少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 決戦直前の仲間との会話イベントです。前編。


53話 決戦を控え彷徨う迷い猫

 『やあ、愚かな人類共よ。私は指揮者(コマンダー)。お前達の敵、日本の南西海域を支配する深海棲艦だ。これは宣戦布告である。この後私の時計で12:00に我が艦隊が日本へ進軍する!愚かにも私の逆鱗に触れた第127鎮守府諸共だ!

 絶望せよ、人間共!恨め、元凶である第127鎮守府の無能共を!貴様らの抵抗など、私の操る全艦隊によって蹂躙してくれる!フフフ、ハハハ、フフハハハハ!!』

 

 以上が先程日本及び周辺国の各鎮守府、メディアをジャックした指揮者が発した声明である。ご丁寧に映像中継だった。

 とりあえず夏菜さんに無線・電話を一括で自動音声にしてもらってパニックになっているであろう人々のコール攻撃は避け、元々の作戦通り準備を進めていた。ちなみに夏菜さんが急遽用意した自動音声は以下の通りである。

 

 ーーこちらは第127鎮守府です。自動音声にて失礼します。弊鎮守府は現在南西の深海棲艦勢力討伐作戦に取り掛かっており、応対ができません。弊鎮守府に急用の方は横須賀こと第1鎮守府の基地司令、沖田元帥から取り次いで専用回線での連絡をよろしくお願いします。我々は負けません。繰り返します。こちらは第127鎮守府ですーー

 

 あの横須賀の元帥に連絡を入れるのか!?と多くの人は熱が冷めるのと、それでもという人には事務も多い横須賀に丸投げする形である。

 

 「全館へ通達。基地司令、福山です。指揮者があのような宣戦布告をするのは想定外でしたが……予定通り作戦を執り行います。戦力は全て艤装島の攻略に回す関係上、非戦闘員含め全員を第130鎮守府に移動します。

 奇襲があった際はこの鎮守府は囮として襲撃させます。1時間後までに全員白峰に搭乗を完了しておいてください。それまでに地下に移すものは移しておいてください」

 

 非戦闘員が何らかの攻撃を受ける可能性も考慮して、全員130に一時的に移動することになった。アークスの援軍の合流も130で行う流れだ。

 

 『外に事情を説明しろって連中が!』

 『非常事態及び軍事機密で説明する余裕がない、万が一に備えてこの鎮守府からは離れろと追い返してください!』

 『レーダーに艦娘の反応感知、他所の鎮守府が凸って来ましたぁ!』

 『追い返せ!』

 

 外が忙しくなっているが私達がすべきことは戦火に巻き込まれて欲しくない私物等を防護壁の先の地下倉庫に放り込んで艦娘母艦白峰に乗り込むことだけである。

 

 

 2時間後 第130鎮守府

 

 

 人員の輸送を完了した白峰は南西海域の支援のために救援物資を積み直し出航準備をする中、私達は小休憩を取っていた。

 

 「指揮者のヤツ、バミューダ海域の12:00って南西とか日本の真夜中ってこと分かってないんですかね!?時間感覚狂うのです!」

 「南西海域で迎撃をする艦隊も夜間装備前提になるものね。数日かけて準備していたから問題はないでしょうけど」

 「私達は夜からいきなり昼になった上で戦わなきゃいけないんだよね。仮眠もしっかりとらないと」

 「この状況下で仮眠なんて出来ないよ〜!」

 「最終決戦……緊張してきました……!」

 「皆さん、無理にでも休まないと。それこそ集中力を切らしてしまいますよ」

 「赤城ちゃんの言うとおりなのです。あーもうおのれ指揮者〜!」

 「それをこの後の戦いでぶつけてやれよ。またとない機会なんだからさ」

 「そうだよね!私達とんでもない修羅場ばっか潜り抜けてきたんだし!」

 「足柄姉さんにも褒められてきたところです!皆、自信を持って……!」

 「腕がなるというものです」

 「よーし円陣組むのです!」

 「「えい、えい、おー!!」」

 「電ちゃん、これ福山提督達の奴だよね」

 「やってから言うのかよ」

 「まあ、やる気上がったから良しだよ!」

 

