EP1~3のイベントだけでダークファルス【仮面】に墜ちるまで精神面が悪化するのだろうか?というところから。
昼食後 アークスシップ医療棟
昼休憩を挟み、治療に行く電を見送ってから話の続きを聞くことにした。
「ルーサーの所業……どこから話せば分かりやすいですかね……ううん」
「梓絡みの諸悪の根源がルーサーなんだろ?なら、梓の来歴ごと話してくれよ」
「その方が前提になる話も見えてくるだろうしな」
「てーとく、それでお願い」
「……分かりました」
……ルーサーに創り出された時の記憶はなかったそうだ。物心付いたときには育ての親の元で育てられていた。家族構成は父母とその実子で2つ年下の弟のライル。両親はてーとくを愛してくれていたし、幸せだったと思っていた。5歳時の【若人(アプレンティス)】襲撃までは。ルーサーが手引したアークス史上最悪の部類の事件。
襲撃の日 アークスシップ
「うわぁーっ!」
「助けて!」
「こ、こっちにもダーカーが!」
「アークスは!?アークスは来ないのか!?」
突然のダーカーの大規模襲撃にパニックになる市街地。その中で、てーとく一家も安全な場所を求めて逃げ惑っていた。
「あっちは駄目だ!人が密集している上にダーカーが集まってきている……こっちに逃げるぞ!ライルは俺が抱える!」
「分かったわ、走れる?ルーファ」
「うん……!」
そうして人混みを避けて路地を抜けて。そんな時にてーとくの本能が危険を告げる。
「お父さん、駄目!そっちはーー」
「どうし、なっ!?」
「ガアアア!!」
幼い弟を抱えた父親に大型の蟻型ダーカー、ダーク・ラグネが降って来て。それによっててーとくの父親と弟は踏み潰されてしまった。
「いや、あぁ……」
「ルーファ!」
てーとくを狙ったダーク・ラグネが腕を振るう。その直前、割り込んできた母親がてーとくを突き飛ばし、母親も切り裂かれて死んだ。
「おかー、さ……」
「ダーク・ラグネだと!?まだ生存者も……!」
「え……」
「うおおお!!」
直後、アークスが一人駆けつけて来てダーク・ラグネに斬りかかる。一撃は与えたものの、浅く。
「ガアッ!」
「な、足元から……うぐっ!」
足元から発生する竜巻のような攻撃。昨日ダーク・ラグネと交戦して見たアレ。アレの直撃によってそのアークスも戦死。
「い、や……」
「ガア、ア?」
ダーク・ラグネがてーとくににじり寄った直後、ばすん、とコアに狙撃が刺さりダーク・ラグネの動きが止まる。その直後、ナックルを装備したアークスの青年が殴り込んで圧倒し始めた。
「おらあ!」
「グアッ!?」
「今だゼノ!コアにもう一撃入れてやれ!」
「おう!」
「ガ、ア……」
狙撃がトドメとなり霧散するダーク・ラグネ。そして、ナックルのアークスがてーとくの方を向いた。狙撃していたアークスの少年も駆け付けてきた。
「生き残ってるのはお前だけか……チッ!」
「小さい子供相手に凄むなよゲッテムハルト!悪いな嬢ちゃん、だがもう大丈夫だ」
「おかーさんが、おとーさんが、ライルが……」
「……済まねぇ。お前さんだけでも」
「その前に、メルランディア……お前ぐらいの子供を見なかったか?」
「知ら、ない」
「チッ、どこにいるんだディア……!おいゼノ!早く後続を呼べ!引き続き探すぞ!」
「分かった!」
その後、到着したアークスの後続部隊に預けられ、家族の中でてーとくだけ生還した。
助けてくれたナックルのアークスはゲッテムハルトさん。次期六芒均衡と評されるほどの実力者だったが、この後縁者であった少女、メルランディアさんの捜索時にダークファルス【双子(ダブル)】と遭遇。メルランディアさんの姉でありゲッテムハルトのパートナーであったメルフォンシーナさんを失い自暴自棄になった。
狙撃アークスはゼノさん。てーとくがアークスになってからも度々関わり、後のルーサーとの決戦時に新たな六芒均衡となった人。そうして、てーとくは孤児院に引き取られた。
ルーファがアークスになる半年前 某アークスシップ
【若人】の襲撃以降、大規模なダーカーの襲来はなかったそうだ。でも小規模な襲撃は時折発生していたということ。てーとくの所属する孤児院のある区画にダーカーが侵入してきたのもその中の一つだった。
「皆足を止めては駄目!シェルターまで、シェルターまで走るのです!」
「うん、施設長……!」
「皆、こっちだよ!」
「皆エナに続け!動けないやつは俺が運ぶ!」
「フレド兄、やれる……?」
「安心しろルーファ!俺が施設の子供の中で一番年上なんだ!施設長も遅れないでよ!」
