少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 ぷそアニメの最終話の部分~をやります。


48話 未来を切り拓く剣

 翌日 10:00 ダークファルス【若人】封印地点近辺

 

 

 「こちら暁。指定位置に鎮守府戦闘部隊及び補給車、同行者のテオドールさんも展開完了よ」

 『響了解だよ、敵影は見えるかい?』

 「ここからは見えないけど封印地点の採掘基地だったかしら?そこからは戦闘音が聞こえるし反応もひっきりなしね」

 

 私達は【若人(アプレンティス)】からの和泉リナ奪回及び討伐の為に交戦ポイント付近に展開していた。今回の現場指揮は暁の姐さんが、情報指揮は響の姐さんがそれぞれ担当している。

 

 「江風、橘イツキと協力者の状況は?」

 「†コア†さん聞こえます?江風です、状況願います」

 『イツキとアイカちゃんと合流した!いつもの仲間達にも来てもらって万全の体制だ!』

 「了解……事情話したンですか?」

 『いや全く!詳しくは言えないがこのクエストをイツキがクリアしないと和泉先輩に告白できないってことにしてある!』

 「それで来てくれる……いい仲間達ですね。それじゃ予定通り進軍お願いします!なるべくイツキさんを消耗させないで!」

 『任された!』

 「通信終了……橘イツキは予定ポイントから進軍開始。ユーザーアークスの仲間が同行していて問題はなさそうです」

 「ありがとう、分かったわ」

 

 作戦はこうだ。数時間前から現在に至るまで【若人】の封印地点でアークスが戦闘を続けていて、ダーカーの注意もここに集中している。

 そこへアークスもダーカーも少ない方面から橘イツキ及び協力者が侵入することで橘イツキの消耗を抑え、和泉リナの救出に全力で当たってもらう。

 私達はまた別の方向で待機していて、橘イツキ到着前に侵入、その後に来る橘イツキにダーカーが戦力を割きにくいように余力を私達に向けさせる。

 後は戦線維持をして後方の憂いなく作戦の要である橘イツキには頑張ってもらうといったものだ。

 現在【若人】の依り代になっている和泉リナを引き戻せるのは、彼女と心の繋がりが深い橘イツキのみだという判断の元である。

 

 「こちら暁、梓聞こえる?そっちの戦況は?」

 『予想通り、いえ想定以上に劣勢ですね。負傷者の増え方に治療班も増援も追いついていません。もうすぐ瓦解すると言っていいでしょうね』

 「お前がいるのにそんなにか?」

 『逆ですよ天龍さん。私が、ダークファルスが味方面しているから士気が低いんです。いつ裏切るかと思って目の前のダーカーに集中できずに負傷していくんです』

 「お前アークスを裏切った事あんのか?」

 『ありませんよ……そこ!側面にも気を配れ!負傷した貴様は前線を引け!密度が高い戦域は私が引き受ける!立て直せ!』

 『クソ、ダークファルス野郎が……!』

 『そんなこと言って後ろから……きゃあ!?』

 『はぁ、無駄口叩く余裕があるなら最低限無事で居てほしいものだ、が!!』

 

 アークス側はかなり劣勢のようだ。信頼できないダークファルスと共闘しなければいけない、という状況が原因らしい。

 私達はてーとくが前線に居るなら勝てると思うか全部てーとくに戦果を持っていかれる前にやるぞ、と士気が上がるのだが。

 そして、疑われこそすれどてーとくは実際に背後からアークスを襲撃したことはないらしく、一度もなかった裏切りを警戒するというレベルで信頼関係の構築に難があるということなのだろう。11年前のマトイさんの件は別として。

 

 「梓がアークスの協力者、って立場に拘る理由が見えたわね。常時敵視してくる連中の仲間なんて言いたくないわよね」

 「本当に僕の仲間がすみません……」

 「テオドールさんは悪くないでしょ。梓のことを敵視もしてないみたいだし」

 「梓さんの事情が開示されるような人達は基本的に梓さんに友好的ですから」

 「まあ、梓の全容を語るとアークスの英雄様って守護輝士(ガーディアン)様の理想図が崩れちゃうものね」

 「えぇ、情けない限りですが」

 「最強の戦士の存在で牽引してればそうなるわよね」

 

 暁の姐さんの言うとおり、自分達が相手しているラスボスみたいな存在、【深遠なる闇】の依り代がアークス最強で希望の星な守護輝士のダークファルスになったIF存在だということは、ショッキングな事実すぎておおっぴらには出来ない。

 結果として一般アークスにとってのてーとくは、なんか味方らしいがダークファルスだし信用できない、という扱いになっている。

 

