少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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23話 響の悪企み

 翌日 10:00 第127鎮守府司令室

 

 

 IF世界で作戦を行うに当たって、まず作戦会議が開かれた。

 

 「まずは状況の確認からだね。そうだね、まずは不知火。君が沈んだ時の話をしてもらえるかい?」

 「ええ。私のいた鎮守府を含めた多くの鎮守府が苦戦している相手。その勢力の陣容、全容を確かめる偵察に出ていました。結果は鎮守府に報告できましたが、最奥部に『主』たる姫級が1隻。取り巻きが3隻。中層に遊撃と中核戦力の取りまとめを行う姫級が2隻。中核戦力はこちらでいうカテゴリC級。中層の内1隻は先程撃沈した相手ですね。そして、前面には大量の雑魚。カテゴリD級が跋扈しているという状態でした」

 「中々分厚いことじゃないか。その『主』を倒せば瓦解しそうなのかい?」

 「ええ。間違いなく。ただ、前面を突破しても中層の戦力が強く厚く、それ以上に進軍するのが厳しいといった状態でした。戦死覚悟で突破でもしない限りは。ただ、何度かの交戦で中層の中核戦力はある程度削れた、とは思いますが」

 「そこからは陽炎にお願いしようかな。どうかな、その辺の進捗は」

 「結構削ったはずだけど、まだ数がいるわね。前面が分厚いし、姫級が前面を突破した艦隊にすぐに戦力を向けちゃうからそれ以上が厳しい形ね。中層の姫級を落とせればいいんだけど狙いにくいところで陣取ってやりにくいのよね。……まさかそこから外れた境界海域だっけ?そこまでそのうちの1隻が追ってくるとは思わなかったけど」

 「となると、あの戦果はとても大きなものになったと言えるだろうね。どうかな。もし、その中層の姫級を落としてそこに空白を生じさせた場合。前面から突破している部隊は最奥に到達できそうかい?」

 「出来るわね。といっても、単純に連合艦隊程度じゃ無理ね。複数の連合艦隊が……そうね、複数の鎮守府の合同作戦での上で突破した優秀な部隊なら。ってところね」

 「なるほどね。つまるところ大規模作戦を提案させる必要があるわけだ。私達でその姫級を暗殺というわけにもいかないだろうしね」

 「待って、出来ると思ってるの?」

 「梓なら……不知火の尋常じゃない戦い方は見ただろう?アレのごり押しなら無理矢理最奥部まで突撃して首を捻ってやれば終わりさ。理論上はね」

 「そうじゃなくても、中層の姫級、それに最奥の姫級の取り巻き。それだけでも狩っておけば後はお任せで何とかなりそうだなっぴょん」

 「ところで不知火。君から見て、あの討ち取った姫級と最奥部の姫級連中。実力差はどの程度とみるかい?」

 「取り巻きは同程度。ここの皆さんなら十全な状態であれば狩れます。『主』は表に出てこなかったので判断しかねますが、現状を鑑みるに南西の手が入っていると考えるべきかもしれません」

 「そうなればイレギュラー戦想定になるね。ますます私たち向けだというわけだ。期待させてもらうよ?卯月、江風、加賀」

 「ハッ、燃えてきたじゃねぇかっぴょん」

 「ま、いーっスけど。その様子じゃ通常戦で力を奮う機会なんてなさそうだし。なら負ける気はないっスね」

 「燃えてきました」

 「すごい自信ね、貴方達」

 「不知火。確認だけれど、最奥は雑魚はひしめいているかい?」

 「いませんでしたね。雑魚戦力は全て前面と中層に置いています」

 「だからこその分厚さ、と。なるほどね。次に陽炎、境界海域はそちらの世界だとどのあたりにあったんだい?」

 「中層のはずれの方ね。中層連中の範囲外から回り込めないかって調査してたところで、だったから。そこで味方とはぐれちゃって、敵に追われて突入したエリアだったわ」

 「あまりよろしくないね。つまり、そこに堂々と陣取っているとそちらの『主』にも南西の連中にも知れ渡ってしまうわけだ。ふむ」

 「どうしますか、響さん」

 「まずは現地協力者との相談だね。ジャミングを用いて境界海域からあちらの世界へ。そのまま陽炎たちの鎮守府に入って協力を得る。これを少数で行くべきだね」

 「母艦は使えませんね……」

 「あまり境界海域を嗅ぎまわている体をしすぎても警戒されるかもしれないね。ここは梓の転移能力を活用すべきだね。向こうに行く面子は橋渡しができる陽炎、存在に説得力のある不知火こと梓。そして私が行こうかな。梓、後何人なら一緒に連れていけるかな?」

