少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 前回から新たに127鎮守府が結成されるまでの流れです。


38話 新生!第127鎮守府

 第127鎮守府陥落から数日後 夜 第1鎮守府医療棟

 

 

 第1鎮守府に併設された医療棟――現在浅田さんの妹さんが療養しているのもここですね。あの戦いの生存者はこちらでまとめて療養していました。北の姫との決戦に赴いていた暁さん達は第129鎮守府で一旦身柄を預かることになっていました。私も仲介役兼情報収集のためにこの医療棟に滞在していました。

 

 「渡された資料の解読も終わってしまったし屋上に上がってみるか……先客?」

 「えぐいの吸ってんなお前。味は良いとかなのか?」

 「最悪だよ。最悪だから吸ってんだよ……んあ」

 「邪魔をしたか」

 「ルーファか、構わねぇよ、こっちこいよ」

 「……ああ。その、お前が咥えているソレは?」

 「そっちには煙草ねーの?嗜好品だよ。後アタシは卯月な」

 「煙草……この異臭、体に害があると思うが」

 「実際に害はあるんだが軽微なのと、吸ってる時だけ幸福感得られるんだよ。合法薬物って言ってな。法が整備される前から流行ってたのと依存度がえげつねぇ禁止級の薬物に比べたらマシだからってお目こぼしされてんだ。でも、お前の違うんだっけ?」

 「まず吸っても幸福感もクソもねぇ。味は最悪臭いも最悪。寝ぼけた頭が嫌でも冴える程にな。半分ジョークグッズの類だよ」

 「マジで何で吸ってんだよお前」

 「現実が悪夢過ぎて、寝たらこんな悪夢から目覚めないかなって思っちまう。んなことはないのにな。……それでも、と思っちまうから昔から悪いことがあってもこれは現実だ、って意識に叩き込むために使ってたコイツを吸う、それだけだ」

 「……」

 「逃避をできないのは、厳しい道のりになる」

 「お前に何が!……いや、悪ィ」

 「構わない。似たような経験なら覚えがある。それだけだ」

 「だから助けてくれたのか?」

 「馴染みの深い悔恨をお前から感じた。私は悔恨の果てにここにいる。見て見ぬふりは出来なかった。事情を知って尚、それは強く感じている」

 「だったらお前さ」

 「なんだ、卯月」

 「復讐するって言ったら付き合ってくれんのか?」

 「卯月!?」

 「そんな気がないなら気休めを、やめてくれ……」

 「私を派遣した者とお前たちの上官。その見解次第だ」

 「あ?」

 「もし、お前たちに協力するというのなら。その復讐、付き合おう。まだ敵はいるのだろう?復讐を果たさなければ、守り通せた他の者たちも再び失うことになるだろう」

 「ッ!」

 「元々復讐のために力を求め、手に入れた力だ。そして、それだけでは何も為せないことを私は知っている」

 「あの戦闘能力で?じゃあ何が必要だって?」

 「協力し支え合うことだ」

 「……」

 「私がいくら力を求め、何度挑もうとも一人で為せることには限度があった。運命というモノは変えられなかった。だが、それを越えて覆した者がいる」

 「随分悔しそうだな」

 「未だに認めたくはない。だが、事実としてアレはマトイを……私が助けたくても叶わなかった者を、その未来をも救って見せた。現実として受け入れなければならない」

 「マトイ、それがお前の大事な奴の名前……」

 「私は悔恨のダークファルス【仮面(ペルソナ)】。抱えきれない悔恨の果てに狂った化け物。ならば、悔恨の先に仲間を、未来を救わんとするならば。協力を惜しむつもりはない」

 「お前……」

 「最も、私がこの惑星に滞在を続けるのか、別の任務が下されるのか何もかもが不明瞭だ。惑星調査の先遣隊としての任務は果たしのだから」

 「そういや惑星調査で来たんだったか」

 「やれやれ、これは意見を聞く手間が省けそうだ」

 「!?」

 「お前は……オキ、タ?だったか」

 「うむ。この横須賀は第1鎮守府の提督、そしてそれらを束ねる鎮守府組織の代表の一角として元帥と呼ばれているよ。ルーファ君だったね、君の上司、シャオ君との協議の結果なのだが……」

