滞在9日目 10:00
前回の一般公開日から鎮守府外でも大きな動きが起きていた。端的に言えば、YMTコーポレーションや漁業、海運関連等の鎮守府組織に好意的な企業・組織があのテロ事件を切欠に反鎮守府勢力に抗議を行ったのだ。
――我々の命を守る艦娘と彼女らをまとめる鎮守府組織に文句を言うだけではなく銃撃によるテロをも辞さない反艦娘勢力を我が社は侮蔑する!差し当っては当社アプリの使用条件に反艦娘組織ないし支援者ではないことを追加で明記し、関連の疑われる企業・組織との提携も調査の上白紙に戻させていただくことも視野に入れることを宣言する!
亜贄社長のこの宣言と共に素早く反艦娘勢力に加担していた企業が契約を切られ、それらの企業は採用していたYMT製のアプリを使えなくなることで『この企業はあのテロリストと同じ反艦娘勢力である』と周知することになってしまっていた。革新的でユーザーが大きく増えてきているYMTのアプリを使えないだけではなく、それによって視覚的に『テロリストの仲間』扱いにされることは社会的信用に大きなダメージとなっていた。
また、事件を起こした団体はそこそこ大きな規模であったこともあり芋づる式に支援者へ公安の手が伸びて連日ニュースとなっていた。テロリスト側から報道していたテレビ局も同様だ。そこに作家や数学者、考古学者や映画監督……と様々な方面での著名人や有力者からのYMTからの反艦娘勢力の抗議に同調する声明が続出。国内外を含めどこから火の手が上がるか分からない状況となっていた。江風曰く、亜贄社長と同じSNSグループの人達が動いてくれた結果だとのこと。どういう団体なのか。
そんな中で迎えた次の一般公開日である今日は色々と注目度の高い日になってしまっていた。
「ねえ、メディアの人増えてない?」
「これでも江風ちゃんの本名出したりした企業はまとめて叩き出してるんですけどそれでも多いですね」
「観光客自体は……あまり増えていないわね」
「先週の今週で発砲事件のあったとこに顔を出す勇気がない人が半分、それでも好奇心が勝る方が半分かしらね……?」
「みなさーん!なんかすごいことになってますね!」
「保科お前フリーパスなんだから公開日以外にだけ来ればいいんだぞ……」
「公開日は公開日で面白いので!」
「そういえば関係者なの?この子」
「準関係者、なのです」
「こう、帰ってから常識感覚取り戻すのに苦労しそうだわ……」
「そこは頑張って頂戴」
そうやって入り口付近で話していると、妙な雰囲気の高校生ぐらいの女性が入ってきた。
「……風、かわ、かぜ」
「ン?呼ばれっておまっ!?」
「江風、江風!!」
江風を認識するや否や走ってくるその女性。走りながら変身して海風になった。って待って、この海風は見覚えがある――
「江風ぇ!お姉ちゃんだよ!助けに来たよ!!」
「は、は?」
「海風ちゃん!?」
「私達眼中にないのかしら」
「というか待って、助けにって何?」
「待て待て待て、お前、私らに姉妹感情なんてなかったろ!?イレギュラー同士だぞ!?」
「そういえば、お姉ちゃんなんて言ってたことなかったわね……?」
「どうされましたか」
「てーとく!」
「ッ!!」
海風の様子がまたおかしくなる。敵意をむき出しにする。こういう子だったっけ……?
「不知火、福山梓、127基地司令……貴方が、お前が、江風を……!」
「海?海!?」
「私が!貴方を倒して!江風を助けます!!」
「「えっ!?」」
海風がそう宣言すると共に砲を構える。流石に周囲もざわついてきた。今は公開日で客もたくさんいるのだ。まずい空気になってきた気がする。
「ってっなっわっけでー!!悪の提督不知火対妹を取り返しに来た海風!この演習を15:00に行うから皆見てくれよなっぴょーん!!」
唐突に割って入ってくる卯月さん。え、演習?
(合わせろ、梓。なんかこう、悪役めいたセリフをさ)
「……愛しの江風さんを取り返したければ、死力を尽くすことです。容易に返すつもりは、ありません」
「許せない……!今からでも……!」
(おっと、準備もなしにウチの最強戦力に勝てると思ってるのかっぴょん?まずは体勢を整えて情報を集めないと簡単に蹴散らせて話にならないっぴょ~ん?)