 「精密に動くとなると後1人が限度でしょうね」

 「なら江風、君に依頼しようかな。その直感で護衛をしてほしいし、機動力は私達の中でも高いからね」

 「了解っス、響の姐さん」

 「他の皆は一度通常任務に戻って欲しい。カモフラ―ジュを兼ねてね」

 「「了解」」

 「……本当にいいの?かなり危険な話よ、分かってる?」

 「こうもしなければ不知火の気が晴れないだろうというのが一つ。南西と手を組んでいるであろうことが分かっている以上、そちらの情勢を不利にしておくのは我々としても不都合だというのが一点。後はまあ、少し企みがあるのが一点だね」

 「企みって何よ」

 「これは向こうに行ってからのお楽しみにしておこうかな。あちらの出方次第だからね」

 

 そういって不敵に笑う響の姐さんだけど、なんとなく想像がついた。まあ、欲しいもんなあ。ウチには不足してるもんなぁ。

 

 

 12:00 境界海域

 

 

 「さて、転移したわけだけど。どの辺りになるかな。陽炎、君を捕捉したのはこの座標だったのだけれど」

 「そうね、逃げ回るのに必死だったからよく覚えていないのよね……」

 「梓、江風。エーテルないしフォトンの知覚的に異常があるのはどっちかな」

 「「向こう」」

 「異常なエリアがある、予想通りだね。さて、行こうか。ジャミングを使っているとはいえ、目視されたらバレてしまうからね」

 「不知火……というか一緒になってる梓?あなたがトンデモなのはわかってたけど。江風も中々ね……」

 「私直感特化なンで」

 

 そんな話をしながら、違和感の大きい――実際持ち込んだエーテル濃度の調査器具が異常値を示した――エリアに進んでいく。視界が揺らぐ。

 

 「ビンゴだね。さあ、行くよ」

 「ええ。突入」

 

 揺らぎの中へ、突入。潮の感覚が変わる。別の海域に出たのだと知覚する。

 

 「成功の様ですね。あの規模であれば艦娘母艦でも移動可能でしょう」

 「まあ、そうでないと大規模部隊が移動するのは叶わないからね。想定通りではあったね」

 「帰って、来れた……」

 「温度差さァ」

 「さて、はやく転移と行こう。最終目的地は鎮守府執務室なわけだけど、いけるかい?」

 「『私』が座標を覚えていない、かつ距離があると厳しいですね。鎮守府近辺を一度挟まなければ」

 「それなら誰にも見られなさそうな近辺に一度飛んでもらおうかな」

 「見られたら不味いの?」

 「不味いね。この能力は極力身内以外の敵味方に知られたくはないんだ。いいところを頼むよ」

 「……なら、『慰霊碑』。不知火、貴方の記憶補正で飛べない?」

 「……飛べそうですね。強く、印象に残っているようですし」

 「なら、あんな平気そうな顔無理してしてるんじゃないわよ……」

 「……陽炎の姐さん、複雑そうなのは分かったけど飛ぶからてーとくの、不知火さんに捕まって」

 「……ええ」

 

 そして不知火さん主導で『慰霊碑』とやらの近辺に転移する。転移先の周囲には人気が無く、ポツンと簡素でいて手入れのされた碑が一つ。

 

 「成功、ですね」

 「……あれから、二人分増えたわよ」

 「……そう、ですか」

 「ここは誰もいないようだね。ただ、感傷に浸る暇はないよ。次、司令室に頼むよ」

 「……ええ」

 

 再び転移する。そこにいたのは基地司令と艦娘『黒潮』だった。

 

 「やっぱり陽炎の捜索隊を出すべきや!まだ死んだって確定したわけやない!司令はんもこれ以上は耐えられへんやろ!?」

 「何度も言う。許可は出来ない。位置が位置だ。犠牲が増えるだけだ。諦めろ……!」

 「せやかて……ってなんや!?」

 「なっ……!?」

 「転移、成功。お久しぶりです。黒潮。……そして、司令」

 「「不知火……!?」」

 「響だよ。感動の再会のところ悪いけど、人払い……というか施錠させてもらうよ。あまり知る人を増やしたくないんだ」

 