 「ま、俺達にとっては梓を信頼してくれる奴はまっとうに強いか権限のある奴ってハッキリするからいいけどよ」

 「天龍が割り切れても梓本人が割り切れないとね」

 

 てーとくは我関せず、という態度をとろうとしているものの他人からの目をかなり気にしがちである。

 130奪還以降、大分表情が柔らかくなってきたとはいえ、見学者に最近でも怯えられて一日凹んでいたのも記憶に新しい。

 

 『江風ちゃん聞こえるか!?』

 「†コア†さん!?」

 『邪魔するダーカーは片付けたんだが地割れが起きてイツキやアイカちゃんと引き離された!二人がそっちに向かってる!』

 「了解ッス。†コア†さん、協力者の人々含めログアウトしてください!もしそっちにダーカーが仕掛けてきたらカバーできる面子がいないンで!」

 『分かった!……イツキ達を、頼む』

 「任せてください、よ!……橘イツキと鈴木アイカの二名がこちらに接近中、他の協力者は分断されたので離脱させました!」

 「了解よ!そろそろ私達も動くべきかしら?」

 

 そうして動き出す準備をしていると足元が揺れだした。

 

 『ダーカー反応増大、これは……カスラ!』

 『えぇ。ルーファさん以外のアークスは総員撤退を。本隊が来るまでお願いできますね?』

 『勿論だが……いや、フォトン粒子砲を出せ、奴が……【若人】が顕現する!』

 

 ぶわっと悪寒が広がるのと同時に地響きが強くなる。

 直後、『闇』としか形容できない悍しいエネルギーが地面から噴き上がり、上空にその姿を形取った。

 10メートルはあろうかという巨大な体躯に大きな六枚羽、虫のような顔に額の結晶、両肩に巨大なダーカーコア。手足は無く虫のような膨らんだ腹部。絶望を形にしたと言わんばかりの存在。ダークファルス【若人】の真の姿だ。

 

 「アレが……!でっけーなァ」

 「私下手したらアレのコアにされてたのです?気持ち悪っ……」

 「ビビった奴は撤退しなさい。でも、梓のいつものプレッシャーを思い出せば……ねぇ?」

 

 暁の姐さんの言う通りで。プレッシャーは普段のてーとくの訓練のそれに及ぶかどうかであり、そのてーとくがダークファルスのスペックを軸に真摯に磨き上げてきた技能で実践訓練を行う日常だったのだ。

 この程度で何を今更。それが私達の正直な感想だった。

 

 「梓、アタシ達も行けるぞ!」

 『卯月、皆さん、まだ待機で!まずは私が引き付け撃ち落とします!その後指示を出すのでそれまでは接近に留め攻撃しないでください!』

 「あいよ!何する気かは知らねぇがやっちまえ!」

 「聞こえたわね、総員移動開始よ!」

 

 【若人】を刺激しない程度に接近する。それに伴っててーとくの様子も見えてきた。

 昨日テオドールさんが撃っていたフォトン粒子砲を構え、砲身を【若人】へ向けている。素の力、すなわちダーカー因子を遠慮なしに込めているようで闇色の光がブスブスと煙とともに溢れている。

 

 「テオドールさん、ああいうのって自動装填じゃ駄目なンですか?昨日のテオドールさんもそうでしたけど」

 「一般のアークスが使うなら自動で撃つのと大して変わりません。僕達みたいな出力が異常な場合は、そういう人達が直接操って使う方が威力が出るんです。そうでなくても人力の方がチャージ速度などが安定したりしますね。……梓さんのアレは限界出力超えに行ってますね。撃ったら自壊しますよアレ……」

 『出力、120、130、140……150%!墜ちろ蛆虫!!』

 

 てーとくが過剰出力で粒子砲を撃つのと【若人】がその口から極太レーザーを撃つのは同時だった。中間で激突し、鍔迫り合いになる。

 

 「行け!梓!」

 『おぉォ……!!』

 『ギャアアア!!』

 『ッ!』

 

 【若人】が主砲レーザーはそのままに無数の細い偏光レーザーを放つ。それがてーとくに直撃し、爆発した。

 

 「梓ァ!」

 「卯月、まだ駄目よ!」

 『そうです、まだです……!』

 「梓!?」

 

 爆発の中でもてーとくは砲撃を続けていて、狙いは【若人】の肩の方にズレていきその身を穿った。それにより【若人】は墜落した。

 当然、鍔迫り合いがなくなったので【若人】側の主砲レーザーもてーとくを直撃しているのだが。

 

 『っハァ、昨日の消費にテオドールさんからの直撃、今回の消耗にダメージ。そして元からダーカー因子は維持限界まで減らしておいた。これらのおかげで私はとても消費している。あァ、ダから補充しなけれバ……お前カラ、お前の力を喰らう!蛆虫ッ!!』