「~~~!!」
「そしてぇ!その前に事前告知してた演習もちゃんと13:00から行うからそっちも忘れずに見てくれよなっぴょ~ん!卯月でしたぁ!」
「……海風?アンタ大丈夫?色々。というかたまには返事寄越しなさいな!」
「え、あれ、なんで霞ちゃんがここに……?聞いてない……」
「ちょっと出向してたのよ。というかその辺もメールで寄越してたのに見てなかったの?」
「めー、る、確認……うぅ……」
「海風?」
【カァー】
「なんですか、今の悪意……!カラス……?」
「……ッ!!……私は、江風を、助けに……」
「海風!?ちょっと!?」
「海、海ー!?」
『響だよ。卯月、ナイス。その海風の情報を調べてみたけど、128の海風で間違いないようだね。今の反応についても解析中だけど、電、何かあったのかい?』
「霞ちゃんに海風ちゃんが驚いてて、そこに水を差すようにカラスが鳴いたのです。すごい悪意を感じたのです……。そしたら、また海風ちゃんがおかしくなって……」
『……江風、霞はそのまま海風の相手を。人気の少ないところへ誘導して騒ぎの拡大を阻止してくだサイ。福山提督、卯月、電、加賀は執務室へ。会議しマスヨ。他は通常業務に移りつつ、適宜海風へアプローチを。その反応もモニタリングしマス』
「「了解」」
10:15 執務室
「……まず確認ですが、あの海風さんは電さん達の同期の方で間違いはないですね?」
「なのです。一緒につるんでいた、マザークラスタ仲間の海風ちゃんなのです」
「ついでに言えば、江風に対して姉ムーブなんてしたこともなかったわ。喧嘩はしょっちゅうしていたけれど」
「というか、私達に対して眼中にないこと自体が信じられないのです」
「分かりました。次に、金剛さん。艦娘には強制的に意思を操り特定の命令を実行させる機構、というものは存在しますか?」
「アークスでいうところの絶対令(アビス)のようなモノ、デスカ?」
「ええ。彼女の行動や言動はその影響下にあるアークスを想起させるものでしたので」
「結論から言えば、ありませんネ。さらに言えば、艦娘はそういった洗脳に対しては比較的高い抵抗力を持ちマス。何故なら、元の人格に対して別の人格である艦娘の魂が憑依してそちらよりの性格になる、というある意味洗脳に近い処理が為されているからデスネ」
「洗脳の上に洗脳を重ねることは容易ではない、ということですか。成程。ですが、不可能ではない、と」
「所詮抵抗力がある、というだけデスからネ。ただ、だからこそ簡単には解けないように下準備や継続して洗脳するための何かが必要になるはずデス。今疑っているのは、128鎮守府そのものと先程電さんが感知したカラス、デスネ」
「響だよ。解析した結果、あのカラスからは強いエーテル波が検出されたよ。洗脳を強化するため兼監視装置として見ていいだろうね」
「つまり、あのカラスをやっつければ海風ちゃんは元に戻るのですか!?」
「それは早計デスネ。その結果逆に暴走する仕掛けがついているかもしれまセンし、この客がいる状況下で大捕り物をすれば余計な騒ぎになりマス。加えて、この後大本営から視察が来マス。……敵の手の者か、それらが仕掛けた第三者でしょうネ」
「そちらは正式な手順を踏んで視察に来ますから止められません。対処を隠密にやる必要がありますか……」
『こちら坂田!カラスをそれとなく追ってみてるんだが、近づきすぎるとアイツ警戒して動きやがる!自衛もばっちりだぞ!』
「距離はどの程度デスか?」
『50mが限界だ!カラスが留まるところとして異常のない屋根上とかにしか降り立たないから余計狙いずらいな!』
「……響、鎮守府システム、いや。鎮守府妖精に猫が居たな?アレを動かせるか?」
参謀が響に声をかける。鎮守府のブレーンとしての役割を今。
「可能だね。数は6匹で他の普通の猫をダミーとして相当数放しているからそこまで目立たないはずだけれど」
「その猫を散発的に使って反応するかのテストと出来れば任意の場所に追い込む。その上で、加賀」
「私ですか」
「お前の狙撃でアレを狙い撃てるか?」
「角度次第ですが……やれます」
「よし、あのカラスが討伐可能と判断出来たら猫で誘導、加賀で撃滅する。いいか、金剛」
「いいでしょう。その為にもまずは情報の解析……つまるところ128の現地調査デスネ」
「最近は出撃もめっきり減っているようだよ。けど、個人的に128の司令官がこんなことに加担するなんて思えない」
「響……」
「響さんは128の提督に詳しいのデスカ?」
