽気な声が聞こえてくる。所定の位置は相手とは遠く離れていて、肉眼では見えないぐらいには離れている。空母同士なのだから当然ではある。

 

 『加賀さん』 

 「何かしら」

 『先ほど、お母さまが来ました。お父さまも来ていたようです』

 「!?」

 『幸い、すぐに福山提督達が拘束してくれましたけど』

 「姉さんが呼んだわけでもなかったのね」

 『私が艦娘になった理由、あの両親から逃げたかったことにあるの』

 「えっ」

 『いつも完璧でいて、優秀で、自慢の娘でいて。弱音なんてらしくないと否定されて。見せびらかして楽しいお人形でしかなかった』

 「姉さんは、それを受け入れていたと思っていたわ」

 『私もそのつもりでいたの。けど、志望校を言われるがままに決めて、進路を想ったときにね。言われるがままに進学して、その先何があるのだろう、って思って相談したことがあるの』

 「うん」

 『もういい年なんだから自分で考えられるでしょう?でも、あれこれと注文、と。いきなり放り出されてその上で都合よく押し付けられて。どうすればいいのだろう、って思って。誰にも相談できなくて』

 「……」

 『そんな時、貴方が全てを振り切って、「私は艦娘になる、加賀になれるから」と家を飛び出していって。驚くのと同時に、酷く羨ましかった』

 「私が、羨ましい?」

 『ええ。両親にいくら否定されても、自分をしっかり持って迷わず突き進むと行動で示した貴方。憧れて、気付いたの』

 「気付いた?」

 『逃げるって選択肢があるんだ、って。艦娘になるって、別の人格を与えられて別人になってしまう、なんて言われていたでしょう』

 「そうね。だからこそそんなロクでもない道は止めろ、なんていうのが否定する人の常套句だった」

 『それで思ったの。艦娘になれば、『この私』でなくていい。放り出されるお人形じゃなくても良くなるのかもしれないって』

 「それが、姉さんが艦娘になった理由?私への当てつけとかではなくて?」

 『結果、当てつけのようになってしまったのは謝るわ。ごめんなさい。でも、当てつけではなくて、後追いだったの。私もそっちへ逃げたい、って』

 「そういうとこ、姉妹なのかもしれないわね」

 『そうね、そうかもしれない……でも』

 「でも?」

 『なったのは、誇りある一航戦。その赤城。自身に優秀であることを課し、その誇りを大事にして実行していく艦娘』

 「まるで素体の姉さんのよう」

 『ええ。艦娘は素体のどこか共通点に惹かれて艦の魂が人の魂により合わさってなるものだ、と聞いて。結局私はそうなのかなって思って』

 「……」

 『だからこそ、確かめたい。ここに来たのは素体としての、妹としての貴方しか知らなくて、それで気を利かせてもらって、流されるように来てしまったけれど』

 「その件、福山提督はそちらの提督さんに御立腹だったわ」

 『落ち着いて考えればそうね。でも、私が『私に』誇れる自分であるのか。『赤城』に誇れる自分であるのか。そして、私になかったものを持って突き進んでいった貴方の見ているものを。感じているものを』

 「『自分に誇れる自分であるか』か……そうね、私も試したいわ。示したいわ。自分に、いえ、それだけじゃない。全てに」

 『……だからこそ、全力で参ります』

 「ええ。こちらこそ、全力で!」

 『さーて場も温まったようで!おっと、この後の実況解説は2人には聞こえないようにするから、演習終了の合図が出るまで思う存分やってねぇ!では――』

 

 秋雲さんのカウントに構える。多分、向こうも。

 

 『3、2、1、演習開始!』

 

 演習が、始まる。

 

 

 まずは警戒速度で少し角度をつけつつ前進。まだ、艦載機は飛ばさない。

 

 「普通は、ここで偵察の艦載機を飛ばす場面。その情報を元に、次の展開を考えて戦闘機なり飛ばす……来た!」

 

