霞が帰ってから2日後 10:30 第127鎮守府執務室
雷の姐さんの暴走から数日明けて。私は響の姐さんに執務室に呼び出されていた。
「やあ江風。呼び出して済まないね。君にも参加してもらいたい話があるんだ」
『改めて話をした方がいいかしら?』
「そうだね、頼むよ夕雲」
「えと、その人は?」
「128の夕雲、で通じるかな。海風のいたところの秘書艦だよ。興味深い、かつ私達が関わるべき話を持ってきたんだ」
『改めまして128鎮守府の夕雲よ。話というか依頼ね。一昨日、南西海域を探索していたとある鎮守府の一部隊が潰走したの。大破した駆逐艦が一人殿を務めて残りは生還。近場を航行していた私達の部隊が救援に駆け付けたの』
「それじゃ、生還は……」
『結果から言えば撤退組は回収できたけど、残った生存者は見つからなかった。けど、不可解なことがあったの。……現場に駆け付けた時、深海棲艦の残骸『だけ』が確認されたの』
「ン、アレ、敵の生存者もなしってことっスか?」
『その通りよ。殿の子がやられたなら敵が残っているはず。逆に殲滅できたなら殿の子が残っているはず。同士討ちだったとしても深海棲艦の艤装だけが沈みかけている状況は不自然よ』
「ってことは、誰かが先に駆け付けて深海棲艦を撃滅した?」
『それにしては、広域に探索をかけても、周囲への出撃情報を照らし合わせても艦娘の出撃記録も反応もなかったの。おかしいと思わないかしら?』
「……友好的な深海棲艦が助けた?」
『あるいは殿の子が沈んだ後に駆け付けた深海棲艦が撃滅したか。でも、あの海域に友好的な深海棲艦なんて存在しないわ。敵対的、それも素行の悪い深海棲艦の溜まり場だもの。今のあの海域は』
「そこに私達の、というかタ級がアウトローにつけた発信機が出てくるんだ。流石に反応が遠すぎて発信は途絶えてしまったんだけれど、アウトローが先日帰っていった先、その進路上にその海域が存在する」
「南西の連中に協力してたってことは根城がそっちにあってもおかしくない……か」
「更に、アウトローはこう言っていたんだ。タ級の戦い続ける気かという問いに対して『もうしない』、とね。そうなると、一つの仮説が思い浮かばないかい?」
「アウトローの奴が助けた……?」
「彼女の思考回路は深海棲艦としても特殊。理解の範疇を超えている。だから、アウトローに一番理解が深いと思う君の見解を聞きたい」
「……アイツは今まで強くなることが、多分艦娘や他の深海棲艦に喧嘩を売ること、ひいては南西の連中に協力することまで含めて強くなるために自分を鍛えたがってたンです。多分、自分という存在に意義を持たせるためには強くなる以外の手段が思いつかなかったから」
「タ級の話からもその話は聞いているね。大破した艦娘にトドメを刺さない理由も艦娘の撃破が目的ではないからだ、とも。」
「だからこそ、私が艦娘になる前に遭遇したときに助けてくれた時も、私が理解の範疇を超える行動をしたから興味を持っての行動だった。そんなアイツにとって、その殿のヒトが興味を持つ存在だったら。助けるかもしれない。何かそのヒトについて分かってることはあります?」
『撤退していた僚艦が通信越しに疲れちゃった、って言葉を聞いているわ。それから通信が途絶えてしまったようだけど』
「心折れても戦場に居続ける。アイツにとっちゃ摩訶不思議。……可能性、あると思います」
「……なら、方針は決まったかな。梓」
「ええ。我が第127鎮守府隊はアウトローの捜索を。彼女経由でその方の消息を捜索します。第128鎮守府の皆さんは引き続きそちらの方針で捜索を続けてください」