 同期組でわいわいと話をしている。日本から見てバミューダ海域は地球の裏側だ。当然時差が発生するので面倒なことになっている。

 先日の調査時は一旦アメリカ入りして体勢を整えていたが今回は奇襲をかける関係上、そうもいかない。少なくとも先程までは127は鎮守府にいた。つまりバミューダ海域へは急行しても物理的に間に合わない。そう、指揮者に思わせる為である。どうせどこかからそこまでの情報は漏れているだろうから。

 

 「江風は大丈夫?」

 「……落ち着かないな。ちょっとふらついて来るよ。こういう時は散歩に限る」

 「うん、行ってらっしゃい。私はちょっと寝てるね」

 「あいよ」

 

 アークス揚陸艇が到着するまでの自由時間を私は周囲の散策にあてることにした。

 

 

 食堂

 

 

 「うーん、美味しいわぁ」

 「晩飯は食ったけど軽食挟んどかねぇと腹空いちまうからな。浅田、結構やるじゃねぇか」

 「喜んでもらえたら良かったです。……あ、江風さん」

 「よう、趣味の散歩か?」

 「はい。天龍さん達は……ブレークタイム?」

 「あぁ。浅田が鎮守府の妖精達と交流を深めてるのは知ってるだろ?その中で妖精受けがいい軽食って評判のいいのがあるから作ってもらったんだよ。お前もどうよ」

 「へぇ、クッキー。それじゃ1枚。……美味い」

 

 浅田の兄さん。私がハギト社長と出会った日に天龍の姐さんが拾ってきた高校三年生の男性だ。鎮守府雑用としてアルバイトで参加してもらっていたがその中で鎮守府を支える妖精達と交流を深めていき、今では妖精のコンディションを維持する役割をしてもらっている。

 そんな彼が焼いたクッキーは紅茶がブレンドされていて焼き加減もいい感じだ。作り慣れているのが良く分かる一品だ。

 

 「ありがとうございます。妖精さん達にも普段頑張ってもらっていますから、喜んでもらえたらなって試行錯誤してなんとかここまで来ました」

 「ちなみにこれは本棟担当の妖精さんに受けがいいらしいわよ。他の子はまた好みが違うんだって」

 「あんだけいれば好みも色々かァ。……え、浅田の兄さんって全員分把握してるの!?確か整備中の時に私の艤装妖精にも差し入れ入れてるよね!?」

 「ああ、そうですね。127所属の妖精さんは一通りですね」

 「すげーだろ?あん時拾って正解だったぜ」

 「妖精さんは艦娘を、鎮守府を支えてくれる存在だ。っていうのが共通認識だったからね。逆にその妖精さんに世話を焼こうって発想は聞いたことなかったわねぇ」

 

 その話を聞きながら、加賀が誰にでもツンケンしている基地航空隊の岩本隊の艦載機妖精がデレた顔をしていた、と騒いでいたことを思い出した。あの時に岩本隊がデレた相手も彼だったはずだ。

 

 「ここまで出来るのは女の子も敵わないわねぇ」

 「モテてたりすんのか?学校でよ」

 「いえ、むしろ男子と女子の繋ぎ役にされるか……男子に気のある女子に嫉妬されるかでしたね」

 「ここまでやれたら女子も立つ瀬がねぇもんな」

 「女子力が違うものねぇ」

 「私にも無理だな……」

 「皆さん、クッキーなんていくらでも焼きますから無事に帰ってきてくださいね!」

 「おうよ!」

 「帰った後が楽しみねぇ」

 「了解ッス」

 

 その場を離れて食堂の別の一角に目をやると、アウトロー、ハナさん、料理長がいた。あちらはしっかりとしたものを食べているようだ。

 

 「よーうアオイー!」

 「アウトローお前さっき晩飯食っただろ……」

 「武士は食わねど男が廃るってやつだろ?」

 「据え膳食わぬは男の恥、かなぁ」

 「お前作戦終わったら勉強しろ」

 「違ったっけ?まあいいかハハハ!」

 「アウトローさん口にソースついてるよ。拭くね?」

 「アウトローちゃんは豪快な食べっぷりで作り甲斐があるわねぇ」

 「ハナさんも料理長も甘いんだからさァ……」

 