 

 爆炎の中からボロボロになったてーとくが崩壊寸前の粒子砲を片手に飛び出し、墜落した【若人】に飛びかかる。そして、粒子砲を持った腕を貫くように【若人】の体にぶち当てる。

 

 『ギア、アァ……!!』

 『蛆虫!これまでよくも奪ってきたな!今度は、これからは、貴様が奪われる番だ!全て、全てェ!!』

 

 【若人】からダーカー因子を奪い、みるみるうちにてーとくの姿が回復していく。そのまま禍々しいオーラも隠さないまでになってきて、その手の粒子砲も余波で臨界寸前といったところだった。

 

 『補給は十分。さあ、お前も十二分に喰らっただろう。爆ぜろ、粒子砲!!』

 『!!!』

 

 壊れかけの粒子砲を【若人】に突き刺し暴発させる。大爆発を起こし、【若人】の巨体が傾いた。そして、その頭部の結晶に人影が映る。囚われた和泉リナだ。

 

 「これは……和泉先輩!」

 「来ましたね橘イツキさん、丁度いい!」

 「えっと、君達は……」

 「鎮守府、いや、アークスの協力者!今回は和泉リナさんを助けるために来てる!今はそれだけで!」

 「わ、分かった!」

 「てーとく!橘イツキさん来たよ!」

 『このまま抑えます!橘イツキさんを突入させてください!皆さんは進路を確保を!』

 「了解よ!さあ進みなさい橘イツキ!」

 「待てイツキ!アレはダークファルスルーファ……油断しては」

 「待ってください、アイカさん」

 「テオドール総司令補佐!?」

 「ルーファさんは味方です。僕が保証します。それとも、あなたの思い込みで和泉リナさんを救う機会を失うつもりですか?」

 「……信じますよ、総司令補佐」

 「彼女のことも信じてほしいんですけどね……海風さん!」

 「アレですね!行けます!」

 「「『バータ』!!」」

 

 海とテオドールさんが氷の衝撃波を発射する初級テクニック、バータを大出力で放つ。シンプルな初級テクニックだからこそ、大出力で凄まじい結果をもたらすことが出来る。

 それは進路上のダーカーを掃討しつつそのまま氷の壁となり、進路が開けた。

 

 「各員、撃ちまくりなさい!響、敵増援の方向の報告していって!」

 「ゲートは私が開く!フローレンベルグ!」

 

 私達が周囲のダーカーに斉射を浴びせる中、鈴木アイカが渦巻のようなタリスーー創世器というアークス最高レベルの武器の一つ、憐具フローレンベルグーーの一部を先程和泉リナが映った結晶部に投げつけ、そこにワームホールが出現した。

 

 「飛び込め、イツキ!」

 「おおおおおっ!!」

 

 そこに目掛けて真っ直ぐ飛び込む橘イツキ。これで作戦の第一段階は完了だ。皆で交戦距離まで一気に詰める。

 

 

 「皆さん、このまま【若人】を抑えて橘イツキさんが帰還するまで耐えます!私から目を離せると思うな!『ウォークライ』!

 私がヘイトを取りますので、江風さん、加賀さんは向かって左の肩のコアに継続攻撃を!ルさん、アウトローさんは向かって右のコアへ砲撃を!他の皆さんは補給車を護りつつ周囲のダーカーの数をとにかく減らしてください!」

 「ダークファルスと眷属のダーカーはお互いに補強し合う関係です!周辺に展開するダーカーが減るほど有利になります!」

 「梓、テオドールさん、了解よ!指定のあった面子は【若人】に攻撃!空母隊はダーカーの母数をとにかく減らして!残りは撃ち漏らしを適宜仕留めつつ余力で【若人】に追加攻撃よ!響!敵集団は来てるかしら!?」

 『二時方向に雑魚集団、五時方向から大型を頭にした団体が来てるね。電は二時方向に。雷は電の補助を頼むよ。五時方向の大物は天龍、行けるかい?』

 「任せるのです!」

 「サポートするわ!」

 「あのデケェ蟻野郎か。任せときな!龍田、フォロー頼むぜ!」

 「武器格闘に関しては期待しないでねぇ!」

 

 迅速な指示の下にそれぞれ戦闘を開始する。【若人】が不利になればなるほど内部で救出にあたっている橘イツキもやりやすくなるはずだ。

 

 「総司令補佐、彼らは……」

 「地球での任務で海上防衛部隊の鎮守府、艦娘といった言葉に覚えはありますか?」

 「艦娘?聞いたような気もしますが……」

 「まあ海に行かなければ関係することもないようですからね。ルーファさんが地球に先遣隊として降り立ってから協力関係にある部隊の皆さんです。僕達のようにダーカーへの本能的な忌避もありませんから、純粋に仲間としてルーファさんを見てきた人達ですよ」