『分かったわ。正直、その子の生存は絶望的だと思っているけれど。この謎は解明すべきだと思っているし、南西の状況の解明も急務だからね』
そうして、アウトロー捜索の作戦が開始された。
14:00 アウトローの根城
「だから聞かせてくれよ、その時のお前のさ」
「うぅん、その時は……」
私は拾ったソイツ――轟沈判定?とかいうので艦娘じゃなくなってるみたいだがよくわからねぇ――に話をせがんでいた。なにもかもが興味深い。
「……その辺りからかな、段々疲れてきちゃったの。私には帰るところもないし、けれどやっぱり戦うのが怖いし。どこかで死んじゃうんじゃないかな。でも、他に何があるのかなって。そう考えたらもう、いいやって」
「戦うのが怖いかー。うーん?」
「普通、艦娘になったら鈍くなるんだけど。私はそこまで鈍くならなくて。砲撃や爆発の音はびっくりして怖いし、攻撃を受けたらその痛みで心臓がきゅっとなっちゃうし、襲ってくる深海棲艦が、とても怖かった」
「やってらんなさそーなのは分かったよーな」
「うん、やってられなくなっちゃったんだ。それであの日、予定通りに深海棲艦の部隊をやっつけて。その後に予定になかった深海棲艦の増援がたくさんやってきて。私も大破して、仲間の悲鳴も聞こえてきて。もう嫌だって思ったの」
「ソレが一昨日か」
「うん。でも、逃げる勇気も力もなくて。だったら、せめて皆を逃がしてちょっとだけ自己満足に浸りながら終われればいいかなって思ったんだ。そうしてやられて、ああ終わったな、って思ったら貴方が助けてくれた」
「興味持った奴は助けたほうがいい、ってのはアオイで学んだからな!」
「そのアオイさんってヒト、すごいなって思うよ。私はそんなに勇敢でいられないから」
「あれで踏ん張れてるお前も中々だと思うんだけどなー」
「そうなのかな……げほっ!」
「おい、どうした!?」
「げほっ、ごほっ、うぅ……」
「おい、オイ!?なんか体が熱くなってるぞ!?どうなってんだ!?」
「もう駄目、かも……」
「おいおいおい、そんなの嫌だ、嫌だ……!嫌?だったらどうすりゃ……」
―――アオイならどうするんだろう。
「そうだ、アオイ!あ、でも、えっと……!!」
『聞こえる?アウトロー』
「アァ!?統率者(コマンダー)テメェ!今相手にしてる暇はないん――」
『127の連中がそっち方面を嗅ぎまわってるの。沈めなさい』
「アオイ達が……?」
『それにその捕虜も使えば少しはやりやすくなるでしょ。これ以上奴らに好きにさせるつもりはないの』
「コイツは捕虜なんかじゃ……!」
『そう、ならアンタへの人質として使わせてもらおうかしら?人間に肩入れするなんて、馬鹿ねぇ』
「ク、ソ……」
『いいから出撃して、あの忌々しい艦娘母艦だけでも沈めてきなさい。そうしないとその人間を殺すわよ』
「ああもう、やりゃあいいんだろチクショウ!」
どうすればいいんだろう、なあアオイ……
14:30 南西海域
私達127隊は一昨日戦闘があったというエリアを起点に捜索していた。
「つってももう痕跡なんてねーか……響の姐さん、発信機の調子は?」
『まだ反応はないね。周囲に関しても夕雲達の調査の結果から……うん、そこから南南西方面に孤島群があるからそちらに針路を進めてみて欲しい。深海棲艦が出現して以降立ち入りのない無人島がいくつかあるんだ』
「中村了解。針路を南南西に。……っと!」
「おわっ!?中村の兄さん!?揺れたけどどうしたンすか!?」