 そう言いつつ躊躇わずに鍵を閉める響の姐さん。

 

 「さて、まず何から話そうか。そちらの要望に応えるよ」

 「……何者だ、不知火は死んだはずだ。それにお前たちは何なのだ……」

 「か、陽炎もどっから湧いて出てきたん……!?」

 「まず、この不知火は一度死んでいるよ。君たちが知っている通り。陽炎は生きている。私達が保護したからね。そして、死んだ不知火が異世界で艦娘の魂として憑依した結果が彼女というわけだ。私達は、異世界の艦娘、ということになるね」

 「異世界……」

 「異世界といっても信じられないだろうからね。梓、江風。変身解除するよ」

 「「了解」」

 

 私達3人が変身解除する。……響の姐さんの素体、大人な美人だなぁ……瑞鳳が羨みそうな綺麗な髪色をしている。

 

 「な、人間に、なった……!?」

 「これが証拠、というかこの世界との違いになりますね。人造人間な艦娘がこちらの世界とすれば、艦娘の魂を元に人間が変身するのが私達の世界。ちなみにここに沸いて出てきたのは不知火の素体、梓の異能になります」

 「第127鎮守府基地司令、福山梓です。異能と対深海棲艦であろうとも死なない戦闘能力故に基地司令に任命されました」

 「異能はこれだけではありません。江風」

 「っス。『具現武装』」

 

 大人びて口調も変わっている響の姐さんの言う通り、具現武装を展開する。

 

 「手品か!?」

 「変身。……私達の世界にはエーテル、という情報粒子が存在していて通信機能の中核を成しているんだ。そして、それに強く適応した人が発現できる異能がこれというわけだよ」

 「信じられん……が、認めるしかないのだろうな」

 「陽炎、マジなん……?」

 「一日あっちで過ごしただけなんだけど、大マジよ。正直まだ頭が追い付いてないけど。……未だに夢じゃないか、って思うもの」

 「変身。悪いけどコレ現実なンですよねェ。受け入れてくれたならとりあえずヨシってことで」

 「……目的は、なんだ」

 「話が早くて助かるね。端的に言えば、共闘を持ち掛けたい。君たちが相手をしている勢力が私達の世界の敵勢力と繋がっているようだ、というのが陽炎を保護したときに判明してね。私達の戦いを有利にするためにも、こちらの情勢を優勢にしてもらう必要がある。そのプランも持ってきたよ」

 「ついで言えば、不知火が戦死する直前に交戦した中層の姫級。アレの討伐を完了しました」

 「何!?」

 「ノコノコ私達の世界に来たのが運の尽きだったね。けど、その詳細は敵も詳しくは知らないはずだよ。何故ならその姫級が死んだのは私達の世界だからね。」

 「情報有利、か」

 「そう。で、私達の持ってきたプランなんだけれど――」

 

 ―――

 

 「そういえば卯月さん」

 「どうした赤城」

 「南西の勢力と、陽炎さんたちの世界の勢力が繋がっているという証拠、ないですよね?」

 「ないぜ?」

 「……その割には強行プランで行くな、と思いまして」

 「実際問題持ち掛けるプランも新技術にテスト中技術にぶっこみまくって、横須賀とかにも援軍頼む前提のクソ作戦だからな。そして確実にこの作戦で『主』とやらを討ち取れる保証もないし別に討ち取れなくていい」

 「……え?」

 「優勢になりゃ良いんだ優勢になりゃ。だから中層の姫級は確実に殺す。取り巻きも出来る限り殺す。『主』は多分あっちの新進気鋭の鎮守府とやらが頑張って討ち取るさ」

 「赤城、あなたはその上で何を狙っているのかを聞きたいのよね?」

 「ええ、加賀。随分と急いで行うな、と思いまして」

 「響の目的は最終的にはそっちじゃなくて、人材確保。不知火の話が本当ならあっちの基地司令はこの情勢が動くタイミング辺りで戦死するつもりだ」

 「ということは……」

 「どうせ死ぬならこっちに来い、ってことさ。現状、全体指揮を取れるのが響ぐらいだが響は出来れば情報解析に全力を注ぎたい。そうなると代わりの司令部が必要になるが梓は現場隊長が向いてる、というか司令向きじゃねぇ。丁度いい人材なんだよ」

 

 ―――

 