「元々127から130の4鎮守府は交流が深かった。127と128はライバル関係でスタンスが異なっていたとはいえ、響は特に128の田丸司令を尊敬していたし向こうもそれに応えるような清廉さを見せるような男だったぞっぴょん」
「となると、可能性としては128鎮守府そのものが敵の手に落ちている、か?」
「電さん達の話では海風さんとの連絡が以前から、特にここ数週間は途絶え気味であったということから長期に渡って手を加えられている可能性はありますね。ただ、そこまでだと怪しい出入りがありそうなものですが……」
「もしかしたらカラスのような洗脳装置が128にあるのかもしれんぞ。それを設置してしまえば後は出入りも必要あるまい」
「……その可能性を含め、現地調査が必要デスネ。私と私の憲兵隊で調査に向かいマス。中村さん、艦娘母艦の準備を。海路の方が向こうへは早いデス」
『中村了解、艦娘母艦のスクランブルに入ります』
「私も行くよ。この中であの鎮守府に一番詳しいのは私だから」
「電も連れていけ。カラス同様の装置であれば悪意のエーテルとやらが出るはずだ。生半可な装置より役立つだろう」
「りょ、了解なのです!」
「では、金剛隊と響さん、電さんは128へ。加賀さんと鎮守府妖精隊は128の決着がつき次第対カラスの準備を。基本作戦はそれで行きましょう」
「「了解」」
「響の代わりの情報指揮は俺が執る。不知火、いや福山。お前は海風の感情を引き出す悪役に徹しろ」
「ええ、参謀。そちらはお任せします」
こうして、迅速にプランを立てて128へ出撃するのであった。
11:00 第127鎮守府
あれから、私と江風が海風に付きっきりになりつつ様子を見ていた。私が話しかけないと私の存在すら忘れる様子だったけど、話しかけると想定外からか混乱して、カラスが鳴いてまた元通り。その連続だった。
「江風、久しぶりの江風~!!」
「ほおずりするなァ!!鬱陶しい!!」
「こんなに過激なスキンシップしてたのアンタ達」
「してねェよ!!」
「海風、昔と比べて肌ツヤとかどうなってるの?江風」
「それはもちろん、昔と……昔……?あれ……?」
【カァー】
「そう、江風はずっと大事な、大事な……」
「揺さぶりかけるの割と楽なのよね……」
「同期でも関わり薄かった瑞鳳や羽黒が話しかけても塩対応、というか想定通りな感じだったから霞がホント想定外なんだろうなァ」
「私以外皆悪の127の手先、みたいなかんじだものね」
『こちら加賀。あのカラス、洗脳しなおすたびに羽を大きく広げるのね。多分飛びながらだと出来ないんじゃないかしら』
『こちら情報部の妖精さんだよー。すこーしずつ、だけどあのカラスのエーテル量が低下してるよ。まだ最初に比べて9割はあるけど』
「出来るだけ削っておいたほうがよさそうねぇ……」
「か~わ~か~ぜ~!!」
「胸を!押し付けるな!!イヤミかお前!!」
「……その前に江風がツッコミ疲れで倒れないかしら」
「江風大変なの!?お姉ちゃんが介抱してあげるね!!」
「お前のせいだってンだよ!!!」
「混沌としてるわねぇ……」
洗脳の下準備はしっかりしているらしく、元々知り合いである瑞鳳達が絡んでも洗脳に揺らぎはなくて、他の職員も敵の手先、として警戒を続けている感じだった。この中では私、と保科ちゃんぐらいだろうか。想定外の存在からのアプローチにはてんで弱かったのだが、そこはカラスで補強しているようだった。
「あ、いました!こっちです!」
「せんぱーい!」
「ア?おま、まじで来たのか友永!」
「先週行くって言ったじゃないですかー!それになんですかなんか先輩の取り合いが-ってネットでも話題になってますよ!」
「マジかよ……」
「江風、この子たちは……?」
「ア?あー、私が艦娘になる前から付き合いのある一つ下の後輩だよ。一般人」
「友永理恵です!そちらは先輩……江風さんのお姉さん、ですか?」
「そう!私は江風のお姉ちゃんの海風!ずっと前から、ずっと……?」
【カァー】
「そう、私は江風のお姉ちゃんなの。よろしくね」
「……今のって、先輩」
「事情、知ってんのか友永」
「保科さんから聞きました!『お話』、たくさんしましょうね!」
「こっちも効くのね……まあ、そりゃ想定してるわけがないか」
その後友永理恵という子の祖母――なんでも江風が命を助けた人らしい――が合流し、海風への揺さぶりが強化されていくのだった。
11:30 127鎮守府応接室
応接室には大本営から視察に来た視察団が来ていて、私と秘書艦の弥生さんが応対していた。