「この船自体にガタが来ていてね。超高速機動や無理をさせ続けてきたけど、本来これはそんなことをする高速艦じゃなかったんだ。その廃棄予定のモノを改修して実験装備を積んで運用している、というわけでね」
「確かに、ところどころボロいっスもんね……」
「この船や横須賀の船で得たデータを基に新型艦を造ってるそうだけど、それまでこいつが持ってくれるか……!福山司令官ももう少しこの子をいたわってくれる任務を計画してくれると助かるんだけどね……!」
「いつもスペックギリギリ攻めるとこありますからね……使えるものは使っていって、使い潰せばいいってスタンスだもんなてーとく」
「大切に扱いたいこちらの身にも……レーダーに反応、響さん!」
『邪魔が出たようだね。針路上に水雷戦隊3部隊分の展開を確認。艦娘母艦はそこで固定。各艦は速攻で敵を撃滅して進路を開いてほしい』
「卯月了解、行くぜ野郎ども!武装して準備出来次第各員発艦!数が数だ、全員で突破してさっさと進むぞ!」
「江風了解、カタパルト行きます!中村の兄さん、船、よろしく!」
「了解だよ!」
その後順調に突っ込んできた敵部隊は掃討できたものの、更に増援がひっきりなしに出てくる事態になっていた。
「ああクソ、どんだけいるんだよこいつら!」
「友軍が潰走したってのも分かるな、キリがねぇ!」
「修復材や補給物資は艦娘母艦にあるからまだやれますけど、ねっ!」
艦娘母艦の強み、それは修理・補給が現地で行えることによる継戦能力の飛躍的な増加にある。問題は運用コストと狙われたら母艦自体の耐久面から危険が過ぎるということだけれど。
「タの奴が護衛についてるから墜とされやしねぇ、がうっとうしいんだよっぴょん!」
「それに、こいつら恐れってのがないのか……統率者って奴の仕業っスかね!」
「戦力の逐次投入はクソだって言ってもこの規模で士気無視でなら話は変わるってか!腐っても南西のネームドってわけかよ!」
『響だよ、撤退も視野に……南南西方向から反応1、アウトローだ」
「ッ!!」
「アオイィー!!」
「アウトロー!ってうわっ!?」
「お前を倒さないと、でもお前なら、畜生畜生!!」
「クソッ、どうしたお前!?」
「このままだとアイツが、アイツが……!」
「……おい、アウトロー。説明、しやがれ!そのアイツってのはこの辺でやられた駆逐艦の――」
「そうだよでもお前をやらないと統率者がアイツを殺すって!でもアイツなんか艦娘になれなくなって熱くなって咳き込んでヤバいからどうすりゃ……」
「素体の状態で発熱、症状の悪化……そんでなおかつ人質?」
『こちら中村、敵の増援を確認!北西から!』
戦況は最悪に近くて。そしてアウトローは迷っている。迷ってるけど、答えは多分出ているんだろう。だったらさ。
「あー、ごちゃごちゃしてきた。なァ、アウトロー」
「な、んだよ!」
「お前はどうしたい」
「は?」
「お前はその人をどうしたい」
「もっと、話を聞きたい!死んでほしくない!だからどうすりゃ――」
「なら、余計なこと考えてンじゃねーよ。やるこた、一つだ」
「ひと、つ?」
「その人ごと私達と一緒に来い、アウトロー!そうすりゃ、その人は死なせねぇ!その為に、協力する!」
「でも、私はお前たちと敵対してて、それにアイツももう帰る場所がないって……」
「知るかンなモン!そんなの助けた後に考えりゃいいんだよ!どうとでもしてやる!させる!テメーには借りがあるんだ、返させろボケがよ!!」
「借り……?」
「あの冬の日お前に命を助けられて!艦娘になるように道を示して!今度は私の番だってンだよ!ちょっと待ってろ!」
「え、おい、アオイ!?」