 食欲旺盛な子供をそのまま大きくしたような食べっぷりと汚し方である。文明にあまり触れてこなかったとはいえそろそろ慣れてほしいが、この甘やかされぶりだと当分このままだろう。

 個人的には私の人生を変えたヒトなのだからもう少し立派でいてほしいと思う。

 

 「そういやアウトローは艤装島攻略組で良かったのか?あの姫級が前線に出てたら入れ違いだぞ」

 「アイツ後ろでふんぞり返っての指揮者のヤツに媚び売ってるようなヤツだから、多分艤装島にいるぜェ!」

 「あー、そういう」

 

 交戦時は私達が前線を強引にこじ開けての遭遇戦だった。普段はもっと奥に居るようなタイプらしい。

 

 「そんなヤツにこのアウトロー様が負けると思うかァ?」

 「ねーな。むしろサクッとやって援護頼むわ」

 「油断したときが一番危ないんですから、絶対油断しちゃ駄目ですよ!約束!」

 「おう、ハナがそういうなら約束するぜ」

 

 暴れ馬のようなアウトローを制御できるのは実質ハナさんだけである。彼女が帰る場所となっている限り、アウトローも色々と大丈夫だろう。

 

 「江風ちゃんも定食作るけど食べていくかい?」

 「や、入ンないッス。軽食でいっぱいですって。帰ったら豪勢にお願いしますね」

 「任せて頂戴!」

 

 そんな話をして食堂を出た。

 

 

 港湾部

 

 

 私が港湾部に足を運んだ時、艦娘母艦白峰に積み込みが完了したと声が上がっていた。負傷者を修理したり補給したりする整備スタッフは既に乗り込んでいる。白峰の前で操舵の中村の兄さんと現場指揮を取る参謀が話し合っていた。

 

 「改めて、指揮の方はお願いしますね参謀」

 「あぁ。有象無象相手に友軍とはいえ苦戦させるようではここに居る価値がない」

 「そうでなくても陽炎さん達はーー」

 「なぁーにネガネガしてんのよ司令!!」

 「そうやで何回うちらが司令はんの咄嗟の判断で助かった思うとるん」

 「正直司令がいなきゃ全員戦死してたわよ」

 

 そこに陽炎の姐さんと黒潮の姐さんが突っ込んできた。鎮守府の誰よりも参謀の能力を知っているのはたしかにこの人達だ。

 

 「貴方もそう思うでしょ江風!」

 「キラーパス!」

 「なんだ、またいつもの放浪癖か」

 「私のソレ、共通認識だったりします?」

 「鎮守府で一番どこにいるかハッキリしないの江風ちゃんだからね」

 

 そういう趣味だと自覚はあるが周囲からもそう認識されていたらしい。

 

 「で、江風はんもどう思うとるん?」

 「間接的に見聞きした状況ですらおっそろしいぐらいに的確な判断してて頭の中どうなってンのかな、とか思いますね」

 「そのとんでもない頭でしっかり支えてきてね!司令!」

 「……ああ」

 「自己判断で動かすのと的確な指示のもとで動かすのじゃだいぶ話が変わってきますからね」

 「中村の兄さんも戦場に割り込む度胸すごいよね」

 「皆のことを信頼しているからね」

 

 その上でも、ともすれば敵の射程内に入り込むような立ち回りで艦娘母艦や支援車の類をサポートが必要な相手に寄せていく度胸は半端ではない。今まで艦娘母艦が耐久の問題もあるが流行らなかったのはつまりそういうことなのだ。

 

 「司令」

 「不知火か」

 「一言だけ。ご武運を」

 「あぁ、お前も福山を支えてやれ」

 「えぇ」

 

 ふとやってきて、そのやり取りだけをして踵を返す不知火さん。普段はてーとくに主人格を譲っているから接する機会も皆無だが、参謀との確固たる絆はそれでもしっかりと感じられる。

 

 「不知火も梓もお姉ちゃんのこの陽炎に任せなさい!」

 「うちら屋内組で梓は屋外担当やけどな」

 「屋内を万全にするのがお姉ちゃんの手助けよ!江風も後ろは任せなさい?」

 「期待してます」

 