「えぇ、えぇ!」
来歴から塞ぎ込みがちだったてーとくを厳しくも優しく叱咤激励し育て上げてくれた母親のような存在、施設長。姉のようにてーとくにお洒落を教えてくれて、導いてくれた同じ施設育ちのエナさん。……最後に彼女がやってくれた髪型が素体のてーとくのデフォな髪型の目隠れツインテールで、愛用しているそうだ。そして施設の子供達の一番年上の兄として牽引したフレドさん。てーとくの大切な、二番目の家族達だった。
家族の仇を討ちたくてアークスになりたがっていたてーとくを、自ら危険な環境に置かなくていいと反論する施設長。そのおかげで、知識だけ一端にある根暗娘に育ったそうだ。そんなてーとくをエナさんは街にことあるごとに連れ出してくれていた。
そうして逃げている最中、後方からダーカーの群れが迫って来た。逃げられない、と思った矢先、施設長が足を止めた。
「皆先に行きなさい」
「施設長!?駄目……!」
「フレド、走れない子をお願い。エナ、先導を!ルーファ、前を向きなさい!」
死んででもてーとく達を逃がす。その意志を感じ取って。てーとくから思わず言葉が漏れた。
「おかあ、さん」
「貴方にそう言ってもらえるなんてね。行きなさい、ルーファ」
「うん……!」
振り返り遮二無二に走る。背後で命が散るフォトンを感じながら。
……それだけで済めばよかったが、次が発生した。前方に嫌な予感、ダーカー反応を本能的に感知。そう、先導するエナさんのすぐ前に。
「エナ!駄目、そこは危ない!」
「え、どうしたのルーファってきゃああ!?」
液状化した地面に足を取られ転倒するエナさん。そして引き込まれる先に大型のアリジゴク型ダーカー、グワナーダが姿を現した。
「きゃ、たすっ」
「ギシャアッ」
「え、な……」
その大顎で真っ二つにされたエナさんを見て呆然とする中、てーとくの本能が――ルーサーに創られたアークスとしての本能らしい――計算を始めた。このままでは誰も逃げ切ることはできない。もう失いたくない。ならばどうするか。
「フレド……!皆を連れて行って!」
「な、ルーファお前は!」
「このおっ!」
周囲に転がっていた瓦礫を投擲、グワナーダの意識をてーとくに向けて。
「私がこいつは抑える。じゃないと皆死んじゃう……それは駄目……!行って!早く!」
「……クソッ!ルーファが稼いでくれる時間を無駄にするな!」
「ルーファ!」
「ルーファお姉ちゃん!」
「行って……!」
グワナーダもてーとくを優先ターゲットとして狙いを定めたようで、突撃を仕掛けてきた。てーとくはなんとなく、その行動パターンが読めて回避して、また瓦礫を投擲して。そうしているとソードを持ったアークスが一人駆け付けてきた。
「こっちに民間人がいるって聞いてみれば……!大型ダーカーか!喰らえ!」
「グアッ!」
グワナーダの胴体に斬りつけるソードアークス。それに対してターゲットをそちらに変えるグワナーダ。
「でかい図体に当たるか……うわっ!?」
「地面から触手が……!?」
唐突に地面から生えた触手に足を絡め取られたアークスにグワナーダが突進。そのアークスも散った。
「あ、うわ、あぁ……」
てーとくの中に恐怖と絶望と、それ以上に怒りと憎しみが胸の内を駆け巡る。どれだけ私から奪えば気が済むのだ、ダーカー、と。
そんな時、アークスが落としたソードがてーとくの目に入った。そして本能的にそれを掴んで。
「殺してやる……ダーカーは、私が、殺してやる!!」
ソードを手にグワナーダに向き直って、足元に悪寒を感じて横に飛び。そこから触手が伸びてきた。
「足元狙って……!まずはここから!」
本能が叫ぶままにソードを操り触手を斬りつけて斬り倒し、本体の攻撃を避けつつ露出している触手を片っ端から斬り倒して。その内、触手を全て斬り倒せたようで悲鳴を上げながらグワナーダが仰向けになり、コアを露出した。
知識としては知っていたが、見るのは初めてで。それでも、本能がアレが弱点だと確信を持って叫んでいて。
「はあああっ!!」
「ギシャアアアア!!」
全力でソードを突き刺し、グワナーダは消滅していった。
それを確認し、てーとくは体から力が抜けてへたり込んで。視界にエナさんの遺体が見えて。
「生き残った……私だけ……施設長もエナも……うわああああ!!」
そうして泣き崩れているところにアークスの本隊が到着し、てーとくは保護された。その経緯を知ったアークス上層部からてーとくをアークスにするという決定を受け、そのまま訓練生となりフレドさんら施設の仲間とはそれきりに。……実際はてーとくが彼らに会う勇気がなかったそうだ。また会えば失ってしまいそうで怖くて。