母艦に駆け戻って物資の一部をひっつかんで再出撃。ああ、そうだ許可というか宣言はしないと。
「こちら江風、アウトローごと保護対象引き連れて来たいんですけどいいですかねェ!!」
『こちら不知火、許可します。医療班を準備させます。そのスターアトマイザーの使い方は分かっていますね?』
「大丈夫っス!」
『では、不知火より各員へ。母艦はその場で待機。江風さんはアウトローについて保護対象を連れて母艦まで戻ってきてください。回収次第、最大船速で鎮守府に撤退を。卯月さん、同行をお願いします。弥生さん、128、129に連絡を。サポートに回ってもらいます』
「りょーかいだ梓!おいアウトロー、アタシもついていくからさっさと回収するぞ!」
「え、あ……」
「後悔したいか、したくないか。それに合わせて行動すりゃいい。それだけだよ」
「……ああ、こっちだ、頼む……!」
「加速装置とかあるならそれも使え!こっちもあれやこれやのオプションでついていってやるから!」
「江風ー!お姉ちゃんが守ってるから!早く帰ってきてねー!?」
「ぶっちゃけ余裕ないのでさっさと頼むのです!!」
「ふふふ、段々気分が高揚してきました」
「加賀、それは余裕がなくなってるだけよ!?」
「この作戦、終わったら有給とるんだからぁー!!」
「空母隊が乱れないでぇー!!」
「いやマジで頼むぞお前ら!?」
「暁よ。ベテラン組も頼りな、さい!ヲ、次の攻撃後に赤城・瑞鳳とスイッチして出撃!長月、菊月、ハ!北西の抑えはお願い!天龍、補給は済んだ!?」
「天龍、いつでもいけるぜぇ……!」
「こちら龍田、準備できてるわよ~」
「新人たちは一回引っ込んでこの陽炎お姉ちゃんに任せなさい!」
「不知火以外出せる人員全員母艦に放り込んできた甲斐があるっちゅーもんやな!」
「タ、母艦は守り抜くよ」
「ルだ!砲撃かます相手の指定、頼むぞ暁ィ!」
「雷よ、疲れたら私が癒してあげるから、頑張って!」
仲間たちにこの場を託して。私と卯月の姐さん、アウトローの3人は海域を強行突破してアウトローの根城に向かうのだった。少数の鎮守府だからこそできる、総力戦だ。
14:45 アウトローの根城
私達は全速力で全部ぶっちぎってアウトローの根城のある孤島までたどり着いた。高速移動用の装備、見直さなきゃなァ……
「おい、ハナ!無事でいろ、ハナ!!」
「保護対象のヒト、素体はハナさんっていうんだってクソ、周囲に敵反応!もう近づいてきてやがるのか!?」
「なわけねーだろ、どうせ最初っからどう動こうが人質として確保するつもりだったんだろうぜ。だからこそ人型級ばっかりだ。……あいつらの足止めはアタシがやる。行ってこい」
「りょーかい!行くぞアウトロー!」
「お、おう!」
勢いよく接岸して孤島にある洞窟に突入する。アウトロー、お前こんなとこに住んでたのか。
「はー、はーっ、あうとろー、さん?」
「ハナ!!」
「雑に癒せ!スターアトマイザー!!」
「えっ、あっ……」
「大丈夫かハナ!?」
「少し、楽になった……えと、貴方は?」
「私は江風……蒼のが通りがいいか?アンタを助けに来た。いや、生かしに来た、だな」
「貴方が……でもごめんなさい、私はもう、艦娘として……」
「ンなこたどーでもいいんですよ」
「えっ」
「南西エリアの調査、そもそも横須賀、私らの上司が依頼しての任務でしょ?それで死なれたら後味が悪い。それに、アウトローがアンタを生かしたがってる。アンタの抱えてる事情は知らないけど、そこはなんとかするから今は生き残ってもらいに来た。それだけ」
「アオイ、お前……」