 飛んできたのは彩雲。予想通りだ。私のずらした針路に合わせて飛んでくる辺り、私の無意識の癖まで読まれているらしい。

 

 「戦闘機隊、発艦。叩き落す勢いで相手してあげて。深追いはいらないわ」

 

 偵察機、それも足が速い彩雲に戦闘機で対処することは知恵のある深海棲艦でも少ない。そのまま対空兵装で撃墜を試みるか、バレたからと針路を変更するか。考えなしに直進すれば次は攻撃機の餌食になってしまうから。

 

 「彩雲は逃げていったわね。開始位置からのこの位置で速度も計算しているはず。次のステップね」

 

 艦載機――正しくはそれに乗っている装備妖精――の得た情報はダイレクトに空母艦娘に伝達される。だからうまく気を回す量を調節しないと、艦載機の被撃墜時に意識にダメージが入ってしまう。姉は、今回の私の反撃でどう判断するか。

 

 「姉さんの彩雲を逆に利用して位置を把握するか、情報を与えまいとするか、で考えそうね」

 

 そう呟きつつ『全速力で』前進する。余計な角度はいらない。体勢を低くして、肉眼では捉えにくい様に波に隠れつつ駆け抜ける。これは本来駆逐艦――特に接近戦主体の江風――がやる動き方だ。深海棲艦でも、ここで出力全開にはそうそうしない。変な装置を付けていたアウトローは別だけれど。

 

 「『常識的に考えれば』とりあえず角度をずらして航行して、情報優位を取るけれど。生憎、私はこうなのよね」

 

 当然、理性のない深海棲艦を演じているわけではないけれど。そう思っていると、進路上に近いルートで護衛の戦闘機を伴った攻撃隊が……おそらく半分以下。もう半分程度は、ずれたと予測した上での進路に飛ばしているのだろう。そして、艦載機の意思には艦娘の意識も乗るわけで。

 

 「『加賀戦闘機隊』全機発艦。驚いているうちに叩くわよ」

 

 私の艦載機隊で全力で叩く。やはりというか練度が高く、すぐに持ち直して被害も軽微で撤退していく。この分だと再出撃もそう時間はかからないだろう。

 

 「でも、私の方が先。見えたわ」

 

 有視界に捉える。姉さんは今、発艦の準備をしていて。

 

 「15,5cm三連装副砲、発射」

 

 おおよその当たりをつけて、盛大にぶちかます。予想外の砲撃に姉さんの発艦が一時中断される。後、もう少し。

 

 「……そろそろね。加賀航空隊全機、発艦」

 

 まずは戦闘機も爆撃機も全て飛ばす。あえて、爆撃機の爆弾は少なめに装填している。つまり、重量が軽く早いということ。

 

 「対応が早いわね。その間を縫って、私に直行させる動きね……出番です『岩本隊』」

 『あいよ!10秒は任せな!』

 

 ここが札の切り時だ。姉さんの注意を足の速い艦載機隊で引き、それでもとばしてくる私への攻撃部隊は岩本隊に任せる。姉さんはあっという間に全機発艦させてしまっている様子だ。本当に、優秀だ。

 

 「でも今、貴方は全力を出している。余裕がない。……『具現武装』」

 

 今までの奇行は。接近は。岩本隊の採用は。全てこの時のために。艦載機隊には生存重視で攪乱を、とだけ伝えて意識を切っている。

 

 「私の全てをこの一撃に込めます。『ラストネメシス』」

 

 荒ぶる波も。姉さんの回避行動も。私の間近に落ちる攻撃の数々も。あらゆる雑音も。全て意識から離れて。ただ、『私と的(姉さん)』だけがそこにあって。

 

 「撃ち抜く!!」

 

 音のない空間で、姉さんの胸に矢が吸い込まれて行くのを見て。

 

 『赤城大破!そこまで!』

 

