少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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24話 決戦!異世界海域

 8月下旬 16:00 第127鎮守府

 

 

 それからはずっと、集中特訓の日々だった。余所相手の演習もガンガン行って。裏で新装備や艦娘母艦のスペックの確認をしたり。横須賀から来た第一技研の人達と響の姐さんが付きっきりで相談していたりと皆忙しくしていた。

 

 「大分皆の動きもこなれてきたね」

 「習熟の方は上手くいっているようですね。陽炎姉さんの指導もあって通常戦闘としての習熟も一段と成長がみられました」

 

 向こうの鎮守府のエースというかトップを務めていたような陽炎の姐さん。特化型が多かったこの鎮守府としては貴重な人材だったし、何より本人のやる気が段違いだった。そんなこんなで、明日に作戦決行を控えることとなった。

 

 「さて、横須賀からは第一遊撃隊を、そして稗田さんと桐ヶ谷さんも戦力として動いてもらいマス」

 「稗田!気合い!入れて!行きます!!」

 「久々の出番で腕が鳴りますね」

 「加賀よ!私も駆け付けたぞ!!」

 「長門姉さん!」

 「私達も手伝ってあげるから、失敗するんじゃないわよ」

 「叢雲さんも来たのです!?」

 「横須賀の連中にだけ良いカッコさせるわけにはいかないからね。金剛、総出でここは留守になるわけだけど、防衛は大丈夫なの?」

 「他の横須賀の面子を警護に当たらせマス。問題はありまセン」

 「ちゅーわけで、心置きなくやりや!」

 「りゅ、龍驤さんも!」

 「ねえ、不知火。これってどういう状況なの?」

 「この世界の最強戦力が集まっています」

 「うわぉ……」

 

 佐世保から長門さん、呉から龍驤さん、舞鶴から叢雲さん。フットワーク軽めの中で最高戦力が集結していた。

 

 「今後、似たようなことを南西相手にもするんでしょ?いい事前演習になるわね」

 「フハハ、事前演習で異世界を救う!心躍るシチュエーションじゃないか!!」

 「自分ら、主役はあっちの新鋭部隊と127の部隊やってこと忘れたらあかんよ」

 「勿論よ。新世代の力、見せてもらうからね」

 「そのための雑多な役割は任された!」

 

 長門さん達援軍組には、中層の雑魚連中の掃討をお願いしている。特に新鋭部隊の道を切り開く、そのルートを。

 

 「横須賀から艦娘母艦の2番艦も到着したし、後は明日の本番に備える、といったところだね」

 「ねえ、不知火」

 「なんでしょう、姉さん」

 「この戦いが終わったら、また離れ離れになっちゃうのかなって」

 「……そうですね。あの境界海域の全容が掴めていない以上、今作戦の後に管理をしていると思われる南西の連中が維持を止める可能性があります。そうしたら、二度と……」

 「……うん」

 「それに、死者がいつまでも付きまとうわけにはいきませんから。姉さんは、生きている。生きているんです」

 「そう、ね」

 

 不知火さんは自分に言い聞かせるように言っていた。余程大事な存在だったんだろう、というのはこの2週間で嫌というほど分かってしまうレベルだった。だからこそ、てーとくと引き合ったのかもしれない。

 

 「響の姐さん、ちょっと」

 「どうしたのかな、江風」

 「あの境界海域、こっちで維持するのって無理なんスか?」

 「理論上は不可能じゃないだろうね。それの実験も今作戦に投入するつもりだよ」

 「……あの二人に教えたほうがいいんじゃ?」

 「不確定要素だからね。それに、そうでなくてもいずれ下さなければいけない決断だからね。今はそっとしておこう」

 「了解」

 

 そんな中で、作戦当日を迎えるのだった。

 

 

 翌日 10:00 境界海域

 

 

 「では手はず通りに。第一遊撃隊はこの座標に寄って来る敵部隊の迎撃を。補給は境界の先で待機している2番艦で行うこと」

 「はーい!吹雪、頑張ります!」

 「蚊一匹通さないよ」

 「精一杯、務めさせていただきます」

 「……ま、精々頑張りなさいよね」

 「叢雲ちゃんは素直じゃないなぁ」

 「だー!寄るな!ウチ(舞鶴)の吹雪が嫌がるのよ!!」

 