一旦、そこで話を区切った。というか、話ができる状態には見えなかったので止めた形だ。卯月の姐さんが抱きしめて落ち着かせている。
「梓大丈夫か?……悪いな、嫌な記憶を」
「いえ、卯月。大事な、ことですから。……このままでいてもらっていいですか?」
「勿論」
「……ありがとうございます。……この件にルーサーが関与していたかは結局不明でした。ですが、重要な分岐点となりました。この世界と、私がアークスとなりダークファルスにまで墜ちた世界と」
「……そういや、てーとくはこの世界じゃなくてIFの世界の出身、って話ししてたっけ」
「えぇ。端的に言えば、このグワナーダ相手に生き残り、アークスになったのが私の世界。ここで死亡しアークスになれずじまいだったのがこの世界です」
「!」
「そうか、梓と守護輝士(ガーディアン)が別なのは……」
「えぇ。この世界でも本来は守護輝士……いえ、『シオンの縁者』という惑星シオンに見出された駒になりダークファルスに挑むのは『ルーファ』のはずでした。しかし、それがアークスになる直前に死亡してしまった。未来をも演算できる超常存在である惑星シオンにとってもこれは想定外だったようです。だから、急遽代理を用意しました」
「それがあの守護輝士……」
「私も、時間を渡るつもりでこの世界に来て驚きました。私と修了試験でバディを組んでいるはずの青年、アフィンさんが見覚えのない人物とバディを組んでいたのですから。そして、混乱する私をよそに見覚えのある展開を、私がやっていた行動をその人物が行なって」
「なんとまぁ……」
「その勢いで犠牲になるはずだった同期を少し助けて。私の情報を検索した結果、あの事件で死亡した一般人のリストに居た、というわけです」
「待って、てーとくはしれっと何人かの運命を変えたの?」
運命を変えることは難しい、とはてーとくの持論だったはずだけど。
「アレとアフィンさんから隠れるように動いていたら、偶然同じキャンプシップから出発して別行動をしていたペアがダーカーの発生に巻き込まれるところに遭遇しまして。……本来は、片方だけが私とアフィンさんと合流しかけ、背後からのダーカーの攻撃に命を落とすはずでしたが……」
「もう片方その時点でアウトだし、また目の前でどうしようもない感じに死なれたってことかァ……」
「えぇ。その発生時、そのペアはそれぞれ別方向に逃げようとしていまして。各個撃破されたんだなと理解するのと同時に、思わず声をかけてしまったんです。別々に逃げるな!と。反射的にそのダーカー群を蹴散らしながら、ですね」
「完全に死亡フラグ折ってるじゃンかさ」
ダークファルスに堕ちても根っこのところは変わらないからこそ、てーとくはてーとくなのかもしれない。
「その上で彼らを引率した状態でアレとアフィンさん、そして救援に駆け付けたゼノ先輩と合流。不意打ちをかけてきたダーカーも倒し、後はゼノ先輩に引率を押し付けて他のダーカーを殲滅してくる、連携には不向きな戦いをするからなどと言い訳をして離脱。そこでこの世界の私の詳細を知り、軽い情報改ざんで私を登録済みのアークスとして書き換えることにしました」
「なんかすごいことしてない?」
「アリスさんというアークス……正確にはオラクル船団の航海進路にない惑星からの調査員でアークスに成り済ましていた人が居まして。アークス時代、彼女にそういうやり方を教わっていたんです」
「成る程……やっぱアークスってなんかガバくない?」
「ルーサーが意図的に情報関連が脆弱な組織にしていたようですからね。長年のそれから脱却するのに現在も腐心しているという訳です」
意図的に情報に弱くしておけば裏から支配するのもやりやすい、ということなんだろう。アークスという組織は本当に綱渡りで生き残ってきたようだ。
「皆さん、調子はどうですか?」
「テオドール。丁度良かった」
「梓さん?」
「ここからは私の経験であり、シオンの縁者……今は守護輝士と呼称するようになったアークスの話になります。このテオドールも深く関わる話です」
「貴方とあの人の……ということは、僕もご一緒したほうがいいですか?」
「時間があるなら、是非」
そうして、アークス時代のてーとくの、そしてダークファルスに堕ちるまでの話が始まった。
全体的にアークスに対する風当たりが強い話をしていますが、語り部がアークス不信から3-7-Aを迎えた人物なのでそういうことです。