 回復した聴覚に秋雲さんの大音量が刺さって思わずふらついてしまった。音量、調整してもらえないだろうか。

 

 

 12:00 第127鎮守府

 

 

 あれから、姉さんは実は近くでジャミングを使って待機していた菊月さん――私の周囲には長月さんがいたらしい――に回収され、演習海域から揃って帰投した。

 

 『さあ、健闘した2人に盛大な拍手をー!』

 

 拍手とともに迎えいれられる。私が出撃したときより人が増えている気がする。

 

 「加賀!よくやったな!作戦も成功したようで何よりだ!ハハハ!」

 「長門姉さん。やりました」

 『響だよ。加賀、さっきの演習、最後の一撃の為『だけ』の構成だったね?』

 「はい。正当に練度の高い姉さん相手では小細工はほぼほぼ無意味。だからこそ、『半端な小細工を続ける相手には全力でさっさと正攻法で叩き潰す』ことを誘発してその隙を突く。突けなければ負け。そういう作戦でした」

 『これは勝負の戦い方。戦闘の戦い方じゃないことは理解しているね?』

 「はい。それに、戦闘では私一人であのように立ち回る前提では動きません。それなら一度撤退します」

 『そこの区別がついているようなら何よりだよ。ついていなければ考え物だったけどね』

 

 実戦では敵の後続が来ないとも限らないし、そもそも無駄に殉職覚悟の作戦を決行するべきではない。そういう意味では、先程の戦い方は不適切ではあった。

 

 「まあ、そこは応用していけばいいだろう。なあ?響」

 『そうだね。実況解説のし甲斐のある戦いだったし、今後もうまく活用してほしいな』

 

 ひとまず、及第点の様だ。

 

 『赤城もお疲れ様だよ。対知性のある深海棲艦、それも空母相手の想定の動き。空母艦娘として求められる動き。そういう意味では理想的だったよ』

 「あ、ありがとうございます」

 『加賀もそれを理解して、信頼していたからこその今回の作戦だったようだからね。もっと簡単にペースを乱したりとか及第点に及ばない行動をしていたら、逆に有利だったかもしれない』

 「!」

 『だから今までのそれを大事に、その上である程度は余裕を常に残すように訓練を続けていくといいよ。最後のあの時、君に余裕があれば回避できていたか狙撃を許さなかったか。そういう展開もあっただろうからね』

 「はい!」

 

 響さんの姉さんに対する評価、それは私が姉さんにしていた評価であり、前提でもあった。常に最善の動きをするだろう、その予測の上で奇策をあれこれ仕掛け、あのタイミングで小細工を全力の正道で叩き潰すことを期待しての作戦だったから。

 

 『以上、解説の響さんでしたー!会場のみなさーん、姉妹の絆とぶつかりあい、どうでしたかー?そしてぇ、空母艦娘がどういうものか、なんとなくでも今回ので分かってくれたら嬉しいでーす!今回とかの演習はアーカイブ配信もしていくからよろしくね~!』

 「まだ通信続いていたんですか!?」

 「待って、どこまでアーカイブ配信するの秋雲さん……」

 

 姉妹揃ってまだ放送が続いていたことなどに驚く。少し恥ずかしくなってきた。

 

 「さて、広報の方は終わったようだし、我々からの評価と行こう!まずはこの長門!2人共大健闘だったな!やれることはやりきったのだと、その表情も言っているぞ!うむ!」

 「お久やな。自分ら覚えてる?呉の龍驤や。大体解説の響に言われたことやけど、赤城は柔軟性と経験を積んでいけばええ感じやね。ウチが太鼓判押したる。加賀はそうやなぁ、航空戦艦の戦い方も参考にするとええで。航空隊はサポート、本命は自分自身、っちゅーのは特に伊勢型の改二兵装のソレが近いからな」

 「「りゅ、龍驤さん!?」」

 