 「……」

 「少なくとも彼らは地球の同胞である和泉リナさんを救出する為にここに居ます。そしてそれぞれの役割を果たしています。アイカさん、あなたも自分の役割を果たしてください」

 「私の役割は……」

 「なんとなく後々にやろうとしていることは察しています。ですが今はあのゲートの維持を。橘イツキさんをしっかり支えることに全力を!」

 「了解、くっ!」

 「ダーカーも分かっていますか、こちらの弱点がアイカさんだと……!」

 「中村!補給車を鈴木アイカのところに移動して!護衛対象をまとめちゃうわよ!」

 「了解だよ!坂田、進路確保任せた!」

 「おうよ!邪魔だどけ虫野郎ども!」

 

 ダーカーの攻撃が鈴木アイカに集中していく。まとまった部隊こそ電達が対処しているが、散発的な相手には限度がある。

 

 「しまっ……」

 「プレディガーダのブーストエネミーですか……やらせなっ」

 「クラリッサ!」

 

 短距離をワープ移動し急襲が出来るカマキリ型ダーカーの上位種、プレディガーダの強化版であるブーストエネミー。それが光の一撃で消し飛んだ。

 

 「ま……マトイ様!?」

 「大丈夫?アイカちゃん!」

 「「マトイ!!?」」

 「うえっ!?」

 

 救援に来たのはアークス、マトイ。現行最強レベルの出力を誇るアークスであり、先代六芒均衡の五。てーとくの色んな意味で原点であり目標。そんな人物の登場に鎮守府組は全員が反応してしまった。

 

 「皆担当に集中しなさい!マトイさんには……卯月!なにか言ってやりなさい!」

 「っぴょん!?……あー、おー、お前には絶対負けねぇからなァ!!」

 「えっ!?」

 「私は今回の現場指揮をしている暁よ!今、【若人】の依り代にされている子の救出作戦中!内部に突入している子の支援を鈴木アイカはやっているの!だから下手に鈴木アイカを消耗させられない!護衛をお願いできる!?」

 「わ、わかったよ!アイカちゃん、私が守るからね!」

 「マトイ様……お願いします」

 「それでは僕も攻めに転じます。新たに来た八時方向からの集団は僕が!『イル・フォイエ』!」

 

 マトイさんに護衛を任せたことで広範囲、高威力のテオドールさんの攻撃が苛烈になり形勢が上向いてきた。

 

 「江風、負けていられないわ。『ラストネメシス』」

 「おうよ!『シンフォニックブレイク』!」

 

 そしてそんな状況で自分達も、となるのが私達だ。対ダーカーの本職だろうが最精鋭だろうが負けるつもりはない。無論、てーとくも。

 

 「私から目を離すなと言っているだろう、蛆虫!再度『ウォークライ』!」

 「梓に手ぇ出そうとしてんじゃねぇぞクソ雑魚共がよっぴょん!!」

 『卯月、牽制継続。電、雷は一旦補給に。陽炎、黒潮、その間スイッチを頼むよ』

 「任せなさい!」

 「いっちょやったるで!」

 「補給車にはバケツも予備燃料、弾薬、疲労回復の妖精さん特製間宮もあるからどんどん使っていって!くそっ、ダーカー!お前は来るな!」

 「中村大丈夫か!」

 「前線張れるのは自分の班だけだと思わないでほしいな坂田!エーテル製の弾丸だから弾切れの心配もないからね!中村班、補給車狙いの敵を押し返すよ!」

 「電ちゃんの一件の後でガチガチに戦力強化して正解だったなこりゃあ!」

 

 電が【若人】にさらわれた一件の後、各自強化に努めるのと同時に憲兵隊の装備も対ダーカー戦闘に耐えうる継続戦闘能力に長けた装備更新をしていた。今日のような日が来ると分かっていたから。そして、この技術も活かして非艦娘の対深海棲艦装備の技術発展も狙っていく予定だ。

 そうしてしばらくやりあって。周囲のダーカーの発生が止み、【若人】がダメージ以上に苦しみ暴れ始めた。

 

 「ーーー!!!」

 「うおっ!?」

 「【若人】攻撃班一旦退避!テオドール!マトイ!大きな動きが来ます!備えますよ!」

 「はい!」

 「うん!」

 

 私達が距離をとった直後、【若人】の額の結晶部が光に呑まれるように崩壊し、そこから橘イツキが和泉リナを抱えて飛び出してきた。作戦第二段階、成功だ。後は【若人】を撃破出来ればーー

 