 「……この荒唐無稽な作戦、可能というならそうなんだろう。だが、そこまでして我々に求めるものはなんだ?お前達だけで実行できるのではないか?」

 「そうだね。ただ、私達は『主』の首はとるつもりがないんだ。そうだね、君たちが期待している犠牲を払うことを受け入れない鎮守府。そこに取ってもらって情勢を変えてもらうのが良いと思っているよ。基地司令官。君にとっても、悪い話ではないんだろう?」

 「……!」

 「ついでに、君をこの世界から消してあげよう。こちらには異能持ちもいるし深海棲艦の仲間もいる。工作はいくらでも出来るんだ」

 「そこまでお見通しというわけか」

 「司令はん!?」

 「君も不知火も不器用だよね。話し合ってうまく心中するなり手を組めばよかったのに受け入れてくれるかわからないからって謀殺し合って。どちらが殺しても後悔する癖に。ねえ、不知火」

 「……」

 「……そこまで分かって、いや、そうか。余計な心配をかけたな、不知火」

 「いえ。私こそ、貴方を信頼できずに申し訳ありませんでした」

 「……こちらの狙いも分かった上での先の提案なら、一つ追加で頼みがある」

 「聞こうか」

 「あの若造……期待している鎮守府の連中が『主』を討ち取ったところで、すぐには流れをあいつら側に持っていくことは困難だろう。出る杭を打とうとする連中がいる」

 「まあ、いるだろうね。特に権力者かな?こちらの世界でもそういう暗闘をしているからね。想像はつくよ」

 「そいつらをそのプランに則った大規模作戦時にこの鎮守府に集める。まとめて暗殺できるか?」

 「いいね、とてもいいよ。沿岸の会議室にでも集めてくれればまとめて始末して見せよう」

 「うわ、響の姐さん悪い顔……」

 「……そこまでして借りが出来るわけだが。何を欲する」

 「いいね、本当に理解が早くていいよ。……君の身柄が欲しい」

 「な!?」

 「「えっ!?」」

 

 これぞ悪役の顔です、といわんばかりの恍惚としたヤバい表情で真の目的を告げる響の姐さん。とてもお気に召したようだ。

 

 「君の望みは君がこの世界から消えること。なら、私達の世界に来れば問題ないじゃないか。私達としても、君のような優秀な基地司令官という人材が足りていないんだ。梓は元々戦闘職でね、司令向きではないんだ」

 「死なないことが仕事、ですからね」

 「だからこそ、私達の世界に弱みがない、かつ有望な基地司令を雇いたい。それが私達の欲しいものだよ」

 「……」

 「戦力、そんなに足りへんのか?」

 「正直、私を助けてくれた時を考えるとそこまで戦力が足りないとは思わなかったけど」

 「足りないね。カモフラージュがてら色々なことをやらされているから人手は常に足りないし決戦兵力としても連合艦隊が1つとサポート艦隊を用意できる程度。とても十分とは言えない。常に信頼のおける人員は募集中というわけさ」

 「それで赤城を余所の鎮守府から搔っ攫ったのも最近ですもンねェ」

 「……」

 「どうだろう、悪くはないと思うけど。それに、あの『慰霊碑』」

 「!」

 「君は犠牲を容認しているわけじゃない。犠牲を出さなきゃいけないから最低限出す決断をしなければいけなかっただけだ。だからこそ、あの慰霊碑を作っているんだろう?」

 「……見たのか」

 「軽く見て、陽炎の様子を見て。以前不知火の昔話を聞いて。推察だけど、アレを作ったのは君と不知火。君達二人は血も涙もない非情な決断を出来る連中として振舞っているけど、犠牲になった艦娘を忘れないためにあの慰霊碑に名を刻んで管理している。人気がないのはあそこは立ち入り禁止なんだね?」