 こちら側の世界での警戒を横須賀第一頭おかしい部隊に任せる。急襲の為こちら側で気付ける敵が少ないだろうということと、機動力、対処能力の高さから選出された形だ。

 

 「では、母艦2隻、境界へ突入」

 

 金剛さんの指示で境界の中へ突っ込む。問題なく入れた。

 

 「改めて作戦を説明しマス。南最奥に敵本陣があり、ここは中層の東端デス。北部である前面から5部隊のこちらの世界の鎮守府連合艦隊が攻撃を仕掛けマス。『主』を討たせる予定の鎮守府、αと呼称しマスがこれは西端になりマス」

 

 西端のα部隊の中層以降の進路を確保しつつ、出来る限り中層を引っ掻き回すのが目的の一つになる。

 

 「艦娘母艦2番艦はここで固定。1番艦は西端までジャミングを用いて突撃、主戦力を降ろした後ジャミングを解除。雑魚を釣り上げて更に西に逃走してもらいマス」

 「響だよ。私とタ級が同乗して西部指揮と艦の防御を行うよ」

 「敵が減ったら援軍部隊は戦闘開始。西部中心に中層の撃滅を。127組は最奥に向かう班と中層の姫級を狙う班で展開、各個撃破を狙っていきマス」

 「中層の姫討伐は卯月隊で行う。完了次第最奥の援護に向かう。最奥組はエーテル利用が認められる奴中心に無理はするなっぴょん」

 「了解」

 「こちら福山。ル級さんと陽炎さんの鎮守府、βと呼称します。βに向かい暗殺計画を実行します。完了次第母艦にβの基地司令を搬送した上で最奥組に転移して合流します」

 「権力者が全員集まってからの実行となりますので、早急な援軍は期待しないようにしてくだサイ。私金剛、そして比叡及び霧島はこの地点で1番艦の護衛を行いマス。では、総員行動開始」

 「「了解」」

 

 金剛さんの指示の下、散開していく。まずは2番艦で西端まで輸送される。

 

 

 10:30 中層西端

 

 

 「ジャミングに迷彩にと使うと結構バレないモンだな……よし、到達だ!各艦出撃を!」

 「梓からの連絡は!?」

 「人員まだ揃わず、しばしかかるとのこと!先に仕掛けるぞ!」

 「了解!」

 

 鎮守府暗殺の方はまだ時間がかかるようだったが、こちらは準備の第一段階が完了した。

 

 「各艦は出撃後指示があるまでジャミング継続、母艦のジャミング解除!出ます!」

 「後は私が全て防ごう、操舵は任せたぞ、中村君」

 「覚悟は出来てますので、タさん。坂田だけが憲兵隊じゃないってところ、見せますよ」

 

 憲兵隊の中村さん――『前回』で戦死した一人でもある――の操舵で母艦が中層の連中をかき回すように動き始める。

 

 ――なんでこんなところに人間の船が!?

 ――沈めろ沈めろ!

 ――まて、姫の指示が……ァッ!?

 ――目の前の獲物相手に手も出せないとは、ここの深海棲艦は随分と情けないんだね?

 ――やれ、やれぇ!!

 ――防がれた!?まだだ、もう一度仕掛けろ!

 

 混乱しつつ艦娘母艦を襲おうと動き始める中層の連中。冷静に指示を待とうとする奴には艦に乗っている響の姐さんが挑発がてら撃つ。飛んでくる攻撃はタの姐さんの防壁で片っ端から防いでいく。これでこのエリアの連中を更に西の戦闘外エリアまで引っ張っていく算段だ。

 

 「さて、そろそろだな。援軍部隊、動くぞ!残りは食らいつくして見せよう!」

 「長門姉さん、頼みます」

 「この規模の制空をウチだけでやれっちゅうのは無茶ぶりやね。けど、やってみせようやないか!」

 「護衛は任せなさい!」

 「合わせて金剛隊が暴れ始めた様子です」

 「卯月隊、ジャミング継続で行動開始!狙うは中層の姫級の首だ!」

 「天龍隊も出るぜ!ドンパチすり抜けて最奥行くぞ!」

 「「了解!!」」

 