 白峰の出航の時間なのでそこで解散した。

 

 

 本棟 作戦会議室

 

 

 外から見て灯りの点いていた一部屋を覗くと坂田の兄さん、タの姐さん、ルの姐さん、そして憲兵隊の艤装島攻略メンバーが簡易地図を見ながら会議をしていた。

 

 「揚陸地点がおそらくここになるわけだけど、ここに遮蔽物があるから揚陸艇との補給ルートを維持すると……」

 「ならここに2、こっちに3でこの地点からルちゃんが砲撃かね」

 「となるとここは狙えないんじゃないか?」

 「そこは……ん?江風ちゃんか、どうしたんだい?」

 「取り込み中でした?」

 「いいよ、むしろ丁度良い。江風ちゃん、この地図は私の記憶を元にして描いた艤装島の内部構造なんだけどね。ルちゃんの砲撃の射線が全体的に通るようにしたいんだけど、高台になっているここが狙えない。そして、ここにはよく創造者(クリエイター)が全体を俯瞰している場所でもある」

 「なる程。……ここって外に出れたりします?」

 「あぁ。数少ない正面口以外の出口だよ」

 「創造者の奴、穴の中から出てきたトコで私を見てたンですよね。もしかしてここだったのかな」

 「創造者は私の記憶に居る限りいつもここにいるからそうだろうね」

 「となるとワンチャンどころじゃなく逃げる可能性あるなアイツ」

 「正面口は揚陸艇で、他の小さい出口は憲兵隊で抑えるけどここはちょっとやりにくくてね。そこを留意していて欲しい」

 「了解」

 「外で戦う俺の隊もここを抑えながらだと……駄目だなどっちつかずだ」

 「むしろ創造者の横槍を防ぐためにも別方面の……ここかな。ここを基点に動くべきじゃないかな」

 

 創造者の立ち位置が思ったより厄介だった。私を見るとか言っていたがふらっと外に出て暴れられたら厄介でもあり、支援もしにくい絶妙なポイントに陣取るようだ。

 

 「しっかり釘付けにしないとなァ」

 「頼りにしてるよ江風ちゃん」

 「ッス、坂田の兄さん」

 「戦場がここだけならタに外から封鎖してもらえればいいが……指揮者に突撃するんだろう?」

 「ああ。私と天龍ちゃんと卯月ちゃんで指揮者を相手にする。これだけは譲れない」

 「『前回』の仇の主犯だからな。私は面識がないが第二技研に私が捕まった時も指揮者の手引だったんだったか?」

 「おそらくはね、ルちゃん」

 「生き残り組の俺も指揮者殴りに行きたいけど怪異も放っておけないからなぁ」

 

 先日の調査で艤装島に怪異がいることが分かった際、濁流さんが言っていたのだ。指揮者や創造者の力の効果範囲が底なしに広いのは怪異が力を供給しているからだろう、と。

 私達サイドで考えれば雷の姐さんの癒しオーラを対象を少数に限定しているが南西海域全体に行き渡らせるような所業であり。そんなことは姫級だろうが凄まじい才能があろうが無理があるはずで。となると力の拡大のサポートがあるはずということになる。

 人に仇なす為に力を振るう指揮者と人のネガティブな感情、状況を信仰という力に変換していた怪異は相性が良いらしく、指揮者は怪異を神としての巫(かんなぎ)のポジションだろうと濁流さんは推察していた。つまり怪異を放っておくと際限なく指揮者がパワーアップするということである。逆もまた然り。

 だからこそ指揮者が力を振るいにくいように突貫する人員と指揮者に力を与える怪異にその余力をなくさせる妨害要員が同時に必要になるのだ。怪異相手にも全力を出す必要がある。

 

 「怪異のタゲと主力攻撃は梓ちゃんと睦月ちゃんにやってもらうとしても、屋内に接続してそうなポイントを優先的に破壊する人員も大事ってわけだね」

 「そこを坂田の兄さんとアークスの人達で、と」

 「そういうこった」

 

