少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 PSO2のジアニメーション関連回です。ただしダーカーの脅威、人のもろさはエピソード・オラクル準拠です。
 つまり残酷めな表現が入ってきます。


39話 思わぬ決別

 11:00 第127鎮守府地下牢

 

 

 ここ数日、捕えた協力者側の連中を取り調べをしていたが、あまり重要な情報は集まらず。必要な情報はあらかた東雲邸から確保できたし、この連中はついでに捕えておこうぐらいのノリだったから問題ないと言えばないのだが。

 そんな中で情報を吐ききったと勘で分かる私やそういう気を察知できる電、てーとくが判断した奴から処分して、残すところは電の両親だけになっていた。その両人を手錠をさせたまま私、電、憲兵隊の一部で囲んで取り調べをしているところだ。

 

 「で、まだ話すことありますよね?」

 「も、もうない!だから早く出してくれ!」

 「絵里香、早く私達を解放し」

 「嘘ばっかり。何年貴方達の娘やってきたと思ってるんですか?ばればれですよ」

 

 侮蔑した表情で告げる電。もし本当に何かしらの情報があるなら、極力抜き取っておきたいところだ。

 

 「とはいえ、こうなったら貴方達そう口を割りませんよね?こういった場合、気が変わるまでいつも時間かかってましたから……PSO2でもして時間を潰しますかね」

 「な……」

 「ふざけ……」

 「じゃあ、喋れ」

 「「……!」」

 「電、マジでなんかまだ抱えてる感じか?」

 「はい。ログインログイン……っと。アレはまだ手札を残してる時の反応なのです。もしそれが私達の知らない情報なのならば……」

 「吐かせねぇとな。指でも斬り落とせば喋るか?」

 「それはそれで痛みと恐怖で支離滅裂になりがちですからね……クエスト受注、っと」

 

 目の前で悠々とゲームをしていらだたせる作戦のようだ。確かにパニックになってあることないことわめき散らかされても情報収集として困る。既に目の前には数発弾丸を撃ち込んでいて、その時も命乞いしか出来ない状態になっていたのもある。

 

 「このクエストでもやりますかねー。ああ、外部からの助けなんて期待しないでくださいね。貴方達が協力していた人間は皆死んだんですから」

 「そんな、でも……」

 「でも?」

 「……」

 

 でも、の先がまだ生きてると確信できている人間の名前だとしたら。その名前は引き出したい。

 

 「そういえば、最近あまりPSO2やってませんでしたよね、私達」

 「まあ、最近ごたついてたからなぁ」

 「ウォパルを~っと。アレ?」

 「どうした?電」

 「ウォパルって虫ダーカーいましたっけ」

 「え?いなくね?」

 「ですよね、なんでエル・アーダが……って何コイツ硬ッ!」

 「おいおいなんだよ、バグか?そーいや私らマザーからPSO2のバグ取りとか依頼されてたんだったっけ」

 「絵里香、本当に俺達を無視するのか!?」

 「冗談じゃないわよ!絵里香!」

 「ほーら切れ始めて、ってこの、ダメージ通らないってアレ?」

 「マジにバグじゃん?」

 

 電の両親が段々切れ始めてきたのはいいが、今度はPSO2が何かバグを出したらしい。一度に来るのはやめて欲しいが……と思った瞬間、凄まじい悪寒がした。

 

 「電!なんか嫌な予感がする!」

 「え、なんですかってアレ、こいつ、組み付いて……いや、画面に向かってきて……!?」

 「電、端末放せ!」

 「ッ!」

 

 咄嗟にPSO2をプレイしていたエスカ端末を放り投げる電。そして、その端末から禍々しい気配がする。

 

 「な、なにこれ……」

 「絵里香、俺の前に投げるな!」

 「この気配、てーとくが本性出した時の……!?」

 

 電の両親の目の前、というか机の上に放り出された端末がひしゃげ、禍々しい気配が湧き出てくる。そして、それは形を成した。

 

 「エル・アーダ……!?」

 「そんな、さっき私がゲームの中でやりあってた……!?」

 「電ちゃん、江風ちゃん、下がって!」

 「ギシャア!」

 「ああっ!」

 「ひっ!」

 「あ……」

 

 蜂のような姿をした虫型ダーカー、エル・アーダ。それが身震いするように一回転した。そして、すぐ横にいた電の父親を巻き込み、頭を簡単に引き裂いた。

 