 

 同時刻 最奥

 

 

 「姫様。中層にて動きが」

 「あら、もう前面を突破したの?今回はやる気があるじゃない」

 「それが、前面は抜かれていないのに中層に突然戦力が出現したとのことで……」

 「……へえ、つまるところ、謎の奇襲、と。おそらく創造者(クリエイター)の敵対勢力の仕業でしょうね。可能性があるとすればあそこよ」

 「しかし、連中はいつこちらの世界への手段を……」

 「どうでもいいわ。目の前の状況を冷静に受け止めなさい。そうね、貴女には中層の支援に向かってもらうわ。エーテル能力、適性が高いほうが中層の子達との連携を取りにくいから」

 「はっ」

 「残り2人は私と一緒に迎え撃つわよ。どうせ、中層からの強行突破で直接私の首を獲りに来ているのでしょうから。フフフ、青いわね」

 

 余裕そうな笑みを浮かべ『主』は迎撃を開始した。

 

 

 10:50 中層深部

 

 

 「いた!アイツだ!アタシが逃げ道を塞ぐ!その間に取り巻きを仕留めろ!」

 「分隊長暁、了解よ!空母部隊一斉攻撃!イニシアチブをとるわよ!」

 「赤城了解です」

 「瑞鳳了解!」

 「ヲ、了解」

 「羽黒、支援射撃の準備に入ります!」

 「こちら龍田、潜水艦の反応はないわ。水上に集中して」

 「こちらハ、突撃してやるぜぇ!!」

 「な、展開が早い!?」

 「死ねよやぁっぴょん!」

 「こちら陽炎、私もやるわよ!」

 

 アタシが速攻で背後を取り、撤退を許さない陣形で臨む。不知火や陽炎の話では姫級は早々に撤退しつつ指揮を執るから沈めにくかったとの話だ。ならば、それ以上の速度で囲んでやればいい。

 

 「各艦、向かってくる相手に集中、私は私でなんとっ!?」

 「その面ががら空きだオラァ!」

 

 指揮を取ろうとしたところに顔面に蹴り、そして追撃弾を叩き込む。威力は足りてはいないが、これで指揮艦が指揮を出せないという僚艦には不安な状況が作り出せる。そこを落とさせる。

 

 「姫様、どうしたら……ガアッ!?」

 「その隙、逃しません!」

 「クソ、なんでハ級が敵にいるんだ!?」

 「ハ、連携していくわよ!魚雷斉射!」

 「クロスファイアってなぁ!」

 「まずっ」

 「逃がしません、急降下爆撃を!」

 「赤城ちゃんの連携で三方向からの攻撃になってるね」

 「アレを避けれるのは、少ない」

 

 暁が全体の指揮を執りつつハ級と連携して崩し、そこに赤城の攻撃や羽黒の連撃で仕留める。崩れていない連中は瑞鳳とヲ級の面制圧で抑える。その全体サポートを陽炎が行う。これがこの部隊の攻撃プランだった。

 

 「く、駆逐艦風情に……!」

 「その舐めた認識を後悔しながら死にやがれ!」

 

 

 11:00 中層西端

 

 

 「こちら龍驤、なんか奥から出てきたで!」

 「ってアレ、姫級じゃない!卯月達はどうしたの!?」

 「卯月達は戦闘中、つまりは最奥から出てきたというところだろう。戦艦級……ここは私に任せてもらおうか!」

 「援護できへんで!」

 「不要だ!それに若い面々が無茶を通すこの状況!私も無茶を通さねば道理が立たんというものだ!」

 「相変わらずのゴリラっぷりね……!近づいてくるのは片づけるから、さっさと頼むわよ!」

 「では、行くぞそこの戦艦姫よ!」

 「単騎で突っ込んでくるというの!?無理をするつもりなら死んで後悔しなさい!」

 「生憎だな!私は無茶はするが無理はしない!無理をしてやられてなにがヒーローか!何をもって仲間を勇気づけられようか!私は、ヒーローになりたいのだ!その為に今までも、これからも、ゆくのだ!」

 「どう言ったって、艦娘の戦いなんてたかが知れてるのよ!」

 「確かに私はイレギュラーでもなんでもないが、どうかな!ゆくぞ!」

 

 そう言って機関を全開に。正面から吶喊する。敵からの砲撃は……甘い!