 訓練校には必ず顔を出すという龍驤さん。横須賀訓練校の私も呉訓練校の姉さんもゲスト講師として来ていたのを覚えていた。というか、誰も『伝説級』の大物――呉鎮守府と言えば龍驤と鳳翔、その片割れ――が来て忘れられるものか。そんな人がしれっと着ていた。

 

 「長門、このゴリラ!ウチらのこと説明しとらんかったな!?」

 「ハハハ、先に説明してしまうと恐縮してしまうだろう!つまり問題はない!ちなみにまだ呼んでいるぞ!」

 「ホントこのクソゴリラは……」

 

 最古参の人たちの共通認識なのだろうか。長門姉さん=ゴリラ、という図式は。

 

 「いつものことでしょ。もう突っ込まないわよ。私はお初ね、舞鶴……第4鎮守府の方がいいかしら?そこの叢雲よ。私達が昔手探りで見つけてきた戦い方をしっかり昇華して、それを参考にして作戦を組んで。なんか誇らしいわ。よくやったわね、アンタ達」

 

 舞鶴の水雷戦隊。最古参の水雷戦隊主軸の鎮守府で、大井さん、吹雪さん、叢雲さん、漣さん、電さん、五月雨さんの6名で初期の戦いから現在までを戦い、一部は教導艦――今の金剛さんのような――としてあちこちに出張している、伝説の人達。

 

 「127鎮守府。私達の電が散った上でまた再編されて、なんか横須賀としてるって聞いてたからどんなとこかと思ったけど。しっかりやれているようじゃない。これからも頑張りなさいよ、電もそれを望んでいるでしょうから」

 

 旧第127鎮守府が陥落した際。教導艦としてその電さんがいて、他の生存者を逃がすために殿になって戦死したとのことだった。海上のベテランでも、陸上の撤退戦は厳しい、と逃がされた側の天龍さんが悔しそうに言っていたのを覚えている。

 

 「そんな後釜に座ることになった新人の電?アンタのことも注目させてもらうからね」

 「は、はいっ!?」

 

 その電さんとは全く関係のなかった電が話を振られて困惑する。まあ、頑張って欲しい。私達も頑張るから。そう思っていると、その後ろから1人出てきて――

 

 「長門さんに『お前が見出した子だぞ、絶対に来い。来ないと許さないからな』などと言われて来てみれば。とてもいいものが見られました。……あれから、頑張ってきたんですね、加賀さん」

 「あ、あっ……!?」

 

 その人は、私がずっと目指していた人で。

 

 「横須賀の第一遊撃部隊所属赤城です。新世代の一航戦の戦い、よく見させていただきました。お二人が6年前、弓道大会で見せていた様から素敵に成長されているのを見られてとても嬉しく思います。あれから、よく頑張ってこられましたね」

 「あぁ……」

 「この人が、あの時の……」

 「赤城!全くお前は美味しいところをいつも持っていくな!他が霞んでしまったじゃないか!」

 「呼んだのは長門さんでしょう?」

 「霞んだ言うな」

 「自分ら、新人コンビが置いてかれてるで」

 

 龍驤さんの言葉で我を忘れていたことに気づく。それでも、やっと会えたんだ、覚えてくれたんだ、認めてくれたんだ、という喜びが全身を駆け巡って止まらない。

 

 「金剛さんが付きっきりで担当していると聞いていましたから私の出る幕はないと思っていましたが……ふふふ、これからは私も顔を出したくなりました。よろしくお願いしますね?加賀さん」

 「あっ、あっ、はい!喜んで!!」

 「当然この長門もだ!呼べばいつでも来るからな!」

 「はい、長門姉さん!」

 「このゴリラ佐世保所属なこと忘れてるんと違う……?それとも東京と長崎の距離知らんの?」

 「暇なんでしょ。まあ、私達舞鶴組もちょこちょこ顔は出させてもらうからね」

 