 「ギアアアア!!」

 「飛び立つつもりか!?逃がすか!『オーバーエンド』!」

 「動きが早い!『フォイエ』!」

 「やらせない!『グランツ』!」

 

 直後、てーとく達の素早い追撃を受けながらも振り切り、上空数十メートルまで上昇する【若人】。正直、あの高さを叩き落とすのは厳しい。

 そんな中で【若人】は最後の足掻きと言わんばかりにエネルギーの収束を始めた。あのてーとくと鍔迫り合いした主砲を撃つつもりだ。

 

 「クソッ、テオドールさん、粒子砲って他にあります!?」

 「付近に予備機を展開していますがまだチャージが完了していません、不味いーー」

 「ーー闇を祓い、道を拓く力を!」

 「「!?」」

 「未来を照らす、希望の光を!」

 「橘イツキさん達……?」

 「想いと絆を、この一撃に!」

 「このフォトンアーツは……一体……!?」

 「「開け!新世界の扉!!『スターゲイザー!!』」」

 

 橘イツキが剣を掲げて和泉リナと鈴木アイカが力を合わせるように手を伸ばして。天を切り拓く巨大な光の刀身になった。莫大なフォトン、そして『才能までも捧げているような』凄まじさだ。

 

 「てーとく、アレってオーバーエンドかなにか?」

 「知らない、いえ、『今新しく出来たフォトンアーツ』……!」

 

 アークスの使うPAことフォトンアーツやテクニックは既存の誰かが編み出し、用いた技等を現代のアークスが効果的、効率的に扱えるように「再現」及び「アレンジ」したものである。フォトン自体がそういった「世界の記憶」の為の情報粒子なので出来る芸当なのだとか。

 故に新しいフォトンアーツを生み出す場合、そういういい元ネタとなる技がないか探すか、誰かが発明する必要がある。つまり、橘イツキはこの土壇場で超大技のフォトンアーツを編み出したということになる。とんでもないどころの騒ぎではない。

 

 「「うおおおおおっ!!」」

 「ギアアーー」

 「【若人】が……」

 

 主砲を放とうとした【若人】が一刀両断され、消滅した。伝説の光景を目の当たりにした、そんな気分だった。

 呆然としている中、和泉リナが口を開く。

 

 「鈴木さん、これって一体……」

 「詳しくはイツキに聞いてくれ」

 

 そういえば和泉リナは突然地球でダーカーに襲われ、唐突にフォトン能力に目覚めてそのまま【若人】の依り代にされていたのだ。むしろ勢いで若人を討伐してみせたことがすごい。

 

 「それと、ここでお別れだ」

 「アイカ!?」

 

 一方的にもう地球からダークファルスの脅威が去ったから共に居られない、と強制的に橘イツキと和泉リナを地球へ転移させてしまう鈴木アイカ。

 それに対して、暁の姐さんが歩み寄って言葉を投げかける。

 

 「何をするつもり?」

 「……お前たちも地球へ戻れ」

 「言い方を変えるわね。ダークファルスは一度やっつけた程度じゃ滅ぼせない。この後すぐにでもダーカー因子の残りで再構築して復活。完全討伐は膨大なダーカー因子を完全に滅ぼさなきゃ叶わない、ってことは知ってるのよ?

 じゃなきゃ梓、貴方にはルーファの方が通じるんだったかしら。いくら頑丈で強いからって無茶させないわよ」

 

 てーとくが危険を省みず自爆のような戦術を取るのをそこまで問題視していないのはこの一点に尽きる。肉体が一度吹き飛んだところで死なないのが分かっているのだ。まあ、いい顔はされていないが。

 

 「じゃあそんなダークファルスをどうやって抑え込むか。今日までの【若人】みたいに広大な土地に封じてしまうか、ダーカー因子をその身に引き受けて自分ごと始末してマシにするか。【深遠なる闇】みたいにね。後者はマトイさんが何回かやってるのよね?」

 「……うん」

 

 後ろめたそうに頷くマトイさん。その結果1人で今度こそそうはさせないと、てーとくやこの世界の【仮面(ペルソナ)】が終わりのない無限ループに挑んで苦しんだ。

 この世界では乗り越えた守護輝士がアークス全てを巻き込み死闘を繰り広げ、一時的にこの世界の【仮面】が依り代に【深遠なる闇】を引き受ける形でなんとかなった。そんな経緯だったと先日語られていたことを思い出す。

 