 

 「フン、効かぬわ!」

 「効いていないはずがない!こちらだって戦艦級よ!」

 「信念のない攻撃など、私には届かんのだッ!!」

 

 そのまま肉薄する。腰を据えて迎撃の体勢に移る姫級。選択を誤ったな!

 

 「これが長門型一番艦の……戦艦パンチだああああッ!!」

 「がっ!?」

 「そして、この距離ならその装甲も意味を成すまい!」

 「な、そんなことをしたらお前も……!」

 「いいことを教えてやろう!日本の戦艦は!自身の砲ではやられないように!出来ているのだああああああッ!!」

 

 腹に拳を叩き込んだ体勢で全主砲を斉射する。不知火の奴がやっている無茶を参考にしたやり方だ。なるほどこれは早期決着に持っていける!

 

 「ガッ、くっ、まだ……!」

 「ならば次弾装填!まだまだ行くぞ!!反撃でも何でもするがいい!」

 「嘘、コイツ、馬鹿!?……あああああっ!?」

 「終わりだあああああああッ!!」

 

 次弾の斉射と共に姫級の戦死を確認する。私の勝利だ!

 

 「長門、状況はどうなっとるん!?」

 「討ち取ったぞ!中破こそしたがな!ハハハ!!」

 「無駄に中破してんじゃないわよ!!」

 

 怒られてしまった。解せない。まあ、これで最奥は『主』と取り巻きが2。加賀達もやりやすくなっただろうから、良しとしよう!

 

 

 11:10 β会議室

 

 

 「さて、遅れてしまったが皆揃っているようだな」

 「遅いぞ、中将」

 「辺境であるのが悪いのだよ」

 「……揃ったようですな」

 「で、基地司令殿。今作戦で突破は出来るのでしょうな?」

 「出来ますとも」

 「それにしてもあの若造だ!この戦いで壊滅してしまえばいい!そうでしょう、基地司令殿!?」

 「そうですな、大佐……さて、お揃いになりましたのでお見せしたいものを持ってまいります。……お待ちいただきますよう」

 

 そう言って部屋を出て、鍵を閉める。物陰から不知火が出てくる。

 

 「司令、揃いましたか」

 「……ああ。これで全員だ。全く、待たせてくれる……頼むぞ」

 「ええ。ル級さん、射撃を」

 『了解した!ジャミング解除!』

 「では、母艦へ、転移」

 『消し飛べ屑共ォォォォォオオオオ!!』

 

 移動用座標がどうとか言っていた高速移動中の艦娘母艦に転移し、ル級に取り付けられたカメラから先程後にした会議室が吹き飛ぶ様子を見るのだった。

 

 「では、私はル級さんの回収と生存者の殺害を。誰一人逃しません」

 「一番肝心なところだからね。よろしく頼むよ」

 「ええ。転移」

 

 2名生き残っていたそうだが、頭を潰してしっかりと殺してきたそうだ。俺の戦いは終わったのか、と思う。

 

 「感傷に浸っているところ悪いけど、これが現在の戦況だよ。指揮を引き継いでもらえると助かるね。この母艦と共に私は少し無茶をするから」

 「……というと?」

 「十分に距離は離した。後は最大船速で戻って中破した長門さんの救護とか補給とかする必要がある」

 「待て、つまり」

 「アークス提供の技術で揺れ対策はしっかりされているのでご安心を、ただ、突っ込みますよ……!」

 「中村君、準備完了だ、やってくれ!」

 「艦娘母艦、Uターン!邪魔する奴は全て轢いていく!」

 「うおおおおお!!」

 

 船舶の天敵である深海棲艦の群れをバリア頼みに突っ切る、という無茶に血の気が引く。なんという無茶な連中を揃えたものだ、不知火……!