 有名人たちに囲まれて、もう何がなんだか、という状態だ。その上で憧れの赤城さんまでいるのだ。どうにかなってしまいそうだ。

 

 「長門ー!そろそろ帰るわよ!長門がしなきゃいけない仕事、佐世保に溜ってるんだからね!」

 

 長門姉さんを呼びに来た人、この人は佐世保の陸奥さんか。

 

 「陸奥か!こいつは加賀だ!私に妹分が出来たのだ!お前も姉とは呼んでくれなかったからな!」

 「艦娘になる前からの同級生の付き合いの相手に姉なんて呼ばないわよ。全くもう、この子に迷惑かけてないでしょうね?」

 「あの、私からお願いしたいぐらいだったので……」

 「そう?ならいいけど。このお馬鹿のこと、よろしく頼むわね。さ、帰るわよ」

 「ほな、ウチらも帰ろうかね」

 「招集した長門が帰るんだから私達が居座ってもねぇ」

 「では、私も一旦これで。また会いましょうね」

 「は、はい!」

 「ありがとうございました……!」

 

 撤収する先輩方に緊張しつつ挨拶をする私達姉妹。すごい貴重な体験をしたと思う。

 

 「おーい、加賀―、赤城ー、生きてるかー?なんかすげぇ面子だったな。何アレ」

 「しれっと期待された私のことも心配してくれません?」

 「ふたりともお疲れ様!卵焼き、たべりゅ?」

 「この状態で喉通らないと思うんだけど……」

 「すごい人たちにすごい評価を……よく頑張りましたね、赤城さん、加賀さんも!」

 

 帰るのを見計らってから駆け付けてきた同期組や大鳳さんに囲まれて一息をつく。それで、ああ、終わったんだなと実感して力が抜けてしまった。

 

 

 滞在6日目20:00 大浴場

 

 

 「なんだかんだで、3回目ね、姉さん」

 「そうね。今日は他の皆さんも……いないようですし」

 

 気を効かせてくれたのか、今日は私と姉さんの2人だけだった。

 

 「強かったですよ、姉さん」

 「加賀さんも、お見事でした。それと」

 「姉さん?」

 「ありがとう、私のことを信頼してくれて」

 「ずっと背中を見ていたから。後を追って、形だけじゃなくて、応用までちゃんと完璧にやっているのをずっとずっと見てきたから」

 「私の、背中……」

 「私にできないことを、私の知らないことを、どれぐらいできるだろうっていうのはなんとなく分かっていたわ。だからこそ、艦娘赤城としてもそれは変わらないと信じてた。瑞鳳達の話を聞いてより確信していたわ」

 「ただの負担に思われていたのでは、と思っていましたから。嬉しいですね」

 「でも、別のやり方でなら並び立てる。そう、今日は私にも、姉さんにも。多分両親にも。示せたと思う」

 「ええ。だからこそ、『負けません』よ」

 「ええ。『望むところ』です」

 「ふふふ」

 「ははっ」

 「いつぶりでしょうか。一緒に笑うのは」

 「そうね、いつぶりかわからない。こんな気持ちで姉さんと向かい合えるとは思ってなかったわ」

 「とても、嬉しい」

 「私もよ、姉さん」

 「……そうだ、加賀さん。いえ、加賀。私のことは、赤城、と。並び立つものとして、そう呼んでくれませんか?」

 「分かりました。赤城。……とても充足しているわ」

 「分かれるのが名残惜しいぐらい」

 

 姉妹仲を修復し、対等に向かい合うことができた。……その後話し込んで揃ってのぼせてしまい、様子を見に来た大鳳さんに介抱されてしまった。それもなんだか、楽しい。そういえば、両親はどうなったのだろうか。




 一般の目がある中で平然と素体の本名を叫ぶのはとんでもない常識知らずという扱いです。その上で入り口監視をすり抜けて勝手に侵入してきた加賀達の両親はとてつもないことをしでかした、という扱いになります。
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