 「で、鈴木アイカさん、貴方はどっちをやるつもりか知らないけどそんな特別な存在じゃないなら特別な媒体が必要。そのフローレンベルグみたいにね。違うかしら?」

 「その通りだ」

 「そしてそんな奇跡を起こす代償に術者は命を捧げることになる……でしょ?途中でコントロール奪って身代わりしようとしていたマトイさん」

 「うっ」

 「マトイ様!?」

 「貴方は貴方のために文字通り心身すり減らして必死に駆けずり回った人のこと考えなさいよ。ぷんすか。ところで、梓はさっきのスターゲイザーだったかしら、撃てる?」

 「橘イツキさん達における先程の2人のように協力を、3人ほどにしていただければ似たようなものなら。ただ、あの負荷を考えると再度撃つまでに一度は復活されそうです。私はともかく皆さんの負荷が心配ですが」

 「そう。卯月、天龍、坂田。最初に合わせるならこの辺かしら?それとテオドールさん。粒子砲の出力で無抵抗の【若人】位は一度吹き飛ばせるかしら?それと粒子砲の再発射までの時間は?」

 「発射するのが僕と……海風さんをフォローに入れていただければいけます。再発動は梓さんと同様ですね」

 「なら決まりね?滅ぼしきれないほどの膨大な量のダーカー因子?それが何?想いを託されて大切な友人に死なれることの辛さを思えばねぇ?」

 「海風さん、予備機の方へ!」

 「はい!」

 

 粒子砲の予備機へ走り出すテオドールさんと海の一方、何かを思い出したのか暁の姐さんの顔が曇る。

 

 「響。復活直後の無抵抗のタイミングで殺して殺し続けたいわ。タイミング指示お願いね」

 『前例データが欲しいけどね。とりあえず後十秒程かな』

 「梓!スターゲイザー準備!最古参共!全力で支えなさい!梓、何回も撃つことになるんだろうから、あなた自身の消耗は避けて!」

 「えぇ、卯月、天龍さん、坂田さん!力を、想いを貸してください!」

 「「おう!」」

 「「『スターゲイザー!!』」」

 

 無理やり再現した必殺の一撃は再構築された【若人】を両断し、再び霧散させた。

 

 『今ので大体の再構築までの時間は算出できたよ。以降私のカウントに合わせて欲しい』

 「だ、そうよ。一回で滅ぼしきれないなら滅びるまで殺せばいい。でも底が見えたことがないから実現できるか不明。……つまりは私達と【若人】の根比べね」

 「ねぇ、アカツキちゃん。本当にやれるの?」

 「わかんないわよそんなモノ」

 「えっ」

 「出来れば御の字。最終的に皆が力尽き果てて人身供養が必要になったときでも死なない程度の負担で済むかもしれない。なら、やる価値はあるでしょ?」

 「そうかも、だけど」

 「託されて逝かれた奴の気持ちは私も知っているからね。あんなのはごめんなのよ……卯月達、調子はどう?」

 「ぁー、余裕、ねぇなっぴょん」

 「んだよこれ、疲れるっていうか精神が持っていかれるっつーか」

 「意志の力を使うって言うから意思全部載せちゃって抜け殻になった気分だな」

 「梓は大丈夫?」

 「私は、はい。皆さんの意思を形にするのに集中していたのでそこまでは」

 「そうなるのね。雷、精神消耗した面子のフォローしてあげて!次弾は他の面子で編成!皆で回して消耗しすぎないようにしていくわよ!梓、貴方自身は精神消耗しないように心掛けなさい!貴方が撃てなくなったら中止よ!」

 「全力で癒やしてあげるわ!」

 「えぇやり遂げます……!」

 

 才能を消費するような橘イツキのスターゲイザー、その模倣では精神力というか意思を思いっきり消費してしまうようだ。つまり、連発するには代わる代わる担当を入れ替える必要がある。

 

 『再構築までの時間を算出、テオドールさん準備はいいかい?』

 『いいですよ、海風さんもいるので安定して撃っていけそうです』

 『江風、お姉ちゃん頑張るからね!』

 「おう頑張れー?」

 『反応が塩!!』

 『ッ、皆気を付けて。ダーカー反応増大、敵の増援の再開だ。それに……アークスも来るね』

 

 そうやりとりしていると、雑魚ダーカーが再び現れ始めた。

 

 「ちょっと!全員スターゲイザーに回したいんだけど!?アークスもまた何も知らない連中だと面倒でああもう……!」

 「そう心配なさんなって!」

 「ギシャァ!?」

 

 私達に向かって殺到してくるダーカーの先陣が撃ち抜かれる。増援のアークス本隊によるもので、先陣を切るのは昨日てーとくと共闘していたゼノさんだった。

 

 「こちらゼノ!事情はテオドールから聞いてるぜ、アカツキさんよぉ!お前ら!友軍にも粒子砲にもクラーダ一匹通すんじゃねぇぞ!」

 「六芒均衡のゼノさんね、話が早いのは助かるわ!梓!気にせず次の準備!」

 「昨日はいいとこなしにルーファ……お前さん達の前じゃアズサって呼んだほうがいいんだったか?に引き継いじまったからなぁ、名誉挽回と行かせてもらうぜ!エコー!アニーとジェイス連れて粒子砲の充填やってくれ!」

 「任せて、ゼノ!」

 「頼りになる援軍で助かるわね……!」

 

 部隊長がてーとくの理解者なのは有り難い。だが。

 

 「ゼノ!味方する相手がダークファルスルーファだぞ、大丈夫なのか!?あの連中だって眷属の可能性だって……」

 「そういうの、やっぱいるのね」

 「お前なぁ、こっちに来る時に散々言っただろ。アイツは味方だよ、間違いなく。一度でも裏切った証拠でもあんのか?