 「ああ、あなた……いや、いや、助け……」

 「あ、あ……」

 「電!しっかりしろ!こんのっ!」

 「俺達も撃つぞ!」

 

 後ずさりする電の母親。目の前で父親が無惨な死に方をして動転している電。それらに気を取らせないように主砲をぶちかます。憲兵さんの銃撃も一緒に。

 

 「ギシャア!」

 「クソ、効いていないってのか!」

 「早く、福山提督を呼んで……!」

 「わた、しが、わたしの、せいで……」

 「電!?」

 「……!」

 

 一瞬、エル・アーダが何かを悟って笑ったように見えた。そして、私達の攻撃を無視して電の母親に向き直る。

 

 「オイ待て、テメェ!具現武装!」

 「駄目――」

 「嫌ぁ、ハーバー」

 「ギシャア!」

 

 具現武装で出したツインダガーで斬りかかるも、それすら無視して電の母親を引き裂いた。まるで電に見せつけるかのように。

 

 「ああ……あああ、ああ……!!」

 「電ちゃん落ち着いて!最終的に殺す予定だったでしょうってそんな場合じゃ、福山提督早く……!」

 「くっ、このっ、がっ!?」

 

 エル・アーダに振り払わる。コンクリの壁に体を打ち付けて一瞬意識がとんだ、その間に。

 

 「私が、わたし、が」

 「電ちゃん!」

 「クソ、電……!」

 

 禍々しいオーラそのものに体を変容させたエル・アーダが電を包み込み、エスカ端末に吸い込まれるようにして消えていった。

 

 「嘘だろ、電……!ぐうっ!」

 「何事ですか!?ダーカー反応の残滓に……これは!?」

 「ふ、福山提督……」

 「てー、とく……」

 

 てーとく達が駆け込んできたのはその直後だった。

 

 

 11:30 第127鎮守府会議室

 

 

 体を強打した私が復調して、痕跡をてーとくが調査して、一段落ついて早急に集まっていた。

 

 「まず、敵の逃げが早い……既に追えなくなっていました」

 「江風の話だと、ウォパル、というステージをプレイしていたみたいだけど?」

 「ダーカーは転移能力を持ちます。もう別のところへ輸送されたと思っていい……くそっ!」

 「てーとく、ごめん、私が止められなかったから……」

 「いえ。交戦データを確認しましたが、あれほど防御に特化した中型ダーカー、エル・アーダは見たことがありません。恐らく、強引に拉致するためだけの存在」

 「拉致……ダーカーの巣とかって奴?」

 「アレをダーカー単体で行うのは見たことがありません。また別のものと推測すべきですが……一体……」

 「まず、電を拉致したダーカーはどのようなものか。その情報共有からだ」

 「了解です、参謀。アレはエル・アーダ。非常に強化されていたブースト・エネミーとでもいうべき存在。カテゴリは虫型ダーカー。【若人(アプレンティス)】というダークファルスの眷属です」

 「現在のその【若人】は、どうなっている」

 「核となる存在は他のダークファルス、【双子(ダブル)】によって捕食され、消滅しています。その直前に残滓を民間人に押し付けることで仮初の【若人】として活動していましたが、その人物も浄化され、正気を取り戻しています。後は力の大部分が惑星リリーパの地下に埋まっているだけ……」

 「力を埋める、とは?」

 「11年前、2代目クラリスクレイスと呼ばれた最強格のアークスが惑星リリーパにて【若人】と交戦、その力の大部分を本体から切り離し、交戦地の地下に封印することに成功しました。最も、その後の報復行動によりアークスシップ1隻の壊滅、クラリスクレイスの喪失及び多大な被害を受けることになりましたが……そこで先の【若人】の消滅となりました」

 「その埋められた力というのはどうなったのだ?」

 「現在も健在。アークスはその上に採掘基地を複数建設し、その力を少しずつ掘り出して無効化していますが……削り切れていないのが現状です。近年では、残された力そのものが形を成してその封印を突破しようとし、それをアークスが再封印するという戦いを行っています」

 「リリーパ採掘基地防衛線シリーズ、ね」

 「PSO2ユーザーの方々からはそう呼称されているものですね」

 「他に、電を拉致しそうなダーカーだかダークファルスだかは存在するか?」

 「いえ。他のダークファルスは現在全て討伐及び上位存在である【深淵なる闇】に吸収されていて、戦闘挙動を真似るだけのデッドコピーが存在するだけです。【深淵なる闇】の核になっている人物は私のIFのような存在。身を挺してその完全復活を抑えている状態。アークスに敵対するような行動はしないはず」