 

 

 11:20 最奥

 

 

 「あら、来たのね、侵入者さん」

 「ハッ、姫級はここに残ってる奴だけ、中層はぐちゃぐちゃ、前面はそろそろ各個突破される。覚悟決めやがれ主とやらよ!」

 「そんな少人数で、舐められたものね。それともちょっと数が増えれば勝てると思ってるお馬鹿さんなのかしら?」

 

 天龍の姐さんの挑発にも余裕を崩さない『主』。それと左右に控える姫級。エーテルが濃いのは左側か。

 

 「あなたたち、向こうの世界の子でしょう?この世界に義理立てして命をかける必要、あるのかしら?それとも、ちっぽけな正義感かしら?」

 

 どこまでも下に見るように、分かったようなことを言う『主』。ああ、いるよなァ。こういう当事者の癖に第三者気取ってる奴。こちらを第三者扱いしてあしらおうとする奴。そんな権利があるのだというような奴。

 

 「江風ちゃん……?」

 「エーテル濃度、上がってるわ。尋常じゃ、ない……!」

 「体、熱い……!」

 「剣が、熱もってやがる……!」

 「エーテル適正のない私でも違和感を感じるぞ」

 「長月もか。これは、早く決めないといけなさそうだな!」

 

 最奥突入部隊は天龍の姐さん、長月の姐さん、菊月の姐さん、雷の姐さん、電、加賀、私。援軍頼みではあるが。

 

 「当てられて、可愛そうにねぇ。フフフ、帰った方がいいんじゃないかしら?」

 「ンの……!」

 「それに、貴方達にとって私達は仇でも何でもない。それなのにそれだけの戦力で散らしてしまうのはよくないわ。ねえ、展開しなさいな」

 「はっ」

 「サポートに回る」

 

 重巡姫級がエーテルで出来た深海棲艦を量産する。そして、駆逐姫級がその防衛に回る。そして『主』は奥に下がろうとして。

 

 「それに、仇討なんてよくないわ。私達はただただ生きようとしているだけなのに。死人に引っ張られてすることじゃない。そう思わないかしら?」

 「切り裂け、ツインダガー!!」

 「あら」

 「ムカつくんだよ、そのスカシっ面!それに仲間の仇討は私達の仇討だ!そしてェ……テメェみたいな全て分かってる風で勝手にして巻き込んだ奴を他人扱いする奴が殺したいほど嫌いなんだよ!死ねぇッ!!」

 

 熱に怒りを載せて。作戦も何も投げ捨てて。首に向けて刃を振るう。アウトローにエーテルの塊を投げつけられた時のような感覚。これに、乗る。

 

 「江風!?……いや、任せたぞ!江風が主を抑えてる間にあの重巡級を仕留める!量産された雑魚を切って捨てて道を開くから加賀!」

 「分かりました。私も、全部を載せて、貫かせていただきます……!」

 「加賀ちゃんも……!」

 「不味いぞ、この雑魚共あの回避型だ!」

 「この狭い空間でよくも避けるな!」

 「数で押されちゃう……きゃっ!?」

 「雷お姉ちゃん!?」

 「電ァ!エーテルは、激情に!応える!だから……!」

 「余所見している余裕があるのかしら?」

 「煩え!電!形は定めなくてもいい!」

 「なら……その鬱陶しいの!吹き飛べ!なの!です!!」

 

 電にエーテルの光が走る。光が収まった後にその手にあったものは巨大な手持ちの砲、PSO2でいうところのランチャーだった。

 

 「その辺りを吹き飛ばすのです!『ディバインランチャー』!」

 「打ちあがった!?」

 「今だな!」

 「空中に浮いている間は当たるぞ!」

 「続いてぇ、『クラッカーバレット』!」

 「いい的だなぁ!オラオラオラ!!」

 「次はってうわあっ!?」

 「電!?」

 「舐めるな……!」

 「チ、本体が攻撃かよ!」

 「これがエーテルの目覚めなのね。けど、無駄に終わるようね」

 「っせェ、てめーが死ねばァッ!」

 「電!応急修理妖精で!」

 「もう一手欲しいな、こりゃあ……」

 「はああああああああっ!!」

 「「!?」」

 

 突然空から降ってくるてーとく。

 