「いーんだよ、こんな自分勝手な理屈で、動機で。ウジウジ悩んで後悔するよかばーっと動いて後始末に頭抱える方がずーっとマシだ。アウトロー、お前の要望も。ハナさんだっけ?アンタの要望も。応えるからその命、救わせて」
砲撃音が近づいてくる。そろそろまずいか。
「アウトロー、しっかりハナさんを抱えろ。なんなら尻尾で囲え。そこに私の持ってきた呪術具でさらにカバーしてやる。いいか、ハナさんは生身だ。駆逐の弾1発でも喰らえば死ぬぞ、指一本触れさせンなよ!!」
「お、おう!」
「最大船速じゃ私らのほうが上だ、それにカテゴリーDだろ、外の連中も母艦襲ってる連中も。なら、全力で無視する奴に当てる技術なんざねーだろう。行くぜ!」
「ハナ、しっかり捕まってろ!」
「え、あ……」
「出撃ー!!」
「来たか!面倒な動きする奴だけ相手する!江風もそのつもりで動け!」
「りょーかい!さあ、私ら好みの未来を、掴むぞオラァ!!」
15:00 南西海域
「見えた!こちら江風、保護対象を回収!状況は!」
「間に合ったか!こちら天龍、姫級が邪魔してきやがる!強行突破するにもコイツ落とさねぇとだな!」
「アッハハハハハ!!」
「あれかぁ」
「肉壁の後ろでふんぞり返ってるじゃねーか」
「アウトロー、とりあえずハナさんを母艦の中に突っ込め!そしたらあのボケ殴り飛ばして全員で脱出する、いいな!」
「お、おう!ハナ、もうすぐだからな……!」
(無言でアウトローに抱き着いている)
「アッハハハハハ!!アウトローじゃない、やっぱり裏切ったのねアンタ!知ってるわ!知ってるわよ!その母艦もその小娘も殺せば全部全部終わりだってねぐへっ!?」
「『シンフォニックブレイク』!黙ってろクソ野郎!」
「こいつ、周りを全部無視するなんて……!?お前達、早くこいつをやりな……私を狙うな!?」
「口だけの雑魚がよォ……!」
敵を無理矢理かいくぐって姫級に蹴りを入れてやる。全員母艦狙いでその障害になる前衛を排除しようとするムーブしかしてないから、かいくぐるのは容易だった。そして私を排除しようと配下にねらわせようとするが、コイツに張り付いているわけで、配下はカテゴリーD級なわけで。誤射は免れない。
「っぐ、お前達、しっかり狙いな……がっ!?」
「術具もありったけ使っていくぜオラァ!痺れてな!」
「この、こいつ、コイツ!沈め、シズメエエエ!!」
「本性現してきやがったがどうよ、アウトロー。こんなのと私達、どっちと行くよ?」
「そりゃあアオイ達だよなァ!!」
「がっ!?アウトロー、いつの間に!?この目障りな裏切者が!!」
「なんもしねぇ癖に噛みつくだけだった雑魚がよォ!邪魔を、すんな!!」
「それに裏切ったのはテメーだろクソ深海棲艦」
「なんですって!?」
「アウトローの奴を不誠実に振り回して、挙句の果てに勝手にハナさん捕まえようとして。先に裏切ったのはテメーらの方だぜ。くたばれ」
「ぐっ……!」
「合わせろアウトロー!『シンフォニック……!」
「全弾……!」
「ブレイク』!!」
「斉射だァ!!」
「ぎゃああああっ!!?」
「よし、さっさと引き上げろっぴょん!こいつらが混乱から立ち直る前に!撤退の為の足止めはしてるからよォ!」
「離脱方向はどうなってる!?」
「暁よ、ルが全部吹き飛ばしたわ!今ならいけるわ!」
「こちら中村、エンジン始動、いつでも行けます!」
「「撤収ーッ!!」
そのまま敵の砲撃もタの姐さんの防御で跳ね返しながら強行突破で撤退した。同時に友軍に連絡を入れてそちらも撤退を始める。今回は犠牲者は出さずに済んだようだ。