 「となると、その残された【若人】の力そのものが犯人候補か」

 「ですが、アレも本能がかろうじてあるだけの力の塊のはず……いや、だからこそ……依り代か!?」

 「そこを詳しく話せ」

 「ダークファルスは一言で言ってしまえば意思を持っただけの高濃度のダーカー因子そのものです。そして、ダーカー因子だけでは存在が安定しません。ですので、安定と強化のために人を依り代としてその存在を強固なものとしようとします。先の11年前の戦いで敗れた【若人】が民間人に残滓を、本来は残った力全てを注ぎ込んで乗っ取ろうとしたのもそういう流れです」

 「それが本能的な行動であれば、残った力の部分が思考能力を得て完全復活するために依り代を求める。不可解な話ではないだろう」

 「ですが、こんなこと今まで……」

 「時間もたてば頭も冴えるし準備も完了するだろう。であれば、何が起きてもおかしくは無かろう」

 「……ですね」

 「して、依り代にする場合だが……まあそのリリーパとやらだろうな、自分の力を最大限に注げる場なのだから。そのエリアに調査隊を派遣すべきだ」

 「そうですね。……聞こえますか、カスラ。緊急事態です――」

 

 その後、アークスに依頼して緊急調査が開始された。てーとくは発見時に急行する為待機。私達もそれに参加するつもりでいた。

 

 そしてしばらく待機していて、私と加賀とてーとくで話をしていた。

 

 「てーとく、電、大丈夫かな」

 「正直、わかりません。ダークファルス本体が依り代に憑依する際は、ほぼ一瞬で完了していました。ですが、今回のダークファルスはそのほとんどが封印され尖兵が活動できる程度の状態。これがいいように作用すればよいのですが……」

 「でも、なぜ電なのでしょう」

 「確かに、なんでわざわざ狙ったのが電だったんだ?」

 「ダークファルスは自分に適した依り代を好む傾向があります。【巨躯(エルダー)】であれば力、無力への怒り、【若人】であれば若さ、孤立への恐怖といったように」

 「そういうマイナスな願いに付けこむ悪魔ってことか」

 「ええ。私自身がダークファルスに変容した際も、膨大なダーカー因子と私自身の強い悔恨が共鳴してのことだったと記憶しています。であれば、今回の【若人】も……」

 「響だよ。もしかしたらと思って調べてみたけれど、複数件類似事例が確認されたよ。……PSO2をやっていたと思しき人物が複数名失踪している。やっていたと思われる端末が破損した状態でね」

 「ッ!」

 「行方不明事件として調査されているけれど、そのうちの1件はネットカフェ内で個室に入ったきりそのまま消失だ。そしてそのパソコンは画面から壊れていた。電の事例と類似しているね」

 「電さんに限った話では、ない……!?」

 「てーとく、ダークファルスってのは、依り代を何人もまとめて使うとかそういう奴なの!?」

 「いえ。一人だけです。で、あれば何故……」

 「聞いている限り、ダークファルス本体が選んでいるのではなくてその部下であるエル・アーダやらが捕まえて回っているのでしょう?その上でよりいい対象を選ぶために手当たり次第捕えているのかもしれないわ」

 「アークスのデータベースを参照してみましたが、本物のアークスの中にはダーカーに連れ去られた事例は確認されていません。地球からアクセスしているゲームユーザーのみを対象にしているようです」

 「いい依り代、ってつまり強いやつ、だよね。それで操作元の人間を連れて行ってみればフォトンの適性なんかない連中だった。……選り好みするなら迷ってるンじゃないかな」

 「可能性はありますね……そうなると、より電さんが危ない……!エーテル適正はフォトン適性に近しいもの。そして彼女のそれは高い……!」

 「マジか、電……!」

 「……こちらルーファ、ブルーノ!?了解、急行する!……皆さん、それらしきダーカーのコロニー群が発見されました。これより、急行します!」

 「「了解!!」」

 「失うものか、今度こそ、私の大切な仲間を、ダーカーに、奪わせるものか……!!」

 

 逸るてーとくと共に、惑星リリーパへ急行するのだった。

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