 「……その通りだ。陽炎は知っていたようだが」

 「ウチもってか、みんな知っとるで。だから、自分らだけで背負い込まんでくれやって思ってたのに……!」

 「そうよ、馬鹿不知火!馬鹿司令!」

 「……だそうだよ」

 「「……」」

 「この状況で、クソ権力者と心中なんてされたら大荒れっスね。それぐらいならそれを装って私らの世界に来て、一生背負って生きて頑張った方がいいんじゃないっスかね」

 「そういうことだよ。この鎮守府の皆には後日知ってもらうことにして、そういうプランでどうかな?」

 「……分かった。そうか、そうだったんだな」

 「私達の思い上がりでしたね、司令」

 「ああ。……ならば、確実に連中をおびき出して殺し、合流すると誓おう。敵は……頼めるな?」

 「そちらに覚悟を決めてもらったんだ。当然だよ。さて、実行はいつにしようか」

 「15日後。元々大規模作戦を展開し、心中するつもりで手はずを整えていたんだ。その決行日が15日後だ。それに合わせて行って欲しい」

 「早く来た甲斐があったね。既に心中されていたらたまったものじゃないからね。くたびれ損になってしまうところだったよ」

 「響の姐さんが速攻かけたのってそういう」

 「その通りだよ江風。さて、詳細を詰めようか」

 

 その後、詳しい時間や配置について詰めて一度帰還することになった。次は決行日だ。

 

 「陽炎はこちらで預かっておくよ。生還したとバレたら色々露呈しかねないからね。黒潮、君にもその体で動いてもらいたい」

 「陽炎まで失ったフリしろ、ってことやな」

 「悪いけど、そうだよ」

 「陽炎に悲しい想いさせたら許さへんからな」

 「肝に銘じておくよ。陽炎、君から言うことはあるかい?」

 「あるけどない、というかもういっぱいいっぱいよ。でも、必ず生きてまた帰るから。留守は任せたわよ、黒潮」

 「情報は集まった、ということでこれ以上死者を出すような作戦はするつもりはない。そこも任させてくれ」

 「もう誰かが欠けるの、嫌だもんね」

 

 そうして、私達は境界海域に転移、自分たちの世界に戻るのだった。

 

 

 0:00 第130鎮守府跡執務室

 

 

 人気のない鎮守府にごう、ごうと音が響く。日が昇っても落ちても。それがここの常だった。

 

 「……」

 

 今日も、明日も。睡眠の存在しない私達はそれを受け入れていくしかないのだ。

 

 「……!」

 「え?」

 

 そう思っていたら人の気配。振り返ってみたら全身黒の装束で怪しげなバイザーマスクを付けた人――性別は不明だ――がいた。

 

 「……」

 「えーと、あなた、どこから?」

 「……」

 

 反応がない。心霊現象か何かなのだろうか。いや、心霊現象は私の方なんだけど。

 

 「……」

 「誰か知らないけれど。ここを壊しに来たの?攻略しに来たの?それなら、工廠にってちょっと待ってえっとあの」

 「……」

 

 こちらの言い分を無視して机を漁り始めた。何この人怖い。

 

 「……ここの資料を探しているの?」

 「!」

 「それなら、それも工廠。それ以外は使っていないから」

 「……」

 「言葉は通じる、のね?」

 「……」

 

 反応が薄い。目的がいまいち読めないのだけれど。そう思っていたら、壁が破壊される。睦月ちゃんが飛び込んできた。

 

 「夏奈ちゃん!大丈夫!?」

 「睦月ちゃん!?」

 「……!」

 「逃がさない!」

 「待って、睦月ちゃん……!」

 「……あれ?反応ロスト?そんな馬鹿な……嘘……!?」

 「え、あれ、ホントだ」

 

 執務室から走って逃げだしたと思ったら反応がなくなっていた。

 

 「夏奈ちゃん、何を話していたの?」

 「あなたはだあれ、って。答えてくれなかったけど」

 「駄目だよ夏奈ちゃん、殺されちゃう……!絶対に、それは、駄目……!」

 「睦月ちゃん……私達はもう、死んだんだよ……」

 「それでも、それでもだよ!」

 

 私のことを一途に思ってくれている睦月ちゃんだけでも。どうか、誰か解放してほしい。




 異世界の鎮守府の方は、基地司令とその秘書艦不知火が必要であれば犠牲になることを命じられる、所謂犠牲を容認するタイプの鎮守府として振舞っており、業績はトップエースでした。
 ただ、本心でそれをやっているかというと別であり、犠牲を出さないように立ち回ることを前提にして結果を出す新進気鋭の鎮守府に新しい未来を見出していました。
 なお、こちらは番号制ではなく地名+鎮守府という命名方式です。なので陽炎が前回首をかしげていたことになります。

 赤城「ところで、福山提督の転移能力はあまり使わないように、という話してませんでしたっけ?」
 響「バレなければ使ってないのと同じなんだよ」
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