「……中村さん、船の容体は?」
「かなりよくないね。タ級さんの防御支援があったとはいえ、結構ダメージを受けてきている……しっかり修繕しなきゃ次の出撃は厳しいかもしれない」
「うっへぇ……」
「ハナ、大丈夫か、ハナ!!」
「うん、大丈夫、ありがとう……けほっ!」
「轟沈判定後の素体の人間ってのはだいぶ衰弱してんだ。その上でタフなお前が平気でも洞窟暮らしじゃ体調も崩れるだろうなっぴょん」
「んじゃどうすれば……!」
「そこら辺込みで医療施設が鎮守府にはあるんだ。安心しろっぴょん」
「でも、私……」
「そこら辺の進退はついて治療の後に考えろっぴょん。ゆっくり事情を聴いて、その上で決めたほうが都合がいいだろっぴょん?」
「悪いようにしないから安心してね?ぎゅーっ」
「あ、落ち着く……ふあぁ……」
「おい雷、大丈夫なのかよ?」
「もう大丈夫よアウトロー。やりすぎないから。あなたも抱き着いていいのよ?」
「やめとく」
「えー」
「雷お姉ちゃんのハグをやめとくだなんて……ありえるのですか、こんなことが!?」
「快楽堕ちしたシスコンは黙ってなさい」
わちゃわちゃとしながら鎮守府に撤退するのだった。
18:00 第127鎮守府
母艦を労わりながら帰還した私達を迎えたのは、ところどころ崩壊した鎮守府だった。
『響だよ。一番ドックは破損しているから二番ドックに入って欲しい。医療班の準備は出来ているよ』
「中村、了解……」
「え、何、何があったの!?」
『おかえりなさい皆さん。皆さんが出撃中、深海棲艦部隊の急襲にあいました。鎮守府地上施設を囮に、あえて上陸させて機動力を奪った上で基地航空隊込みの戦力で鎮守府ごと攻撃、私も前線に立った結果、鎮守府の破損こそしましたが敵の掃討は完了しています』
「完了しています、じゃねーよ梓ァ!!」
「なんで報告しなかったお前!」
『いえ、予断を許さない状況の皆さんの集中を削ぐわけにもいかず、さりとて予測通りで対処可能な状況だったので……』
「いやお前の想定そうだけどさ!そうだけどさ!!」
「天龍ちゃんが大慌てだから逆に落ち着いてきたわぁ……」
『医療班への引き渡し完了、治療を開始します』
『了解、そちらはよろしくお願いします。鎮守府の工廠妖精のみなさんは引き続き損傷個所の修理を。それと、各所に連絡を――』
「あ、てーとく待って!ハナさんは――」
『そちらの話は伺っています。ただ、生存のみ報告させていただいて、それ以上はこちらの状況次第で追加連絡する旨を伝えます。そうでなければ他の捜索班も手を止められませんからね』
「あ、ならいいけどさ」
『アウトローさんにハナさんは落ち着くまでゆっくりして頂き、その後に今後について話させていただきます。……それと追加連絡です。第130鎮守府攻略の準備がもうじき整います。皆さんには、覚悟と準備を』
「「!!」」
波乱に満ちた今回の作戦から空けずに大一番の作戦が始まろうとしていた。
姫級戦艦「クソクソクソクソクソォ!!アウトローめ、そしてあの小娘めェ……!」
統率者「ッチ、姫級をアウトローの根城に向かわせるべきだったかしら……!」
創造者(……誰も彼もが都合よくものを捉えすぎ、それが敗因か)
統率者「それに本丸に奇襲してやったってのになんで返り討ちなのよ!!」
創造者(……過去の戦闘データ、あの基地司令のコンセプトからすれば予測は出来たが……)
姫級戦艦「殺す殺すアウトローもタチバナアオイも殺してやるゥ!!」
統率者「どうすればいいのよああもうッ!!」
創造者(……煩い)
離島棲姫「なにこれ。馬鹿みたい(小声)」