少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 加賀編の後日談のようなものです。


18話 後始末

 21:00 憲兵隊尋問室

 

 

 「はあ、本当に『自分の娘達が今日ここで決闘をする』以外の情報を持っていないし与えた者の情報ももっていないようですね。余程都合のいい駒だったのでしょうね」

 「その上で姉の方だけ見てる辺り、ホントなぁ。ヒアリングして分かったけど、赤城の奴もだいぶしんどかったらしくて、ギブアップもあなたなら大丈夫で封殺されてたんだとよ」

 「その上で妹には粗雑な対応と心を折り続け、自身の満足感のために姉妹共々子供を利用し続けた……はあ。まるで実験動物のそれですね」

 「然るところにバレりゃネグレクトだーって児童相談所が殴りこんでいける案件だぜコレ」

 

 尋問室には坂田隊、卯月さん、提督の私、そして金剛さんと金剛さんが呼んだ『専門家』がいた。加賀さん達の両親は私達の尋問で疲弊してもう答える余力もないようだ。引き出す情報はほとんどなかったので構わないが。

 

 「で、手掛かりとして使えそうなのはこの『御守り』デスネ、稗田さん」

 「はい!結構効力の強い認識阻害効果がありますね。詳細としては『発言するなどの行動をしなければ他人から気にされなくなれ、自身も目的以外考えられなくなる』というものです」

 「そう聞くと、結構な代物の様ですが。エーテル製でもないということでしたね」

 「呪術。使う力は霊力、妖力とか言われている、使う人たちは魂に起因する力……とか言ってますけども。そういうエーテルとは異なる性質の力なので、エーテルや近しいフォトンの検知に引っかからなかったんでしょうね」

 「対呪術装備は足りていませんデシタネ」

 「そして、メリットだけの物って作りにくいというか、高い効果を出すのは難しんですけども。これは、デメリットも搭載することで強化を図った形ですね」

 「自身も目的以外の意識が散漫になる、ですか」

 「はい。だから強力ではありますがこの『御守り』だけで完結できますし、やり方さえわかればそこまでの術者のスペックもいらないので……これで特定は厳しいですね」

 「敵に呪術にある程度詳しいものが居るか利用できるか、程度と」

 「そうですねー、外部からそういうのを買ったー、になるとモグリの呪術師とか可能性の幅が増えて正直無理ですね!」

 「都合のいい駒ですね、本当に」

 「これを渡して情報提供した人、というのもおそらく認識阻害装備を付けていたんでしょうね。後はこの人たちが単純すぎて利用しやすかったんでしょう」

 「そこまで把握している上で、この2人の子供に127鎮守府関連の者がいるとわかるものが敵にいる」

 「……訓練校がらみの関係者、洗い直しデスネ」

 「それに、即鎮圧出来たからなんともなかったけど、鎮守府の外に連中居たぜ。いつもの市民団体」

 「艦娘反対、子供を戦争に連れていくな、でしたか。ならお前がやれと言う話ですが」

 「憲兵隊の俺達としては、だから憲兵隊になっていくらか肩代わりしたり最終的に俺達だって戦えるようになりたい、って頑張ってるんだから失礼過ぎるって話だ」

 「……話を戻しマスと、おそらくこの夫妻を利用した者と市民団体は繋がっている」

 「確実だろうなぁ。何かの合図が出たら動くぞ、ぐらいの勢いだったし、男の方は発煙筒を持っていたし。だからこそすぐに認識阻害が切れて抑えられたわけだが」

 「一般客もいる中で鎮守府内を混乱に陥れ、その機に乗じて市民団体が乗り込み派手にアピール。ああ、生放送で撮影しているテレビ関係者もいましたね」

 「印象がた落ちのスキャンダルデスネ。その中で一般客に危害が加えられれば……」

 「死にますね、第127鎮守府は」

 「なんか金剛さんに聞いて駆け付けましたけど、想像以上に厄介ですねここ!」

 「そういうわけで稗田さん、何かしらサポートを依頼したいのデスガ」

 「とりあえずはこの人達ですねー。やらかしてきたことを踏まえれば出禁ですし、娘に近づくなー!って社会的に言えると思うんですけど、多分またやらかしますね。本気で悪いとかおかしいとか思ってませんでしたし」