「……福山司令。今朝の件だが」
「128鎮守府の海風さんの件ですね。アレは打ち合わせ通りです」
「というと?」
「鎮守府の意義を知ってもらうために観光として鎮守府を解放しているのはご存じの通りかと思います。ですが、ただ開放していれば無条件に人々が受け入れてくれるわけではありません。営業努力、というものが必要になります」
「最もだな」
「そこで、実験的にイベントの内容に手を加えるプランを計画していまして。それが今朝の一件だったわけですね」
「随分と一触即発な空気だったと聞いているが」
「視察団の皆さんはヒーローショーなどを見たこと、ありますか?」
「どういうことかね弥生秘書艦」
「特に子供向けのイベントです。悪役が時には来場者を巻き込んでヒーロー役に喧嘩を売り、成敗される。体験型で劇場型のイベント、です」
「アレもそうであると?」
「外部の方を悪役に据えるわけにはいきませんし、それこそ来場者の方を巻き込むわけにはいきませんから、共通の知人である弊鎮守府の江風さんを『巻き込まれた客役』に、私を悪役に。そして外部の海風さんをヒーロー役に当ててみるという試みでした。想定以上に海風さんの演技に熱が入っていましたから、掴みはよいようですね」
「今後も続ける、と?」
「反応次第ですね。手間と通常不要な演技を求めなければいけませんから、効果が薄ければこの手の小芝居はお蔵入りにしていきますが今回はその試験運用です」
「なにしろなにもかも前例がない、ですから試すしかないです」
「うむ……」
「現在もかの海風は演技を続けているようだが?」
「やるなら徹底的にやる、が今回のコンセプトでして。少なくとも15:00の演習が終わるまではあの演技でいて頂くよう依頼済です」
「話題にされる、が重要ですからネットで話題になっているのも成功と言える、状態です」
「ふむ……」
「貴方方には心ゆくまでこちらで見ていてくださればよろしいかと。何かありましたらお呼びください。弥生さん、案内の方よろしくお願いしますね」
「わかりました福山司令官」
とりあえず視察団の牽制と言い訳は上手く回せている。最も、それぞれにリソースを大きく割いている現状、通常執務の蓄積が大変なことになっているが……後回しにするほかないだろう。参謀も弥生さんも対応に奔走してもらう現状では対処しきれない。今をしのぐことを優先する。……今日も徹夜になるだろうか。
(睡眠の不要なダークファルスの肉体で良かったと思いたくはないんですが、感謝せざるを得ませんね)
(ですが集中力などから能率は落ちていきます。息抜きなどの指示には従ってもらいますよ)
(ええ、その辺りの指示はお願いしますね不知火)
13:00 128鎮守府
「さて、着きましたネ」
「電、どう感じるかい?」
「う、うぅ、悪意が、悪意がすごいのです……!あの、本棟の屋根上のアレから特に……!」
「アンテナ、ですネ」
「うん、以前にはあんなものはなかったよ。……そしてお出迎えが来たみたいだね」
ばたばたと128の面子が集まってくる。事前通知もなしだから蜂の巣をつついた状態になるのは当然だろう。そして当然のように砲をこちらにむけている。
「そう構えないでおくれよ。たまに遊びに来るぐらい、以前はよくあったことだろう?夕雲」
「127は、敵……」
「随分と嫌われてしまったね。田丸司令官は元気かい?」
「……呼んだかね、127の響」
「この人が……128の司令官……!」
「最近つれないから来てしまったよ。急な来訪はお詫びするとしよう。ところで――」
「早く、帰れ……でなければ」
【ウヴン】
「総員、攻撃用意」
「攻撃用意」
「ッ!?」
「悪意が、悪意が……!」
「やはりアレが監視装置兼洗脳装置デスカ。できれば分析したかったところデスガ、いいでしょう」
「金剛さん?」
「炸裂弾、Fire!」
金剛さんは唐突に艤装を展開、本棟の屋根ごとアンテナを一撃で吹き飛ばしてしまった。……一撃で命中して破壊して見せる辺り、流石横須賀の筆頭戦艦というべきか。
「あぐ、あぁ!?」
「攻撃、中止、お前達、攻撃中止だ……!」
「田丸司令官!」
「夕雲さん達も大丈夫なのですか!?」
「まだ近づかないでくだサイ。電さん、他の悪意はどこにありますカ?全て破壊しマス」
「えっと、こっちなのです!」
「響さん、そして憲兵隊は監視を。私達で破壊してきマス」
「桐ヶ谷了解です!いやー、お姉さまは思い切りが良くて惚れ惚れしますねー!」
「桐ヶ谷はホントこういう時大きく構えるよなハハハ」