 「?」

 「この者らと一緒に戦ってはくれないかね?鎮守府の提督として」

 「は?」

 

 そこで沖田元帥から第127鎮守府を立て直すこと、そこに第127、第130鎮守府の残党を中核としたメンバーで編成すること、その形としての司令塔として私をという案が出されました。

 

 「私は一戦闘員でしかない。指揮は専門外だ」

 「構わんよ。大まかな方針は我々が出す。君は所属の艦娘達と共にそれをこなしてくれればいい。君に期待するのはその戦闘能力、そして死ななさだ」

 「敵が再び頭を狙ってくる、そう言いたいのか?」

 「うむ。その時が今回のような深海棲艦の襲撃であるか、はたまた130のような人間勢力の襲撃であるか、はたまた別の何かか。想定が出来ない状態だ。その中で確実に自衛が出来、死なないことで敵の士気を挫き作戦の失敗から敵の情報を炙り出せる人員が欲しいところだったのだよ。君達アークスのメリットとしては、この地球での滞在先・連携先として居場所と情報を提供していく。どうかね?」

 「……シャオ、話は本当か」

 『合っているよ。いずれカスラの部下でも送り込む予定だけど、艦娘と深海棲艦の関係がアークスとダーカーに似ているところがある。その調査も兼ねたいんだ。となると対深海棲艦の前線に人員を配置したい。けど、フォトンによる攻撃が通じないのは君も体験したとおりだ。だったら、その中でもどうにかなる君を宛がうのが最適解だと結論を出した。というわけで、頑張って欲しい、福山梓』

 「待て、その名称はなんだ」

 「地球で活動する、というよりもこの日本国というエリアで活動するのに戸籍が必要だ。それも軍人をやるなら日本人であることが無駄な波を立てなくて済む。故に日本人としての名前を君に授けることにした」

 「それがフクヤマアズサ」

 「福山が姓、梓が名だ。君の本名と掠りもしないから君と敵対する者が何かしらの情報を得ようとしてもこの違いが君を助けるだろう」

 「……成程」

 「そして天龍、卯月」

 「「!」」

 「君達や他の生存者にも声をかけるが、どうだろう。今回の襲撃者、及びその裏にいる者共の掃討のために敗残兵として戦ってくれるかね?」

 「当たり前だ!」

 「へっ、大人しく他所の鎮守府で全てを忘れて生きろとか言われるかと思って冷や冷やしてたんだ。俺も歓迎だぜ!」

 「では、残りの者にも声をかけていくとしよう」

 「説得なら手伝うぜ!」

 「頼もうかね。卯月、君はどうする」

 「アタシも……ルーファ、いや梓」

 「ああ」

 「……よろしく、頼むぜ」

 「……こちらこそ」

 

 その後響さんや長月さん、菊月さんの了承を得て。第129鎮守府に身を寄せていた暁さんや要入院だった秋雲さん、龍田さん、雷さんにも声をかけて。男であるから艦娘にはなれないが艦娘と共に戦えるようになりたい、という動機で憲兵をしていた坂田さんらにも参加してもらい。同様の志を持った方々にも参加してもらい第127鎮守府憲兵隊を組織しました。最も、龍田さんや雷さんに参加を決意して頂くまでにはだいぶ時間がかかりましたが。それが江風さん達艦娘訓練校卒業生の着任と同じタイミングになったと言ったところです。

 

 「……この秋雲さんに、まだ戦えっての?もう、提督も失って……頼りにしてた電さんだって失って!?」

 「仇討、したくないか?」

 「したいよ!けど、もう戦えないんだよ!私、私……!」

 「あの戦いでの負傷で素体でも重傷を負った結果、艦娘化しても足に支障が出る、か」

 「そうだよ、艦娘として歩くぐらいならできるよ。海の上だって移動できる。けど、戦闘挙動とか激しい動きは駄目なんだよ。素体としてはもう足が不随で完全に駄目で。艦娘としてすら……!こんな私じゃ、手伝えない!仇も、取れない!福山提督だっけ?アンタもさ、戦えない戦力なんていらないんでしょ!?」