 「駆逐棲姫!?貴様……!」

 「お前、あの時の!?」

 「おい不知火、知り合いか!?」

 「私を沈めたのは私たち側に来たアレと、コイツです……!」

 「沈めたのに復活して……!?」

 「天龍さん、状況は!」

 「エーテル濃度が濃くてエーテル関連が暴走しがち!雑魚量産してエーテルまき散らしてるのは奥の重巡級!お前の因縁の奴はその護衛だ!主の野郎は江風が相手してる!」

 「ならば、貴様を殺す!」

 「効かないんだよォ!」

 「剣が、通じない……!通じなさすぎる!?」

 「電のエーテル攻撃も巻き込んでみたのですが効かないのです!どうなってるのですか!?」

 「治療完了したわよ、電!」

 「不知火、これは耐性です。エーテル属性への、耐性……!」

 「耐性だぁ!?対エーテルの布陣じゃ最悪じゃねぇか!」

 「こンの、ふざけやがってェ……!」

 「無駄を理解したら、諦めたらどうかしら?」

 「ほざけ!」

 「不知火、ぶっつけですが。……全力を、貴方に!」

 「何を……」

 

 てーとくが光り輝く。エーテルとは違う力を感じる。

 

 「『改装』!改二!」

 

 てーとくの不知火の艤装が改二のものになる。気配も、不知火さんのモノになる。

 

 「これなら全力が出せる……覚悟!」

 「総員!不知火の邪魔をさせるな!それで切り開かせる!」

 「「了解!!」」

 「ぶちかますのです!『クラスターバレット』!」

 「『ラストネメシス』」

 「よくやるわね」

 「その余裕ッ面、終わらせてやる!『シンフォニックドライブ』!」

 

 混戦度合いが増す。その中で、不知火さんは片っ端から攻撃をいなして当てるトンデモ技量を披露していた。

 

 「くそ、お前、動きが前よりも……!」

 「素体の梓のスペックが活かせている……これならば!」

 「不味い、姫様……!」

 「仕方ないわね……あら」

 「やらせねぇって言っただろ……!」

 

 主に組みついて止める。すぐに振り払われてしまうが、その一瞬で事足りた。

 

 「今!沈めッ!!」

 「あぁっ!?」

 「あら、これは想定外ね」

 「その余裕もそこまでだ!」

 「梓!」

 「『改装』!まとめて斬る!『インペリアルグリーヴ』!!」

 「うわぁーっ!?」

 「雑魚もろとも一撃なのです……」

 「改めてみて、とんでもないわね。提督は」

 「エーテルに寄らせ過ぎたのが仇になったな主の野郎!」

 「仕方ないわねぇ。ここは引いて……」

 「させるかァ!」

 「させるのよ。この力でね」

 「転移!?いや、違う、江風さん、一度距離を!」

 「!?」

 

 残るは主だけとなったと思ったら周囲に感じるエーテルが主に集まっていく。主の艤装が変化、いや、エーテル製の鎧をまとった化け物になる。

 

 「あの子たちの力は私が貸し与えていたもの。つまり、この状態こそが私の真の力、というわけね」

 「なら今のテメェを潰せば全部終わりだ!行くぜェ!」

 「いい加減にしつこいわね。貴方だけは、沈めてあげる」

 「江風さん、連携を!」

 「まずは電からなのです!『クラッカーバレット』!」

 「綻びを作るわ。『ラストネメシス』」

 「押し広げる!『ライジングエッジ』!」

 「その点にィ!『シンフォニックドライブ』!ついでに魚雷ももっていけぇ!」

 「今だ手すきの全員!魚雷斉射!」

 「待っていたぞ!」

 「任せろ!」

 「いっけぇー!」

 「あら、これは……!でもねぇ!」

 「ッ!!」

 

 エーテル・フォトン属性と通常艦娘装備属性の連携攻撃を浴びせる。まとう鎧の一部が破損するがその状態で私に全砲を向けて発射する。が、舐めるな。

 

 「紙一重!」

 「あの体勢で避けるの……!?」

 「舐めるなってンだよ!」

 「これは、不味いわね。なら、こうよ!」

 

 鎧を脱ぎ捨てて飛び出す主。このまま逃げる気か。

 

 「ハッ、逃げられると思うな!消し飛べええええッ!!」

 「!?」

 「ルの姐さん!」

 

 

 ルの姐さんの急襲に完全に出鼻を挫かれる主。撤退路を変えて……私達の後ろを目指すようだ。

 