 指揮者と怪異の接続を断つ、断ち続けることは本作戦の重要なポイントでもある。専念できる人が必要なのだ。

 

 「ま、そんな感じでこっちは詰めておくから、江風ちゃんは創造者に集中してくれよ」

 「君への負担が大きいことは理解している。その上で、頼むよ」

 「任されましたよっと」

 

 頑張ろう、一層強く思うのだった。

 

 

 本棟 執務室

 

 

 本棟の最上階の執務室にも灯りがついていた。覗いてみるとここの主である夏菜さんに弥生の姐さん、秋雲の姐さんといった非戦闘員が居た。他に比べてゆったりとした雰囲気だ。

 

 「あ、江風じゃーん」

 「失礼しまーす。秋雲の姐さんのんびりしてるね?」

 「この部屋に居る連中は攻略戦では出番がない面子だからねぇ」

 「出番はその後、事後処理です」

 「かーなーりの強行作戦にあの宣戦布告でしょー?デスマーチが見える見える。人間辞めててよかったよ」

 「……そのジョークを強く言えないのが悔しいぐらいにデスマーチが見えてます」

 「もうね、今の時点でヤバそうなの分かりすぎて笑ってたんだよね」

 「あー……」

 

 関係各所の連絡を最低限にして奇襲を仕掛けるので、そのツケとして事後処理に一気に負担がかかってしまう。事務が苦手なてーとくが心配になってきた。

 

 「まあ、この辺は私達がサポートして梓を支えるからさ。バッチリ完全勝利決めてきてよ?」

 「大前提として負けないこと、です」

 「うるせぇちゃんと完封しただろお前に出来んのかー!って言えるだけでかなり横やりは突っぱねられるからね。負けちゃうとそこが大変なんだよね。127の再建に時間がかかったのも、やっぱり『負けたから』が大きいと思うよ」

 「そっから更に負のループにズルズル行ったのが『前回』、ってことッスね」

 「その通りだよ」

 

 事務メンバーにしっかり引き継ぐためにも、やはり負けられない。

 

 「これを機に江風達にも事務能力は覚えてもらうから覚悟しといてね?」

 「覚悟して、ほしいです」

 「ッス……」

 

 ちょっと先を考えたくないな、と思ってしまった。

 

 「ま、作戦直後はゆっくり休んでもらえるようにこっちで頑張るからさ。おいおいってことだよ。遊菜ちゃんも『こんなの出来るかー!』って言ってたらしいけど、あちこち渡り歩いての130に来る頃にはシャキシャキ捌けるようになってたから大丈夫大丈夫」

 「了解です。姐さんも苦労したんだなァ……」

 「そういう意味では梓も筋は悪くないんだ。けど、まあ他所よりややこしい上に地球1年目でしょ?苦労するに決まってるんだよね」

 「アークス時代も『何時出発、ダーカーを何体殺した、何時帰投した』ってだけで報告書も許されるぐらい緩かったらしいですから余計に辛い、と思います」

 「落差すごいとそうなりますよね」

 

 おそらくルーサーが御しやすいように脳筋仕様の型式にしていたのだろう。

 

 「江風ちゃんこの後もぶらつくんでしょ?いつもみたいに」

 「共通認識……!」

 「今更ですか?」

 「白露型って犬っぽい髪の毛とかになるけどキミは自由気ままな猫だよねってよく言われてるよ」

 「えぇ……」

 「まあ、それでふらつくのはいいんだけど宿舎の旧130寮には近づかないであげてね。長月ちゃんと菊月ちゃんが2人の時間過ごしてるからさぁ。他の子が休んでるのはゲストルームの方だよん」

 「そういや見ないと思ったら……それこそいつも通りッスね」

 「2人は旧130時代からそう、です」

 

 第三者と絡む時はそれぞれ社交的な長月の姐さんや菊月の姐さんだが、こういったふたりきりになれる機会があると時間まで引き籠もっていちゃついている事が多い。

 

 「そんじゃ、そこは避けますンで」

 「江風ちゃん具体的に何やってるかまでは知らなさそうだねアレ」

 「今の127ピュアっ子多いのよ〜」

 「にしても……ピュアすぎます」

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