 「……いや、必要だ」

 「え?」

 「私は基地司令を拝命したが元は一戦闘員でしかない。方針を第1鎮守府から通達されるとはいえ、管理事務など出来たものではない。だから、その補助を依頼したい。お前は秘書艦としてそういった業務に精通していると聞いている。どうだろうか」

 「こんな私でも、必要としてくれるっての……?解体じゃなくて?」

 「鎮守府組織の保障制度はまだ知らないが、不随の体で今後を模索するか我々と鎮守府を経営していくか、どちらがいいか考えて欲しい」

 「そんなの、そんなの!一緒にやりたいに決まってるじゃないの!!天龍、私騙されてないよね!?秋雲さんでいていいんだよね!?」

 「ああ!戦う方は任せろ、その代わり、事務の負担が今まで以上になるハードなことになるけどよ……」

 「どゆこと?」

 「表向き、復讐のための鎮守府としてやっていくと敵に警戒されたりで思うようにいかないしいっそのこと解体しろ、って他所が煩いらしいんだ。だから、カモフラージュとして色々やるんだとよ。えーと、なんだったかな」

 「一般への情報開示、周知の為の観光施設としての興行。戦闘面では卯月のような特異体質の艦娘のより良い運用を模索する実験部隊の仮運用」

 「それだそれ。艦娘の実情なんてほとんど表に出てこなかっただろ?より民間の理解と協力を得るために限定的に情報を開示する試みをしようって声が前から出てたらしいんだ。それに乗っかるんだとよ」

 「それは、忙しくなりそうだね」

 「……頼めるか?」

 「秋雲さんに任せなって!」

 

 そうして秋雲さんの協力を得て。第127鎮守府自体も鎮守府コアが無事だったため、各部の再建を少しずつ進めると同時に、「観光」と「防衛」の2つを両立させるために施設そのものを地下に移設するという大規模工事を行うことにしました。正式に再始動するまでに3か月を要したのはこの理由が大きかったですね。

 

 

 2027年1月 第127鎮守府 建造ドック

 

 

 鎮守府の再建を進める中でいくつかの課題を抱えていました。その1つが建造ドックです。鎮守府、というより鎮守府コアにとって最重要施設であり最もリソースを割く存在であり、平時は人の手により封印されているものの暴発の可能性もある鎮守府を鎮守府たらしめる存在。観光として開放している間に暴発されたら大スキャンダルとなることは明白でした。過去に鎮守府の女性非艦娘スタッフが不意に艦娘に『建造』されてしまった事例もあります。

 

 「建造をしないと艦娘にはなれないから重要施設ではあるんだが、建造しないならクッソ邪魔なんだよなぁ……」

 「コイツに割いてるリソース使えば色々出来そうだ、ってのは妖精達も言ってたしな。どうするんだか」

 「皆さん、下がってクダサイ。実験を始めマス」

 「お、金剛さんに……梓?」

 「……」

 

 実験とは、無理な艦娘化を行うことで建造ドックに過負荷をかけ、建造システムを破壊できないかと試すことでした。その対象に選ばれたのが、女性でありダークファルス、つまり人でない私でした。

 

 「壊せれば御の字、駄目でも改めて封印を強化するだけデス」

 「物は試しってか?」

 「しっかし、反応するのかね」

 「これが建造ドックで……フォトンのようなものが、いや、これは……アムドゥスキアで見たような……魂が巡っている、そうか」

 「なんか覚えがあるのか?」

 「地上を龍族が住まう惑星がある。そこでは死んだ龍の魂は星を巡り新たな肉体へと移っていく。その循環の中核にある地域と似た感覚がある」

 「宇宙って広いもんだな、そんなのもあるのか」

 「金剛、これを起動させればいいんだな」

 「ええ。封印解除。全力で!やってクダサイ!!」

 「……!」

 

 体を探られる感覚。しばらくすると、安定し始めました。まるで調べ終えたというように。そして、何かに引き寄せられる感覚がする中で建造ドックから大きな異音が発生しました。

 