 その上で聞くがよ、【若人】を延々と倒し続けるなんて真似がお前さんに出来るか?俺がアイツの支援に行って大丈夫だと証明したほうがいいか?そしたらちゃんとお前が代理でダーカーを止めきってくれるのか?うだうだ言うならそれぐらいやってくれ」

 「だが……」

 

 なおも食い下がるアークス。そこに通信が大音量で割り込んできた。

 

 『いいっ加減にして!!』

 「ぬわっ!?おいおい、声デケェよウルクさんよ!」

 『こちらアークス総司令ウルク!全域通信で言わせてもらうよ!性質がダークファルスだからって理由でルーファを疑って足引っ張って台無しにしていくの、皆もうやめて!

 なんでルーファがダークファルスなのか、それで協力してくれるのか、マザーシップの時みたいに皆の信じてきた根っこが崩れるかもしれないから言わないできたけど!全部開示してあげるから待ってて!それでもって駄々こねるなら、作戦中断して帰って来て!邪魔よ!!』

 「言い切ったわね……」

 『ルーファ、いや梓ね。聞こえる!?もう後ろから邪魔はさせないから、思いっきりやって!』

 「ウルク……正気ですか!?」

 『新しいアークスを作る一端って思ってやればいいのよ!』

 「知ったアークスがどうなるか分からないんですよ。ですが、貴方の誠意に応えます!」

 『響だよ。話の途中で悪いけど、粒子砲の方を頼むよ。カウント、10!』

 『こっちが上手く行かなければウルクに怒られちゃいますね。チャージ完了、カウントに合わせて……発射!』

 

 【若人】が再構築された直後に粒子砲がその身を貫き、消し飛ばした。

 

 『次弾充填!次は梓さん!』

 「えぇ!江風さん、電さん、加賀さん!」

 「っしゃァ!」

 「司令官さんにいいとこ見せるのです!」

 「気分が高揚してきました」

 

 ここまでお膳立てされたのだ。どこまでもやってやる。てーとくの不名誉だって吹き飛ばしてやる。ダークファルスだってやってやる。それが、私達鎮守府組の総意だった。

 

 「「吹き飛べ!『スターゲイザー』!!」」

 

 

 12:00

 

 

 「クソ、まだ復活すンのかよ」

 「雷お姉ちゃんの癒やしがあっても頭が真っ白になってきたのです」

 「……ふぅー」

 「くそっ、まだ、まだやれる……皆とならやれるって、示さなきゃ……!」

 『こちらテオドール!最後の粒子砲、稼働限界近いです!使用限界迎えた他のは……駄目そうですね……』

 『こちら海風、だいぶしんどいです……!エコーさんのレスタが効くぅ……』

 

 あれから延々とリスポーンキルを続けていたが、こちらの底が見えてきていた。

 私達は精神が尽き果てた面子が多く、テオドールさん側の粒子砲ももう撃つのが限界になってきていた。てーとくも消耗がキツイのか、言動に乱れが生じていた。

 まだ余力があるのは指揮のためにスターゲイザーに参加していない暁の姐さん、警護に当たらせていたマトイさんに鈴木アイカぐらいだ。

 