 「その鎧、壊さないと後が危ないわよ?フフフ。じゃあねぇ」

 「クソ、待ちやがれ!」

 「江風さん、先にあの鎧を破壊し後顧の憂いを断ちます!」

 「クソ、クソッ!!」

 

 そうして、『北西』の方へ逃げる主。悔しいけれども。私達は鎧の破壊に時間を取ることになった。

 

 「……ふー、鎧も壊れたな。剣が熱いぜ。エーテル組は大丈夫か?」

 「ふーっ、ふーっ!!」

 「……大丈夫じゃなさそうだな」

 「響から連絡。各艦を回収した艦娘母艦がこっちに向かってるそうだ。撤収するぞ」

 「……」

 「さて、展開は理想通り、って分かってるかー?」

 「え?」

 「完全に暴走してたな江風。あの主、俺達で殺す予定はないだろ。エーテルの追加装備をぶっ壊して取り巻きも排除して。で、なおかつα部隊の方に向かわせた……最上の結果だぜ?」

 「α部隊の方面を先に片づけて、それ以外の方面で戦闘を継続してもらっていたはずだからな。それで戦いの気配のないあちらを選択したのだろう、がな」

 「しっかりビーコンはつけておいたぞ。後は艦娘母艦に帰ってからのお楽しみ、だな」

 「でも、悔しい」

 「大丈夫よ、江風。貴方は頑張ったわ。ぎゅーってしてあげる」

 「雷の姐さん!?……あ、でも、落ち着く……」

 (エーテルの反応がある……ということは雷さんの目覚めも近い……?)

 

 昂ったメンバーは雷の姐さんのハグで全員落ち着かされて。艦娘母艦へと合流した。

 

 

 12:00 中層東端・境界海域付近

 

 

 『なんでここに連合艦隊が!?まさか、これが……!』

 『この信号の先に主がいるって黒潮さんが言ってたけど……本当にいた……!』

 『皆!これが最後の戦いだよ!』

 『あの子達……これが狙いだったのね……!』

 「想定通り、交戦に入ったようだね。いくら本体が無事とは言えどもエーテルを酷使してかつエーテル能力の喪失の上での戦闘からの全力逃走。その先には余力を残した連合艦隊。討てなくても勢いは完全に失うだろうね」

 「本当に想定通りにやってくれるとはな。他の艦隊も被害はないようだ。指揮する姫級がいないんだからな。雑魚の連戦でしかない」

 「こちらの戦いをよく知る司令官からのお墨付きをもらったわけだ。その上で姫級各艦の討伐、地上の余計な権力者全ての掃討を確認。私達がやる任務としては完全に完了といっていいね」

 『馬鹿な、あああっ!?』

 『や、やったあああっ!!』

 「……そして主も討伐できたようだ。黒潮に連絡を入れるよ。討伐完了、ってね。頼むよ、メッセンジャーの陽炎?」

 「……分かったわ。けど、これが終わって落ち着いたら、また顔を出して。確認したいことがあるから……境界が無事なら」

 「それなんだけどね。境界、安定して継続できそうだ。金剛さん達がやってくれたよ」

 「え?」

 「要はゲートの維持。そのコントロールを奪えれば呪術系の技術でどうこうできる。という仮定だったんだけど、うまくいったようだね」

 「ハハハ!だから金剛たちは防衛に回っていたのか!これは一杯食わされたな!だが私が活躍できたのでヨシ、だ!」

 「コレ立場が逆だったらひとしきり愚痴ってた奴やな」

 「それでも横須賀の手のひらの上なのムカつくけどね……!」

 「待って、そんなの、知らない……」

 「響さん、私も……」

 「不確定情報だったからね?」

 「響、お前、ほんっとそういう悪戯好きだよなっぴょん」

 「だから安心して戻るといい。そうだね、3日後に再び顔を出すとしよう。またうっかり紛れ込まないように、それまでは閉じておくことにするよ」

 「……釈然としないけど、分かったわ。行ってくるわね、不知火、司令」

 「後は、頼んだ」

 「行ってらっしゃい、陽炎姉さん」

 

 こうして、異世界海域攻略作戦は幕を閉じるのだった。

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