 「おい、なんだこの音!?」

 「アタシらの時こんな音しなかったぞ!?やばくねぇか!?」

 「皆さん下がってクダサイ、何が起きるか分かりまセン、衝撃に備えて――」

 「――お前が」

 「梓?」

 「――ッ!!」

 

 何かを突き抜けて誰かが語り掛けてくる感覚。それに手を伸ばした時、建造ドックが爆ぜました。

 

 「げほっげほっ……おーい、大丈夫か!?」

 「……煙で梓が見えねぇ……」

 「……」

 「煙が晴れて……」

 「ッ、あの姿は!」

 「不知火……?」

 「成程、これが艦娘という状態か。死んだはずで……いや、死んだからこそ、ではないか?」

 「何言ってんだ?」

 「不知火の魂、のようなものが語り掛けてきているが……それが何か?」

 「は?」

 「?」

 

 艦娘化した際に心の中に不知火が入ってくるのを感じました。そして、先程沈んで死んだはずの自分の状況に困惑する不知火の話を聞いて。艦娘とはそういうものか、と思っていたらそんなケースは聞いたことがないと言われました。ええ、この世界の艦娘は死んだ艦娘の魂が新たな器に宿る、という形式ではありませんからね。無理に私という器に適する魂を建造ドックが探した結果、近しい異世界で死んだばかりだった不知火を次元を超えて引き寄せてしまい、その負荷で建造ドックが崩壊したようでした。

 

 「異世界の艦娘の魂が入る……予想外デスガ、過負荷による建造ドックの破壊は出来ましたシ、鎮守府妖精もこの状況は修復に専念しないと機能しないとも言っていマス。目標は果たせたと言っていいでショウ。それに、福山提督が艦娘不知火として戦えるのもカモフラージュに使えマス」

 「というと?」

 「卓越した戦闘能力は艦娘不知火としての異能である。そう印象付ければ貴方の正体に近づくことはより困難になるデショウ」

 「ではなるべく、この姿でいたほうがいいということか」

 「艦娘になれば深海棲艦とも戦える!そっちの訓練もだな!」

 「耐性などの変化も調べまショウ」

 

 そうして、『艦娘不知火の福山提督』という仮の姿が完成したというわけです。その後は建造ドックを修理できないように処置し、余ったリソースで車用口等の罠等のギミックなども作っていき。完成して少ししてから『卯月のようなイレギュラー艦娘の運用』というカモフラージュを兼ねて江風さん達を、そして戦力の拡充として瑞鳳さんと羽黒さんも訓練校からスカウトした形になります。後は皆さんの知っている通りですね。

 

 「……てーとく、一ついい?」

 「なんでしょう」

 「その敬語始めたのっていつ?」

 「その後ぐらいですかね……元々が高圧的な喋り方だったのもあり、身分を偽装するためにと口調を変えることにしたんです。慣れるまで大分時間がかかりましたし、今となっては敬語を止める方が難しいんですよね」

 「難儀だなァ……」

 「と、まあ。現第127鎮守府の経緯としてはこんなところです。この話で何か質問は?」

 「司令官さん、ちょっと関係あるか微妙なとこなのですけど」

 「はい」

 「司令官さんってダークファルス【仮面】じゃないですか。それで、本来この世界?の【仮面】は別にいて【深淵なる闇】のコアを引き受けている、と。……色々ケリがついたら、司令官さんはどうするのですか?

 「こちらのアークスと【深淵なる闇】の結末を見届けてから……それを参考に本来私がいるべき世界の未来を掴みに行こうと思っています。少なくともそれまでは、この鎮守府の司令でいるつもりです」

 「そんときゃ付き合うからな、梓」

 「頼りにしていますよ、卯月」

 「それなら私も、なのです!」

 「ぶっちゃけ皆同じこと思ってねぇ?てーとくがこっちの復讐に付き合ってくれたンだ。そしたら私達が手伝う番だろ」

 「期待、してしまいますからね?」

 「とーぜん!」

 「その為にもまずは、目の前のこと。打倒南西と自称マザークラスタの痴れ者ですね」




 鎮守府における建造ドックの占めるリソース割合は某GXのサテライなんとかキャノンぐらいのものだと思っていただければ。つまり外せば(破壊・封印できれば)色々な有力な設備が積めるということです。
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