 「……響。【若人】の消耗具合は?」

 『5割を切った、ってところだね。流石は惑星を滅ぼしうる存在、ってところかな』

 「……潮時、ね。『アレ』はまだ居る?」

 『いるね』

 「そう。総員、次の粒子砲とスターゲイザーで作戦終了にするわ!参加者は私とマトイさんと鈴木アイカ!他の皆は撤収準備、急いで!」

 「暁お姉ちゃん、でもまだ……!」

 「私達の役割はここで【若人】相手に力尽きる、そうじゃないでしょ?大丈夫よ。ゼノさんも限界近いんじゃないかしら?」

 「まだまだ、って言いたいが俺以外がなぁ。梓がお前さん達をタフに鍛えたのがよく分かるぜ。教導部として継続戦闘能力の底上げも考えなきゃな」

 「十分よ。海風、次撃ったら帰って来て。来れる?」

 『ふぅ、走るくらいなら!』

 「海風の底力にはいつも驚かされるわね。さあ、準備して!」

 「アカツキ。私達の攻撃を最後として……どうするつもりだ?」

 「悔しいけど、引き受けてもらうことになるわね」

 「……分かった」

 「ああ、貴方じゃないのよ」

 「何?」

 「すぐ分かるわ」

 『最後の粒子砲、発射!!』

 「すぅー……聞こえているでしょう!?次で私達は限界!後は貴方に任せるわよ!」

 「アカツキちゃん、誰に言っているの?」

 「すぐ分かるってば。梓も行ける?後一撃だけ!」

 「どうにもならないなんて未来、私は認めたくない……!」

 「梓」

 「!」

 

 心ここにあらず、といった様子のてーとくの顔に暁の姐さんが手を添えて意識を向けさせる。

 

 「そんな未来、私達の誰も望んでないのよ。そして貴方は前線に集中していて、私は全体を見てオペレートしている響のアシストで現場指揮をしていたのよ。そんな私が言うわ。大丈夫」

 「うん、……信じます」

 「なんか性格の凝りが取れたみたいね。精神力を消費して撃ち続けていればそういうのも根こそぎ使うってことかしら?」

 『暁!再構築までカウント10!』

 「了解よ!さあ、これが最後の一撃、しっかりと味わいなさい【若人】!」

 「「うおおおっ……!」」

 「これが未来を切り拓く一撃よ!」

 「「『スターゲイザー』!!」」

 

 今までより一層強い光の剣が【若人】を蒸発させる。直後崩れ落ちるてーとく、駆け寄る卯月の姐さん。

 

 「はー、はーっ、はーっ……!」

 「梓ァ!大丈夫か!?」

 「お疲れ様。……後はよろしくね?【仮面】さん?」

 「「!」」

 

 暁の姐さんの声に応えるように白い人型の異形がダーカー特有の転移で姿を現した。

 

 「はぁ、ディーオ・ヒューナル……!?」

 「あなた……」

 「気付かなかった?私達が周辺区域にスタンバイしてるときには既に居て様子を覗っていたのよ。目的は後始末、でしょう?マトイさんにやらせたくないものね、貴方は」

 (無言で頷く)

 

 『この世界の【仮面】』の成れの果て。てーとくが見届けてそれに倣おうとしている存在、この世界の守護輝士のIF存在。この世界のダークファルス達の残滓の多くが一つになり顕現しようとした、【深遠なる闇】の依り代になって出来る限り影響も活動も抑えている戦士だ。

 

 「待って!あなたは……!」

 (マトイを一瞥し【若人】の復活ポイントに向き直る)

 「カッコつけてないで言うことあったら言っておきなさいよ」

 「……マトイ」

 「!」

 「後は、任せて。君は生きて笑って、これからをお願い」

 「……うん!」

 「……私の可能性の協力者」

 「あら?私にも言うことあるのかしら?」

 「……お前達を、見届けさせてもらう」

 「精々期待してなさい?」

 

 マトイさんと暁の姐さんとやり取りをして、【仮面】ことディーオ・ヒューナルは【若人】のポイントへ飛び立つ。

 そして再構築しようと集まるダーカー因子をすべて吸収し、どこかへと転移していった。

 

 『響だよ。【若人】の反応消失。周囲のダーカー因子も消えていってるね。作戦終了だよ』

 「さ、帰りましょ」

 

 【若人】との決戦が、終わった。

 

 「あ、祝勝会やるから貴方達も私達の拠点にどう?マトイさんは強制参加で」

 「えっ!?」

 

 ……徹頭徹尾、今回の作戦は暁の姐さんの掌の上だったんじゃないか、と思った。




 橘イツキ:PSO2ジ・アニメーションの主人公。最終決戦で地球人ながらダークファルス【若人】を撃破して見せた。
 和泉リナ:同上のヒロイン。実は【若人】が一番求めていた人材は彼女だった。
 鈴木アイカ:同上のアークス出身。地球に橘イツキの護衛任務でやってきていた。法撃方面の素質は優秀、他はマトイを崇拝している以外の知識は一般より。
 ゼノ・エコー:PSO2でも各アニメでも活躍するベテランアークスコンビ。
 アニー・ジェイス:ゼノが引っ張ってきた法撃型一般モブアークス。出番はここまで。

 フォトンアーツ『スターゲイザー』:橘イツキの編み出した所謂必殺技。橘イツキ及び和泉リナは鈴木アイカの支援の下、反動でフォトンの扱いを一時的に失う代わりに莫大な威力を叩きだした。鎮守府組はそれを精神力を大きく消費するという形で再現した。当然乱発するモノではない。
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