「……ここまで事が早く進むとは、思わなかったよ」
それからしばらく。砲撃音が響くたびに128組は苦しみ、鳴りやむ頃には気絶してしまっていた。本能的にこちらを排除しようとするのを田丸司令官が止めていた当たり、不本意な洗脳だったことは明白だろう。
14:00 第128鎮守府医務室
気絶した皆を医務室に送り、127の状況を確認していた。こちらで破壊するたびに海風の方にも影響があり、カラスがひっきりなしに鳴いていたそうだ。それを妖精の『エラー猫』――本来は非常時に鎮守府機能をシャットダウンするセーフティ担当の妖精――が追い回すことでより揺さぶりをかけることが出来たそうだ。カラスのエーテル量も半分を切ったそうだ。
「う、ぐ……」
「田丸司令官、目が覚めたかい?」
「響、か。私は……私達はそうか。好きに操られていたらしい」
「先に目が覚めた夕雲も前後不覚で話をする余裕がないようだけれど、大丈夫かい?」
「大丈夫ではないが、待つ余裕もないだろう。海風を、そちらに送り込んでしまっている。アレは大丈夫か?」
「大丈夫だよ。この後演習として梓……福山司令官とやりあう手はずにお膳立てしたから悪い騒ぎは抑えているよ」
「その辺りのフォロー、相変わらずだな……ぐっ」
「無理をせず、とは言えまセン。貴方方をおかしくしていたのは、大本営から来た一派が仕掛けていったあのアンテナなどの装置によるもので間違いはないデスカ?」
「横須賀の……ああ。第二技研からのということで数か月前から仕掛けられていたが、それの影響で段々思考がおかしくなってしまってな。段々違和感も感じなくなってしまったのと、時折来る『指令』に従うことが絶対となっていた」
「『指令』、デスカ」
「アンテナを通してだろう、直接人員がやってくることはなかったがな。海風の派遣も同様だ。それに海風は……ぐ、力の発現に力を入れさせられていた」
「力?エーテルの?」
「127でも数件あるんだったな。そう、その力だ。海風は魔法のような力を会得していた。強制の下だからか大分不安定ではあるし、使用時の感情の昂りは……今となっては見ていられなかったが」
「こちらを制圧したから彼女も解放されマスカ?」
「……いや、海風には専属で更にカラスが付けられていた。アレを破壊しないことには厳しいだろう」
「破壊しても大丈夫だと?」
「私達の状況でいいのならそうだ。まあ、私達のように錯乱する可能性が高いが……操られ続けるよりはましだろう。助けてもらえるだろうか?」
「当然。その為に動いているからね」
「あのアンテナ群、破壊するときにすごい悪意がばら撒かれる感じだったのです。ちょっと落ち着かせるのをしっかりしないと大変に……落ち着かせる……」
「……雷、だね」
「カラスを撃破するタイミングで雷さんに癒してもらう方向で行きますカ。なんなら気絶してもらう方がちょうどいい……ふむ」
「いっそのこと出し切らせるかい?」
「それがいいデスネ。127に通達しまショウ。福山司令には派手に戦ってもらい、撃破されてもらいマス。その瞬間を狙ってカラスを撃破。回収の形で雷さんに急行してもらい抱きかかえ続けてもらいまショウ」
「そしたら、取って返して127に……」
「戻るのは操舵の中村さんと響さん、電さんだけでお願いシマス。こちらには破壊を感知して敵が戻ってくるとも限りません。私達横須賀隊がここの防備に付きマス」
「桐ヶ谷、横須賀本部への連絡完了です!今追加の兵員を送ってもらってます!」
「……というわけですので、後は頼みましたヨ、皆さん」
「そうだね、こちらはお任せするよ、金剛さん」
「早く戻りましょうです!多分決着には間に合わないと思いますけど……!」
友永祖母「あらあら、蒼さん……江風さんもそのお姉さんも浴衣映えしそうな美人さんになっているわね。もちろん、元が似合わないわけではないけれど」
江風「姐さん、着物持ってきてるンすか!?」
霞「どういうこと」
江風「和服の流派の家元なんだよこの人。っても、気軽に着れるのが和服だってスタンスだから着やすいの重視でさあ」
友永祖母「演習までお時間あるでしょう、試しに衣装合わせしてみません?」
海風「え、あのえっと」
カラス【カァー!】
海風「あう、あ……」
友永祖母「姉妹で対称にしていくのも良さそうね!そうなるとこちらはどうかしら」
霞「なんでそんなに持ってきてるんですか」
カラス【カァー!!】
海風「うひっ!?」
江風「めっちゃ鳴くじゃんカラス……」
霞「家本さん強ッ!」