 「そうですね。殺しておいた方がいいでしょうか」

 「ストップストップ、福山さん過激!ここは呪術でなんとかしますので!というわけで、起きてくださいご両人」

 「そらっ!」

 

 卯月さんのビンタで意識を取り戻す夫妻。散々詰めたおかげか、我々には恐怖一色の反応だ。

 

 「今後の貴方達の為にも、一つ契約書にサインをお願いします。内容は、書いています通り、『今後娘達にも鎮守府組織にも関わらない』。そうすれば、『私は貴方達にはこれ以上罰を与えない』ということで!」

 「書かなきゃ、御守りとやらを渡した連中を思い出すまでなんでもしてやるからな」

 「10年単位で横須賀が守ろうとしてきた艦娘になった子達を守るための正体をばらさないこと、そもそもこの鎮守府は許可してタグを渡した者しか入れないってこと、その他機密をいーろいろと踏み荒らした。正直口を永遠に塞いでもいいぐらいだ」

 「ひっ」

 「でも丸く収めたいじゃないですかー、ですのではい、このペンでサインを!」

 「は、はい……」

 

 卯月さんや坂田さんが銃を取り出し脅す。そして、夫妻は稗田さんの用意した書類に稗田さんの用意したペンで署名する。

 

 「これで終了!さあ、さっさと帰ってください!時間は有限です!」

 

 稗田さんの声と共に鎮守府から夫妻を叩きだす。

 

 「……ふー、うまくいきました!」

 「稗田さん、今の契約書は何か細工を?」

 「認識阻害の御守りと同じやり口で強めの契約を。破ろうとしたら、今日のトラウマが数倍になって襲ってくる仕様です!」

 「同じやり口ということは、デメリットが?」

 「そこもずるいやり方を真似しまして。あの契約、私こと稗田詠が危害を及ぼすことはしないよーって内容なんですよね。私が約束を破ろうと行動すれば私にもペナルティが発生します」

 「つまり稗田さん以外……我々が手を出しても契約反故にはならない、と」

 「そういうことです!契約書はよーく確認しないと、ですね!」

 「あの疲弊してる連中にそれは酷だろ稗田ちゃんよ」

 「そこも利用するからこの手のは厄介なんですよー。さて、私は術探知の物をいくつか作って納入したり、鎮守府周囲にしれっと配置しておきますので、それで対処してください!では!」

 「ご協力、ありがとうございました」

 「……で、稗田とやらは行っちまったけど、金剛さんよ、どこまで信用できるんだ?」

 「横須賀の元帥一派程度には」

 「非の付け所がないレベル」

 

 確実に信頼できるという金剛さんの言を信じ、稗田さんに任せるという方向で決定した。……金剛さんの稗田さんを見る目は、横須賀憲兵隊の桐ケ谷さんを見る時のような少し穏やかな目をしていたと思う。ならば、信頼できるのだろう。

 

 

 滞在7日目 10:00 第127鎮守府入り口

 

 

 「それでは、お世話になりました」

 「色々とご迷惑をおかけしました」

 「いえ、お二人にプラスになるようなものがあれば、と思います。……ところで、赤城さん、そして加賀さんも」

 

 見送りの時間になった。その中で、てーとくが何かを聞こうとしている。

 

 「今後は、お二人共、一緒にやっていくとしても、手を取り合ってやっていけそうですか?」

 「はい、わだかまりは溶けました」

 「私もです。この機会を頂けて、本当に良かった」

 「……そうですか。それなら良かったです」

 

 含みを持たせる感じで何かに納得するてーとく。なんだろうか。

 

 「今度81に遊びに行くからね!」

 「せめて研修とか演習とか言おうよ瑞鳳ちゃん」

 「瑞鳳ちゃんが一番お別れ嫌がってたのです」

 「気は合うし参考にはなるしでこれぞ、って相手だったモンなァ」

 「……赤城」

 「はい、加賀」

 「お元気で」

 「貴方も」

 

 そう言って握手を交わす二人。もう、大丈夫だろう。そう思いながら、見送っていくのだった。

 

 

 18:00 第81鎮守府

 

 

 「やあ、おかえり。大鳳君、赤城君」

 「提督、大鳳、赤城。ただいま戻りました」

 「……お疲れの様ですが、大丈夫ですか?

 

 大鳳さんと鎮守府に戻ったら、酷く疲れた顔をした提督が出迎えてくれた。こんなに疲れ果てた姿は見たことがない。

 

 「いや、先程まで横須賀の元帥殿が来ていてね。君達の件、対面でとても怒られてしまったよ」

 「げ、元帥がですか」

 「あの、私が妹が不安だからと……すみません」

 「いやいや、そもそもそんな情報を素直に受け取り、君に渡してしまった。これがどれだけ危険で横須賀の人達が中心になって戦ってきたのか。遠い昔のことだからと気楽にとらえていた僕が悪いんだよ」

 

 9年前、敵対勢力に情報が漏洩したために戦死した横須賀の霧島と比叡。そこからの横須賀の戦いに泥を塗ってしまった。そういうことらしい。

 

 「だからこそ、僕は減俸。それに、はぁ」

 「……言いにくいことですか?」

 「言わなければいけないことだね。赤城君」

 「はい」

 「君は第127鎮守府に転属になる。ある程度君の素体の正体がバレてしまった以上、この鎮守府で君を預かるには君が危険だから、ということだ」

 「「えっ」」

 「要は、81というか僕のことは信用できない。だから、情報管理のしっかりしていて姉妹共々預かれる127の方が適切だ、ということ。本音としては、この失態の罰として優秀な君を取り上げて、127の戦力増強に回したいといったところだろうね」

 「提督。本当に、なんてことをしてくれたんですか……!」

 「すまない、大鳳君。君が前々から指摘したとおりだったよ。この決定はもう覆せない。そして、僕たち81鎮守府は明確に横須賀の監視に置かれることになる」

 「まあ、そうなりますね……」

 「……あ!」

 「どうしました?赤城さん」

 「……127の、福山提督が最後に確認した問いかけ。そういうことだったんですね……」

 「元帥も、君が127が嫌なら他で預かる選択肢はある、とは言っていたよ。多分、その問いかけを知った上で今日来ていたんだろうねぇ……」

 「それに、横須賀の懸念は間違っていないと思います」

 「大鳳君?」

 「赤城さんの情報流出もそうでしたし、昨日の決闘の日、外には艦娘反対の市民団体が待ち構えている状態でした。騒動があればいつでも乗り込めるような。それに、私達が同行した際に出会ったネームド、アウトロー。彼女、江風さんを狙ってきたと宣言していました。つまり、江風さん……少なくとも127の出撃に合わせて動ける情報があったということ」

 「広い海の上で狙って遭遇できるものでもない、か」

 「その上で悪い様に考えて、考えて。そうすると、恐ろしいほどに状況と噛み合ってしまうんです。私達は、127が壊滅する切欠になっていたかもしれませんでした」

 「君でもそう判断するのなら、元帥の言うことは何一つ間違っていなかった、ということだろうね。後悔してもしきれない。……赤城君」

 「は、はい」

 「君が転属することになる127はそういう陰謀が様々な形で渦巻き首を狙っている危険地帯だ。それを理解した上で、127に行けるかな」

 「はい。それでも加賀に、妹に並び立ちたい。その為なら、頑張れます」

 「あーあ。私が手塩にかけて育てた有望な後輩だったんですけどね、提督」

 「本当に申し訳ないと思っているよ」

 

 そういうわけで、私は127に転属になってしまったのだった。大鳳さんや先輩たちと離れるのが残念な一方、加賀とまた一緒に並び立てるのは悪くない、と思ってしまっている自分もいた。




 今回出てきた呪術の内容としては、強力なバフ付与する代償に何かしらのデメリットが発生する。というタイプの使い勝手を考えるべき装備、といったところです。攻撃力+50%防御-50%のような。

 大鳳は本気で赤城を可愛がって育てていたので、割とどころではなく激おこです。
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